山本周五郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
先日から、本棚に数冊足らない新潮文庫の山本周五郎をコンプリートを目指して買い足してます(徐々にですが)
多分山本作品は全て既読で、その後誰かが本を持ち出して無くなったものと思っていましたが、この長編は未読だったかもしれません。
特徴的なストーリーなのですがまったく記憶がありませんでした。
山本さんの特長である人情的な気配は少なく、「法」と「人間的な掟」のギャップを主題に描かれた少々重い作品です。
商才を認められ家付きの娘である母親と一緒になった父。店を繁盛させ大きくしたが、淫蕩な母は父を裏切り放蕩を尽くし、労咳で死の床につく父親を見向きもしない。父の死の直後、母の最大の裏切りを知った娘は、父親の復讐のために。。。
重いテーマだし娘の復讐のリアリティの面でもどうかと思わせますが、ともかく読ませてしまう。円熟期にかかった山本さんの筆力です。
山本作品の中には「法」と「掟」をテーマに取り上げた作品も幾つかあり、その中で代表作かも知れません。映画化、ドラマ化、舞台化もされ、確かに映像的に向いた作品だという気もします。
しかし。。。
やっぱり私は人情物やきりりとした武家物の短篇の方が好きです。 -
Posted by ブクログ
昭和34年講談社から単行本刊行。他の山本作品とは一線を画するミステリー調のサスペンス作品。
こんな教訓的でない山本作品には驚いたのですが、復讐を実行してゆく主人公のおしのの気持ちに入れ込んでしまうほど熱中して読めることは請け合いです。
人生における罪や罰、そして人生の掟というテーマなので、殺す必要があったのかどうかを深く考えて読むと他のテーマよりは難しいし前向きな答えが出にくいので、娯楽作品として楽しむべきだとも思います。
なぜならどう考えても正しかったという結論は出しにくいですから。
でもラストにおいては作者は主人公の生い立ちや性格、年齢を考慮したのか、少し甘かったのかなと言う気もします。
純粋で潔白すぎるという結論なのでしょうがいろんな解釈ができるのでしょう。
正直驚きました、そういった意味合いにおいては衝撃的な作品とも言えるのでしょう。
少し余談ですが、NHKで2001年に国仲涼子主演でドラマ化されています。
最近観たのですが、今も綺麗ですが涼子ちゃん本当に綺麗で小説同様ドキドキして観れます。
そして若々しい阿倍寛や堺雅人も楽しめます。 -
Posted by ブクログ
昭和15年の『松風の門』から昭和39年の『醜聞』まで。武家もの、滑稽もの、下町もの、現代ものと色々な作品が集まった短編集です。
明らかに少年少女を対象にした、初期の表現も直接的で、世相を反映し修身的な(修身的ラノベ?)作品が、次第に間接的で深みを持った表現に進化し、さらに善悪を超えた「性」を飲み込むような如何にも周五郎さん的な人間洞察に至る過程が良く判ります。
特筆的なのは、時代小説の中でレスビアンを題材にした『薊』。時制を複雑に交差させて、何とも言えない雰囲気を醸し出します。
最も私の好きな周五郎さんらしいのは『釣忍』。人情物の傑作の一つでしょう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ17篇からなる短編集。
「笄堀」
忍城対石田三成。真名女は城主である夫の留守を守っていた。兵のほとんどを夫が率いていってしまったため、残された僅かな兵、女や領民を指揮して堀を作る。密かに真名女自身も作業に加わり、そのことで領民達の結束が強まった。決意を語る真名女の強さが美しい。
「忍緒」
真田信之の妻、松子は夫の留守中に尋ねてきた舅の昌幸の入城を拒みとおす。霧の朝、親子で見送る姿が切ない。
「襖」
粗暴で気性が荒いと評判の西村次郎兵衛のもとに阿市は嫁ぐ。日頃の振る舞いを抑えさせるための婚姻だとして、次郎兵衛は阿市に心を許さない。だが戦が迫り、彼女の心を知り…。北風と太陽のような話。阿市の、次郎兵衛の寝姿に武士の魂を見たがゆえの覚悟が凄い。
「春三たび」
島原の合戦で伊緒の夫は生死不明となる。戦場から逃亡したのではないかという汚名を着せられながらも、伊緒は実家へと戻ることを拒み婚家に尽くし、病弱な義弟を励まし続ける。そしてその清い心が上役の耳に入り、夫の戦死が認められる。
「障子」
かの子は家計を助けるために女塾を開いている。そんな彼女に直二郎は求婚するが断られてしまい…。
「阿漕の浦」
知信の妻、渼子は夫の留守中に西軍に味方をしなければ攻め滅ばされてしまうと、父や西軍の使者から忠告を受ける。だが夫の不在に己が勝手な振る舞いは出来ぬと突っぱねる姿が凛々しく美しい。
「頬」
茂兵衛と妻の阿いまは新たな漁場作りに没頭する。だが想像以上の困難に、三年の後に茂兵衛は撤退を決める。すると阿いまは鑿で頬を傷つけようとする。漁場の成功を、夫が誉めてくれた唯一の宝である頬を捧げて誓ったのでここから離れるならば返さなければならないのだと。素朴でひたむきな阿いまが愛しい。
「横笛」
藩儒である大橋順蔵は箱入り娘で始終おっとりとしている妻、巻子を苦々しく思っていた。だがある日、藩に順蔵は捕えられ、見られてはまずい手紙の数々を思い苦しむ。しかし予想を反して騒ぎは大きくならず、首を傾げていると巻子が全て焼き払ったためだという。客が来るたびに下手な笛を吹いていたことも、他者に密談を聞かせぬためだと知り赤面する。賢妻という言葉が浮かんだ。
「郷土」
戦乱を避けるために郷士の妻、りうは疎開の準備に終われていた。すると遠方へ出掛けていた姑が帰ってきてしまう。そして仕舞った位牌を仏壇に戻し、常と変わらない生活を見せる。土地に生きるということ、生かされているのだという感謝。疎開をやめて戦う意思を見せ、それが村人達へと伝播していく。
「雪しまく峠」
お沙伊は夫が謀反の軍に荷担する気だと思い、身重の身で子供の手を引き雪道を進む。結果としてはそれは誤解だったが、命を落としてしまう結末がなんとも…。命を賭けてでも夫の道を正そうとする覚悟の尊さ、といったところなのか…。
「髪かざり」
廻船問屋を営む父の乗った船が難破する。残された家族は同業者などから援助を申し出られるが、店の再興よりも共に死んだ人々の家族を見舞うことを優先する。病弱な母と幼い弟を抱え、懸命に生き抜こうとする娘、お稲の決意。
「菊の系譜」
勤王派の夫を反対派に殺され、お琴は幼い息子と夫が丹精込めて世話をしていた菊を抱えて領外に逃れる。年月が過ぎ、青年となった息子が官軍に加わると言う。お琴は父の仇を討つという、勤王の志以外の邪念を叱り、諭す。官軍として藩へ戻る息子に根付いた菊の花を切り、託す。
「壱岐ノ島」
貧農の次男坊である吉蔵は農民となる事を嫌い、文字を覚え家の手伝いも疎かにして本を読む。農民は国の宝である米を作っているのだと諭す母の台詞は感動的ではあったが、いささか説教臭い。
「竹槍」
切腹した父を持つ武家の娘、貞子は郷士の娘であるおきぬに竹槍の訓練に誘われる。だがそれを断ったために仲間外れにされ、裁縫稽古所を追われてしまう。病弱な母と幼い弟を裁縫の腕で支える貞子の心の強さが眩しい。
「蜜柑畑」
信乃は兄の友人、伝三郎と婚約する。だが彼には隠し妻と息子が居たとして破談になってしまう。伝三郎の裏切りを信じられぬまま年月は流れ、真実を知る。相手を信じ抜くことの尊さを示しているのだろうが、義姉の喋りがお仕着せがましく、鬱陶しかった。
「二粒の飴」
貞代は明日嫁ぐ娘に己の母の生き様を語る。最後に渡した飴の意味が切ない。
「萱笠」
足軽の娘であるあきつは、友人達の色恋話につられて自分にも想う相手がいると嘘をついてしまう。咄嗟に、乱暴者と評判の悪い吉村大三郎の名を出したが大三郎は戦に出ていたため、不在の状態で周囲の人々が話を進めてしまう。あきつは嘘がいつばれるかと恐れながら吉村家で姑に尽くすことになるが、思いの外、吉村家での生活に馴染んでいく。大三郎の死によって、嘘が真となってしまった結末には納得しかねる。良いシーンではあったけど。 -
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周五郎さんの文庫本はほぼ全て持っているつもりなのですが、調べてみるとやはり何冊か漏れてます。ついでに揃えようと買った本の中の一冊です。
おそらく再読なのですが、周五郎さんにハマったのは結構若いころ。内容はすっかり忘れています。
タイトル通り『柳橋物語』と『むかしも今も』の2つの中編からなる一冊です。どちらも二人の男性と一人の女性の恋を描いた町家物作品です。男性はどちらもキリッとした目端の効く男と、人は良いが少々愚図なその友人。山本さんですから、同然、後者と女性が中心になります。ただ、結末は大きく違います。
それぞれ昭和21年と24年の発表作。周五郎さんで言えば、まだ円熟期前と言えるでしょう。充分に面白いのですが、ほんの少し何かが足りない気がします。
とはいえ、久しぶりに周五郎の世界に浸って、何かホッとしています。