中野京子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
カメラのない時代、記念写真代わりになるのは「絵」だが、誰でも描かれるものじゃない。相当な財力と描かれるのにふさわしい家柄が必要だ。
そんな条件を満たしていたのが、マリー・アントワネット。父親は神聖ローマ皇帝フランツ1世、夫はフランス国王ルイ16世。文句なしの家柄と財力を背景に、幼少から死の直前までのアントワネットには多くの絵画が残されている。
本書はアントワネットが描かれた絵画を歴史順に並べ、彼女の生涯を追いかける。彼女の偉人伝だ。ヴェルサイユ宮殿での絶頂期からフランス革命を支持する大衆による監禁、そしてギロチン処刑と、空前絶後な波乱の一生を送ったアントワネットだが、その行動は常に受け身だ。姉の急死によりフランス王妃となり、ルイ16世の優柔不断と親国王派の人材が次々と亡くなったことが彼女を追い詰める。自らの意思なく、運命に弄ばれた不幸な一生だった。それゆえにフランス革命を象徴するアイコンにふさわしい。
夫ルイ16世が処刑され、次の処刑に自分が選ばれることは間違いのない状況で、喪服を着た彼女の肖像画が一番印象的だ。まだ30代なのに、苦労と恐怖で白髪になったマリー・アントワネットにかつての威厳も気品もない。そんな自信のない表情こそが本当の彼女だったのだろう。 -
Posted by ブクログ
「怖い絵」を紹介した中野京子さんの人気シリーズ。今年は美術展も予定されているので楽しみ。副題が関係していない作品も多いように思いますが、内容は安定の面白さです。印象的なものだけ抜粋。
ベラスケス『ラス・メニーナス』
一枚の絵画に詰まった情報量。俯瞰して眺めたような構図が以前から好き。あどけない表情を見せる5歳のマルガリータ王女を囲う従者たちと、バルボラの隠しきれない怒りと哀しみ。
ジェラール『レカミエ夫人の肖像』
はだけたドレスと艶っぽい線の細さの裏に潜んだ、女性の死をも恐れぬ美への追求。見方は180度変化し滑稽さすら感じる。
ブリューゲル『ベツレヘムの嬰児虐殺』
恐るべき改竄の事実。
ビアズリー『サロメ』
少し前にワイルドの『サロメ』を読んでいたのでより思い入れがある作品。小説のなかのサロメは無垢で猟奇的、恐れを知らない少女のイメージが強かったけれど、ここでは成熟した女性の終生の姿だった。妖艶なサロメと彼女を抱える異形の2人の対比に目を奪われる。
ルーベンス『パリスの審判』
三女神とパリスのやりとりが一枚の絵から十二分に伝わってくる。
ドレイパー『オデュッセウスとセイレーン』
セイレーンの登場により起こる船上の恐怖と混乱。本作では一見美しくも映る人魚セイレーンですが、彼女たちの目的を思い出すと湧き上がるのはやはり恐怖。ギリシャ物語の名シーン。
ファン・エイク『アルノルフィニ夫妻の肖像』
計算しつくされた構図のなかに込められた契約のかたち。
ベックリン『死の島』
黒々とした島の前にぼぉっと浮かぶ白装束の後ろ姿。この世のものではない、見てはいけない世界を前にしている気分に。 -
Posted by ブクログ
血で血を洗う権力争いをくぐりぬけてきた皇女の威厳を感じる「皇女ソフィア」。
色っぽい表情の中に無垢な愛らしさと陰々滅々とした表情を両立させる美女「ヴィーナスの誕生(ボッティチェリ)」。
理想的な農民の祝祭の姿と現実の姿とのギャップに支配層側のエゴを感じる「豆の王様」。
幻想的な風景の中に呪縛されている女性の姿が母性神話に縛られている姿のように感じる。確かに堕胎の罪で女性が死後に永遠の責め苦に苛まれるのであれば、男性も同じような目に合わなければ納得いかない。
図説拷問全書の表紙にもなった「悪しき母たち」。
周りも自分も仮面を被り、いつしか外せなくなってしまっているのはのは自分たちも同じだと思う。
むしろ、現代はSNSのアカウントによって仮面を変えていたりしていると思うと、現代の方がよっぽどひどいのかもしれない。
尊敬する人の仮面を被り続けた結果、自己と同一化して画家としての名誉を得た彼は幸運だと思う「仮面にかこまれた自画像」。
毎回、絵画に隠されたドラマに戦慄する。 -
Posted by ブクログ
周りを警戒しなかったがために処刑されたイングランド最初の女王「レディ・ジェーン・クレイの処刑」。
描いているのは労働の崇高さと夫婦愛の美しさ、それとも亡き子に祈り悲しむ姿か。どちらにしても寂しげな印象を受ける「晩鐘」。
崇高なる血を濃くし続けた一族の咎を引き受けざる得なかった少年王「カルロス二世」。
幸福に満ちた時間を提供するために道化として他者の優越感の犠牲になる者の怒りを描いた「ラス・メニーナス」。
一つの平面としてなら違和感がないのに、複数は成立できない。本当は存在しているのに私たちが見えないだけだろうか「相対性」。
今回も中野さんの知識に唸った。 -
Posted by ブクログ
合唱サークルでメンデルスゾーンを歌うことになり、その上大好きな中野京子さんということで興味を持ち購入。
無知であり初めはメンデルスゾーンとアンデルセンに接点があったこと、ジェニーリンドという歌手が実在することもしらなかったのでフィクションかと思うくらい、おとぎ話のようだった。
偉大な作曲家と作家が友人同士だったとは!
しかも1人の女性を巡って色々あって、、、。
中野京子さんの読みやすい文体でどんどん読めて、知識量にもいつも驚かされる。美術、音楽、歴史、中野さんが得意とするともが全て私のツボなのでついつい読んでしまう。
メンデルスゾーンの生い立ちも知れたし読んでよかった。 -
Posted by ブクログ
[至宝、その楽しみ方]モナ・リザ、キリストの埋葬、ナポレオンの戴冠式......。贅を尽くした美術館中の美術館とも言えるルーヴルの代表作を、その成立背景や画家の歩みとともに解説してくれる作品です。絵そのものも収録されているため、美術に関して詳しくない人も手軽に手に取ることができるようになっています。著者は、面白い視点からの西洋絵画に関する著作を多く執筆されている中野京子。
肩肘張らずに絵画について造詣を深めることができる良作。(自分もそうだったんですが)「西洋美術と言われても何から手をつければいいかわからない」という方は、学校の授業で見たことがあるような作品がたくさん紹介されていることもあり、本作をまず手にとってみるのもアリかと。難しい話や持って回った言い回しがまったくなく、美術に詳しくない人も、そしてもちろん詳しい人も楽しめる作品かと思います。
教科書的記述が続くのではなく、下記抜粋のように思わず「確かに」と頷きたくなる著者からの指摘がスパイスのように効いているのも本作の魅力の一つ。また、章を繰るごとに「これもルーヴルだったのか」という絵画が非常に多く、改めてルーヴル美術館の凄さに思い至りました。ルーヴルに行く機会がある方や日本でたまに行われるルーヴル展に足を運べる人は、本書でルーヴルを二度満喫できるかと。
〜芸術を求める者は少なく、心地よさを求める者のほうが(いつの時代も)多い。〜
美術に関しては特に疎い自分ですが☆5つ -
Posted by ブクログ
ベラスケスの『王子』に散見される“死”の予兆とは?
ヴィンターハルターの美しすぎる『皇后』の、その顔をよくよく見ると?
グリューネヴァルトの『祭壇画』の、痛々しい描写がもたらす“救い”とは?
肖像画に風景画に宗教画。絵画には色々な種類があります。画のタッチや使用した画材など、“美術の眼”で観るのも一つの見方ですが、“時代の眼”で絵画を観ると、見えてくるのは生々しくも悍ましい“現実”……?
運命、狂気、救済など8つのテーマごとに、『怖い絵』シリーズでは取り上げられなかった作品も含めて33点の絵画を解説した絵画ガイドブック。
予備知識無しで絵画鑑賞をして、見当違いの感動を抱くか。予備知識有りで絵画鑑賞をして、正しく恐怖と感動を得るか。あなたはどちらを選びますか?