山本周五郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ<上中下3巻を通してのレビュー>
仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申し付けられる。
明くる夜、藩士四名が「上位討ち」を口にする者たちによって惨殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。
その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。
山本周五郎氏の作品は初めてなのです。
「伊達騒動」をあまりよく知らないのですが、原田甲斐をこの観点から描く作品の新鮮さが感じられました。
幕府の大藩潰しを背景に様々な密約が立ち込めて諸大名が苦し -
Posted by ブクログ
「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)
山本周五郎の短編集。
相変わらずのクオリティ。
「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、 -
Posted by ブクログ
女性たちを中心に描かれた短編集。
現代とは全く違う生き方しか選べない女性たちが、その環境の中で精いっぱい魅せてくれる生き様が本当に素晴らしい。誰かのために、誰かを思い、誰かを支えて、様々な女性たちが自分の人生さえも犠牲にする。どの物語にも自己犠牲がありながら、その生き様を自ら選んだ女性たちの芯が通っていて強い。
日本女性の奥深さを感じて、涙なしには読めない作品だった。この時代の女性だけが持つ覚悟。それは決して現代人には感じることが出来ないもの。
男女平等が叫ばれる今の時代に到底そぐわない作品だと思う一方、別にこういう生き方があっても良いんじゃないかと思う。とにかくどの女性も、覚悟を抱いて自分の -
Posted by ブクログ
77年ぶりに発見された未発表作(表題)を巻末に、その10ヶ月後に発表された同音異曲「城を守る者」を冒頭に、その他「石ころ」「夏草戦記」等、全て第二次世界大戦の戦中に発表された「戦国武士道物語」8篇を収める。山本周五郎の戦記ものは、もしかしたら初めて読んだ気がする。時はまだ真珠湾攻撃の勢いを駆って、世の中の戦記ものは信長、秀吉、家康を始めとして有名な英雄を主人公にした物語が多かった頃。しかし、此処に綴られる人物たちは、その下で働いた無名の者たちばかりである。
「どれほど多くのもののふが夏草の下にうもれたことだろう。その人々は名も遺らず、伝記も伝わらない、かつてあったかたちはあとかたもなく消えて