中野京子のレビュー一覧
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古くは『堤中納言物語』内の10話ある短編の一つとして、「虫めづる姫君」が紹介されている。化粧をすればそこそこなのに、、身なりに構わず昆虫に夢中である。ちょっかいをかけようとした若君は退散するが、西洋の虫めづる女性は結婚し、子供も産み、昆虫の絵を書くことを職業にさえした。しかしやはり、女性ならではの差別や理不尽とは無縁ではなかった。その女性とは、マリア・ジビーラ・メーリアンだ。
メ―リアンは実家の姓だ。実家は銅版画で有名なメ―リアン一族で、マリアの父は版画工であり「メーリアン出版社」の経営者スイス人マテウス・メーリアンだ。マリアが生まれた3年後に死去し、亡くなる前に、マリアを指して「あれはメ―リアンの娘だ」と宣言するも、長男と母親の折り合いが悪く、あっけなくメ―リアン家を出されてしまう。オランダ人であった彼女の母は静物画家のヤーコブ・マレルと再婚。しかしマレルの死後、再び母親は婚家を追い出され、裁判沙汰になる。マリアもまた働かないぐうたらな夫を捨て、メ―リアン家で唯一マリアの面倒を見てくれた次兄カスパル・メーリアンの紹介で、ソンメルデイク家が所有するワルタ城のラバディ派のキリスト教コミューンに行く。近代の夜明け前、フンボルトやリンネ、ダーウィンより昔、昆虫学という学問が存在しない時代に、独学で研究を行う。メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現し、大西洋を渡って南米を調査旅行。昆虫や植物の姿を生々しく描いた。彼女の絵は、かのピョートル大帝も好んで取り寄せたくらいである。次女夫妻はその縁でロシアに招かれた。「女性は引っ込んで家庭を守りなさい」と母親に何度言われても「いやでもあなた失敗してるからね…」とその逆を行き、成功した。但し金を持っていた割には無縁墓に葬られている。子孫に金を残すためと徹底している。
2002年刊の『情熱の女流「昆虫画家」──メーリアン波乱万丈の生涯』復刊。 -
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小さな虫の中に「神」を見た、植物画家で昆虫学者
マリア・シビラ・メーリアン(1647~1717)
ドイツ紙幣、500マルク札と切手の肖像画の女性。私は名前どころか、存在さえ知らなかった。
今でこそ女性が堂々と昆虫好きなどと言えるが、
昆虫どころか薬草を摘んで煮ていても怪しい女と
見られ、魔女だと密告されるような時代、
そんな時代に独学で虫を研究し、メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現した、
マリア・シビラ・メーリアン、
彼女は52歳の時に、憧れの南米スリナムに娘と
共に渡る(あの時代にその歳で!)マラリアで
死にかけながらも精力的に研究を続け、昆虫や
植物の姿を生き生きと描写した。
恐ろしいほどのバイタリティだ。
彼女が描いた生命力に溢れた細密画の植物や
昆虫達を、本書の挿絵でぜひ見てもらいたい。
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17世紀、ゴシック期のドイツに生まれたマリア・メーリアン。
彼女の虫を愛で、描き、探究する、波乱の、不屈の人生を
精密で美しい作品を添えて紹介する。
・はじめに
第一章 フランクフルト時代(~18歳)
――小さき虫に神が宿る
第二章 ニュルンベルク時代(~38歳)
――科学と芸術の幸福な融合
第三章 オランダ時代(~51歳)――繭の中で変化は起こる
第四章 スリナム時代(~54歳)――悦びの出帆
第五章 アムステルダムでの晩年(~69歳)
――不屈の魂は何度も甦る
・あとがき ・主要参考文献 ・復刊に際してのあとがき
「すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち」
デイビッド・アッテンボロー/著 グラフィック社で
初めてマリアの絵に出合い、驚き、興味を抱いて探した
「マリア・シビラ・メーリアン作品集 Butterflies」
グラフィック社で、彼女の作品を堪能していました。
で、更にマリアの人生が知りたいと思っていたところ、
復刊したのが、この人物伝でした。
著者ならではの、マリアの人生の歩みを辿りながら、
彼女の内面や心理を深く探ってゆく内容になっていました。
時は17世紀。メーリアン出版工房を営む父の後妻の娘に
産まれたマリアは、心身共に複雑な家族関係の中で育った。
だが彼女は虫に出会う。虫愛でる娘は、
蚕の飼育から虫のメタモルフォーゼを知る。
亡き父の出版工房と義父の絵画工房での学びも、彼女の基盤に。
結婚後、フランクフルトからニュルンベルクへ。
処女画集「花の本」出版。第二作目「虫の本」出版。
夫との別居でフランクフルトに戻り、
次兄の影響でオランダのラバディストのコミューンへ。
そこでスリナムの動物や昆虫の標本と出会う。
離婚と母の死からアムステルダムで再始動。
52歳で娘とスリナムに渡り、精力的にフィールドワークを
行うが、体調を崩して53歳でアムステルダムに戻る。
その成果は大センセーションを巻き起こす。
58歳で最高傑作の「スリナム本」を出版。
69歳での死。1771年頃までが最盛期で、その後18世紀に
批判が起こるが、20世紀半ばに再評価され、現代に至る。
昆虫学の先駆であり、研究者、画家。更に商人としての才。
バロック期、女性の第一の仕事が家事の時代に、
見たい・知りたい・集めたいをこれほどまでに追求した
生涯は、力強いものでした。そう、作品もインパクト抜群!
ただ、一度忘れ去られた彼女がどのように再評価されて
いったのかの言及が無かったのが、少し残念。 -
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絵画に登場する奇妙で怖い生き物。いったい画家は何を考えてこのような絵を描いたのか?
『怖い絵』の著者『中野京子』と『へんないきもの』の著者『早川いくを』との対談を通して、その絵が描かれた時代背景を踏まえながら解説する。
やはり何と言っても印象的なのは、装丁になっている恐れおののいている赤ずきんちゃんの絵でしょうか。初め、捲って現れた狼にビビっているのかと思いきや、添い寝していたんですか。そりゃあんな嫌悪感丸出しの顔にもなるか。
他の絵は怖いというよりヘンテコリンなものが多かったです。そしてお二人のやり取りが面白すぎ。特に『カニに指を挟まれる少年』。なんでそんな絵?少年というかおっさんに見える、などなど絵自体が面白いのに、語りが上回って面白くて噴き出してしまったほどです。