あらすじ
旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。
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これもデミアン、海辺のカフカのようだ。
主人公の沖也、運命で結びつけられ、男女の仲というよりも
一体の片割れという存在であるおけい。
その共鳴を通じて、自分を探す旅を歩く。
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お客様におすすめされて読んでます。面白いです。
たんなる大衆受けではない上質な浄瑠璃を追究するものの、潔癖な性格が災いしてどんどん居場所をなくしていく冲也に、おけいさんでなくてもひやひやもんだぜ。
これから下巻読みます。ここまで堕ちたからにはカタルシスを期待せずにはおれない
Posted by ブクログ
観客に純粋によいものとして認められるような作品を目指し、
浄瑠璃の曲の節つけに力を注ぐ沖也。
その純粋さゆえに悩みながら坂を転がっていく感じが
なんとも切ない。
作者のまっすぐで「きれいごとを並べた」ような部分が
主人公に投影されていればなんとなくうれしい。
周りにいる人たちは(皆とは言わないけれど)
沖也のことを思って様々な助言や助けをよこしている。
そのやさしさや献身さが案外ぐっとくる。
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印象に残った台詞
冲也「若いとき人を殺し盗みをはたらき、悪事の限りをつくしながら、のちに名僧聖人と呼ばれるようになった人の例もある。どうやら人間は死ぬまで見ていないとわからないらしいからな」
洒竹「世間にゃあ表と裏がある、どんなにきれい事にみえる物だって、裏を返せばいやらしい仕掛のないもの稀だ、それが世間ていうもんだし、その世間で生きてゆく以上、眼をつぶるものには眼をつぶるくらいの、おとなの肚がなくちゃあならねぇ」
下巻が楽しみだ。