山本周五郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今回、再読して逆に感じたのは、おせんが決して不幸な境遇だったとは思えなかったのです。 逆にこちらは少数意見かもしれませんね、とりわけ女性読者からはお怒りを買うかもしれません。 私は却って針仲間のおもんの身を持ち崩して行く姿がおせんよりも不幸なように感じました。 というのは、庄吉はこの物語の中ではどちらかと言えば悪役めいた役割を演じてますが、物語の初めの告白から江戸に戻ってくるまで、少なくともおせんに対する愛情は尋常なものではなかったはずだと私は確信しています。
そして男は結構疑い深いというか、本作にあるシチュエーションからして誤解が生じて当然だと思います。 まあそのあたり、作者の力量の確かさでしょうね。 いずれにしても、主人公のおせん、最後にはつつましくかつたくましく生きることを貫きます。 つつましさが“八百屋”を営むことによって描かれているところが作者の優しさなんでしょうね。 たくましさの源は死んだ幸太の愛情だけでなく、冷めきってますが過去の庄吉へのいちずな思いがそうさせたんだなと私は捉えています。 人を愛することって難しいけど素晴らしいことです。
もう一遍の「むかしも今も」 物語に“つき当たり”という言葉が出てきて重要な役割を演じています。 これは直吉とまきとが幼いころに遊んだ場所の名前なのです。 いわば2人の長年の愛情が築き上げられた場所として描かれています。 とりわけ直吉のやさしさは女性読者から圧倒的な支持を受けると思います。 そしてその優しさの根底は誠実さと義理堅さなのですね。 まきが失明した後も献身的に支える直吉の姿が印象的です。 これはなかなかできませんよ。 ラストが少しはっきりせずに読者に委ねている部分のあるのが作者の心遣いだと受けとめています。 -
Posted by ブクログ
「日日平安」、「さぶ」、「赤ひげ診療譚」、「樅ノ木は残った」と読み進めた、山本周五郎作品の固め読み。まだまだ作品はたくさんあるのだけれど、ひとまず、この「おごそかな渇き」でいったん区切りをつける。どの作品も巧みな構成と人物描写、人の繋がりや心の機微をとらえ、魅力的な作品ばかりだった。これまでに読んだどの小説群よりも魅力的な作品たちだったと思う「古典」。他の作品とは明らかに視点の異なる絶筆となった「おごそかな渇き」。これの完成した作品を読んでみたかった。山本周五郎固め読みの閉めとして、周五郎の言葉集「泣き言はいわない」。これを読んで終了としよう。