山本周五郎のレビュー一覧
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「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」山本周五郎 (編・沢木耕太郎)
「わざとらしい」とか「くさい」とか「センチメンタルすぎる」とか「できすぎ」とか「ダサい」とか「ベタ」とか。そういう批判を受けることは大いにあると思いますが、だから嫌われたり、食わず嫌いされたりすることもあると思いますが、そんなことよりも、そんな批判を超えて余りあるパワーとクオリティ。「小説界の中島みゆき」だと思います。
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10歳~15歳くらいにかけてか、山本周五郎さんの本をよく読んでいました。司馬遼太郎さんとか藤沢周平さんとかもその頃に大抵読んだのですが、周五郎さんは独特の美味しさがある本というか。
「樅の木は残った」「さ -
購入済み
新出去定と保本登
赤ひげは子供の頃に映画で見た三船敏郎の演ずるイメージしか覚えていなかったのですが突然思い立って原作を読んでみました。あちこちの医療コミックなどで「赤ひげ」が引用されていますが原作の新出去定は人間臭い頑固オヤジだがやはり保本登が惚れ込むほどの人物でした。終りの方で「医は仁術などではない、現実は風邪さえ治せない」と言っていましたがその通り。彼は決しておごらない。カネのために医学部へ行こうという連中は心を入れ替えてこういう人物になってほしいと切に願いたい。無理かw
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宮部みゆきの小説「淋しい狩人」を読んでいた時にエピソードの一つに登場した本で、すごく印象に残ったので取り寄せ読んでみることにした。
一言で言い表すならば、傑作ですね。
この本が出版されてから半世紀以上経過しているが、作品の魅力は全く衰えていない。
おそらく今後数十年たっても読み継がれていく稀有の傑作小説だろう。
主人公である医学生 保本登は、長崎遊学から戻ったばかりで医学を出世のための手段としか見ていない。
また、許嫁がいたが遊学中にほかの男と駆け落ちしてしまい、このことが彼の心に影を落としている。
彼が赴任した小石川養生所には、赤ひげと呼ばれる名物医長がいる。
赤ひげは一見して無頼漢のよ -
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「松の花」
古今のほまれ高き女性たちを録した伝記の編纂をしている佐藤藤右衛門。彼は息をひきとったばかりの妻の慎ましやかな生き方を知り、世にでないがほむべき女性について、序章で記していくべきだと考え直していく。
「風鈴」
結婚をし豊かな家に移った妹二人。姉・弥生は質素な暮らしをし、夫も出世をせず、淡々と暮らしていた。そんな姉に妹たちは、生活を変え、夫に対しても彼女らの夫から出世を勧められる。弥生は思いが揺らぐ。そんな時に夫とその上役との会話を聞く。夫は「たいせつなのは身分の高下や貧富の差ではない、人間と生まれてきて、生きたことが、自分にとってむだでなかった、世の中のためにも少しは役立ち、 -
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「泥棒と若殿」
子供の頃から苦労をし、初めて泥棒に入った古屋敷には、三日も食わずで死のうとしていた若殿がいた。泥棒・伝九郎は、若殿・成信に飯の支度をし、そのための銭もかせぎ、一緒に暮らし始めた・・・。
伝九郎、良い人過ぎるよ。
「おたふく」
おしずは、長く貞二郎(彫金師)を思っていた。妹が嫁ぎ両親も亡くなり、しばらく一人で暮らして、三十二になった。思いもかけず、貞二郎と結婚することとなる。長く思い続けていた間、貞二郎の彫金の作品を集め、男物の高価な着物を買い、着ている姿を思っていた。その高価な品物を見た貞二郎は他の男がいるのだと、思い込んでしまう。酒に溺れる貞二郎と、そんなことは思い -
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石榴
その時はそれほどの想いはなかった。だが、最期に人生を思い返し、失踪した夫に最後に会える感慨は・・・。
山茶花帖
身分違いの恋。周りの取り計らいで添い遂げられる二人。
柳橋物語
待っていてくれと言い上方へ行った庄吉。その間に最後の身寄りである祖父を亡くし、江戸の火事にあうおせん。そのそばにはいつも幸太がいたが、最後にはおせんを守りその幸太も死んだ。待っていた庄吉が帰ってくるが、幸太とのことを勘違いし、他の娘と結婚してしまう。袖にし続けても近くで力になってくれた幸太を想い生きていくおせん。
つばくろ(燕)
人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくが如し、いそぐべからず。
家康 -
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良いですね。周五郎円熟期の作品集です。
これで周五郎は連続4冊になりますが、これが一番ですね。
今回周五郎を再読しながら意外だったのは、その暗さです。暗くされた舞台に主人公達だけが穏やかなスポットライトを浴びて立っている。そんな仕立てで出来ています。もちろん、こっけいものもあり、後期の作品には爽やかな未来と言った趣向の作品も多いのですが、どこか周りに暗さが残っているようにも思います。
藤沢周平と比較すれば、周平は冬枯れの雑木林の陽だまり。冷え込んではいるけれど、明るさはあります。一方、周五郎は主人公も周りには暖かな灯りが届いているのですが、何故か周辺が暗い。そんな感じがします。それが悪い -
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・あらすじ
幕府の御番役というエリートコースを歩むべく長崎遊学から戻った青年が貧者を相手に治療を施す小石川養生所の医師「赤ひげ」に呼び出され、見習い勤務を命ぜられる。理想とかけ離れた現実に、青年は激しく反発するが、赤ひげの真の医師としての信念、最下層の悲惨な境遇の人々との触れ合いを通し、青年は医師として、一人の人間して大きく成長してゆく。
・感想
話の骨子としてはヒューマンドラマにありがちな設定とも言えるが、読み終えた後に本が付箋だらけになり、自然と分厚くなっていた。ついつい拾いたくなる(使命感すら覚える)台詞がこの本にはたくさん詰まっているのだ。山本周五郎の作品には思わず身が震えるような台詞 -
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昭和二十年代の作品なので、現代の小説より重くて、読んでいて苦しくなります。それでも心が洗われる思いを得られるのが山本周五郎作品の良さだと思いました。
柳橋物語のほうは、最後にも救いがなくてどこまでも悲しくなりました。
おせんは優しい子だと思いました。幸太郎をどこまでも見捨てないし、不幸に落ち込む友人にも優しい。いつか幸せになって欲しい人物です。
むかしも今も、のほうは、最後に救いがあってやっとほっとします。1冊にまとまったこの本の最後がこちらで良かった、と思いますね。
どちらの女の子も、どうしてそんな男のほうを選ぶのか……、という残念感。
大事なことは目に見えない、そんな教訓が籠められてい