山本周五郎のレビュー一覧
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これはなかなか味わい深い物語である。
しかし、著者の他の作品と同様な「小説」を期待すると肩すかしを食らうかもしれない。
大正末期~昭和初期が時代背景と思われるが浦安近辺の漁師町に数年滞在した「私」の日記のような物語で、当初その「私」は当然、山本周五郎その人であろうと読み進めるのだが、そうではないらしい事が少しずつわかってくる。
この変の微妙な読者の心理変化が独特な感覚を味あわせてくれる。
昭和初期なんて、もちろん私自身は知らない。
しかし、その頃の郷愁やノスタルジーはなんとなくわかる。
今、三丁目のなんとかとか昭和三十年代がもてはやされているけど、いつの時代でも昔を懐かしむ事は繰り返されていたんじゃないだろうか。
この「青ベか物語」も、「私」が感じた当時の町の住人たちの生活ぶりを書き綴ることによって、読者それぞれが持つ郷愁を味あわせてくれるという独自の小説に仕立てられている。
ちょっと難しいのですが、私のような年寄りには凄く楽しめる本でした。 -
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ちょっと前に豊川悦司が主演する映画の原作本「犯人に告ぐ」と「サウスバウンド」を読んだおかげで、ちょいと調べていたら、またまた映画「椿三十郎」に出演するという。
でこの映画、黒澤監督と三船の名コンビで作られた名作「椿三十郎」の焼き直しというではないか。
ならば原作も読んでみたいという事で探したが、山本周五郎著に「椿三十郎」なんて本はありません。
原作は、この「日日平安」(にちにちへいあんと読む)という事でした。
また、原作に「椿三十郎」という侍も出てきません。(まあ、モデルになっている浪人は同じ人物ですが)
さて、この本、短編集で11作品が含まれています。
私は、上下に分かれるぐらいの長編が好きで、短編集はあまり好きではありませんが、さすが山本周五郎、どれもとても人情味溢れる物語で、とても面白く読めました。
特に切腹を命じられ、いざという時に号泣きした侍の話『城中の霜』や、バカ殿のお話(ごめん、題名忘れた)など、ジーンと来るものがあります。
山本周五郎の本は、高校の時、担任だった磯部先生(あの野球の監督)から「さぶ」を授業で取り上げられて(確か倫理の時間)読んだのが始まりで、そのころは別に面白くは感じませんでしたが、歳を重ねるにつれ、とても好きな作家ではあります。
こりゃ、山本周五郎の作品も読んでおかにゃならんな。
・・・という事ではあったんですが、今読んでるのは山本周五郎賞を受賞した「明日の記憶」であります。
流石に山本周五郎賞、これもとても面白い本です。って、これも映画になってるんですね。読み終わったら、またその時。 -
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伊達騒動を描いたもの。
この小説の主人公原田甲斐が逆臣であったという通説とは異なり、伊達家を守るために真意を隠し、友や家臣、自身の命、そして家までも賭して伊達家を守ったというプロット。
最後の200ページのクライマックスに向かう節は、息を飲む展開で一気に読んだが、結末は、現代的感性からすると「行き過ぎ」の感を持ったのが正直なところ。
しかし、「史実」の裏側にこのような「真実」があったとすれば、タイトルともなった樅の木に重ね合わせられたロマンを十分に感じられる。
武士社会の主役の男たちの周りに描かれる女たちが、その儚さに彩りを添えている。
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2018年の春くらいから、気分的には1年半くらい続いていた仕事上の繁忙期が終わりました。
虚脱。そして、けっこう嬉しいです。
読んだ本のメモも長らく途絶えていました。そもそも本を読むこともかなり減っていました。
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「赤ひげ診療譚」山本周五郎 1958年 新潮文庫。
2018年の12月頃に仕事の都合で再読。
大昔から思っていたのですが、山本周五郎というと人情べたべたな小説家だと思われているかもしれませんが、
きちんと読んでみると時折実に胃液が逆流するほど残酷で素晴らしかったりします。
でも、いまどきそもそも山本周五郎を知らない人も増えていることと思いますが。ちょっともったいない。
ただ、好みもありますが、横山秀夫さんではないけれど、やはり大まかは短編の方が鋭い。
長編になると、甘さというか、センチメントが隠しきれなくなる傾向もあります。
ちなみに「赤ひげ診療譚」は1965年に黒澤明&三船敏郎で映画化されていて、国際的な賞も取っています。
何より山本周五郎が映画を見て「原作より面白い」と言ったという言い伝え?があるそうです。
まあ、マスコミ向けの気持ちもあったのかも知れませんが、僕は正直、映画「赤ひげ」はあんまり良いとは思えないんですよね。
我慢して見れば、さすがだな、すごいな、という箇所はいくつもあるのですが、ちょっとこのあたりから黒澤明さんの監督作品は、急速に「名作っぽい感じだけど、面白くない」という芸風に高まって?行きます。映画史的には、黒澤が三船を撮った最後の作品、というだけでも何かしらかの大きな意義があると思いますが。 -
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ネタバレ<上中下3巻を通してのレビュー>
仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申し付けられる。
明くる夜、藩士四名が「上位討ち」を口にする者たちによって惨殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。
その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。
山本周五郎氏の作品は初めてなのです。
「伊達騒動」をあまりよく知らないのですが、原田甲斐をこの観点から描く作品の新鮮さが感じられました。
幕府の大藩潰しを背景に様々な密約が立ち込めて諸大名が苦しむ中、幕府老中の権力の凄まじさと、己の欲に貪欲な人々の生き様、権力に踊らされている人々の哀れさが伝わってきました。
この作品では原田甲斐が、隠密に伊達安芸派に所属していながら相手方の不正を暴く立場になっていますが、一人の力でどこまで成しえるかが疑問です。
ただし、この作品での原田甲斐という人物には脱帽します。 -
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「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)
山本周五郎の短編集。
相変わらずのクオリティ。
「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、最近は現代に置き換えてマンガにもなっているそう。マンガをちょっと読んでみたい気もします。