あらすじ
織田裕二主演の映画『椿三十郎』の原作「日日平安」を収録。無一文の浪人・菅田は、“切腹のマネ”をして通りすがりの男に飯を乞うがあえなく失敗……。しかし、この通りすがりの男、なにやら騒動を抱えている。聞くと、仲間9人で悪徳政治を行う家老らへの斬り込みを企てていた。これはいいツルだ……!! 菅田は仲間入りを志願。狙うはもちろん礼金! だったのだが……。無一文の空腹浪人の活躍をユーモラスに描く表題作をはじめ、ヒューマニズムあふれる名作全11編。「粋」が伝わってくる、時代小説初心者にもオススメの一冊!
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黒澤続きで久々に手に取りました。
あの母親と娘のやり取り、面白いんですよね、他がダメということではないんですが、あのシーン、すごく印象に残ってます。
それはともかく、その原作含めて粒揃いだと思います。
生きていると色んな事がありますが、真面目にやっていれば絶対に悪いことは無い、だから我慢するときは我慢する、それを見てくれている人は必ずいる、という作家の揺るぎなき確信に素直にうなずきます。
でもそれぞれの作品には作家の巧妙な仕掛けもあり、色んな意味での一級品揃いの短編集です。
別物です。
椿三十郎と日日平安は別物くらいに考えた方が良いです。
そもそも、黒澤監督は、日日平安をもとに、コミカルな人情モノとして書いた脚本を、東宝の意向により、三十郎の続編に変えざるをえなかったそうです。
若い頃、それを知らずに読んで騙された気になったと同時に、あっと言う間に山本周五郎のファンになりました。
それくらい素晴らしい短編がつまった一冊です。
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ご存じ「椿三十郎」の原作である「日日平安(にちにち,って読むのね.知らなかった)」が収録された短編集.このお話を原作に「用心棒」の続編を作ろうと考えるなんて,どうかしているが,できた映画は傑作である.「若き日の摂津守」も痛快ですね.
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下町の庶民感、義理と人情、武士の泪、腹ぺこ侍……山本周五郎のいろんな世界が覗ける傑作短編集。むちゃくちゃいい小説です。でも僕はちょくちょくうまく読めない話があって悔しい。また読みたい。
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しみじみとした味わいに溢れた時代小説短篇集。
時代、立場、有名・無名の差はあれど、
それぞれが生を受けた時代で懸命に生きる姿が
読んでいて、深く心に染みる。
どれも高水準の短編ばかりで、
読む人によって、好みはあると思うけど
個人的には「嘘ァつかねえ」「橋の下」は
胸にグッとくるものがあった。
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短編集。
どの作品も面白いが、タイトルにもなっている「日日平安(にちにちへいあん)」という作品が非常に好きで、何度も読んでいる。
読み終えると、さわやかで清々しい気分になる。
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映画『椿三十郎』の原作が表題作の『日日平安』。
織田裕二の映画の頃に購入したかも。
どの短編を読んでも、今の自分の姿、過去の来し方、人との関係のありようについて考えさせられる。
高校生の時に教師に勧められて山本周五郎の世界にはまり、こうありたいと思い続けてここまで生きてきたものの、現実世界に向かう時、あまりにも無残な己の生き様が悲しくなる、ぞ。
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『城中の霜』が読みたくて。橋本左内が最期に取った意外な行動とは。死に瀕して、人は何を思うのだろう。己が身の可愛さか、後世にわたる名誉か。それとも、遺される者への憂いだろうか。最期には、その人の「生き様」そのものが現われるのかもしれない。強く胸を打つ作品。
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「さぶ」に続いて周五郎の作品は二作目です。
以前レビューを書いた「さぶ」が長編だったのに対し、こちらは短編集です。
面白かった。
うん、イヤ本当に面白かった。
何が面白かったんだ、って話ですが、本当に小説としてすごく面白かったんです。
なんだろう、うまい、とでも言えばよいのでしょうか。
何か文句のつけようがない、というか。
小説家の「うまさ」にも色々あると思います。
山本周五郎を評しては良く、ヒューマニズム、という言葉が使われるのを見るのですが、
その本質というか、根っこの部分がまず本当に面白い。人間の色んな感情、心の機微とでも言うのでしょうか、そこに共感したり、引き込まれたり。
そしてそれだけじゃなくて技術もすごい、と感じました。
武家物も町人物も、そして時代も自由自在。
滑稽物もそうでないシリアスな(それこそヒューマニズム的な)物も含まれてて。
三人称を基本としながら、一人称の手紙文を中心に据えてみたり、短編の立て方も多彩。
昔読んだ小説はこれと組み方が一緒だったんだな、とまぁそれが周五郎が発明したものなのか、もっと昔に誰かが発明したものなのかは分かりませんが、こういうプロットの立て方なんかも技なんだななどと、なるほどと思うとこがたくさんありました。
個別には、どれも面白かったので難しいですが、考えをめぐらせたのは「城中の霜」
幕末、その嵐のような時代の中で、切腹を命じられ志半ばで果てた志士、橋本佐内。
死に際、散り際の美学が強調される日本においてその死の意味を、苦しみを、客観的にそして想像的に描いたのはすごい。しかもそれが戦前の作品。
きっと混沌とした時代状況の中で体制や大衆に対する意見表明としての意味も持つんだろうなぁ。小説家ってのもホントにすごい職業だ。
表題作でもある「日日平安」は雰囲気も明るく、最後の主人公の葛藤なんかは非常に人間的で、とても面白かったのですが、今これを書くのに他の人のレビューを読んで愕然としました。
映画「椿三十朗」ってこれを映画化したものだったのですね。
主演の彼に負うべき責めが全くないのは重々分かっているのです。
分かっているのですが、それでも周五郎がユーモラスに人間像の真実を描き出す作家であるならば、映画を見る気がおきないどころかその事実を知っただけで多少げんなりとしてしまった、というわたくしの感情もまた悲しくも隠すことのできないユーモラスな真実なのです。
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日日平安を読んでいて、この短編が、世界の三船が躍動した映画 ‘椿三十郎‘ の原作という事に気づく。山本周五郎は、滑稽話として描いた武士の世界が、黒澤明の手にかかると、スピード感のある見ごたえのあるあの映画に変わる、のですね。久しぶりに手に取った山本周五郎、どの短編も良いですね、★四つです。
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ちょっと前に豊川悦司が主演する映画の原作本「犯人に告ぐ」と「サウスバウンド」を読んだおかげで、ちょいと調べていたら、またまた映画「椿三十郎」に出演するという。
でこの映画、黒澤監督と三船の名コンビで作られた名作「椿三十郎」の焼き直しというではないか。
ならば原作も読んでみたいという事で探したが、山本周五郎著に「椿三十郎」なんて本はありません。
原作は、この「日日平安」(にちにちへいあんと読む)という事でした。
また、原作に「椿三十郎」という侍も出てきません。(まあ、モデルになっている浪人は同じ人物ですが)
さて、この本、短編集で11作品が含まれています。
私は、上下に分かれるぐらいの長編が好きで、短編集はあまり好きではありませんが、さすが山本周五郎、どれもとても人情味溢れる物語で、とても面白く読めました。
特に切腹を命じられ、いざという時に号泣きした侍の話『城中の霜』や、バカ殿のお話(ごめん、題名忘れた)など、ジーンと来るものがあります。
山本周五郎の本は、高校の時、担任だった磯部先生(あの野球の監督)から「さぶ」を授業で取り上げられて(確か倫理の時間)読んだのが始まりで、そのころは別に面白くは感じませんでしたが、歳を重ねるにつれ、とても好きな作家ではあります。
こりゃ、山本周五郎の作品も読んでおかにゃならんな。
・・・という事ではあったんですが、今読んでるのは山本周五郎賞を受賞した「明日の記憶」であります。
流石に山本周五郎賞、これもとても面白い本です。って、これも映画になってるんですね。読み終わったら、またその時。
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一介の浪人が藩の騒動を飄々と片づける標題作。他の短編は人の根底にある真実の悲しみや、ささやかな喜びを描いていて、型にはまった武士道とかより惹きつけられる。
Posted by ブクログ
中学校の恩師から頂いた本です。
ファンタジー好きだった当時は5ページも読んだら飽きてしまって、今の今まで放っておいてしまいました。
大学生になった今しっかり読んでみて、とても良い本でした。頂いてよかったなぁと、改めて思いました。
江戸時代(幕末)が舞台の短編集です。偉人の話とかそういう歴史物ではありません。(日本史の知識が中学生レベルなのではっきりとは言えませんが…)
それぞれの話で好き嫌いなど差がありましたが、じーんとくるような感動がたくさんありました。
侍などが登場するような時代ものは初めて読みましたがとても良いものでした。
もっといろいろ読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
「末っ子」での主人公に対する周りの評判の挿入が、
ちょっとしたトリックになっていて良かった。
確かに家族の皆が
「あいつ(主人公)は誰誰に甘やかされて育った」
って言い合ってたら、
実際は誰も主人公を甘やかしてないことになるわな。
他は「若き日の摂津守」や「しじみ河岸」
なんかが好きでした。
前者の「若いころからよだれを垂らす訓練をしてきた」
設定を著者の他作品で見たような気がする。デジャブか。
後者は「寝ぼけ署長」の雛形っぽい。
どっちが昔の作品かは知らんが。
Posted by ブクログ
短編集なのですが、一編読むごとに、長編小説を読んだような感慨があります。
ハズレはありません。この感慨が、1冊で11回も味わえるなんて、オイシすぎる……!!