山本周五郎のレビュー一覧
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ネタバレ題名はさぶだけど、主役はさぶじゃない?
素直だけど、要領があまりよくないさぶと、手際はいいが、自分でも少し持て余すぐらいのプライドとちょっぴりのやんちゃ度を持つ栄二は同じ店で働く親友同士。
どちらかと言うと、栄二を主役に物語は織られていく。
栄二は或る時、無実の罪を着せられて、店を放免となってしまう。心の底から心配するさぶを横目に、プライドが邪魔をして世間をうまく渡りきれない栄二。意地を張りとおして、最終的に、人足寄せ場で働くこととなる。
最初は長年働いた自分の話を聞く事も無く自分を駆逐した店の関係者を恨んだり、目付を恨んだりするが、同じく社会からのはみ出し者が集められた寄せ場での経験を踏 -
Posted by ブクログ
読み終わった第一声の感想は、静かな男性はかっこいい。
主役の原田甲斐は、悪人として有名らしいが、私はそういった演目を知らずに読んだ。
この本では、悪人どころか、どこまでも自分を耐え忍び伊達家に尽くす忠臣。
伊達家の内部崩壊を狙う、幕府から延びる魔の手。
盟友2人と約束をし、原田は敵の懐に入って、切り崩す役を演じ尽くす。
そのあまりの飄々ぶりに、盟友からも疑念を抱かれることもあり、また仲良かった面々にも背かれ、その仲間が犠牲となって死ぬのを黙って見過ごしたり、盟友に先立たれたりとすごく辛い役柄である。
感情はあまり表情に出ず、冷静でありすぎるため、彼に恋愛感情を持つと辛い男性だと思った。
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Posted by ブクログ
数ある山本周五郎作品の中でもとびきりの異色作
裏表紙のあらすじを読むと、「抱腹絶倒の異色作」なんて書いてあったので滑稽ものなのだろうなと思って読み始めました。有名な長編作では人の生きる姿勢を問いかけるような真面目な作品が多い山本周五郎ですが、短中編の中には風刺の効いた作品や笑えるような作品もかなり多いです。ただ、そんな中でもとびきりの異色作でした。
解説にも指摘がありました。
たぶん『彦左衛門外記』に接した多くの山本周五郎ファンは、おやっとはじめ思われたに違いない。これは自分が愛読し、なれ親しんで来た、いつもの山本周五郎とは違うと。
まさにその通り。周五郎作品を読んでる人ほど感じる違和