山本周五郎のレビュー一覧
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購入済み
武士と職人の江戸情歌
沢木耕太郎の選んだ周五郎作品集(I)「おたふく」が良かったのでこの(II)を購入しました。直木賞を辞退した周五郎のような、意地っ張りの武士、職人の男伊達が巧みに描かれております。「情」たっぷりで、演歌のような情感を感じました。でてくる男性よりも女性の方が魅力的だとの見方もあるようですが、読み方次第ですね。「おたふく」も是非お読みください。(完)
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Posted by ブクログ
ネタバレ
道ばたに倒れ伏すものは数かぎりなく、はじめのうちこそ死体を埋めていたが、まもなくだれ一人としてかえりみるものはなくなった。いたるところに犬やカラスがむらがって、死体を食いちらす光景がながめられた。
この飢饉のときといえども人間が家畜に近かったのではなく、家畜が人間に近かったのである。
飢えの記録 より
明治十二年九月十三日埼玉県北足立郡中尾村の農民はコレラ流行防衛のために、県が避病院に患者を隔離しようとしたのに対し、村民は患者の生肝をとるのだと誤解しこれを妨害した。
新潟県西蒲原郡では消毒薬をまくのを毒薬を撒布すると誤解して暴動を起こしている。
そこには、無知の暗黒と、じぶんたちの仲間以外の者に対して冷酷なまでの非情が見られるのである。
自然の悪霊 より
堕胎のことを当時の隠語で「水にする」といい、水にされた子どもの死体を水子といった。水子は藁や菰につつんでひそかに川へ流したり、社寺の境内にうめられた。
間引きと堕胎 より
いわゆる「歴史」というスポットに当たることのない市井の人々の暮らし、またはその人間そのものに焦点をあてた編集書籍。まとまりがないと言えばないし、それこそ膨大なのですが、監修者、執筆の協力者(主に民俗学者や)は20人以上。
口承をまとめたもの、語りをほとんどまま(ばりばりの方言)収録したものなど様々です。語り部が暗い部屋でぽつりぽつりと話し始めているような生っぽさ。足を使って集めてきたその「話」の数々は、ときとして悲惨でどうしようもなく、情感溢れる形で、けれども淡々と語られています。
暗記を主にした学校の授業にはない、確かに人が生きていた、という距離感があったように感じました。そもそもそれが民俗学なのかもしれませんが、土地や地域にフューチャーしたというよりかは、暮らし、人、差別的な観点から見られていて、それは現代にも通ずることだと思います。
自然の悪霊の章などを読んで、今も昔も、という感想を抱くのは自分だけではないのかもしれません。コロナの風邪扱い、反ワクチン派、陰謀論。つい最近炎上した某メンタリストも似たような視点のようにも思える。
書籍や歴史をただの知の塊として見るのではなく、過去の悲惨な出来事、暮らしの積み重ねがこの国の一部としてあるということ。
面白かった、ではすまないほど、自覚と自問と気付きのある読者時間でした。 -
Posted by ブクログ
(上中下巻あわせての感想です)
山本周五郎作品は何といっても庶民や名もなき流れ者に対する温かい視点が魅力(上から目線の司馬遼太郎作品とは対照的)なのですが、本作では伊達藩の家臣というそれなりの立ち位置の人物を主人公に据えているのと、大きな陰謀に対峙するという物語のスケールの大きさに引きずられているせいか、主人公の原田甲斐以外の人物の掘り下げ方が他の作品と比べて弱いような気がしました。なので本作が著者のベストかというとそうでもないかなというのが個人的な見方なのですが、それでも伊達騒動(寛文事件)について、これだけの枚数をかけて斬新な解釈を提示したことは十分評価に値すると思いました。 -
Posted by ブクログ
やっと3冊読み終わった。
たった3冊を読むのに、一ヶ月もかかってしまった。
内容はかなり面白いのだが、私がとにかく時代小説が苦手ということで、
言葉が頭の中に映像として入ってこない(-_-;)
それなのにとても面白く、最後まで何とか諦めずに読むことができた。
この本は、伊達騒動と呼ばれた、江戸時代前期の仙台伊達藩で起こった御家騒動の話。
史実上では、原田甲斐宗輔は奸臣とされているようだが、
この本ではその真逆の立場で描かれていた。
この原田という人物の描写が非常に巧み。
私の文章能力では、とても形容出来ない、非常に魅力的な人物に描かれている。
主人公の原田だけでなく、伊達騒動の中に生きる多くの登場人物の個性が
非常に緻密に描かれており、時代小説嫌いの私でも、楽しく読ませていただいた。
超大作!読んでみて絶対損は無い! -
ネタバレ 購入済み
現代風にしたのは見事
時代物を現代風な漫画に、
しかも独特のテンポで間を読ませる技術は素晴らしいです
いろんなことを考えている主人公ですが、そういう風にみえないのがなんともはや。
しかし私の目から見るとやはり…
やや女性に対する社会的認識の古さというか
押しつけみたいなものは、
少しあります。
時代物だったから仕方ないかな、とも思いますが。
女は女らしく
男は男らしく
そういうことに、まだわずかばかりの抵抗を、私は感じているのです。
他の人がどう感じるかはわかりませんが
どちらかといえば男性向けの漫画でしょう -
Posted by ブクログ
大吉田藩七十万石の正嫡順二郎は、四歳の時、側室一派の陰謀によって廃嫡され、国許で幽閉同然の生活を送る。ところが、二十四歳になった時、世継ぎとされていた側室の子が突然死亡し、順二郎は隠密裡に江戸表へ迎えられる事になるが……。お家騒動の渦中に投げ込まれた世間知らずの若殿の眼を通して、現実政治に振り回される人間たちの愚かさとはかなさを諷刺した長編小説。
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周五郎風の風刺を効かせた癖の強い話。周五郎の滑稽物は癖が強い。というか何かを風刺するときには滑稽さというか悪ふざけを大げさにすることでマイルドにしている感じなのかと。
主人公が特に自覚も危機感もないまま騒動に巻き込まれつつも、主人公の素質や自力でもって自体が進んでいくという様は最近の”なろう小説”のようですらあるけど、物語の向かうところは違っていて、締めの持っていき方はなるほどというところでしたし、そこら辺に風刺の効いているところなのかとも思う。キャラの立ち方も良い。「超高速!参勤交代」みたいなノリの映画にしたらいまでも面白いのではないかと思う。
風刺のきき場所について。周五郎は政治をきれいなものとしては描かない。周五郎の描く政治を引き受ける人間は業を背負っていることが多くて、そして街の人間たちにしてみれば関わりの濃いものとしては描かれていない。これは江戸時代の話であって、明治の話なのかもしれなくて、現在の日本政治や社会の姿なのかもしれなくて。