【感想・ネタバレ】人情裏長屋のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月03日

短編で読みやすいので、時代ものに慣れていなくても楽しめました。人と人との心の通い合いに、心安らぐ一方で、笑えるものもありました。

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Posted by ブクログ 2021年02月24日

人は抗えない人生を持っています
それはあきらめろということではなく
卑屈になることなく
真摯に受け止め精一杯歩けということなのだと思う
殿様も乞食も人生という時間を授かり
己を見失うことなく今できることをする日々
人が存在する以上延々と続くのですね

山本周五郎はやはり私の師です

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Posted by ブクログ 2020年01月24日

上野千鶴子さんが東大の入学式の祝辞を述べて話題になり、僕は全文をネットで読んでとても素敵だなあとココロ動きました。

 "がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のお...続きを読むかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。"

 素晴らしいですね。視点、そして分かりやすい言葉のセンス。ハラショー。
 最近、山本周五郎を再読していて、山本周五郎の世界観というか主題というか通低音というか、つまりは、"がんばっても報われない社会" そういうことなのかもしれないな、と。
 なんだかんだ、ソレである以上は、現代性があるの無いのという以前に、普遍であり不変である訳です。悲しいかな。
 例えば「人情」とかのコトバで位置づけて片付けてしまうのは、読書の愉しみとしては勿体無い。
 これがまた書き手が人情なんてタイトルに入れちゃってると、かなり偏見と予断に晒されちゃう訳ですが。

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「人情裏長屋」。山本周五郎、新潮文庫。

 チャップリンの映画「キッド」。しばらく見ていませんが、見るたびに涙腺が緩む傑作だと思っています。映画演劇小説漫画、兎角元来涙モロイのですが、40代に入って更に磨きがかかり。

 山本周五郎さんの短編、この本の表題作、「人情裏長屋」も、同じくです。
 初めて読んだのは、11〜12歳の頃で、かれこれ35年余の間に3〜4度読み返していますが、再読するたびに泣けます。困ったものです。

 「キッド」系列の物語と言えば。映画なら「三人の名付親」「グロリア」「怪盗グルーの月泥棒」「依頼人」「スリーメン&ベイビーズ」などなど、どこまで解釈を広げるかで無限に人気のあるジャンルです。
 考えれば「レ・ミゼラブル」も、バルジャンとコゼットですから。

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 江戸時代。江戸。
 青年の浪人者が、裏長屋で飲んだくれて暮らしている。気は優しくて腕が立つ、同じ長屋の気丈な娘が憎からず想っていたり。同じくうだつの上がらない浪人仲間で、妻に死なれ赤子を抱えて難儀中の者がいる。 主人公が面倒を見たら、ある日、赤子を主人公に預けたまま失踪されてしまう。「出世したら迎えに来ますからよろしく」と。
 困り果てて、でも仕方なく赤ちゃん育てに格闘し、やがて情が移る頃には、主人公の暮らしぶりも健全になり。そんなある日、子を捨てた親が、なんと出世して迎えにやってきます。

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 メロドラマ、卑怯といえば卑怯、ズルいと言えばズルい。エンタメです。万人受けです。センチメンタルだしある種おとぎ話だし。そもそも時代劇なんだし。
 そうなんですけど、主人公が赤ちゃんに、桃太郎を話聞かせる段、矢張り何度読んでももう堪りません。泣けちゃうものは仕方ありません。こればかりは、読み手に子供がいるからとかそういう次元でも無いようです。
 主人公や、彼女さんや、赤子の父や、皆のそれぞれの状況やら、こだわりやら、ヒネクレ度合いやら、やるせなさやら「がんばってもそれが公正に報われない社会」というペーソスに、それが一時的なモノぢゃァなくて考えたくもないくらい年老いるまで続いて行くというコトと、そのことに自尊心を鉋で削られながら耐えて行く以外の選択肢を実際のトコロ与えられていないという…、浮世、憂き世の具体的すぎるリアリズムに生爪を剥がされ突き刺し貫かれる痛みにキチンと書き手が自覚的だからなンですね。一文が長すぎますが。だから泣ける。かけそばがイッパイだからって泣けやァしません。古いけれど。

 …とまあ、少年期以来のファンとしては周五郎小説の応援演説ならば雨ニモマケズなんですが。

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 表題作以外も、いつもどおりどれも読ませます。個人的には「豹」「麦藁帽子」はイチオシ。ともに、(執筆当時の)現代劇。
「豹」は手塚治虫のブラックな短編を思わせる、男と女、心の闇にゾクッとさせます。「麦藁帽子」は、かつて想いあった男女の歳月や心のヒダ。まさに憂き世に虐められてきたヒトの傷口が、かくも痛いのに美しくなれるという。野菊の墓なショートストーリー。

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ちなみに、作品の初出年、よくわかりません。

新潮文庫から出ている、いちばん普通に手に入れやすい短編集です。このシリーズはどうやら、山本周五郎さんの没後(1967)、親交のあった人の手で編集されたもので、「町人もの」「女性もの」「武家もの」「現代劇」などが、固まらないように、どの一冊を手にとっても、山本周五郎の魅力を広く知れるように、という狙いで作られた。それはそれで考えようによってはブラボーなお仕事なんですが、短編ひとつひとつの初出年というのが割愛されていてあとを追いづらい。

 全集とか読んだりすれば、あるいは研究者の方々は無論わかるでしょうが。誰でも気軽に見れる全データみたいなHPとか、ないかなあ。(無かったら作りたい)

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Posted by ブクログ 2013年10月27日

とっても好きな短編です。読み応えがあります。
お化けが出てくるようなおかしみのある話から、
離れ離れになっていた夫婦の再開、友情、ぞくっと
するような話まで、次は何が飛び出すか
ワクワクしながら読んでいました。
個人的にすごく楽しませて頂きました。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

私にとって一昨年11月以来久しぶりの山本周五郎氏の小説。読み始めからもう山本氏の世界引き込まれてしまいます。11編の短編どれをとってみても珠玉いえる。男同士の友情を描く『三年目』や『秋の駕籠』などは『さぶ』を髣髴させる話だ。
驚いたのは表題作『人情裏長屋』だ。めっぽう腕のたつ浪人・松村信兵衛は裏長屋...続きを読む住まい。金の入り用があると「取手呉兵衛」と名乗って道場破りをして金を稼ぐ。あっ、これは今から三十数年前、私がまだ中学生か高校生の頃にテレビでやっていた時代劇『ぶらり信兵衛道場破り』ではないか。高橋英樹が主演、信兵衛役でした。普段は贅沢をせずこつこつと仕事をしてつましい生活をしている信兵衛が、困っている他人を助けるためにまとまった金が入り用になると道場破りに出かける。信兵衛はめっぽう剣が立つので道場の門弟をつぎつぎ薙ぎ倒してしまう。いよいよ道場主との手合わせという段になって、最初は力の差を見せつけ道場主を追い詰めるのだが、そこで勝ってしまわず道場主がいまにも「参った!」という寸前になって逆に信兵衛が「参った!!」と言ってわざと負けてやり、あとで袖の下を頂戴するという筋書きであった。そうか、山本周五郎氏の小説がベースになっていたのか。三十数年たって初めて知りました。そういえばそんな浪人・信兵衛に岡惚れするおぶんちゃん役の武原英子の可愛かったこと。なんとも微笑ましく味わい深い時代劇でした。YouTubeで検索すれば少し視ることが出来るようだが、DVDは無いのかな。是非もう一度視たいものです。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

2007年5月に歌舞伎座昼の部で坂東三津五郎の若殿と尾上松緑の泥棒で上演された「泥棒と若殿」の原作が読みたくて探した本。お家騒動の内紛で幽閉されてその日の食料にも事欠き餓死するかもしれないと武士の世界に絶望しかけた若殿と、お人好しにもつい彼に食料を運んでくるようになってしまう泥棒との話で、非常に原作...続きを読むに忠実に舞台化されていることがわかる。山本周五郎はいい話ばかり書いているわけではないけれど、これは表題作を含めて大半が結末の温かい話を集めていて読後感がいい。講談調の語り口の楽しい「風流化け物屋敷」などもなかなかいいですよ。

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Posted by ブクログ 2024年02月14日

2月14日は山本周五郎の命日である(昭和42年没)。かつて少年は、時代小説に目覚めたあと、司馬遼太郎派に行くか、山本周五郎派に行くか別れた。わたしは、山本周五郎派に行った。その時既に吉川英治の八割がたを読んで、歴史物は極めたという慢心があり、それとは全くジャンルの違う世界を読んでみたく思ったと思う。...続きを読む本屋の山本周五郎棚を1/3くらい制覇した頃に、わたしはSFとか、純文学とかに移っていった。けれども、本屋の本棚はそれから数十年「いつでも戻っておいで」とほほえんでいた。

表題作「人情裏長屋」
今読むと極めて「定型的な人情話」である。超絶的な剣技を持つ浪人・信兵衛は、長屋の住人を陰ひなたに支えながらも毎日飲んで酔っ払っている。剣はたつが、出世欲はなく、人は頗る良い。道場破りで金だけは必要分だけはある。世話をしていた隣の少女・おぶんは近所の神(かみ)さんに「酒を止めてあげなよ」と言われて「なにか酔わないじゃいられないようなことがあるらしいわ。醒めた時の寂しそうなお顔は堪らないわ」と喝破する。そんなある日、長屋に越してきた侍が乳飲み子を残して出てゆく。信兵衛は、酒断ちをして屋台を引いて赤ん坊を育て始める。

昭和23年発表。当時はありふれてない、切実な話だったと想像する。当時戦争孤児を近所のよしみで育てているという話は多くあった。血を分けた親か、育ての親か、論争は既に各地で勃発していたろう。そういう時代性とは別に、ふと思い出したようにドラマ化されるのが山本周五郎。「子連れ信兵衛」(2015)としてNHKが3シーズンまでこの短編を基に作ってるらしい。

「泥棒と殿様」(昭和24年発表)
家督争いでボロ御殿に軟禁されて餓死寸前まで放置されていた若殿は、忍び込んできた気のいい泥棒と一緒に生活し始める。これこそがホントの生活なのだ、と思い始めた頃に‥‥。
殆どの価値観が逆転したのが戦後であった。所謂落語によくある殿様と庶民シリーズの少しリアルバージョンではあるが、退屈しないのは、泥棒の悲惨で尚且つ少し可笑しい半生が、政治に翻弄され完全に現実に嫌気がさした若者に、何らかの生きる理由を指し示すからだろう。

その他9篇が載っている。

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Posted by ブクログ 2024年01月14日

表題作をはじめとする「長屋」を舞台にした作品が多く描かれています。
どれもおもしろかったですが、特に印象に残ったのは『泥棒と若殿』『秋の駕籠』の二篇で、どちらも男同士の友情が爽快に綴られていました。
最後の『麦藁帽子』も不思議な読み応えで、尾を引くおもしろさです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月25日

NHKドラマ’’子連れ信兵衛’’の原案になった人情裏長屋のほかも収録されている短編集。コメディも含まれており出来の良いものから順にあげると’’泥棒と若殿’’、’’おもがけ抄’’、’’雪の上の霜’’、’’麦藁帽子’’、’’秋の駕籠’’。あとは同列で’’ゆうれい貸家’’、’’三年目’’、’’風流化物屋敷...続きを読む’’、’’長屋天一坊’’、’’豹’’。長編と違って短編はぐっと私の感覚にあう作家です。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月08日

山本週五郎初読。江戸時代、長屋を舞台に描かれる軽妙な筆致の短編集。しみじみとした人情あり、くすっと笑える話あり。『泥棒と若殿』薦められて読んだのだが、けして交わらぬ立場の二人が共に暮らすうち、心を寄せ合う様が印象に残った。20200508

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Posted by ブクログ 2016年02月05日

11の短編の中のひとつ「風流化け物屋敷」は山本周五郎さんという作者はこういうものも書くんだなあと嬉しくなりました。
化け物にまるで動じない世間知らずの侍と、恐いもの大好きな娘の交流が何とも微笑ましくゆったりとして良い。
読み始めた時はなにか落語の「化け物つかい」のネタになった話かななどと思っていまし...続きを読むたが、じつは化け物は・・という話。

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Posted by ブクログ 2015年01月29日

人情物って言うのでしょうか、江戸時代、長屋が舞台の短編集

亡き妻の面影をおって生きている孫次郎さんのお話「おもかげ抄」が良かったかなぁ

変な幽霊と同居するお話や、捨て子を育てるお話など、色々あって楽しめました

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Posted by ブクログ 2013年04月18日

山本周五郎はいつか読まねばと思いつつ手を出せていなかったのだが、
読書会の課題図書になったので読む機会を得た。

推薦してくれたかっきーさんが言うように、
「どのページを開いても泣ける」というところまではいかなかったが
(僕の人生経験がまだ浅いのかもしれない)、
いつくかの短編はとてもよかった。

...続きを読む表題作の『人情裏長屋』は、読書会でいろんな感想を聞けて面白かったが、
僕の感想は、

●その場所のいい・悪いではなく、その人の居るべき場所、居るべき世界というのがあるのかもしれない。本来、下にいるべき人間が上に行っても不幸だし、松村信兵衛のような人間が下にいるのも、いいようでやっぱり不自然なのかもしれない。
●「おぶん」は若いのに、賢くて情のあるいい女。惚れる。

の2点。

他には『風流化物屋敷』に出てくる「おとみ」がとてもかわいくて惚れる。

『泥棒と若殿』は号泣。

『豹』の正三はなんて意気地なしなんだ!と思い、『麦藁帽子』は美しいいい話だなぁと思った。

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Posted by ブクログ 2012年09月16日

長屋にて生活する人々の正直であるがままの呼吸を感じる事ができる短編作品集。共通のテーマは"他人への思いやり"か。裏長屋に込めた筆者の思いは、ギリギリの生活の中に灯すわずかな希望がつまった場。そして地道に稼ぐ人間が汗のする銭でつつましく生きる場かな。特にお勧めの作品は「おもかげ抄」...続きを読むと表題作の「人情裏長屋」。ふか~い愛情にふれ感涙に咽んだ~ 。秋の夜長に読む本としてうってつけ。

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Posted by ブクログ 2016年07月23日

再読(何回目かの)
昭和8年から27年に書かれた作品を集めた短編集です。
山本さんは分りやすい作家で、若い頃は書割りの様に薄っぺらく、年を経るに従い深みが出てきます。この短編集でも戦前の作品は小中学生向けの読み物の様で、後の作品になるほど読み応えが出てきます。もっとも、本当に円熟味が出てくるのは昭和...続きを読む30年以降という気がしますが。
とはいえ、久しぶりに周五郎の世界に浸りました。

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05-100 2005/11/08 ☆☆☆☆

全体としての出来は中くらいでしょうかね。やや”こっけいもの”が多く、また初期の作品が多めの構成です。
周五郎の面目躍如とまでは行きませんが、収録されている初期作品も、将来の周五郎を予感させるような、その時代の中では出来が良い作品が集められているようです。
ちなみに「雪の上の霜」は寺尾聰主演で映画化された「雨あがる」の姉妹編。

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Posted by ブクログ 2010年07月11日

短編集でしたが、どの話も面白かったです。ゆうれいとの掛け合いがおかしくって大笑いしました。面白さというのはいつの時代も変わらないのだな、と心が和みました。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

昨日眠たい帰り道 KIOSKで本を買った
 なぜか目に飛びついた 人情裏長屋 山本周五郎である
何年か周期で 時代小説や落語ブームが私の中に去来するのですが。今年がそうらしい
 帰ってひと寝りして こんな時間に本を読んでるわけだが
いいね 下町
 「あんた」 「おまえさん」 「飴ん棒う」
「―ってー...続きを読む始末だ」「ちょいと旦那」 「粋だねー」
なんて言葉が溢れてる。 なんか幸せになるな。

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Posted by ブクログ 2021年09月25日

ちょっと乗り切れなかっなぁ。
この作家の構成にしては、長文の塊が多い気もしたし。
まぁあんまり読書に浸れる気分でもない所為でしょうけれども。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年09月06日

全11編の短編集.世間で云う山本周五郎的な「人情もの」と,落語的な「人情話」の混合.お気に入りは,亡き妻を偲んで暮らす侍の「おもかげ抄」,のちの「さぶ」を思わせる「三年目」,捨て子を育てる「人情長屋」,お家騒動に巻き込まれた藩主の次男坊の「泥棒と若様」かなあ.あ,全部「人情もの」だ.

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Posted by ブクログ 2012年09月06日

11篇からなる短編集。

「おもかげ抄」
周囲から甘次郎と呼ばれるほどに女房に甘い鎌田孫次郎は、腕も確かで武士を助けたことで仕官の道が開ける。しかし孫次郎の妻は、本当は既に亡くなっていて…。

「三年目」
大工の友吉は博打から足を洗うために、許婚のお菊を信頼できる友、角太郎に預けて上方に旅立った。し...続きを読むかし戻ってみるとふたりは夫婦となっており、怒りに駆られた友吉はふたりの住処を捜し当て…。誤解が解けてよかった!

「風流化物屋敷」
おおらかな性格の武士、御座平之助が化物屋敷と名高い屋敷に越してくる。日々、物音がしたり化物が脅かしてくるが平之助は平気の平左、ちっとも動じない。賭場として使いたいがために博打打ちたちが化物屋敷として広めていたというのがオチ。

「人情裏長屋」
松村信兵衛は優れた剣客であり、弱きに優しい武士である。長屋の住人とも親しくしていたが、ある日ひとりの浪人に親切にしてやると、浪人は信兵衛に赤子を押し付けて消えてしまう。酒を断ち、赤子を育てるが…。

「泥棒と若殿」
藩の後継ぎ争いに巻き込まれた末に孤独に貧しく暮らしていた武士の屋敷に伝九郎という名の泥棒が押し入る。あまりの窮乏に見かねた伝九郎は武士の世話を焼いてやり、ふたりは楽しく暮らしていた。そこへ藩からの迎えがきて…。「信さん、行ってしまうのか」の台詞が切ない。

「長屋天一坊」
長屋の家主である吾助は業突く張りの嫌われ者。女房と娘もそれに張る強烈な性格の持ち主。吾助が家系図に興味を持ったことから起きる騒動。

「ゆうれい貸屋」
職人の弥六は芸妓の幽霊お染と意気投合し、幽霊を貸す商売を始める。しかし思うように働いてもらえなかったり、人間に負けて返ってくる幽霊も。すったもんだの末に実家に帰っていた女房とやり直すことになる。

「雪の上の霜」
「雨あがる」の続編。伊兵衛は武芸には優れているが、優しすぎる性格が災いして仕官の道を見出せない。病気の妻おたよを養うために街道で荷物運びをして日銭を稼ぐが、人足達から縄張り荒らしだと責められ…。己の立身出世よりも他人が虐げられることに我慢がならない伊兵衛を支える妻の姿が微笑ましい。

「秋の駕籠」
駕籠屋の相棒である六助と中次は、普段は一緒に暮らすほどに仲がいいが、時折つまらないことで喧嘩をする。ある日、払いのいい客を乗せて箱根まで行くが、途中でその客を追ってきた男にそいつは詐欺師なのだと教えられる。タダ働きかと意気消沈するふたりだったが…。

「豹」
正三は兄が死んでから、義姉と甥が暮らす家に寄宿していた。ニュースで近くの動物園から豹が脱走したと知り…。女の生々しさと情。

「麦藁帽子」
偶然であった老人から昔話を聞く。いったいどこまでが真実だったのか、それとも全てが老人の紡ぐ物語だったのか。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

11の短編集。
その中で一番良かった作品は、「ゆうれい貸屋」。ゆうれいを使って一儲けしようとする男の話。笑えた。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

笑わせる話、熱くなる話、スッとする話、怖い話…
いっぱい作品が詰め込まれているけれど、
この話のほとんどが、立場的に庶民(もしくはそれに満たない人々)
と言える人たちによって織り成されるのが良いです。

まさに大衆のための小説。

「泥棒と若殿」「雪の上の霜」あたりが個人的には好きだったかな。
笑っ...続きを読むたのは「風流化物屋敷」と「長屋天一坊」。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

滝田さんが長屋に住む浪人・松村信兵衛役で出演したTVドラマ「柳橋慕情」の原作本。しっとりとした良いドラマでした。

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