山本周五郎のレビュー一覧
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購入済み
お勧めです。
最近は時代小説が氾濫していますが、それでも「これは」という本に巡り合うのはなかなか難しく、久々に山本周五郎の作品
を読んでみることにしました。書かれた時代を反映しているせいか、近頃の作品とはまた違った味わいがあり、個人主義や
拝金主義の蔓延する世の中で、私たちが失ってしまった古きよき価値観みたいなものを感じました。とくに「石ころ」が気に
入りました。 -
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考えてみたら、山本周五郎の著作を読むのは初めてだった。何十作も発表されているし、文学賞の名前にすらなっているのに。
もともと時代小説は好きだが、本書はとにかく面白かった。何がいいって、難しい当時の言葉も少なく、読みやすい。舞台は江戸時代の江戸。ストーリーは、見習いを終えたばかりのプライドの高い医者の卵が、養生所という貧しい人にほぼ無料で医療を施すところで働くことになり、最初は渋々であったが、先輩医師や患者とのやり取りを通じて成長していく、というもの。
人間の本質に迫る。養生所の所長の医者は、生まれながらに悪人などいない、貧しさや境遇や無知がそうさせるのだ、という考え方。主人公登は、様々な患者を診ながら、どう思うか。
さすがに、うまいな~とうならされた。これから、山本周五郎の小説をもっと読みたいと思う。 -
Posted by ブクログ
「山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)
山本周五郎の短編集。相変わらずのクオリティ。
この一冊ではなんと言っても「人情裏長屋」と「かあちゃん」です。くさいと言われようがベタと言われようが、泣けちゃうものは泣けちゃうのです。
このあたりは個人的な好みなのか都合なのか分かりませんが、加齢してなおのこと涙腺が緩くなったような気がして、「人情裏長屋」「かあちゃん」で泣けてくるというのが加齢した結果なら、それはそれで歳月というものも悪くないような。
特に「人情裏長屋」は、つまりはチャップリンの「キッド」なんですが、よく出来ています。素晴らしい短編。
「オールタイム全人類短編小説大会」があったら、「日本・時代小説部門」代表として出場して欲しい出来です。 -
Posted by ブクログ
「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」山本周五郎 (編・沢木耕太郎)
「わざとらしい」とか「くさい」とか「センチメンタルすぎる」とか「できすぎ」とか「ダサい」とか「ベタ」とか。そういう批判を受けることは大いにあると思いますが、だから嫌われたり、食わず嫌いされたりすることもあると思いますが、そんなことよりも、そんな批判を超えて余りあるパワーとクオリティ。「小説界の中島みゆき」だと思います。
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10歳~15歳くらいにかけてか、山本周五郎さんの本をよく読んでいました。司馬遼太郎さんとか藤沢周平さんとかもその頃に大抵読んだのですが、周五郎さんは独特の美味しさがある本というか。
「樅の木は残った」「さぶ」「青べか物語」「季節のない街」「赤ひげ診療譚」などの、長編もしくは連作短編ももちろん素晴らしいのですが、でも周五郎さんと言えばなんと言っても短編です。戦後の文芸娯楽雑誌の時代、という背景が大きいですが、至極の短編作家。
山本周五郎さんの短編を、沢木耕太郎さんが選んで並べた、という「売り」の作品集。その一。正直どれも面白かったです。
特に、ベタといえばベタの極みとも言える短編「ちゃん」。職人の父親と家族のお話なんですが、こういうことでこういう短編を書ける人ってすごいなあ、と、改めて。
ただ、この歳になって読み返すと,山本周五郎さんって意外と言葉使いや言葉の選び方については、無造作に現代語も放り込んでくるなあ、という発見が面白かったです。なんというか、「時代考証」という意味で言うと、けっこう、間違っています。 -
購入済み
新出去定と保本登
赤ひげは子供の頃に映画で見た三船敏郎の演ずるイメージしか覚えていなかったのですが突然思い立って原作を読んでみました。あちこちの医療コミックなどで「赤ひげ」が引用されていますが原作の新出去定は人間臭い頑固オヤジだがやはり保本登が惚れ込むほどの人物でした。終りの方で「医は仁術などではない、現実は風邪さえ治せない」と言っていましたがその通り。彼は決しておごらない。カネのために医学部へ行こうという連中は心を入れ替えてこういう人物になってほしいと切に願いたい。無理かw
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Posted by ブクログ
宮部みゆきの小説「淋しい狩人」を読んでいた時にエピソードの一つに登場した本で、すごく印象に残ったので取り寄せ読んでみることにした。
一言で言い表すならば、傑作ですね。
この本が出版されてから半世紀以上経過しているが、作品の魅力は全く衰えていない。
おそらく今後数十年たっても読み継がれていく稀有の傑作小説だろう。
主人公である医学生 保本登は、長崎遊学から戻ったばかりで医学を出世のための手段としか見ていない。
また、許嫁がいたが遊学中にほかの男と駆け落ちしてしまい、このことが彼の心に影を落としている。
彼が赴任した小石川養生所には、赤ひげと呼ばれる名物医長がいる。
赤ひげは一見して無頼漢のような雰囲気をもつが、高い知性と高度な医療技術そして人生の酸いも甘い理解している稀有の男であり、日夜世の下層で生活する街の人々の診療に邁進している。
当然、主人公の保本はこの赤ひげに最初反発するが、次第に彼のものの考え方に傾倒していき彼自身の人格も次第に人として成長していく。
全部で八篇の短編からなる本書は、赤ひげと保本が様々な境遇の町の人を患者として診療する過程で、その人々の生活が明らかになっていくという形式で、現代的に言えばサイコスリラーのはしりの様なものから、胸が張り裂けそうになる悲恋の話、ちょっとおかしな話等バラエティーに富んでいる。
しかし、どの話にも共通するのが、現代よりはるかに生活が厳しかった江戸時代の下層の人々の生きざまのリアリティーであろう。
フィクションであるが、あたかも実際に存在した人々のように感じられる。
善良なもの、悪人、弱いもの、苦しんでいる者、様々な人間がいて存在するが、作者の彼らへの眼差しは優しい。
最後に保本は重大な決断をし、自らの人生を有意義なものにしようとする。
そこに至るまでの彼の人としての成長は見ていて心地よかった。
今後百年でも読み継がれてほしい本である。