山本周五郎のレビュー一覧

  • ちいさこべ

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    望月峯太郎の「ちいさこべ」を読もうと思って、その前に読んでおいた方が楽しめるかと思い、原作である本書を購入。

    江戸の風俗、昔の日本人の感覚みたいなものをとてもうまく書いている。表題作のちいさこべは落語の人情話を聞いているような心地よい、古の波に体ごとゆっくりと漂いながら流されるように山本周五郎が書き連ねた言葉に包まれていく。表題作以外の短編、特に花筵は三歩下がる昔の女性を表現しているのではなく、女性の真から人を愛する美しさを怒濤のような出来事のなかでよく書いている。災害の描写のうまさに引き込まれたが、巻末の解説を読むと、作者の実体験が色濃く反映されているのだなと納得。あれはそういう出来事を感じた人にしかわからないものたと思う。山本周五郎、全然興味がなかったが読み進めてみたいと思う。

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    2016年10月24日
  • 五辯の椿

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    親子の愛憎劇というと、とかく父親が悪者になるイメージがあるが、こちらは母親。そもそも山本作品で「性」の問題をテーマにした作品も珍しい(と感じるのは自分だけ?)。復讐の背景にある様々な人間模様。加害者を許せないのは当然。しかし主人公のすごいところは、被害者は助けてもまた被害者になるという被害者たる人間性を見抜いている点(たとえば、借金棒引きで救済してもそれに味をしめてまた借金する人とか)。18歳にして悟りの境地か?と思わせときながら、自分の思いだけは果たしていく姿が生娘らしく且つ物悲しい。

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    2016年09月28日
  • 樅ノ木は残った(上)

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    秀作。
    長いけど、面白い作品は、苦にならない。
    少し読みにくいが、格式のある文章。綿密な人間描写。
    まだ、序章でこれから波乱を感じさせる。甲斐の人間性と関係する人との伏線。
    江戸時代初期は、まだ混乱の様相があったと言うことか。仙台藩にこのような出来事があったことは知らなかった。

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    2016年10月08日
  • やぶからし

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    ネタバレ

    表題作は,非常に山本周五郎らしい作品だが,痛快なのは1話目の「入婿十万両」かな.「蕗問答」「山だち問答」のような,ややおかしみを感じさせる話も良い,と書いたところで気がついたのだが,全部,奥さんあるいは旦那さんが伴侶に惚れ直す話だな.

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    2016年08月10日
  • 日本残酷物語 4

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    ほんの少し前の日本の姿。
    気が滅入るような記述が続くが、一昔前、恵まれた環境にあった人もいただろうが、保証なき社会の中で貧困にあえぎ、死んでいった人も膨大な数に上るのでしょう。
    搾取するものもいれば、されるものもあり。いじめるものもあれば、いじめられるものもあり。そして誰もが等しく貧しくて、生きて行くのがようやくの土地もあったわけです。
    もっと学ぼうと思いました。

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    2016年07月03日
  • 青べか物語

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    「さぶ」に続いて読みました。庶民の生活が、垣間見れて面白く読めました。私自身が、大阪の漁師町育ち故、なんだかこんな人がいたような気がすると思わせる部分が多々ありました。

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    2016年06月21日
  • 樅ノ木は残った(下)

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    スッキリといった結末ではない。人の一生のはかなさを感じさせられた。身は滅んでも、何らかの形で残るものだ。

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    2016年06月15日
  • ながい坂(下)

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    江戸時代の小藩の下級武士に生まれた主人公が、子供の時に遭遇した事件に憤慨し、長くつらい道を生きる決断をして成長するが、その後苦労する場面が続く。下巻では、上巻で登場した人物が、歳を重ねて登場するが、いろいろな生き方や価値観があるものだと改めて思い知らされる。この小説はとにかく重い。

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    2016年05月29日
  • ながい坂(上)

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    江戸時代の小藩の下級武士に生まれた主人公が、子供の時に遭遇した事件に憤慨し、長くつらい道を生きる決断をして成長していく様を描いている。お家騒動の権力争いの中で繰り広げらる人間模様などは、現代でも不変の営みのように思われる。自分に厳しい主人公の成長がこまやかに描かれており、著者の小説の重さが心地よくもある。

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    2016年05月29日
  • あんちゃん

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    鉄板でおもしろい山本周五郎.どれも人情味溢れる話だが,やっぱり藩政改革の「いさましい話」と「思い違い物語」かな,まったくトーンは違うのだけれども.

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    2016年05月18日
  • 樅ノ木は残った(下)

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    “意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある… これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ ” 物語そのものは勿論、山本周五郎ならではの、染み込んで来る言葉の濃度。下巻は特に高し。 人としての強さ、その在り方を深く考えさせられる作品でした。

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    2016年04月30日
  • 樅ノ木は残った(中)

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    中盤は、本筋と絡みながら、登場する婦女それぞれの業を俯瞰した描写も印象深い。この辺りも山本周五郎のひとつの真骨頂か。 “人は壮烈であろうとするよりも、弱さを恥じないときのほうが強いものだ” “いちど思いきめて、少しも迷わずに、それをやりとげることのできる人間は、仕合せだ。” 留めて置きたい語録を胸に、下巻へいざ。

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    2016年03月27日
  • 日本残酷物語 3

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    漂流して無人島にたどり着き、20年もの年月をそこで過ごした人々の話には驚嘆。
    キリシタン弾圧、身分制度、勤王と朝敵。どこを読んでも、表題にある「残酷」が重くのしかかってくる内容でした。

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    2016年03月19日
  • 人情裏長屋

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    11の短編の中のひとつ「風流化け物屋敷」は山本周五郎さんという作者はこういうものも書くんだなあと嬉しくなりました。
    化け物にまるで動じない世間知らずの侍と、恐いもの大好きな娘の交流が何とも微笑ましくゆったりとして良い。
    読み始めた時はなにか落語の「化け物つかい」のネタになった話かななどと思っていましたが、じつは化け物は・・という話。

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    2016年02月05日
  • さぶ

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    ネタバレ

    題名はさぶだけど、主役はさぶじゃない?
    素直だけど、要領があまりよくないさぶと、手際はいいが、自分でも少し持て余すぐらいのプライドとちょっぴりのやんちゃ度を持つ栄二は同じ店で働く親友同士。
    どちらかと言うと、栄二を主役に物語は織られていく。

    栄二は或る時、無実の罪を着せられて、店を放免となってしまう。心の底から心配するさぶを横目に、プライドが邪魔をして世間をうまく渡りきれない栄二。意地を張りとおして、最終的に、人足寄せ場で働くこととなる。

    最初は長年働いた自分の話を聞く事も無く自分を駆逐した店の関係者を恨んだり、目付を恨んだりするが、同じく社会からのはみ出し者が集められた寄せ場での経験を踏まえて、事情を知り、栄二に親切な役員や仲間達と出会い成長していく。

    人足寄せ場は世間より理不尽な事が、実は少なかった。そこから出たくないと怯える人足も多くいる。栄二もそう思い始めたが、ついに、自分を見舞うことで店をくびとなり、さらに余裕のない実家でも冷遇されるさぶ、そして思いを寄せる女性と人足寄せ場の外に出て、立ち上がる決心をする。

    その頃には、栄二の心から復讐心がなくなっていた。そんな時、嫁として迎えたおすえが、嫉妬心から栄二を陥れた張本人だと発覚。おすえを許す栄二。

    犯人がおすえにした理由って、人生は想像しているほど悪くもないってことかな?さぶをタイトルにした理由は、栄二目線から見た物語で栄二にとって大切な存在だからだろうか?

    いい本だったし、読む人はみんな栄二の幸せを願いながら読む本だと思うけど、うまく感想がまとめにくい本。世の中、ままならぬ事が多いけど、一生懸命生きていれば、それなりに悪くない世界であるってことかな?

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    2023年03月02日
  • ながい坂(下)

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    一人の男の半生を丁寧に描いた作品。娯楽の時間をとしては良かったですが、少し主人公との距離ができてしまい、深く主人公の思考に耽るようなことはなかった。

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    2015年12月06日
  • 扇野

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    ネタバレ

    全て男女の愛を書いた短編集.
    「滝口」は台詞がストレートでは無く,かなりじっくり読み込まないと分かりにくいのだが,それもそのはず,周五郎大先生のかなり晩年の作である.言葉の持つ重みが違う.

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    2015年11月16日
  • 日本残酷物語 2

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    忘れられた土地。
    島に生きる人々と、山にうずもれた世界と、北辺の土地。

    島にしても、山にしても、北辺の土地にしても、よくもまあそのような場所で生きてきたのだと驚くような描写が続きます。
    山に関しては、私の先祖の話も出てきて、興味深く拝読。
    知ってはいたけれど、やはり先祖は里に暮らす人々からすれば得体の知れぬ、疎ましい存在だったようです。

    昭和も終わり、平成も27年。
    本書に書かれていることは、外国のことであるかのように、描写されていることを頭に描くことが難しい。

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    2015年11月01日
  • 松風の門

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    短編集。
    山本周五郎は老後まで取っておくつもりだったが、中年にして読み出してしまった。
    まぁ、最近記憶力減衰しているので、四半世紀後には忘れていることでしょう。

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    2015年10月27日
  • おごそかな渇き

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    表題作の「おごそかな渇き」は山本周五郎の絶筆で,朝日新聞に連載中に亡くなってしまった.宗教を取り扱っているのだが,途中で終わってしまっていて続きが読めないのがとても残念だ.
    他の作品は,生きる気力を無くした武士の前に住み込みの田舎娘が現れる「あだこ」,家康主催の馬くらべにあばら馬で出場する「紅馬月毛」がよかったかな.

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    2015年10月07日