あらすじ
小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋をさぶが泣きながら渡っていた。その後を追い、いたわり慰める栄二。江戸下町の経師屋、芳古堂に住みこむ同い年の職人、男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶの、辛さを噛みしめ、心を分ちあって生きる、純粋でひたむきな愛と行動。やがておとずれる無実の罪という試練に立ち向う中で生れた、ひと筋の真実と友情を通じて、青年の精神史を描く。
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山本周五郎は初読。刺さった。
なんでタイトルが栄二ではないのか、解説を読んで少し納得。鈍臭いさぶではなく、日の当たるところにいた栄二が受難を克服し、人として成長していく物語であるからこそ読み応えがあった。
善良すぎるさぶにもいいことありますように。
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読みたかった本。最初、字ちっちゃい!って思い不安になったけど、すらすらと引き込まれていった。栄二の人間性の変化が様々な辛いことを経た事で起こり、大事なものに気づいていく。自分はなんでもこなせて自信に溢れていたが周りのものの支えがあったからこそ今の自分があることを気付かされ感謝できる人間になっていく。人間は成長によって本当に幸せを感じられる。成長していきたい,
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『樅ノ木は残った』で有名な著者(本名清水三十六)は、ペンネームを尋常西前小学校卒業後に徒弟として住み込んだ木挽町の山本周五郎商店から拝借した。『日本婦道記』が戦中昭和18年上期直木賞に推挙されたが固辞したが、今では自身の名の文学賞があるのは皮肉なものである。ちなみに同賞主催は新潮社、芥川賞直木賞の文藝春秋社のライバル。
さぶと栄二は表具と経師とで有名な芳古堂に住み込む同い年の職人、ひょんなことから出入りのお店から盗人扱いされ親方から暇を出される。得心がいかない栄二は店に酔った勢いで怒鳴り込み捕縛され人足場送りになる。恨みを晴らそうと自棄っぱちになるが、親友のさぶや結婚を誓ったおすえ、さぶが想いを寄せるが、栄二に恋心を抱くおのぶらは、栄二の島帰りを望んでいる。彼らの訪問や心付けも最初のうちは疎ましく思った栄二も、時が立つにつれ心持ちを変え受け入れ、人足場の囚人仲間とも打ち解けるようになる。仲間を大切にする栄二は嵐の夜皆を守って落石の下敷きになり足を骨折し、杖を着く生活を送る。さぶから経師の仕事を始めたことを聞かされ、栄二にも早く人足寄場から出ることをお願いされる。新しく入った囚人二人は役人には袖の下を掴ませ、周りを誘って博打を打ち、栄二を目の敵にし、もっこ仲間の雰囲気を悪くした。とうとうケンカになり二人を半殺しの目にあわせ、奉行所預かりになるが人足寄場の与力や同心の親心もあり、出所することになる。さぶと栄二はは二人で小さな店を借り商売を始める。栄二は、芳古堂や綿文、捕縛した目明しに多少は恨みが残っているものの、前を向いて働く決意を持ち続ける。二人の結末は、おすえとおのぶは?
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人を許すこと、無償で誰かのために何かすることについて考えさせられる。ここ数年、ニュースを聞いては勧善懲悪でない社会にがっかりすることが多かったが、この本を読んで「この世はそんなもんかも」と、いい意味で諦めて少し気楽になれた。
栄ニもかっこいいが、それを支えるさぶ、与平の「譲れる生き方」もすごい。日の当たっている人には必ずその陰の力となっている人の存在があるということ…人の先頭に立つ人は、それを分かっている人だったらいいな。
でもなあ…最後、栄ニ、それも許せちゃうの⁈
と思う私は、残りの人生、その境地に辿り着くまで間に合うだろうか。
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さぶがタイトルなのに
栄二が主役かと思える書き出しだった
読み進むうちに
二人とも厳しい子ども時代を過ごし
丁稚奉公する身
さぶはのろまで仕事の覚えも悪く
皆から蔑まれている
栄二は顔立も良く仕事もできる
二人はいつか一緒に店を持ち
仕事をしようと約束するが
栄二は無実の罪をかけられ
それを晴らそうと世話になった店に
乗り込み暴れたことで
石川島の人足置場に送られること三年
ここでいろんな経験をし
人の様を見 考えことで変わっていく
この間にさぶは 懸命に尋ね歩き
栄二の居場所を突き止め
休みの日には生活用品の差し入れに
来る
時は過ぎ栄二は結婚し
さぶと店を持ちいろんなことがあるが
なんとか希望が持てる状況で終わる
若い頃は真っ直ぐで直上的だが
思索と経験は人を変える
巧みな展開
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同僚から、時代小説を初めて読むならということで、「さぶ」を紹介され読むことにした。時代小説は読んだことがなく、独特な表現等の意味を調べながらではあったので読み終えるまでに少し時間がかかったが、本当に読んで良かったと思うし、読んだことで心が豊かになるというか、他人に優しくなれるというか、独りじゃなくて必ず誰かがあなたを見ていてくれているということを伝えていたのかなと思う。栄二とさぶを中心とした物語のなかで、人生の浮き沈みを克明に表現しており、その物語を自分の人生に照らすと自分の心に何かささる感じがした。名作って素晴らしい。
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中学生の時に夏休みの課題図書として選んだ作品。
当時は宿題の提出などに追われて、じっくり読めなかったので数年経って再読しました。
男前でしっかりした栄二と愚図でのろまなさぶ。性格は正反対だけれどお互いがお互いを必要として、支え合って生きていく姿は素敵だと思いました。人足場に入った栄二は、面会に来るさぶを何度も拒むけれども、さぶはそれでも栄二に差し入れを持って会いにくる。そんなさぶの友達思いで純粋な姿も素敵です。さぶの優しさや人足場の仲間たちの栄二に対する優しさは「無償の愛」だと感じました。
また、人生において大切だなと感じる言葉とか、人と関わる上で大事なこととか、作品が描かれたのは昭和で舞台は江戸だけれど、令和に生きる現代人にもつながるものが多いなと思いました。特に所々にある、おのぶが栄二にかける言葉が私は好きです。おのぶのような強い女性に憧れます。男性に頼らずとも自分の力で生きてゆくのはとてもかっこいい。
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高校の時の課題図書でした。10年近く経って再度読みました。物語序盤の英二の年齢(15歳)と物語終盤の英二の年齢(25歳)のひらきはちょうど私が初めて読んだ年代と今の年代で一致しています。昔読んだ時はは「こうも寄場での経験を経ると感情が変わるものなのか」と少し首をかしげていましたが、今では、命を失うかもしれない状況に一度陥ると、周りで支えてくれる皆に感謝する心が芽生える、という英二の境遇がなんとなく分かります。
分かりやすいハッピーエンドの物語を最近読んでいなかったので良かったです。
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五瓣の椿とこれは好きで何度も読み直しています。えーちゃんかっこいい。若くて青臭いところもまたいい。さぶは真面目で優しくて思いやりが深いところがいい。初読では最後のどんでん返しで驚きと感動を味わえます。ぜひ一度読んでみてください。
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栄二とさぶ:信頼し合いお互いを頼りにする人間関係、栄二とおすえ:好きなあまり栄二に罪を被せそれを一生かけて償おうとした夫婦関係、どちらも素晴らしいと思う。最後はハッピーエンドに終わるから良かった。職人根性、もう一人の自分との対話、濡れぎぬを着せられたときにそれを良い方向に捉える前向きな態度、人足寄せ場は為になった、身に覚えのないことをされたときの対処法、周りの人のことを考えよ、再生、復活、リーダーとフォロワー、問うちから等色々なことを教えられた気がする。
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秀作。
時代物だけど、現代にも通じる人間劇。
出来すぎた人のいいさぶ。こんな人はありえない。少し前の価値観を感じる。多様化する今、若い人が読んでも良いと思うだろうか。
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なんだかんだ言いながら土瓶さんとみんみんが薦めてくる本は全部読んでるひまわりめろんです(仲良しか!)
そしてこの『さぶ』は土瓶さんとみんみんが共に薦めてくれた本、略して「土みん本」です
ですがこの『さぶ』を手に取ったのはなにも「土みん本」だからというだけではありません
そうです、近頃この『さぶ』を手に取る人の10人中15人は「山本周五郎賞って良く聞くし、確かに受賞作は秀作揃いだけど、その山本周五郎さんてどんな小説書いてたの?」って理由だと思うんですよね
まぁ読んで見極めてやろうって上から目線ですよね
赤いモビルスーツに乗ってる人の10人中23人は「見せてもらおうか山本周五郎の実力とやらを」って声に出して言ってると思うんです
わたしもそうです(だって時代小説ってほとんど読んだことなかったんだよぅ)
そして実際に『さぶ』を読んだ10人中27人は「これは山本周五郎賞できるわ」と思ったことでしょう
わたしもそう思いました
さすが連邦の白いやつ(違う)
前半は英二の頑固さに辟易して読むのが進みませんでしたが、周りの人々の支えによって恨みに凝り固まった英二の心が溶けていくのにつれて読みやすくなって行きました
そして頑固さといえばさぶのほうも相当に頑固です
見方によってはさぶのほうが頑固かもしれない
頑固者の二人が奏でる物語の結末は驚きもありましたが、変わらないさぶの純真さによってさらなる幸せな未来を予想させるすんばらしいものでした
さすが「土みん本」!
さすが連邦の白いやつ!(だから違うって)
面白かった!!
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去年の夏、沖縄の書店で「山本周五郎賞があるのに山本周五郎の作品が面白くないはずがない。」という文句に惹かれ購入した。なかなか読む気になれず放置していたが、1年越しに私は強く同意したい。
江戸を舞台に、一人前の表具職人を目指す2人の男の子の成長を描いた作品だ。
1人は弱虫で何事にも消極的なさぶ、もう1人は常に勝ち気でやや傲慢さが目立つ英二だ。対照的な2人だが、それが2人の強く結びつけ、不可分の関係であった。
弱気なさぶを強気の英二が支え、共に成長していく王道ストーリーのよう構えてしまうが、実は正反対である。とある事件をきっかけに、英二はドン底まで落ちてしまい、何もかも自暴自棄になってしまう。
何事も優秀な人間がどのように自分を見つめ、成長していくのか。彼は社会の理不尽とどう戦っていくのか、周りの人とどう接していくのか。時代小説のようでとっつきにくいかもしれないが、時代は変わっても人や社会は変わらないことを強く感じさせてくれる一冊だ。
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とても良かった。
無実の罪で人生転落してしまった栄二が度重なる受難に遭う姿は読んでいてとても胸が痛かったけど、人との関わり合いの中で大事な事に気づき立ち直り復活していく姿に心打たれます。
そして、どこまでも栄二を信じ尽くしてやまない愚図で優しいさぶと言う人物、その存在がかけがえのないものであると栄二が気づいていく事に感動し、タイトルが「栄二」ではなく「さぶ」である事に納得する。
寄場人足・与平の言葉は生きていく上で誰にでもいつの時代にも当てはまる事だけど、とかく自分の事で精一杯で忘れがちな事だけに、心にずっしりと残りました。
「ー生まれつきの能力を持っている人間でも、自分ひとりだけじゃあなんにもできやしない。能のある一人の人間が、その能を生かすためには、能のない幾十人という人間が、眼に見えない力をかしているんだよ、ここをよく考えておくれ、栄さん」
時代劇をあまり読んだことがないので、江戸の日本橋界隈の今も残る土地名などがたくさん出てくるのも楽しい。
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栄二とさぶの友情を描いた物語。
栄二視点でしか物語は展開しないし、さぶなんてそれこそサブキャラ的なくらい目立たない。それなのにタイトルがさぶの違和感。。だが最後に「さぶーーー」と叫びそうになるほど、さぶがさぶしてて好き。語彙力2
こんな小説があるから、読書ってやめられないんだよなーって思ったとても人間くさい作品。
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有名な雑誌の名前の元ネタと言われてる事から妙な先入観がありましたが、そんなイメージ吹き飛びました。
高校生の時に学校の催しでプロの劇団がさぶを公演して鑑賞もしましたが、今思うと意味を全く理解できてなかった。
最後のオチ?には驚きました。人間は自分が思うほど本当単純じゃない。
世の中には色んな人や考え方があって、どれが正しいとかは言えないし、単純じゃなくて自分の思うようにはなかなかいかない。
時代背景は違うけど、今にも通じる部分が沢山ありました。
栄ニは身よりもないし世間的には弱者と言えるかもしれないけど、芯の通った精神と言うか強さがあって、どんな境遇になっても自分で本質を読み取って行動していくところなんか憧れます。
個人的には、おのぶちゃんに一番幸せになってほしい。抱きしめてあげたいぐらいw
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題名は「さぶ」なのだが、ほとんどさぶという人物は中盤以降出てこない。
本当に物語の中のさぶは、後半実在したのだろうか?
その後半に至っては、もしや英二の中の思い出の中の幻想のさぶではないか?
きっと英二の憧れた人間像がさぶなのだとしたら、ある程度卒なく生きていく能力、持てる者の悲哀は確かにあるのかも、と何も持たないさぶの様なおじさんは思いました。
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最初と最後で12年くらい経過してるんだけど、さぶが相変わらずで泣き笑い。表紙は最初の良いシーン、小雨の両国橋。この表紙もぐっとくるけど、私が読んだ文庫の表紙は(平成17年版)何と栄二がバーンと描かれてる。
検索してみて欲しい!タイトル「さぶ」なのに、栄二!もう栄二の話だし、表紙栄二やし、さぶはちょびちょびしか出てこないし(笑)でも題名が「さぶ」だからさぶが気になる。つっこみどころ満載のさぶ。途中、だまされたり、死んだりするんじゃないかとひやひやしながら読み終えた。
この栄二メインのカバー装画を担当した池上遼一さんは独断でさぶではなく栄二を描いたのだろうか。山本周五郎さんがOKしたのだとすると、それもすごい。
内容にもたくさん感想あるんだけど、長くなったのでこの辺で。
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最後の最後に判明する事の真相(事実かどうかは不明)が、単なる栄二とさぶの友情物語や成長物語とはまったく違う深淵な人間模様にしている。山本周五郎氏の人間に対する観方、性善説でも性悪説でもない、清濁併吞した存在として捉える視点が生きている。絶望のなかで見つけた絆、拭うことの出来ない人間の私欲、人を信じることの難しさ、それらを乗り越えた先にあるもの。物語の主体は栄二だが、全てを総括して示すラストの「おらだよ、ここをあけてくんな、さぶだよ」の姿と表情を思い浮かべれば、やはり作品名は「さぶ」だろう。
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江戸時代を舞台に、男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶ。ままならない人生をふたりで乗り越えていくふたりの信頼関係が尊い!落ち込みもするけれど、決して折れず成長していく姿に感動です。出てくる台詞も今を生きる我々に刺さる、時代を問わない名作!
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時代小説に苦手意識持ってたけど、読んでよかった。
栄ニタイプもさぶタイプも現代でも、生きてると損するのは、変わらずだな。
そしておすえタイプの女、昔からいたんだな。
栄ニとさぶの男の友情物語としては美しいけれども、そこに厄介な女が絡んでたんですね、という、そんな私の大敵みたいな女が絡んでて、おもしろかった。
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読み終えて一言。
『えええええぇぇぇーーーーー‼︎』
しばらく驚いた後、
驚きを通り越して、思わず笑ってしまった。
これだから小説は面白い‼︎
そしてこの最後の場面はどうして、こんな風に終わるんだろうと考えると…
やっぱり最後の場面があるからこそ、主人公が過去の出来事を本当に乗り越え、怒り怨み復讐の気持ちを昇華できた事が、より伝わってくる気がする。
ブク友さんの感想を読むのがとっても好きだ♪
読んでいると"いいね"を5個ぐらいつけたくなる感想に出会う事がある。
『さぶ』はそんな素敵な感想がきっかけで手に取った作品。
その感想を書いたのはブク友の"おびのり"さん。
感想がいつも自然体で文章が知的でなんだか格好良い!
おびさんのイメージは、どんな難解な本にも果敢に向かっていく感じから、
"本の荒野"に立つ腕利きの女ガンマン!(←私の中の格好良いって意味です!)
タイトルの『さぶ』は主人公ではなく
主人公、栄二の心の拠り所となる人物。
『頭のいい、おとこまえの、苦労知らず。』そんな栄二は身に覚えのない盗人の罪で人足寄場に送られる。怒り、怨み、絶望の中、心を固く閉ざし、復讐を誓う。
けれど徐々に、寄場の仲間との関係や命を落とすような危険な体験、
そして、さぶやおすえ、おのぶの変わらない思いが栄二を変えていく。
まるで人生の教科書を読んでいるような
感覚だった。
誰の人生にも突然起こり得る、裏切りや不幸の連続を栄二の人生を通して追体験しているよう。大切な言葉に全部蛍光ペンでマークしたい!
中盤から、色々な登場人物が繰り返し栄二に、一人ぼっちじゃないと伝える。
『もしも栄さんが、わたしたちの恩になったと思うなら、わたしたちだけじゃなく
さぶちゃんや、おのぶさん、おすえちゃんのことを忘れちゃあだめだ。おまえさんは決して1人ぼっちじゃあなかったし、これから先も、1人ぼっちになることなんかあ決してないんだからね。』
『…自分ひとりだけじゃあなんにもできやしない、能のある1人の人間が、その能を生かす為には、能のない幾十人という人間が、目に見えない力をかしてるんだよ…』
たったひとりで生きてるんじゃないんだよね。
家族や大切な人への感謝、忘れないでいたいな(^^)
Posted by ブクログ
山本周五郎の胸つまる時代小説。
女子高生時代からの久々の再読。(いつの話よ)
江戸下町の表具屋で、少年時代からの職人仲間の、栄ニとさぶ。栄ニは、利口で器用、さぶは、愚鈍だが誠実。お互いを支え合い生きていた。
栄二は盗みの濡れ衣をかけられて、仕事を失い自暴自棄となり、人足寄場での生活となってしまう。
栄二の頑なな態度と心を、取り巻く人々の人情が和らげていく。
「一人では生きていけない」悟った彼は、過去の遺恨をたち、さぶと新妻との生活を始めるー
で、本当のラストは、読んで泣いてほしい。
ストーリーの主人公は「さぶ」ではない。だが、自身の能力・生い立ち全てを受け入れて誠実に愚直に生きるさぶが、心揺さぶる。
物語の流れが上手い。エピソードごと、の栄二の心情変化の積み重ねが読み止まらない。
初読の時、平日の就寝前、ちょっとだけと読み始め、明け方まで泣きながら読んでしまい、大変なことになった一冊。
Posted by ブクログ
そういえば……「山本周五郎賞」は良く聞くけど、山本周五郎さんの作品をちゃんと読んだことはなかったなー、と手に取る。
「赤ひげ~」の作者くらいにしか印象がありませんでした。
これもブグログでどなたかがお勧めされていた本。
紹介してくれた方々に感謝。
江戸時代。
一人前の職人になるために共に奉公をする英二とさぶ。
英二は男前で賢くて腕も度胸もあるが、対照的にさぶは見栄えも悪く愚鈍で小心で腕もパッとしない。
ある日、英二は得意先で盗人の濡れ衣を着せられ、怒りのあまりに暴れてしまい、人足寄場送りとなってしまう。そして……。
小難しく、説教臭い話なのかなと思いましたがそんなことはなく、とても読みやすくておもしろくて、ほとんど一気に読んでしまいました。
さすがは大衆文学。
最後は少し驚かされましたが、嫌な終わり方にならずに良かった。
タイトルは「さぶ」ですが本書の主人公は英二です。
英二の目を通して「さぶ」を表す、とかではなく、あくまで英二の物語であることに少々落胆しました。
なぜなら自分はどちらかと言えば「さぶ」側の人間だからです。
なぜタイトルを「さぶ」にしたんだろう?
そこに意味があったのだろうか。
ここからレビューを追加します。
あの場面をもう一度読みたいな。あそこはどうだったろう。と、パラパラ再読しました。
やっぱり名著。惹き込まれます。あとをひきます。
かなりのネタバレにもなるので、未読の方は絶対に読まないでください。
解説にもあるとおりこれは、主人公英二の受難と再生の物語。その過酷な過程を通じて再生をはたした彼は、人間として厚みを増すこととなります。
英二は長く「この首にかけても」と復讐を誓い、そのことだけにとりつかれてしまうが、時が癒していきます。
人足寄場送りになった人たちとの交流が癒していきます。
英二は自分の才覚で人足寄場で中心的な存在となり、多くの人に慕われるほどになります。
そこにさぶの存在はありません。
しかし、人足寄場で事故に遭い、死にかけたときに彼が呼んだのはさぶでした。
「助けてくれ、さぶ」と。
「さぶ、助けてくれ」と。
普通であれば「おっかあ、助けて」とでも言うところでしょう。
幼いころに家族を火事で亡くした彼が最後の最後に呼んだ者は、さぶでした。
うすのろで、あほうで、能無しで、気が弱くて、英二も心の中でよく罵倒しているさぶです。
英二に対して異常なまでの献身ぶりをみせるさぶ。
彼の心の中ではさぶは、絶対に揺るがない味方。一本の太い柱となっているのでしょう。
英二の再生の手助けとなるのは先に述べたとおり、時と人足寄場で出会った人々です。
しかし、さぶというしっかりした足場があったればこそ、だったのではないでしょうか。
いずれは再生したとしても、少なくともさぶの存在が英二のそれを早めたのは間違いないでしょう。
わからないのは英二の妻となるおすえのことです。
よくもまあ……。
最後の最後まで秘密にできたものです。
彼女はじぶんのせいで過酷な目に遭う英二をどう見ていたのでしょう。
それでも、と願う女心なのでしょうか。
愛しい男を得るために、愛しい男を奈落へと落とし、口をつぐむ。
もしもそれで英二が再生をはたせずに的外れな復讐にはしり、火付けや、人を殺めてしまったりしたなら。
彼女はどうしていたのだろう。
そうはならずにほんとうに良かった。
Posted by ブクログ
まるで人生訓の様な小説だなあ。
終始説教されている様な感じを受けたのは自分の生き方に後ろめたさがあるからなのか。
何故タイトルが「さぶ」なのだろう?
ほぼ「栄ニ」の目を通した人間模様が描かれているのに。
Posted by ブクログ
初周五郎。この著者の名を冠した作品はいくつか読んだけれど、本家は読んでないなということで前から気になっていて…漸くです。オススメいただきました(^^
面白かったです!ここまで思い遣ってくれる友達がいるなんて、きっと素敵なことでしょうね…。最後、おすえに言った栄二の言葉は本心から出たものだと思います。紆余曲折あり、ヒトとして一回りも二回りも大きくなりましたな。>栄二は。さぶとの友情、そしと栄二の人間的成長を見た、大変良い作品でした。さすがに賞が創設されるだけのことはある作家でした!星四つ。
Posted by ブクログ
不器用だけど実直でどこまでも優しいさぶと、イケメンで器用で賢い栄二の友情物語です。
無実の罪で拘留され、罪人が住まう人足場に送られた栄二が、さぶをはじめ様々な人と関わることで成長し、立ち直る姿が丁寧に描かれていました。
いくら賢くても、人は一人では生きてゆけないのです。
とてもいい話でほっこりしたけれど、最後、栄二の無実の罪にかかわった真犯人には驚きました。
私だったら許せる、かなあ・・・ちょっと納得できないかも。なので☆は減らしてしまった。。
話の中心、というか主人公は栄二だけど、タイトルはさぶ。なんかわかるな。
Posted by ブクログ
ひとは一人では生きられない。
信じること、許すこと、受け入れること、支えること、頼ること、頼られること、心を開くこと。
そういうのって大事だよねと読みながら思った。