山本周五郎のレビュー一覧

  • 寝ぼけ署長

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    居眠りしているかのように衆生の心、事の本質をつぶさに見抜く署長五道三省の姿は、まさに仏の半眼の如しといったところ。読み進めるに従って署長に惚れ込んでいってしまう。

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    2019年06月16日
  • 五瓣の椿

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    時代小説と言うよりもサスペンス小説かな。
    主人公が悲しい。女だから母を恨み、女だから自分を許せなかったのか?
    読後の爽快感は全くなく、なんとなく苦いものを口の中に残した気持ち。
    それでも主人公に同情してしまう山本周五郎の凄さかな。

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    2019年05月04日
  • 樅ノ木は残った(上)

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    ネタバレ

    <上中下3巻を通してのレビュー>

    仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申し付けられる。
    明くる夜、藩士四名が「上位討ち」を口にする者たちによって惨殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。
    その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。


    山本周五郎氏の作品は初めてなのです。

    「伊達騒動」をあまりよく知らないのですが、原田甲斐をこの観点から描く作品の新鮮さが感じられました。
    幕府の大藩潰しを背景に様々な密約が立ち込めて諸大名が苦し

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    2019年03月29日
  • 将監(しょうげん)さまの細みち 山本周五郎名品館IV

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    「山本周五郎名品館Ⅳ 将監さまの細みち」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。相変わらずのクオリティ。
    この1冊で好きなのは「ひとごろし」。臆病で弱虫な侍が、剣の達人に向かってどう立ち向かうか、という一編ですが、なんとこれはユーモア小説です。クスッと笑える、エバーグリーンなユーモア小説なんだけど、その奥にちょっとぞっとするような人間観というか世界観があって、さすが。
    実はこれ、臆病者=松田優作、剣の達人=丹波哲郎という魅力的なキャスティングで映画にもなっていて、これが実はまだ未見なので先々の楽しみ。

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    2019年03月23日
  • 裏の木戸はあいている 山本周五郎名品館II

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    「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。
    相変わらずのクオリティ。
    「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
    三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
    「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、

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    2019年03月23日
  • 周五郎少年文庫 木乃伊屋敷の秘密―怪奇小説集―(新潮文庫)

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    シャーロック・ホームズが来日して国際的事件を解決するストーリーは面白い。パロディと言おうか背景設定にニヤリとしてしまう仕掛けも楽しい。
    全巻シャーロックかと思ったら、伝奇・怪奇もののオンパレード。少年文庫シリーズとして刊行されるそうなので楽しみだ。

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    2019年02月03日
  • 青べか物語

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    読み始めてすぐに、浦粕が浦安、徳行が行徳だとピンときた。
    そう思うと、よりいっそう面白かった。
    田舎の庶民てこんなだったんだろうなあと身近に感じて楽しい。

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    2018年12月25日
  • 赤ひげ診療譚

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    山本周五郎、円熟の娯楽作。ミステリー仕立ての各編も読ませるが、通して読むと保本登の成長譚としても楽しめる。赤ひげが随所に見せる医術観は、異常とも言える領域に到達しつつある現代医学に警鐘を鳴らしているようだ。

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    2018年12月21日
  • おたふく 山本周五郎名品館I

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    山本周五郎の名作短編9篇が、沢木耕太郎によって選ばれている。江戸期の武家や商人達とその妻や女性が温かい人情を示す。短編の中にその情を浮き立たせてくれる。昔の人はこんなに情が深かったのか、と半分疑いながらも楽しく読める。でも、人情は貧しいところに集まるのか?衣食足りて礼節を知る、という言葉もあるが、人情とは、礼節と次元の異なるものなのだろう。

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    2018年12月09日
  • 朝顔草紙

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    著者が選じた自身全集に選ばれなかった戦前の作品から
    解説者が選んだ選集
    おおかたは時代劇で
    昭和23(1948)年に同時代を描いた
    現代劇の一編『うぐいす』も
    舞台背景が異なるだけの
    今となっては同じく昔の時代劇であることがよくわかる
    時代劇としてもちろん出来不出来あるものの
    さすがに選集だけあっていずれも趣き異なる好短編
    一方『青べかを買う』『お繁』『秋風の記』の3編は
    太宰治作品を思わせるような前期昭和な「時代小説」で
    同時代の同じ手になる「時代劇」と「時代小説」の
    在り様違いが興味深い

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    2018年11月13日
  • 樅ノ木は残った(下)

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    山本周五郎の代表作なる大作。
    お家を守るためとはいえ、本当に大変な忍従をしいられ、現代人には理解できないものがあった。
    クライマックスは手に汗握る緊迫感があり、一気に読み終わった。
    結果はあのようになったが甲斐はいったい耐え忍んで何を目指していたのか?耐える現状維持は自分が死んだ時点で終わりを迎えるのに、次々と周りの人間が死ぬ状況で積極的な行動を起こさなかったことに疑問と不満が残った。

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    2018年11月11日
  • 樅ノ木は残った(上)

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    骨太な構成と緻密な心情描写で、とても面白く読めました。
    主人公として描かれている原田甲斐の武士道的たたずまいを見ていると、人の上に立つものとしての責任と態度を訴えているようにも思われます。
    実際に書かれた時代と現代を単純に重ねることはできませんが、ふと、現在の世の中のリーダーの姿勢を顧みてしまいます。

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    2018年10月13日
  • 小説 日本婦道記

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    女性たちを中心に描かれた短編集。
    現代とは全く違う生き方しか選べない女性たちが、その環境の中で精いっぱい魅せてくれる生き様が本当に素晴らしい。誰かのために、誰かを思い、誰かを支えて、様々な女性たちが自分の人生さえも犠牲にする。どの物語にも自己犠牲がありながら、その生き様を自ら選んだ女性たちの芯が通っていて強い。
    日本女性の奥深さを感じて、涙なしには読めない作品だった。この時代の女性だけが持つ覚悟。それは決して現代人には感じることが出来ないもの。
    男女平等が叫ばれる今の時代に到底そぐわない作品だと思う一方、別にこういう生き方があっても良いんじゃないかと思う。とにかくどの女性も、覚悟を抱いて自分の

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    2018年09月22日
  • 赤ひげ診療譚

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    黒澤明の映画をはじめ何度もテレビドラマになった「赤ひげ」。江戸の貧しい人たちのために医療を捧げる強面の医者、新出去定(にいで・きよじょう)を中心とした小石川療養所の物語だ。長崎留学から戻ったばかりの若き医者、保本登が、去定先生(赤ひげ先生)を見ながら医者の仕事に目覚め成長していく。当初は医師としての出世を目指し貧しく忙しい診療所を嫌っていたが、次第に患者の心の声を聞くようになっていくのが心地よい。

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    2018年08月23日
  • 戦国武士道物語 死處

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    77年ぶりに発見された未発表作(表題)を巻末に、その10ヶ月後に発表された同音異曲「城を守る者」を冒頭に、その他「石ころ」「夏草戦記」等、全て第二次世界大戦の戦中に発表された「戦国武士道物語」8篇を収める。山本周五郎の戦記ものは、もしかしたら初めて読んだ気がする。時はまだ真珠湾攻撃の勢いを駆って、世の中の戦記ものは信長、秀吉、家康を始めとして有名な英雄を主人公にした物語が多かった頃。しかし、此処に綴られる人物たちは、その下で働いた無名の者たちばかりである。

    「どれほど多くのもののふが夏草の下にうもれたことだろう。その人々は名も遺らず、伝記も伝わらない、かつてあったかたちはあとかたもなく消えて

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    2018年08月08日
  • 完全版 日本婦道記(上)

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    良妻賢母、夫唱婦随などという古い言葉が自ずと浮かんでくる短編集。主人公は女性の鑑とも呼ぶべき人々ばかりで説教臭さも感じるが、時代小説の都合良さがよく出ている王道的作品。

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    2018年08月05日
  • 戦国武士道物語 死處

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    戦国時代における日本人の死生観が感じられる短編集。
    政治家やらが「命懸けで…」、「~生命を賭けて」というが、なんと浅薄なことか。
    「武士道」を大上段に構えてモノ言う奴は俺は嫌いだ。

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    2018年08月05日
  • ながい坂(下)

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    断絶した名家三浦の姓を継ぎ、三浦主水正と名前を変えた小三郎。
    藩内で進められる野党による政権掌握の動きに順風満帆な青年期から一変して命を狙われ身を隠すことに。主水正は無事政権を藩主の元に戻し、 正当な政治に戻すことができるのであろうか、、、

    最後まで目が離せない展開!!この一言に尽きる。

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    2018年07月08日
  • ながい坂(上)

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    身分の低い家に生まれた阿部小三郎はある日今まで通行に使用していた橋が上士により破壊されてしまった姿を目にする。それでも何も言わず何も無かったかのようにそこを迂回する父の姿に成り上がりに心を燃やすのであった。。。

    時代小説でありながら現代にも通ずるものを感じる作品でした。
    一度読み始めたらなかなか読むことを止めることができず、一気に読み通してしまいました。

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    2018年07月08日
  • 赤ひげ診療譚

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    赤ひげが理想化され過ぎているが・・・
    沖縄にもゴロゴロいる投薬オンリーの藪医者の方々に是非読んで頂きたいものです。

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    2018年06月30日