山本周五郎のレビュー一覧

  • さぶ

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    冒頭からさぶの世界に引き込まれた。巧みな情景描写で、読み易い。
    人は一人では生きられない、どれだけ成果をあげて注目されている人でも、その人一人ではその成果をあげることはできない。日の当たるところだけが全てというわけではないということを教えてくれる。
    人それぞれの生き方、周りの人への感謝を考えさせる物語。

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    2013年06月20日
  • 季節のない街

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    貧民街に生きる人々を描いた短編集です。

    -そこではいつもぎりぎりの生活に追われているために、虚飾で人の眼をくらましたり自分を偽ったりする暇も金もなく、ありのままの自分をさらけだすしかない。-

    現実の世界に「普通の」人間なんていないように、この物語に出てくる人物一人一人もまた個性的。
    個性的なんだけど、読み進めていくうちに、出てくる人物一人一人に愛着を持たされてしまう。「自分をさらけだすしかない」この街の人々に憧れているのかもしれない。

    苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である

    「よしよし、眠れるうちに眠っておけ」とそれは云っているようであった、「明日はまた踏んだり蹴ったりされ、くやし泣きをしなくちゃあならないんだからな」

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    2013年08月01日
  • 松風の門

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    どの小品も良かったが、昭和20年代後半以降の作品は上手いと感じる。おすすめの一冊。「失恋第五番」は全く作風のことなったもので驚いた。13.6.9

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    2013年06月09日
  • 松風の門

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    「鼓くらべ」を中学の宿題冊子の問題で読んで気に入ったので、買って全文読むことにしました!!
    お留伊が老人に教えられたことは音楽だけに限らない芸術すべてにも言えることだとも思います。
    最後に亡くなった老人の横でお留伊が鼓を打ちはじめる場面に感動しました。

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    2013年05月19日
  • 五瓣の椿

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    ネタバレ

    NHKのドラマを観て、父の本棚から拝借して再読し ました。 昭和39年9月25日発行

    物語は天保五年、亀戸にあるむさし屋の寮が焼け落ち たところから始まります。 焼け跡から見つかった性別すら判別できない遺体は3 人。 そこで命を落としたとされるむさし屋の娘おしのが、 父を裏切り続けた母の不貞の相手たちの胸に銀の釵を 突き刺し、赤い山椿の花びらを残します。

    序盤では、病の床に伏す父の命の炎がいよいよ消えか けている時に、何とか母を父の許へ!と奔走するおし のの焦燥感に引き込まれ、読者はこれから始まるおし のの復讐劇の動機を共有することになります。 しかし、この物語は決して復讐劇ではありません。

    「この世には御定法では罰することのできない罪があ る、ということでございます。」 おしのが与力に宛てた文です。 山本周五郎の本は他にも沢山読みましたが、この本が 異色のはこの一文が軸となっているからでしょうか。

    見つからなければ、捕まらなければ、法に触れなけれ ば、何をしてもいい? そんなわけありません。 ひとのみちにあらず、と書いて不倫。 かつて、これを文化だとかほざいた阿呆がいました。 法律では裁けない罪を目の当たりにした時、人はどう したら良いか、許すことの苦しみと許さないことの苦 しみについて、深く考えさせられる1冊です。

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    2013年05月11日
  • ちいさこべえ 1

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    面白かった!
    頑固な二人の波乱の日々に期待が高まる。
    そしてとても魅力的な画!
    構図やコマ割りがさすがデザイナー。
    そして最高にフェティッシュな女の子へのこだわり。
    話もめちゃくちゃおもしろいのに、画だけでも読めてしまうクオリティ!
    必読です。

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    2013年05月02日
  • ちいさこべえ 1

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    火事により実家の工務店が焼け
    両親を亡くした若棟梁の茂次は、
    父の言葉
    「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と意地だぜ」を胸に再建を誓い、
    会社を継ぐことに。

    そんな時
    お手伝いのりつや
    行き場のない子供たちまでが
    転がり込んできて…。

    山本周五郎の原作を
    ロックする漫画家・望月ミネタロウが斬新にリメイクした
    鬼才2年半ぶりの待望の最新作。



    いやぁ〜
    相変わらずやってくれるわ(笑)

    大好きな漫画家望月ミネタロウが描く今度の主人公は
    まるでホームレスか
    70年代ヒッピーのような
    長髪に髭もじゃの
    怪しい26歳の若棟梁。

    本が好きで世界中を旅してきた自由人なんやけど
    頑固で意地っ張りで
    あくまでも自分の力だけで
    工務店を立て直そうと奮闘する様が
    ホンマカッコいいんです。


    そしてそんな崖っぷちの工務店に
    家政婦として住み込むことになるのは
    病弱な母を養うため
    キャバクラで働いていた20歳の女性りつ。

    これまた頑固な性格で(笑)
    怒ると目尻が上がって
    口がへの字になる
    まるで朝ドラのヒロインのような
    りつのキャラが
    ホンマ魅力的なのです。


    やむを得ず引き受けることになった
    施設の子供たちや、
    (「アダムスファミリー」時代のクリスティーナ・リッチによく似たゴスロリ少女が、いい味出してて爆笑やし)

    りつの恋のライバルとなるであろう
    お色気ムンムンな福田ゆうこなど
    脇役たちもキャラが立ちまくってて
    終始ニヤケっぱなし(笑)


    それにしても
    ブランクを感じさせない
    望月氏の
    ポテンシャルの高さよ。


    ピンナップにして
    飾っておきたいほど
    オシャレでセンスのいい
    ワンカットワンカットのコマ割り。

    少女性を残した
    相変わらずキュートでガーリーな
    ヒロイン像。

    懐かしい自身のヒット作
    「お茶の間」を思わす
    古き良き和の世界観。


    今作は今の日本人がとうに失くした
    下町の義理人情と
    職人という男気あふれる
    大工の世界を描くということだけど、
    1巻を読んで不安も吹き飛びましたよ(笑)


    お得意のスタイリッシュなポップ感覚は
    より研ぎ澄まされ、

    お洒落さと
    古き良き昭和の香りが見事に融合していて
    コレは早くも
    傑作の予感がプンプンします!

    2
    2013年04月21日
  • 虚空遍歴(下)

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    ネタバレ

    主人公中藤冲也は、結局新しい浄瑠璃を仕上げる、という大望を果たせず、気力を使い切り、世を去る。

    冲也は失敗したのか、その人生は無意味だったのか、
    果たして、世に名を残すことが人生の意味なのか。
    そうではない。冲也は生きることを全うした。
    そして、その価値は誰にも分からない。自分にしか分からない。
    作中では、それをおけいというもう一人の自分の目線から語っている。
    人生とはそういうもの。

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    2013年04月15日
  • 虚空遍歴(上)

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    これもデミアン、海辺のカフカのようだ。

    主人公の沖也、運命で結びつけられ、男女の仲というよりも
    一体の片割れという存在であるおけい。
    その共鳴を通じて、自分を探す旅を歩く。

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    2013年04月15日
  • ながい坂(下)

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    今まで山本周五郎は読んだことがなかったが、本書を読んで、長く読まれてきた理由がわかった気がする。読ませるストーリーなのはもちろんのこと、物語を通して「人生」を書いている。少し物足りなかった点としては、主水正と両親、特に父との関係についてだ。最後の「自分は父親違う」と思いつつ父親と同じ行動をとってしまっているシーンをもう少し掘り下げて書いて欲しかった。
    ただ物足りない点があるとはいっても、それは些細なことにすぎない。折にふれて読み返すことになるであろう、数少ない書の1つになった。

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    2013年03月23日
  • 小説 日本婦道記

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    女性は一読すべきと思います。
    現代では難しいかもしれないけど、日本女性として産まれたなら忘れちゃいけないし、こうありたいと感じさせられる本。

    古臭い、と敬遠する方もいるかもしれませんが私はこの世界観が好きです。

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    2013年01月21日
  • 樅ノ木は残った(上)

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    歴史小説の中でベストです。幕末物や戦国物のような派手さはないですが、ずっしりと武士道の真髄を示してくれます。

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    2013年01月15日
  • おさん

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    「青竹」が唯一、戦中物として含まれていたが、のびのびと周五郎の油の乗り切った短編集だった。結末が予想できず、また余韻を残して終える技法は秀逸。13.1.2

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    2013年01月02日
  • 月の松山

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    私の現代小説の端緒となった作品。
    この時から男の生き描いた作品が好きだったのです。私の読書の原点とも言うべき作品。

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    2012年12月27日
  • 五瓣の椿

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    何が正しいのか、何が正しくないのかを考えさせられる作品。
    面白くて切ない、優しいけれど辛い、そんのお話でした。

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    2012年12月09日
  • さぶ

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    地球温暖化の影響かどうかわからないが、今年2012年の秋は11月になってモクセイの香りをかいだ。モクセイの香る季節になると、この本を思い出す。
    「お前はどうだ?」ふた呼吸ほどして岡安は静かにきいた「風の肌触りに秋を感じたり、送られてる花のにおいを楽しんだりしたことがあるか…」…。栄二を慰めるように話をした後、岡安はこう締めくくった。「お前は気がつかなくとも、このさわやかな風にはモクセイの香が匂って居る、心を沈めて息を吸ってみると、お前にもその花の香りが匂うだろう、心を沈めて自分の運不運をよく考えるんだな。…さぶやおすえという娘のいることを忘れるんじゃないぞ。」
    この本を手にしてから30年以上の年が経つが、今でもこの季節になり、秋風に金モクセイの香りをかぐと、また1年が経ったことに思い至る。そして、私の見過ごしてきた多くの優しさに取り囲まれている自分にふと立ち戻るものである。ああ、みんな元気にしてるだろうか。。・°°・(>_<)・°°・。

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    2012年11月08日
  • 日本残酷物語 1

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    宮本常一の民俗史作品を読んでから、庶民の文化史に関する本を読んでみようと思って探してたら行き当たったのがこのシリーズ。あとがきが大月隆寛、昔、ナンシー関と「クレア」で対談の連載をしていた民俗学者だ。
    本作は、シリーズのまとめ的な作品集。だから、いろんな時代、階層、職種にまたがった包括的な「圧制と生活苦にあえぐ庶民」の姿を描いている。
    日本の民衆の、なんと貧しいこと・・・貧しいのは普通のことだったのだが、その貧しさもいろいろなのだが、食うためにはそのとき、その場で必要なことはなんでもやる、生き延びるために耐え忍んだという表現がふさわしい。ときには強奪、子殺し、堕胎、捨て子、口減らしのための売り子まで、とにかく生き延びることが最優先だった。自由も利かない、選択肢なんてないような生活だ。これがたった60年位前までの日本人の大多数だった。

    いま読んでる途中だが、面白そうな章から読んでいる。女性に関する章と、子殺しに関する章を読んだ。
    明治から戦後すぐくらいまでの生活の話だけれど、まあ、昔の女はよく働いたこと・・・身分制度でがんじがらめになってたのは男も女も同じだが、女の場合は男よりもさらに格が下だったので、庶民の生活はほとんど奴隷と同じである。
    明治の機織の女工、紡績工場の女工(これはシリーズのほかの本に詳しい)、炭鉱、百姓、芸妓と遊女・・・小さいころから女の生きる先は限られていて、それこそ物心ついてから死ぬまで一生懸命働いた。

    百姓のばあさんの回顧などは宮本常一の書いたものだと思うが(本には書き手の名前が書いてない)、苦労をいたわるような視線はとても優しい。百姓のばあさんの記述に、「人の情で4人の子を育てた。人の悪口はいわない、悪さをすれば情をかけてもらえない」というくだりがあって、尤もなことだと思った(P402)。
    自分の作ったものに余剰があるとき、いや余剰が無くても、困った人があったらできる限りのことはする、そして人の悪口を言わず、何事にも感謝する。そうしないといざとなったときに誰も助けてくれないのだ。現実的な処世の術である。そのためには、がんばって働かねばならない。人の何倍も一生懸命やるのだ。
    また、このおばあさんは「自然が助けてくれた」とも言う。戦前戦後の食糧難も、森に入って栗を拾って草の根を掘って乗り切った苦労。自然に対する謙虚な感謝の気持ちが、美しいなと思った。

    こういう日本の庶民の姿勢は、とにかく、奢ることなく、謙虚に、人を助けつつ自分が困ったときには助けてもらう、そういう助け合いの精神が根底にある。人の子供でも、縁があったら助けてあげるのだ。自然にある神を敬い、謙虚に生きる。
    伝えるべきは、日本文化のなかでは否定されてきた泥くさい精神ではあるが、自然を拝み、苦しさに耐えて黙々、粛々と自分のできることをやっていく民衆の美しさではないかと改めて思うのだ。
    こう書くと、美化しているような感じもするけれど、決してそうではなくて、日本人が誇りにするべきはこういう精神だと思う。残念ながら、こんな共助の精神は、ほぼ死滅状態なんだろうけれど・・・

    また、明治までずっと子殺しや堕胎がとても一般的だったことも驚いた。でも、日本ではいまも子供は親の所有物のように考えられているから、昔の延長線上にあるのかなと思うと納得である。間引きは、自分で産んだ子を殺したり産婆が殺したり、いろいろだったようだが、4人も子供を産んだ自分としては、親はつらかっただろうなと思う。10ヶ月もお腹で育て、産む時だって死と隣りあわせで産むのに、生まれたらすぐに息の根を止めるんだから・・・考えると暗黒の時代のように思えるが、これがたった百年前のことなんだから・・・日本のどこが近代国家??という感じである。

    ここまでひどい貧困状態が書かれている本なのだが、唯一の希望があるとすれば、人間、相当の限界でも生きていけるのかな、と思えることだ。将来、食べ物にも事欠くような状態になったらどうするか、サバイバルについて考えることができる。いいのか悪いのかわからんが。
    あとは、国なんて頼りにしちゃいけないな、ってこと。何かあったら、普通の人は、徹底的に骨までしゃぶられます。西洋的な国民国家の概念は、たぶん日本は外面だけで、中身は違うと思う。
    昨年からの原発関係の対応を見るだけでも、私はこの点だけは確信している。

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    2012年11月08日
  • 日日平安

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    短編集。
    どの作品も面白いが、タイトルにもなっている「日日平安(にちにちへいあん)」という作品が非常に好きで、何度も読んでいる。
    読み終えると、さわやかで清々しい気分になる。

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    2012年10月18日
  • 栄花物語

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    賄賂政治で悪名高い田沼意次を、幕府の経済基盤の再構築を目指す政治家ととして描いています。旧態然とした武家社会にこだわる松平定信と新しい時代に即した理想を掲げる意次の対立は、現代の政治に似たところがあって興味深いです。

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    2012年10月04日
  • 虚空遍歴(下)

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    正直、最後まで読み切るのに辛くって息苦しい作品でした。それがこの作品の完成度の高さを物語っています。 「人間の価値はなにを為したかではなく、何を為そうとしたかだ」 この作品のテーマそして内容を凝縮した言葉であります。 浄瑠璃の世界を語っていますがが、現代の私たちにも当てはまる普遍的な内容だと思います。 司馬遼太郎の作品に出てくる実在し何かを成し遂げた立志伝中の人物ではなく、何かを成し遂げようと必死にもがきながら生きた人物を描いた本作は“人生なにもかも上手く行くものじゃない”と言うことを知っている大半の読者の心をつかむのは容易であるはずである。人生信念を持って生きても上手くいくとは限りません。 ただ2人の女性から深く愛された主人公は幸せだなと一男性読者として羨ましい気持ちは強く残りました。 とりわけおけいって本当に幸せだったのかなと少し気の毒な気もしたのですがそのあたり女性読者の意見を聞いてみたいと思います。 私的には沖也の理解者としては妻のお京よりもおけいの方が優れていたように思います。 おけいの独白を通して読者である私たちはより正確に沖也の人としての“弱さ”、そして“苦悩”を知ります。 だから沖也の人生に悔いはなかったでしょう、それはおけいという存在がとてつもなく大きかったからだと思います。 前述した司馬作品のように読者に夢を与えてくれる作品ではないかもしれません、しかしながら“人生観”に関しては死と言う最後の儀式も含めてかなり内容濃く語られていていつまでも読者の胸に残る傑作であることは間違いのないところだと思います。 最後に主人公の沖也の浄瑠璃に傾けたすさまじい情熱は大衆文学に傾けた周五郎の情熱を彷彿させるものだったということを書き留めておきたいと思います。

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    2012年10月01日