山本周五郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。
「恋芙蓉」
伊達政宗の長沼城攻めが舞台。朱兜隊隊長の勘三郎は従妹の小菊を嫁にしたいと思っていたが、小菊と親友の鞆之助とが恋仲にあることを知る。恋敵である鞆之助を政宗の元へと使者として走らせることで命を救い、それを知った鞆之助は戦場へと取って返すが…。
「孤島」
大阪へと向かう船旅で、欣之助・夏江兄妹は仇討ちの相手である栖崎十次郎に出会い、下船したら決着をつけることにする。しかし船は台風によって難破し、三人は無人島へと流れ着いた。支え合い生活していく中で十次郎は夏江に密かに思いを寄せる。だが世間に戻れば彼らとは共に生きられないという現実に十次郎は救助船を見つけるや、腹を切る。
「非常の剣」
弦八郎は密貿易の見張り番所頭に任命される。上役達が抜け荷の片棒を担いでいること知り訴えるが、握り潰されてしまう。四人の上役を斬り捨て、脱藩する際に婚約者と共に旅立つ事を義父に許される。
「磔又七」
仏師の又七は岡っ引によって濡れ衣を着せられ、磔刑にされる。しかし同時に大量の受刑者が居たために又七は刺し忘れられて難を逃れる。逃亡生活の果てに五体の仏を彫り上げ、その功徳によって罪を減じられ、仏を安置した寺の住職となる。岡っ引きが結局幸せになっている点が不満。
「武道宵節句」
桃の節句の宴の夜。貧しさも極まり自殺を考えていた兄妹が、盗まれた宝刀を探す兄妹の命を救う。礼金だけではなく、仕官の道も得られ、春の夜に似合いの明るい結末。鮮やかな斬り合いも見事。
「一代恋娘」
水戸家の若君に想いを寄せた商家の娘が、その命をかけて若君毒殺を防ぐ。最後まで己の想いを否定し続けた娘が切ない。家臣に娘の手紙を披露したうえでの裁断が鮮やか。
「奇縁無双」
我侭で武術自慢の藩主の娘を伊兵衛という武士が懲らしめる。結末が可愛らしい。
「春いくたび」
香苗は戦へと旅立った想い人を待ち続け、誰にも嫁がず、尼となった。40年の歳月が流れ、流れ着いたひとりの老人は戦の際に負った傷が元で記憶を無くしていた。しかし待たせている人が居るのだと言い…。老人がかつての想い人であることを確かめたとき、老人はまたどこかへ流れてしまった。きっと次の春には逢えると信じたい。
「与之助の花」
与之助は顕微鏡を作るために藩主の蔵から望遠鏡を盗み出した。丈右衛門という性質の悪い男に見つかり強請られる。完成した顕微鏡を兄の元に届け、与之助は丈右衛門を斬り切腹した。兄の婚約者である人への想い、次男である自分の行く末、兄の思いやりへのやるせなさ。様々な感情が入り混じった話だった。
「万太郎船」
万太郎は船の工夫に大金を投じ、身代を潰してしまう。手代の仁兵衛の裏切りもあったが、船大工として生きる万太郎はそれに憤ることなく、むしろ金に執着するばかりの仁兵衛を哀れむ。良い伴侶も得られ、明るく軽やか。
「噴上げる花」
火消しが使う、竜吐水(手押しポンプ)の開発話。失敗もあり周囲の人物はあまり好意的ではなかったが、水が噴き上がった瞬間の活気や笑顔が心地よく伝わってきた。こちらも理解ある伴侶と巡り合えたようでよかった。
「友のためではない」
重鎮の息子でありながら名の知れた破落戸でもあった角之助を、藩主の側近として仕えていた会沢寅二郎が斬ってしまう。寅二郎の友である杉沼欣之丞は己が自分が角之助を斬ったと偽り切腹する。寅二郎への手紙には、自分は友のために罪を被ったのではなく、藩に必要なお前を生かすのだと書かれていた。その手紙を読み終え、歩き出す寅二郎の背中が眩しい。
「世間」
唯一の現代物。借金ばかりをしている悪田が、志摩という男には逆に金を貸す羽目になる。 -
Posted by ブクログ
再読(何回目かの)
昭和8年から27年に書かれた作品を集めた短編集です。
山本さんは分りやすい作家で、若い頃は書割りの様に薄っぺらく、年を経るに従い深みが出てきます。この短編集でも戦前の作品は小中学生向けの読み物の様で、後の作品になるほど読み応えが出てきます。もっとも、本当に円熟味が出てくるのは昭和30年以降という気がしますが。
とはいえ、久しぶりに周五郎の世界に浸りました。
==================
05-100 2005/11/08 ☆☆☆☆
全体としての出来は中くらいでしょうかね。やや”こっけいもの”が多く、また初期の作品が多めの構成です。
周五郎の面目躍如とまでは行きませんが、収録されている初期作品も、将来の周五郎を予感させるような、その時代の中では出来が良い作品が集められているようです。
ちなみに「雪の上の霜」は寺尾聰主演で映画化された「雨あがる」の姉妹編。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。
「松風の門」
八郎兵衛はかつて神童と呼ばれていた。だが藩主の息子の遊び相手を勤めていた際に誤って片目を失明させてしまう。以来、才気も見せず忘れられた存在となっていたが、農民たちの一揆が起ころうとしている時、八郎兵衛は単独で首謀者を斬り殺すことで事態を収束し、腹を切った。主君の片目を奪ってしまった償いの機会を待ち続けていた八郎兵衛の忠義とそれを知る人々の心情が胸に迫る。
「鼓くらべ」
大店の娘お留伊は鼓の名手として知られていた。御前での鼓くらべに向けて練習に励んでいたが、ある老人と知り合うことで己の慢心や競うことの愚かさを知る。
「狐」
天守閣に妖怪が出る。乙次郎はその原因を解明することを命じられる。天守に泊り込んだ乙次郎は密かに買い入れた狐を退治して見せることで災いは去ったと周囲を安堵させ、本来の原因であった天守の修繕を勧める。いい夫婦。
「評釈堪忍記」
短気で知られた千蔵は堪忍袋の紐の締めどころを心得てからは他者と揉めることなく過ごしていた。しかしそれも限界を迎え…。コミカルな話。
「湯治」
おたふく物語三部作の三作目。おしずとおたかの姉妹には栄二というろくでなしの兄がいた。不意にやってきては世の中のためと言っては家から金を持ち出す。おたかの嫁入りのために仕立てた衣装すら質屋に持ち込まれそうになり、おしずが兄を責め立てるシーンがつらい。去って行った兄を追ってしまうおしずの姿に切ることの出来ない肉親の情が感じられた。
「ぼろと釵」
あたしつうちゃんよ。そう言った幼馴染を男は忘れられずにいた。男はかつて住んでいた辺りの酒場で女を探していると周囲の客に語る。男の語る清純そのものといった女の姿に、客達はあれは強かな女だったと異を唱える。落ちぶれて売女となっていたお鶴は、その店の小座敷で酔い潰れていたのだ。しかしかつての面影を見出した男は嫌悪することなく、垢じみた女との再会を噛み締め、肌身離さず持ち続けたお鶴の釵を見せる。男は女を連れ帰り、店の中は静けさに満ちる。情愛という言葉が浮かんだ。
「砦山の十七日」
哲太郎は藩政のために同志七人と立ち上がる。しかし事態は急変し、騒乱の主謀者として追われる立場となる。危険を知らせに来た婚約者と共に砦山に立て篭もり、使者に発った仲間の帰りを持つ。だが仲間の中に己の命を狙う者がいると知り…。
「夜の蝶」
お幸という狂女がいる。居もしない赤ん坊を抱いて近所を徘徊するが、住人達も憐れんでか皆が揃って話を合わせてやっている。酒場の客達が旅の男にお幸の事情を語る。お幸は麻問屋の娘で、婿となるはずの手代が店の金を持ち逃げしたことで狂ったという。しかし麻問屋に勤めていたという客のひとりは否定する。手代の高次はそんなことをする男ではない。主人に心からの恩を抱いていた、死に恥を晒させないためにそんな芝居を打ったのだと。それを聞いていた旅の男の正体は…。
「釣忍」
天秤棒を担ぐ定次郎は、大店の息子だった。だが腹違いの兄に跡目を継いでほしいためにわざと勘当されるほどの乱行を繰り返した。勘当後は女房のおはんと幸せに暮らしていたが、兄に見つけられてしまう。勘当後の真面目な生活振りに弟の思いを知った兄は定次郎を連れ戻そうとする。切ない終わりだが、いつか理解し合えたらいいな。
「月夜の眺め」
武者話をする伊藤欣吾とそれを肴に酒を呑む男達。嫌われ者の下っ引きを皆でやりこめる話。
「薊」
鋳太郎の妻おゆきは同性愛者だった。そのことを知らぬ鋳太郎はおゆきとの生活に苛立ちや疑問を貯めていく。そうして死を選ぶ妻を止める手立てもなく…。
「醜聞」
功刀功兵衛はかつて妻に密通の末に逃げられた。恥とならぬよう病死と届け出ていたが、ある日その元妻のさくらが乞食同然の姿で現れ、金を強請る。さくらは功兵衛を人間である前に侍であると言い、人間らしさや愛情がないと責める。厄介で醜悪な存在だったが、さくらの登場によって現在の妻ふじへの思いやりが持てるようになったのでよかった。
「失恋第五番」
千田次郎は社長の息子であり、会社に在籍してはいるもののいつも気侭に暮らしているが、かつて特攻隊を送り出す立場だった痛みを抱え続けていた。同じ傷を抱える戦友に誘われ、死んでいった若者たちのためにも、「特攻くずれ」達が起こす犯罪を阻止すべく酒神倶楽部(バッカスクラブ)に加入する。 -
Posted by ブクログ
GWの台湾旅行中に読んだ本。
海外旅行行く時には山本周五郎と決めてます。
ウソです、海外旅行初めてだったし。
まぁでも海外にかぎらず旅行のときに周五郎持ってくのは割りと習慣化しています。
周五郎の本は特に順序も決めずに、
中古屋で見つけたものを適当に買って読んでるんだけど、
外れがないですね。
期待通りの面白さ。
もう社会人3年目か、、、とか
また年取るのか、、、とか
今まで何やってて、これから何やってこうかな、、、とか
別に今に限ったことじゃなくいつも考えてはいるんだけど、
周五郎の小説を読むと
人生まだまだなげえな、と慌てる自分を諌める気持ちになったり
もっとまじめにしっかりやんなくちゃ、と日々の生活を改める気持ちになったり
とか、
人生について考えてみたり
とかね、そんなこんなを考えます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ友達の薦めで手に取ってみた。
短編集。
先日、
『静として揺るがず、正しく清くしとやかに
凛として美しく、明るく強くすこやかに
これがまことの、女子力だって明治生まれの曾祖母が言ってた』
という書き込みをネットで見かけたのだが
”女子力”という言葉がむやみやたらにおかしな意味合いで
もてはやされている昨今、こうした本当の意味での女子力を
日本の女性として考える必要があるのではと思う。
嫁と姑の関係となると、ちょっと個人的には
心穏やかに読めない部分もあったし
これはやり過ぎなのではと思うエピソードもなきにしもあらずだったが
武士やその家を守る妻としての役目、母としての役目
なにが正しく模範とされるのか
ということが、心現れるエピソードで描かれる。
夫にもわからないほど質素に生き、皆に慕われる妻や
義理の父と弟を思い、実の親を捨てて戻ってくる娘のエピソードが
個人的には好きだった。