山本周五郎のレビュー一覧
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中学生の時に夏休みの課題図書として選んだ作品。
当時は宿題の提出などに追われて、じっくり読めなかったので数年経って再読しました。
男前でしっかりした栄二と愚図でのろまなさぶ。性格は正反対だけれどお互いがお互いを必要として、支え合って生きていく姿は素敵だと思いました。人足場に入った栄二は、面会に来るさぶを何度も拒むけれども、さぶはそれでも栄二に差し入れを持って会いにくる。そんなさぶの友達思いで純粋な姿も素敵です。さぶの優しさや人足場の仲間たちの栄二に対する優しさは「無償の愛」だと感じました。
また、人生において大切だなと感じる言葉とか、人と関わる上で大事なこととか、作品が描かれたのは昭和で舞台 -
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何度読んでもそのたびに、江戸時代の情景が光や影の様に眼前に広がり、想いを異なった形で伝えてくる。
秀逸と思う。
一時、江戸時代の鎖国が今の閉鎖的な日本人の原型を作ったのかなと感じ、嫌になった時間が有った。
しかし、歳を重ねて人生を歩んでくると、嫌でも「自分に流れて居る血」は日本人そのものだし、自然の風景は人口の手になるモノ以外は縄文弥生時代からの山地。
周五郎がが描く世界は ほんとにちっぽけ・・今のIC,ネット社会が生んだ利器の社会と比べるととるに足らない空間かもしれない。でも人間が持つ力は大きく変わっていないことに気づかされる。
執念・怨嗟・憎悪・仁徳・孝養・・・ひとかけらの温もりが人の -
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なんだかんだ言いながら土瓶さんとみんみんが薦めてくる本は全部読んでるひまわりめろんです(仲良しか!)
そしてこの『さぶ』は土瓶さんとみんみんが共に薦めてくれた本、略して「土みん本」です
ですがこの『さぶ』を手に取ったのはなにも「土みん本」だからというだけではありません
そうです、近頃この『さぶ』を手に取る人の10人中15人は「山本周五郎賞って良く聞くし、確かに受賞作は秀作揃いだけど、その山本周五郎さんてどんな小説書いてたの?」って理由だと思うんですよね
まぁ読んで見極めてやろうって上から目線ですよね
赤いモビルスーツに乗ってる人の10人中23人は「見せてもらおうか山本周五郎の実力とやらを -
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壮絶な最後でした。上巻冒頭の暗殺以降、置毒やくびじろとの対決などのエピソードはあったものの淡々と歩みを進めていた物語が終盤に一転、怒涛の展開の中で多くの命が散って行きました。そしてフィナーレ、思いもよらない謀略が仕組まれ、本懐は遂げることができたものの待っていたのは悲劇的な結末。国のために侍はここまでしなければならないのか、自身の命や名誉のみならず家族の命や家の歴史までも捧げなければならないのか、凄まじい価値観が描かれていました。選挙の票のためならカルト宗教にも魂を売る、自民党安倍派の国会議員にぜひ読んでいただきたい本でした。船岡は家からそれほどは遠くはないので、そのうち城址公園の樅の木の下で
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去年の夏、沖縄の書店で「山本周五郎賞があるのに山本周五郎の作品が面白くないはずがない。」という文句に惹かれ購入した。なかなか読む気になれず放置していたが、1年越しに私は強く同意したい。
江戸を舞台に、一人前の表具職人を目指す2人の男の子の成長を描いた作品だ。
1人は弱虫で何事にも消極的なさぶ、もう1人は常に勝ち気でやや傲慢さが目立つ英二だ。対照的な2人だが、それが2人の強く結びつけ、不可分の関係であった。
弱気なさぶを強気の英二が支え、共に成長していく王道ストーリーのよう構えてしまうが、実は正反対である。とある事件をきっかけに、英二はドン底まで落ちてしまい、何もかも自暴自棄になってしまう。
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国民的作家山本周五郎の珠玉の短編集。選者はあの沢木耕太郎。これが面白くないはずがない。様々なテーマ、舞台。山修の守備範囲の広さには驚かされる。
直木賞ほか文学賞を全て辞退したという山本周五郎。没後50年が過ぎても今でも多くの作品を簡単に入手することごできる。作品数から言えば司馬遼太郎と並ぶ国民的な作家であろう。
「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「ひとでなし」「若き日の摂津守」
本書は、沢木耕太郎が4巻に9作品ずつ合計で36編の短編小説を選んだもの。さすがにいずれもレベルが高い。映像化するなら「ちいさこべ」が良くまとめられ -
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名人は名人を知る。紀行文、ノンフィクション作家が選ぶ文豪山本周五郎の珠玉の短編小説。
本シリーズはあの沢木耕太郎の選んだ山本周五郎の短編小説。
沢木は全集で全38巻、300編の小説から名作と呼ぶにふさわしい36編を選び4巻の名品館にまとめている。
本書はその第1巻。あだこ、晩秋、おたふく、菊千代抄、その木戸を通って、ちゃん、松の花、おさん、雨上がる。の9編。
半分ぐらいは一度は読んだことのあるものだったが、映画になった雨上がるを除き詳し筋は忘れてしまっていた。今回あらためて読み、新たな発見と感動が多数。
山本周五郎の描く女性。そして貧しくとも懸命に生きる市井の人々。人それぞれの哀しみを