山本周五郎のレビュー一覧
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構成が良い。
年代を追って、作者山本周五郎の成長の軌跡が概観できる。
『宗太兄弟の悲劇』から『渡の求婚』までは年代順に時代劇、その後『出来ていた青』『酒・盃・徳利』という初期の異色作が置いてある。型にはまった人間描写しか出来ていなかった初期から、徐々にストーリーにユーモアが加わってきて、『渡の求婚』に到って円熟を得る、という具合である。初期の二作は、読むに値するかどうか疑問なくらいの出来だが、「名人にしてこの時代あり」という興味で読める。
この人の場合は、人間としての成長と、小説の円熟とが、ピタリと一致している気がする。差別意識や原理主義が減退するに従い、小説が面白くなる。芸術家の模範と言うべき人だろう。 -
Posted by ブクログ
山本周五郎の書に「小説 日本婦道記」があります。
その中に「風鈴」という作品があります。
物語はこうです。
主人公・弥生は夫、三右衛門と一人の男の子の三人で
つつましやかに暮らしております。
わずか十五石の下級武士である。
一片の塩魚を買うにも、財布と相談しなければならない。
そんなある日、良家に嫁いだ二人の妹が
実家である姉・弥生の家を訪れる。
相変わらず質素な生活を送っている姉に、
「お姉さまこんなにして一生を終っていいのでしょうか、
いつまでもはてしのない縫い張りお炊事や、煩わしい家事に追われとおして、
これで生き甲斐があるのでしょうか」
二人の妹は母が早死にしたため、彼女の手一つで -
Posted by ブクログ
江戸時代が舞台の原作を、上手に現代的要素を取りこみながら翻案している。
工務店経営や信用金庫への融資申し込みについては詳しくないが、現代でも通るのかなぁと思った。
キャラクターが魅力的。教養がほとばしり、世界旅行中には冒険もし、現在は従業員や子供達のために経営や施工に奮闘する若棟梁の生き方に好感が持てる。
あまり感情の起伏が表に出ないように見える「大(マサル)」は、若棟梁の大事なパートナーで理解者だと思う。
子供達の個性も面白い。
マイペースかつユニークな福田父。原作ではここまで個性的ではなかったが、だから周りの人は彼の言動をあのように受け取ったのだろうか。
個人的には、若棟梁と