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別物です。
椿三十郎と日日平安は別物くらいに考えた方が良いです。
そもそも、黒澤監督は、日日平安をもとに、コミカルな人情モノとして書いた脚本を、東宝の意向により、三十郎の続編に変えざるをえなかったそうです。
若い頃、それを知らずに読んで騙された気になったと同時に、あっと言う間に山本周五郎のファンになりました。
それくらい素晴らしい短編がつまった一冊です。
Posted by ブクログ
「さぶ」に続いて周五郎の作品は二作目です。
以前レビューを書いた「さぶ」が長編だったのに対し、こちらは短編集です。
面白かった。
うん、イヤ本当に面白かった。
何が面白かったんだ、って話ですが、本当に小説としてすごく面白かったんです。
なんだろう、うまい、とでも言えばよいのでしょうか。
何か文句のつけようがない、というか。
小説家の「うまさ」にも色々あると思います。
山本周五郎を評しては良く、ヒューマニズム、という言葉が使われるのを見るのですが、
その本質というか、根っこの部分がまず本当に面白い。人間の色んな感情、心の機微とでも言うのでしょうか、そこに共感したり、引き込まれたり。
そしてそれだけじゃなくて技術もすごい、と感じました。
武家物も町人物も、そして時代も自由自在。
滑稽物もそうでないシリアスな(それこそヒューマニズム的な)物も含まれてて。
三人称を基本としながら、一人称の手紙文を中心に据えてみたり、短編の立て方も多彩。
昔読んだ小説はこれと組み方が一緒だったんだな、とまぁそれが周五郎が発明したものなのか、もっと昔に誰かが発明したものなのかは分かりませんが、こういうプロットの立て方なんかも技なんだななどと、なるほどと思うとこがたくさんありました。
個別には、どれも面白かったので難しいですが、考えをめぐらせたのは「城中の霜」
幕末、その嵐のような時代の中で、切腹を命じられ志半ばで果てた志士、橋本佐内。
死に際、散り際の美学が強調される日本においてその死の意味を、苦しみを、客観的にそして想像的に描いたのはすごい。しかもそれが戦前の作品。
きっと混沌とした時代状況の中で体制や大衆に対する意見表明としての意味も持つんだろうなぁ。小説家ってのもホントにすごい職業だ。
表題作でもある「日日平安」は雰囲気も明るく、最後の主人公の葛藤なんかは非常に人間的で、とても面白かったのですが、今これを書くのに他の人のレビューを読んで愕然としました。
映画「椿三十朗」ってこれを映画化したものだったのですね。
主演の彼に負うべき責めが全くないのは重々分かっているのです。
分かっているのですが、それでも周五郎がユーモラスに人間像の真実を描き出す作家であるならば、映画を見る気がおきないどころかその事実を知っただけで多少げんなりとしてしまった、というわたくしの感情もまた悲しくも隠すことのできないユーモラスな真実なのです。
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