山本周五郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
山本さんのBESTとは言いませんが、なかなか良い本です。
特に10の短編が発表順に並んでいるのが興味深い。戦前の如何にも青少年向けの作品から、円熟期にかかる昭和30年過ぎまで、周五郎さんの成長ぶりがよく分かります。
本当に山本さんは成長し続けた作家さんで、短編の出だしを少し読むと何時頃の作品か判ります。例えば勧善懲悪を描く場合、初期は言葉で直接に声高な善を主張し、少しするとストーリの中で明快な勧善懲悪を描きます。そして最後には、時に悪が跋扈し善が虐げられるままで物語は終わり、余韻の中で「それでも善が・・」と語っているようる作品集です。また「滑稽もの」が多いのも特徴的です。
新潮文庫の周五郎さん -
Posted by ブクログ
ネタバレ下巻の初めは刺客から身を隠すために
新畠や長屋での生活を余儀なくされるものの、
後半はとにかく物事が良好に進む進む。
ただ、表立った危機を感じさせないのは
主人公である主水正の慎重かつ
機会を計る上手さ故であるともいえるだろう。
それ故、後半は切り合いのような物理的な戦いはなく、
政治的な駆け引きが続くばかりとなり、
スカッとする爽快感はなかった。
様々な苦労や経験をして成長していく主人公が、
親兄弟や子供に対する
シビアかつドライな考え方や
昔の恩師の死に目に素直に会いに行こうとしない
潔癖さを最後まで変えないのが
不完全さを出していて却って良い。
どうせ自分に報いが返ってくるだろうか -
Posted by ブクログ
ネタバレ徒士組頭の父を持つ小三郎(後の三浦主水正)は、
自分たち親子の普段使う橋が取毀された様子、
そしてそれに対する父の対応を目の当たりにし、
その時から年相応の子供ではいられなくなった。
所謂成り上がりものの話だけれども、
主人公の成り上がりのための動機が
なんとも直感的で衝撃的。
大人になってからは
妻との確執や藩内の権力者達の陰謀、
過去の事件の謎が複雑に絡み合い、
更には得体の知れぬ刺客との戦いもあって
様々なエンターテイメント性を持っている。
仲間も増えていくのだが、
一方で裏切り者の存在も発覚する。
そんな中で主人公の三浦主水正は
果たして人格者であり続けることができるのか。
対 -
Posted by ブクログ
周五郎さんの新潮文庫のコンプリートを目指し、折に触れては買い足しています。この本を買ったので、残り一冊になりました。
ここのところ買い足していた本は初期の作品が多く、久しぶりに読む周五郎さん晩年の短編集です。修身的な匂いはすっかり影を潜め、どこか沈んだ雰囲気の中でも、人間肯定の暖かさがあり、読み応えがあります。
収録作品は「壺」「暴風雨の中」「雪と泥」「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「裏の木戸はあいている」「地蔵」「改訂御定法」「ひとごろし」。
やはり印象に残るのは「裏の木戸はあいている」。徹底して人を信じるという事が見事に描かれます。「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「ひとごろし」などの -
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周五郎。長編は久しぶり。
平日はなかなか時間なくて長編に手を伸ばしにくかったのだけど、
ゴールデンウィークを利用して読みました。
ストーリーの主軸はお家騒動。
武家物としてはよくある題材なんだけど、
さすがに周五郎を代表する長編の一つ。濃厚。
人生にどう向き合うのか、
何を考え、どう生きるのか
というようなことが周五郎小説の大きなテーマだと思うんだけど、
三浦主水正の半生、「ながい坂」を丁寧に描いているこの作品は本当に傑作。
就職直前には「天地静大」を読んだ。
社会に出て、挑戦していく若者たちの群像劇。
いま就職して4年目。このタイミングでこの本を手にとって良かった。
このながい坂