山本周五郎のレビュー一覧
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時代小説にちょっとばかり免疫がついたと思い、この作品を読んでみることにしました。
主人公はさぶ、じゃなく英二…。ふたりは同じ年で江戸の下町で表具屋の職人、栄二は男前で仕事も器用にこなすが、さぶは要領が悪く愚図だが誠実ではあるが、ともに友情を育んでいた。ある日、栄二は信用していたお得意様から盗人の濡れ衣を着せられることに…自暴自棄になった栄二は暴力沙汰を起こし、人足寄場で罪人として収容されてしまう…。さぶは栄二を探し出し、わが身より栄二を思い足しげく人足寄場を訪れるさぶ…そして栄二と同時期に収監されていた罪人の仲間たち…栄二は徐々に頑なだった心を開いていく…。
栄二が濡れ衣を着せられた件についての真相が、ラストであきらかになりますが、「それでいいの?栄二??」って尋ねてみたいところです。だけど、この作品は栄二の心の成長と、さぶと栄二の友情の物語といっていいかと思います。さぶのような友達をもてる自分になりたいし、逆にさぶのような友達って思われたいとも感じました。友達っていいなって、改めて思わせてくれる作品でした。 -
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2月14日は山本周五郎の命日である(昭和42年没)。かつて少年は、時代小説に目覚めたあと、司馬遼太郎派に行くか、山本周五郎派に行くか別れた。わたしは、山本周五郎派に行った。その時既に吉川英治の八割がたを読んで、歴史物は極めたという慢心があり、それとは全くジャンルの違う世界を読んでみたく思ったと思う。本屋の山本周五郎棚を1/3くらい制覇した頃に、わたしはSFとか、純文学とかに移っていった。けれども、本屋の本棚はそれから数十年「いつでも戻っておいで」とほほえんでいた。
表題作「人情裏長屋」
今読むと極めて「定型的な人情話」である。超絶的な剣技を持つ浪人・信兵衛は、長屋の住人を陰ひなたに支えながらも毎日飲んで酔っ払っている。剣はたつが、出世欲はなく、人は頗る良い。道場破りで金だけは必要分だけはある。世話をしていた隣の少女・おぶんは近所の神(かみ)さんに「酒を止めてあげなよ」と言われて「なにか酔わないじゃいられないようなことがあるらしいわ。醒めた時の寂しそうなお顔は堪らないわ」と喝破する。そんなある日、長屋に越してきた侍が乳飲み子を残して出てゆく。信兵衛は、酒断ちをして屋台を引いて赤ん坊を育て始める。
昭和23年発表。当時はありふれてない、切実な話だったと想像する。当時戦争孤児を近所のよしみで育てているという話は多くあった。血を分けた親か、育ての親か、論争は既に各地で勃発していたろう。そういう時代性とは別に、ふと思い出したようにドラマ化されるのが山本周五郎。「子連れ信兵衛」(2015)としてNHKが3シーズンまでこの短編を基に作ってるらしい。
「泥棒と殿様」(昭和24年発表)
家督争いでボロ御殿に軟禁されて餓死寸前まで放置されていた若殿は、忍び込んできた気のいい泥棒と一緒に生活し始める。これこそがホントの生活なのだ、と思い始めた頃に‥‥。
殆どの価値観が逆転したのが戦後であった。所謂落語によくある殿様と庶民シリーズの少しリアルバージョンではあるが、退屈しないのは、泥棒の悲惨で尚且つ少し可笑しい半生が、政治に翻弄され完全に現実に嫌気がさした若者に、何らかの生きる理由を指し示すからだろう。
その他9篇が載っている。
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「山本周五郎」の中篇時代小説を2篇収録した『柳橋物語・むかしも今も』を読みました。
ここのところ「山本周五郎」の作品が続いています。
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過酷な運命と愛の悲劇に耐えて、人間の真実を貫き、愛をまっとうする――。
一途な愛を描き、永遠の人間像を捉えた感動の二編。
幼い恋心で男との約束を交わした「おせん」は、過酷な運命に翻弄される。
「おせん」を愛する「幸太」は、命をかけて彼女を守り抜く(『柳橋物語』)。
周囲の愛情に包まれ何不足なく育ったまきに降りかかった夫の裏切り。
密かに慕う直吉は愚直なまでにまきに尽くすが(『むかしも今も』)。
一途な愛の行方を描く、下町人情溢れる感動の傑作二編。
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1946年(昭和21年)1月から3月まで雑誌『新青年』に発表された『柳橋物語』と、1949年(昭和24年)6月から8月まで雑誌『講談雑誌』に発表された『むかしも今も』が収録されています。
■柳橋物語
■むかしも今も
■解説 奥野健男
研ぎ師「源六」の孫娘「おせん」は、上方へ行くという幼なじみの大工の「庄吉」から愛を打ち明けられた… 「おせん」は、帰って来るまでお嫁にゆかないで待っていてくれるかという「庄吉」の言葉に、「待っているわ」と自分ではなにを云うのかわからずに答えていた、、、
ある一瞬の決断が、たった一言が、その人の人生を決定してしまう… 運命の分岐点を見事に描いた辛く哀しい作品『柳橋物語』。
「直吉」は、幼いころ両親に死なれ、九つまで叔父に育てられたが、叔母からのそのそしているといって折檻された… 指物師「紀六」に奉公したが、一生懸命に働いてもそこでも兄弟子たちから、化物面だ、愚図だと、ひどい言葉をかけられた、、、
こういう状態の彼を救ってくれたのが、おかみさんの「お幸」だった… 愚直な男の、愚直を貫き通したが故の幸せを描いた心和む『むかしも今も』。
いずれも、過酷な運命や愛の悲劇に耐えて、真実を貫き愛を全うしようとする江戸庶民の人情が描かれており、読んでいてしんどくなる部分もあるのですが、「おせん」や「直吉」の人生が、どうなっていくのか気になってページを捲る手が止まりませんでした。
特に『柳橋物語』の「おせん」は地震、火事、祖父の死、自分を愛してくれていた「幸太」の血の出るような告白と死、記憶喪失、水害、飢饉、世間の誤解による冷たい目… 等々、さまざまな災害や運命のいたずらに翻弄され、辛いことの連続、、、
でも、それらの困難を乗り越えた「おせん」が、「幸太」の愛に気付き、火事の惨禍の中で出会った「幸太郎」への愛情に生きることを決意し、自分のことを理解できなかった「庄吉」に対して精神的に勝利する結末は見事でした… 誰も悪くはないんですけどね、みんな自然の運命に翻弄されたんですよね。
人は何を信じて、どう生きるべきなのか… 考えさせる2篇でした。 -
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「山本周五郎」の長篇時代小説『さぶ』を読みました。
『山本周五郎名品館Ⅰ おたふく』、『山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋』、『若殿女難記』に続き、「山本周五郎」の作品です。
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小舟町の芳古堂に奉公する「栄二」と「さぶ」。
才気煥発な「栄二」と少し鈍いがまっすぐに生きる「さぶ」。
ある日、「栄二」は身の覚えのない盗みを咎められ、芳古堂から放逐されてしまう。
自棄になった「栄二」は身を持ち崩し人足寄場へ送られるが――。
生きることは苦しみか、希望か。
市井にあり、人間の本質を見つめ続けた作家の代表作。
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「朝日新聞社」行の週刊誌『週刊朝日』の1963年(昭和38年)1月号から1963年(昭和38年)7月号に連載された「山本周五郎」の代表作とも呼ばれる作品です。
江戸下町・小舟町の表具店・芳古堂に奉公する「さぶ」と「栄二」… 男前で器用な「栄二」と愚鈍だが誠実な「さぶ」は、深い友情で結ばれていた、、、
ある日、「栄二」は得意先で盗みの罪を着せられる… 怒りのあまり自暴自棄になり、人足寄場に流れ着く「栄二」。
世を恨み、意固地になった「栄二」の心を溶かしたのは寄場の罪人たち、そして「栄二」を忍耐強く励まし支える「さぶ」のもつ人情の温もりだった…… 一筋の真実と友情を通じて人間のあるべき姿を描く物語。
人の成長、そして二人の青年の友情を巧みに描いた作品… 人間は一人で生きるわけじゃなく、多くの人の支えがあって何かを成し遂げるているんだということを、しみじみと感じました、、、
「どんなに賢くっても、にんげん自分の背中を見ることはできないんだからね」
「世の中には賢い人間と賢くない人間がいる、けれども賢い人間ばかりでも、世の中はうまくいかないらしい」
これ等は、人足寄場へ送られた「栄二」が、寄場の父と慕い尊敬することになる「与平」に言われる言葉なのですが… この物語の本質をついていると思いますね。
辛くて哀しいエピソードの連続なのですが、それでも、ページを捲る指を止めることができない… 上手く説明はできないのですが、不思議な魅力を持った作品でした、、、
そして、「栄二」のもとを「さぶ」が訪ねてくるシーンで結末を迎える物語… 劇的ではないけど、感動して、とても印象に残るエンディングでしたね。 -
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山本周五郎の短篇小説集『花杖記』を読みました。
『編傑作選4 しづやしづ』に続き、山本周五郎の作品です。
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何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。
どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。
ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変わらぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。
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大正15年(1926年)の文壇処女作品と昭和16年(1941年)から昭和32年(1957年)に発表された作品10篇が収録されています。
■武道無門
■良人の鎧
■御馬印拝借
■小指
■備前名弓伝
■似而非物語
■逃亡記
■肌匂う
■花杖記
■須磨寺附近
■解説 木村久邇典
父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』など、武家社会を描き出す傑作集… ユーモラスな作品から、シリアスな作品、恋愛を絡めた作品、ミステリ要素のある作品等、バリエーション豊かな作品が収録されており、どの作品も粒揃いで面白かったです、、、
そんな中でも印象に残ったは、
武士としては致命的な臆病者で用心深かったことが、結果的に上首尾につながるというユーモラスな展開が愉しめる『武道無門』、
山瀬平三郎は縁談に承知した直後に、小間使いの八重を愛していたことに気付いた平三郎は縁談を破談とするが、八重は主人の名を傷付けると思案して婚約者があると言って身を引いてしまう… これから先の8年後、偶然再会した二人は、お互いの気持ちを確かめ合い結ばれるという感動的で和ませる展開の『小指』、
無駄な殺生はせず、一矢で射止めると判断したら二の矢は持たないという弓道の信念を貫く青年武士の胸のすくような痛快武芸譚『備前名弓伝』、
剣術の名人・飯篠長威斎の代わりを務めていた怠け者・くる眼の杢助が本物の人生の達人に錯覚されていく奇妙な面白さが味わえ、剣術・武術を揶揄・批判した『似而非物語』、
心を決めた相手がいる姉・あつみと結婚するために江戸から国許に下がってきた横江半四郎を翻意さえるため、妹・みさをは姉のために一計を案じる… 半四郎に、ご落胤で一部の重心に命を狙われると明かし、二人で逃避行を続け、この逃避行を通じて、二人の心が通じ合い、さらに半四郎は藩政に関わる重要な証拠を手にすることで、全てが丸く収まるという八方めでたしのハッピーエンドが愉しめる『逃亡記』、
主君への直々の目通りを願って殿中で何者かに殺された父親の仇討ち、真相究明を通じて、父子の難しい関係を描き、ミステリ要素も愉しめる『花杖記』、
ですかね… 山本周五郎の作品は読むのをやめられなく魅力がありますねー 次も読んでみようと思います。 -
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読み終わった時のお腹にずっしりとくる、揺るぎない満足感。コレだ!と思わせられる人物像。
人間味あふれる人柄。主人公は例えばクラスに居たら全く主役では無いタイプではないか?
誰の上にも立たず、自分を過剰評価せず、人を喜ばせ、人に譲る。
そんなタイプがいたとしてそれに気づくのは難しいのではないか?
そんな人間になりたいと思うけれど、なりたいと思ってなれるものでは無い。コレはもう生まれつきの性分なのでは無いだろうか?
実直、直向きさ、辛抱強さ、潔さ。
なりたいと思ってなれるものではない。そういう人物を描くから山本周五郎は魅力なのかもしれないなぁとぼんやり思ってしまった。
「雨あがる」とても良かった。続編も読みたい。
そしてもっともっと山本周五郎の作品を読んで、この生まれつきの性分の人物に近づきたい。 -
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山本周五郎の短篇小説集『町奉行日記名』を読みました。
ここのところ、山本周五郎の作品が続いています。
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着任から解任まで一度も奉行所に出仕せずに、奇抜な方法で藩の汚職政治を摘発してゆく町奉行の活躍ぶりを描いた痛快作『町奉行日記』。
藩中での失敗事をなんでも〈わたくし〉のせいにして、自己の人間的成長をはかる『わたくしです物語』。
娘婿の過誤をわが身に負ってあの世に逝く父親の愛情を捉えた短篇小説の絶品『寒橋』。
ほかに『金五十両』『落ち梅記』『法師川八景』など全10篇を収録。
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1940年(昭和15年)から1960年(昭和35年)に発表された作品10篇が収録されています。
■土佐の国柱
■晩秋
■金五十両
■落ち梅記
■寒橋
■わたくしです物語
■修業綺譚
■法師川八景
■町奉行日記
■霜柱
■解説 木村久邇典
『晩秋』と『落ち梅記』、『寒橋』の3篇は再読、残りの7篇は初めて読みました… その10篇の中でイチバン好きなのは『晩秋』ですね、、、
自刃した父の恨みを果たすため、冷酷な奸臣と言われた老臣・進藤主計を狙う娘・都留の葛藤が描かれており、クライマックスにおける二人の縁側での対決が清々しいんですよねー このような事態で為政者は、どのように振る舞うべきか… 政治家の皆さんの見本にしてほしいですね。
自らの命を賭けて反対勢力の一味を集めて謀反を図ることにより、反対勢力の一掃を謀る老職・高閑斧兵衛を描いた『土佐の国柱』と冤罪と知りつつ藩政を立て直すために黙って罪をかぶるという忠義に殉じた武士・金之助を描いた『落ち梅記』も、『晩秋』と同じく、己を犠牲にして侍としての筋を通す厳しく美しい物語… このジャンルは感動しちゃいますね。
行きずりの武士に託された50両を届けることにより報酬だけでなく、人間同士の信頼を知ることになる『金五十両』と、娘婿の過ちを義父が背負ってあの世に逝くことで夫婦が救われる『寒橋』の市井ものもイイ味があり、印象に残りました。
痛快なこっけい物の『わたくしです物語』と風刺性の濃いこっけい物の『修業綺譚』は、落語を観ているような雰囲気で愉しめましたね。
やくざな相手に対し徹底した軟派政策により解決を図る町奉行の活躍を描いた『町奉行日記』も痛快で心地良い読後感が味わえました、、、
好みの作品が多く収録されていたのでトータルで満足度の高い一冊でしたね… 山本周五郎の作品は、読み始めると、やめられないとまらない魅力がありますねー 次も読んでみようと思います。