山本周五郎のレビュー一覧

  • 赤ひげ診療譚

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    山本周五郎、円熟の娯楽作。ミステリー仕立ての各編も読ませるが、通して読むと保本登の成長譚としても楽しめる。赤ひげが随所に見せる医術観は、異常とも言える領域に到達しつつある現代医学に警鐘を鳴らしているようだ。

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    2018年12月21日
  • おたふく 山本周五郎名品館I

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    山本周五郎の名作短編9篇が、沢木耕太郎によって選ばれている。江戸期の武家や商人達とその妻や女性が温かい人情を示す。短編の中にその情を浮き立たせてくれる。昔の人はこんなに情が深かったのか、と半分疑いながらも楽しく読める。でも、人情は貧しいところに集まるのか?衣食足りて礼節を知る、という言葉もあるが、人情とは、礼節と次元の異なるものなのだろう。

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    2018年12月09日
  • 朝顔草紙

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    著者が選じた自身全集に選ばれなかった戦前の作品から
    解説者が選んだ選集
    おおかたは時代劇で
    昭和23(1948)年に同時代を描いた
    現代劇の一編『うぐいす』も
    舞台背景が異なるだけの
    今となっては同じく昔の時代劇であることがよくわかる
    時代劇としてもちろん出来不出来あるものの
    さすがに選集だけあっていずれも趣き異なる好短編
    一方『青べかを買う』『お繁』『秋風の記』の3編は
    太宰治作品を思わせるような前期昭和な「時代小説」で
    同時代の同じ手になる「時代劇」と「時代小説」の
    在り様違いが興味深い

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    2018年11月13日
  • 小説 日本婦道記

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    女性たちを中心に描かれた短編集。
    現代とは全く違う生き方しか選べない女性たちが、その環境の中で精いっぱい魅せてくれる生き様が本当に素晴らしい。誰かのために、誰かを思い、誰かを支えて、様々な女性たちが自分の人生さえも犠牲にする。どの物語にも自己犠牲がありながら、その生き様を自ら選んだ女性たちの芯が通っていて強い。
    日本女性の奥深さを感じて、涙なしには読めない作品だった。この時代の女性だけが持つ覚悟。それは決して現代人には感じることが出来ないもの。
    男女平等が叫ばれる今の時代に到底そぐわない作品だと思う一方、別にこういう生き方があっても良いんじゃないかと思う。とにかくどの女性も、覚悟を抱いて自分の

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    2018年09月22日
  • 赤ひげ診療譚

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    黒澤明の映画をはじめ何度もテレビドラマになった「赤ひげ」。江戸の貧しい人たちのために医療を捧げる強面の医者、新出去定(にいで・きよじょう)を中心とした小石川療養所の物語だ。長崎留学から戻ったばかりの若き医者、保本登が、去定先生(赤ひげ先生)を見ながら医者の仕事に目覚め成長していく。当初は医師としての出世を目指し貧しく忙しい診療所を嫌っていたが、次第に患者の心の声を聞くようになっていくのが心地よい。

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    2018年08月23日
  • 戦国武士道物語 死處

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    77年ぶりに発見された未発表作(表題)を巻末に、その10ヶ月後に発表された同音異曲「城を守る者」を冒頭に、その他「石ころ」「夏草戦記」等、全て第二次世界大戦の戦中に発表された「戦国武士道物語」8篇を収める。山本周五郎の戦記ものは、もしかしたら初めて読んだ気がする。時はまだ真珠湾攻撃の勢いを駆って、世の中の戦記ものは信長、秀吉、家康を始めとして有名な英雄を主人公にした物語が多かった頃。しかし、此処に綴られる人物たちは、その下で働いた無名の者たちばかりである。

    「どれほど多くのもののふが夏草の下にうもれたことだろう。その人々は名も遺らず、伝記も伝わらない、かつてあったかたちはあとかたもなく消えて

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    2018年08月08日
  • 完全版 日本婦道記(上)

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    良妻賢母、夫唱婦随などという古い言葉が自ずと浮かんでくる短編集。主人公は女性の鑑とも呼ぶべき人々ばかりで説教臭さも感じるが、時代小説の都合良さがよく出ている王道的作品。

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    2018年08月05日
  • 戦国武士道物語 死處

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    戦国時代における日本人の死生観が感じられる短編集。
    政治家やらが「命懸けで…」、「~生命を賭けて」というが、なんと浅薄なことか。
    「武士道」を大上段に構えてモノ言う奴は俺は嫌いだ。

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    2018年08月05日
  • ながい坂(下)

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    断絶した名家三浦の姓を継ぎ、三浦主水正と名前を変えた小三郎。
    藩内で進められる野党による政権掌握の動きに順風満帆な青年期から一変して命を狙われ身を隠すことに。主水正は無事政権を藩主の元に戻し、 正当な政治に戻すことができるのであろうか、、、

    最後まで目が離せない展開!!この一言に尽きる。

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    2018年07月08日
  • ながい坂(上)

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    身分の低い家に生まれた阿部小三郎はある日今まで通行に使用していた橋が上士により破壊されてしまった姿を目にする。それでも何も言わず何も無かったかのようにそこを迂回する父の姿に成り上がりに心を燃やすのであった。。。

    時代小説でありながら現代にも通ずるものを感じる作品でした。
    一度読み始めたらなかなか読むことを止めることができず、一気に読み通してしまいました。

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    2018年07月08日
  • 赤ひげ診療譚

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    赤ひげが理想化され過ぎているが・・・
    沖縄にもゴロゴロいる投薬オンリーの藪医者の方々に是非読んで頂きたいものです。

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    2018年06月30日
  • 寝ぼけ署長

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    ネタバレ

    発表当初、覆面作家として書かれたというのが面白いな、と思って読み始めた。
    時代ものではない作品は珍しいが、やはり、山本周五郎は好き。虐げられる者、弱い立場の者たちへの視線が優しい。
    なかでも屈指なのが「十目十指」だ。貧しく、慎ましく生きている夫婦が、周囲の山の手の奥様方から無実のそしりを受けたが、実は、彼らのほうに否があったという。
    なんだか、山本周五郎の作品を読むと、自分の中の姿勢を正される気がする。

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    2018年06月29日
  • 松風の門

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    45年前に出された13編から成る山本周五郎の短編集。昭和15年から39年にかけて編まれた武家物 町人物とバラエティーに富む内容です。時代小説はいつまでも色褪せないので その意味では作り手にとっても取り組み易いジャンルかも知れないけど力量の問われる分野でもありますね、日本人の琴線に触れることが多いジャンルだけに。山本周五郎は安定の作り手でした。

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    2018年06月01日
  • 山彦乙女

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    山本周五郎の先祖は武田家の遺臣であったとのこと。
    武田家再興を狙う一族の密かな動きを探索する江戸幕府の役人、そして柳沢吉保と綱吉のこと、秘密めいた会合、秘密めいた美人姉妹のこと、また、山彦乙女の中でも重要な舞台に使われる武田八幡の風景、主人公安倍半之助と花世とのやりとり、山本周五郎のロマン味あふれる作品でした。

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    2018年04月04日
  • ながい坂(下)

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    ネタバレ

    主人公が城内の密かなクーデターから逃れ、様々な職業に身をやつし、荒れ野での生活に耐え、表舞台に返り咲くまでが描かれる。堰堤を作る、という大志が実行されるところの手前で、あえて物語は終わっている。
    上巻の感想に主人公の性格の誠実さ、と書いたけれど、全編を通してみると清濁併せ呑む人物になっていく姿が書かれていたように思う。物語としては面白かったが、時代柄か、各人物像、特に女性の描き方にはもどかしさも残るところ。

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    2018年03月16日
  • ながい坂(上)

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    ネタバレ

    平侍の子として生まれた主人公が立身出世し、荒れ野を潤すための大堰堤を造ることを志す、という筋の時代小説。タイトルが示すとおり困難が続くけれど、主人公の誠実な性格と、時折、年月を飛ばして描くことから来るテンポの良さで、読みすすめやすい。

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    2018年03月15日
  • かあちゃん

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    5つの人情溢れる短篇集。
    その中で、「かあちゃん」が最も感動した。チャキチャキの江戸っ子気質のお勝を含めた家族が、他人のためにここまで手を差し伸べるか思ってしまうストーリー展開で、食うに困って押し入った泥棒もいつの間にか家族の一員になって他人のために蓄財の協力をする様になり、少しやり過ぎ感はあるが、何故か読後はスッキリ。

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    2026年01月17日
  • 人情武士道

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    12作の短篇集の内2作は初めての現代小説で時代小説との違いだけで無く作風が全く異なるものだと感じた。
    全体的には、「風車」「癇癪料二十四万石」「驕れる千鶴」「大将首」など凛々しい武士の妻を表現した作品が多く、スッキリした読後感をもてた。
    また、2作に「戦国の世に太閤は一人しか出なかった」という名言が出てきて心に残った。

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    2026年01月17日
  • さぶ

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    栄二の人間的成長をとおして、
    人間関係の難しさと、自分次第で良くも悪くもできることを教えてくれる、人間物語。

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    2018年02月11日
  • 正雪記(下)

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    油井正雪の乱として授業で習う慶安の変は、教科書的にいうと、大量発生した浪人対策を怠る幕府に対する反抗ということになる。3代将軍徳川家光の時代までの武断政治により改易された藩からは主家を失った浪人が大量に発生、徳川幕府体制をより確固たるものにしたい松平伊豆守信綱はこれを利用し、浪人が果てるのを待つ政策を遂行。これに対し、油井正雪は浪人による徳川幕府の転覆をはかったが、事前に計画が漏れて、実際には乱にはならなかったという事案である。

    教科書では油井正雪が実際何者であったかはほとんど触れられず、浪人を大量動員した測った計画を重く見た政府徳川幕府が、家光の死後、文治政治に展開していくという歴史の流れ

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    2018年02月02日