あらすじ
著者は、「伊達騒動」の中心人物として極悪人の烙印を押されてきた原田甲斐に対する従来の解釈をしりぞけ、幕府の大藩取り潰し計画に一身でたちむかった甲斐の、味方をも欺き、悪評にもめげず敢然と闘い抜く姿を感動的に描き出す。雄大な構想と斬新な歴史観のもとに旧来の評価を劇的に一変させ、孤独に耐えて行動する原田甲斐の人間味あふれる肖像を刻み上げた周五郎文学の代表作。
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樅ノ木について考えてみた
もみの木である
モミモミの木ではない
むしろ硬くてもめない
そして仙台藩のお話なので、日本北部に自生する固有種「ウラジロモミ」と思われる
もみは揉めるに通ずるため、家庭内に揉め事を起こさないよう庭に植えるなと言われている
もちろん揉めまくりだ
わざわざ庭に植えたからだバカ
しかも二度も枯らしてるからな
そして樅ノ木と言えば、樹形が非常に美しい木で、きれーな円錐形になるんよね
いわゆるツリーよ
そして抗菌性と調湿性があるので、食品に触れるものや棺おけなんかにも使われている
そんな樅ノ木に山本周五郎はどんな想いを託したのだろうね
多くの人が持つ樅ノ木のイメージは、雪が積もり、風が吹く中、揺れることなく凛として立ち、静かに厳しい冬を耐える姿じゃないでしょうか
まさに主人公原田甲斐そのもの
しかしあれだ、史実に名を残す「原田甲斐」はぜんぜんそんな人じゃない
むしろ真反対
そこからこの物語を生み出すんだね
凄いな周五郎
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壮絶な最後でした。上巻冒頭の暗殺以降、置毒やくびじろとの対決などのエピソードはあったものの淡々と歩みを進めていた物語が終盤に一転、怒涛の展開の中で多くの命が散って行きました。そしてフィナーレ、思いもよらない謀略が仕組まれ、本懐は遂げることができたものの待っていたのは悲劇的な結末。国のために侍はここまでしなければならないのか、自身の命や名誉のみならず家族の命や家の歴史までも捧げなければならないのか、凄まじい価値観が描かれていました。選挙の票のためならカルト宗教にも魂を売る、自民党安倍派の国会議員にぜひ読んでいただきたい本でした。船岡は家からそれほどは遠くはないので、そのうち城址公園の樅の木の下で余韻に浸ってこようと思います。
Posted by ブクログ
原田甲斐の選択の全ては、伊達家のため。
自分を頼みとする妻子や自分を慕う家臣の、個々の生活も命さえも手駒として使わなければならない。
甲斐が非情な独裁者ならどんなに楽だったろう。
一人の人物にいくつも呼称があり、読み初めは確認作業をしながらなかなかページが捗らなかったが、いちいち気にならないくらい先が気になり出し、気付けばクライマックス。何という結末。
去っていった者、死んでいった者、みな自分なりの忠義に生きた。大事なのか?伊達家がそんなに守るべきものなのか?と疑うのは現代だから。侍は疑わない。潔くも悲しい生き物に感じた。
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お家騒動の発端以後、ひたすらに耐え忍ぶことを貫き通した原田甲斐。
私利私欲のためでもなく、名誉のためでもなく、ただただ伊達藩とそこに属する人々を守るために、彼は進んで悪名を被り、そうすることで黒幕の懐深くへ入り込む。
分かり合えた友人、同士、家臣たちから白眼視されたり、次々に死に別れる事態に見舞われても、哀しみを押し殺し、黙々と命の襷を拾うに止める。
全ては黒幕を追い詰めるためだった。
堪忍・辛坊が、時にもどかしく感じたけれど、凄絶な最期の瞬間にまでそれを貫徹されると、感動だけが心に残ることに。
「いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛坊、──人の眼につかず名もあらわれないところに働いている力なのだ」。
この箇所、この一文に、主題が結晶しているような。
著者が一番伝えたかったのはこれだったのかと思う。
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歴史上有名なお家騒動である伊達騒動を伊達家の国老原田甲斐の眼を通して描かれている。江戸幕府のお家取り潰しの陰謀に晒される伊達藩、それを防ぐ為に原田甲斐の打つ手が奥深い。昭和29年に執筆されたとは思えない程の謀略に富んだエンタテイメントの一級品
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耐え難きを耐え忍んだ甲斐が、あのような結末を迎えるのは、あまりにも惨い。あまりにも口惜しい。妻と別れ、真の友の葬儀も立ち会わず、伊達藩のため、滅私で尽くした甲斐が。。。
それでも六二万石が安泰となり、安らかに逝ったのだろうか。
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今を楽しんで生きる。
死後に名を残すために生きる。
自分のために生きる。
人のため国家のために生きる。
人生は儚い一方で、生きる意味・生かされる意味を見いだしてそれを完遂することは難儀なこと。
日々を漫然と消化することに対して、自戒になる小説。
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山本周五郎作品は初読であったが、最後まで一気に読んでしまった。物語の内容はさることながら、文章の表現の独特さ、豊かさに魅了された。
自らの藩を第一に考え、自分の人生を擲つ姿には、司馬遼太郎作品で長岡藩を舞台にした「峠」に通じるものがあると感じた。
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名作と言われている小説だろうか。
これはおもしろかった。
上中下3巻一気に読んでしまった。
主人公の原田甲斐は、Wikipediaなんかを見るとだいぶイメージが違うけど、小説としては、原田甲斐の深謀遠慮が上手に仕上がっていると思う。
Posted by ブクログ
最後は一気読みでした!
名前と、地名を加えた役名みたいな名前の二つがあり、登場人物が多すぎて、また、人間関係も複雑で、分かりにくいのが難点。。。
クライマックスも、なんでそうなってこうなって伊達家62万石が安泰なのか分からずじまいで、かなり残念でした。。。
意地や面目を立てとおすことは勇ましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう。しかし、侍の本分というものは、堪忍や辛抱の中にある、生きられる限り生きて御奉公をすることだ、これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ。
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長かったけど、読み終えてそれなりの満足感がある。かなりの対策ですな。
にしても、山本周五郎はなぜ原田甲斐に目をつけたのかな。真相はやっぱり歴史で語られてる通り、逆臣な感じがするけど。
Posted by ブクログ
すべて仙台藩のために
原田甲斐の人物の描き方がすごい
淡々とした表現なのに
引き込まれてしまう。
最後は生きて欲しかった
山本周五郎の作品は
初めての体験だったが
人の描き方がすごい
歴史小説だから読めないと
勝手に決め込んでいたが
勿体無いと思っている
直木賞に始まり幾多の賞を
辞退した作家
これもすごい
こんな作家今いない
骨がありすぎる
それも一番目の妻の
「私は大衆作家の所へ嫁に来たのでは無い」という言葉に
発奮したとも言われている
Posted by ブクログ
やっと3冊読み終わった。
たった3冊を読むのに、一ヶ月もかかってしまった。
内容はかなり面白いのだが、私がとにかく時代小説が苦手ということで、
言葉が頭の中に映像として入ってこない(-_-;)
それなのにとても面白く、最後まで何とか諦めずに読むことができた。
この本は、伊達騒動と呼ばれた、江戸時代前期の仙台伊達藩で起こった御家騒動の話。
史実上では、原田甲斐宗輔は奸臣とされているようだが、
この本ではその真逆の立場で描かれていた。
この原田という人物の描写が非常に巧み。
私の文章能力では、とても形容出来ない、非常に魅力的な人物に描かれている。
主人公の原田だけでなく、伊達騒動の中に生きる多くの登場人物の個性が
非常に緻密に描かれており、時代小説嫌いの私でも、楽しく読ませていただいた。
超大作!読んでみて絶対損は無い!
Posted by ブクログ
伊達騒動を描いたもの。
この小説の主人公原田甲斐が逆臣であったという通説とは異なり、伊達家を守るために真意を隠し、友や家臣、自身の命、そして家までも賭して伊達家を守ったというプロット。
最後の200ページのクライマックスに向かう節は、息を飲む展開で一気に読んだが、結末は、現代的感性からすると「行き過ぎ」の感を持ったのが正直なところ。
しかし、「史実」の裏側にこのような「真実」があったとすれば、タイトルともなった樅の木に重ね合わせられたロマンを十分に感じられる。
武士社会の主役の男たちの周りに描かれる女たちが、その儚さに彩りを添えている。
Posted by ブクログ
山本周五郎の代表作なる大作。
お家を守るためとはいえ、本当に大変な忍従をしいられ、現代人には理解できないものがあった。
クライマックスは手に汗握る緊迫感があり、一気に読み終わった。
結果はあのようになったが甲斐はいったい耐え忍んで何を目指していたのか?耐える現状維持は自分が死んだ時点で終わりを迎えるのに、次々と周りの人間が死ぬ状況で積極的な行動を起こさなかったことに疑問と不満が残った。
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ワークライフバランスの間逆。己れや家族、友人、親族よりも藩の存続に身を粉にする主人公、原田甲斐。今読んでも充分面白いが、戦後の経済成長期に読んだ世代はより感情移入したのかも。
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秀作。
江戸時代、初期はまだ戦国時代を引きずって、幕府は大きな大名を潰そうとしていたと言う事か。
史実は知らないが、原田甲斐は、藩を救うため、家族を含めた命をかけた。最後の衝撃的なシーン。大河ドラマになるわけだ。
Posted by ブクログ
“意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある… これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ ” 物語そのものは勿論、山本周五郎ならではの、染み込んで来る言葉の濃度。下巻は特に高し。 人としての強さ、その在り方を深く考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
上中下巻を読み終えたのでまとめて感想を書くとする。
江戸歴史物は似た名前が多く、言葉遣いが独特で、その時代の町の様子を思い描かなければならないことから敬遠していた。現代小説よりはやはり読み進めるのがゆっくりであったが、どんどんと町や屋敷の様子が想像され、なによりも現代とは違う心持ちや人々の動きが目の前に広がって来るようだった。
伊達藩の家臣船岡館主・原田甲斐は「伊達騒動」の中心人物として史実上に存在する。極悪人の烙印を押され、息子孫も死罪、お家断罪になっている。しかし、山本周五郎は"歴史の反証"から甲斐がなぜそのような事を起こしたのかを構想した。
作中の甲斐は、家中の様々な事件は酒井雅楽頭が手を引き江戸時代の3大雄藩の一つ・伊達藩を取り潰す計画があると考えた。しかしその重大な秘密が多くの者に知るところとなるとき、情報は歪められ、幕府からは大罪を言い渡されることになる。彼は味方を欺きながらも敵の側についた様に見せかけ、静かに耐えた。取り潰しのキッカケになるような大事にならぬよう。
甲斐の周りの人間は死んでいった。しかしその者を弁護したり、感情のまま助けたりすることはなく耐え続けた。侍は、自分のためではなく全ては忠義を持つ家のために、その志で秘密を貫いた。
甲斐は自然を愛する人間だった。優しく微笑し多くは語らない彼の周りにはいつも人が集まってきていた。
彼の最後の言葉「これは私が乱心した結果です。私の仕業だということをお忘れなきよう」はなんとも悲しい。自分の功績、自分の名誉をたてることが恥ずかしく感じられる。
Posted by ブクログ
こんな最後が待っていたとは。頑張って読んで良かった。タイトルはかっこよすぎと思う。
しかし吉永小百合の設定はないだろう,NHKなんでもありだな,と思う。
Posted by ブクログ
山本周五郎作品を初めて読んだ。
伊達騒動の真実は置いといて、歴史小説として面白かったけど、共感することが難しい壮絶な価値観でもあった。
大藩の改易ともなれば、数万人の武士が失業するわけで、その事態を十数人の犠牲で防いだ、という意味では利他的な美談であることは間違いない。
しかしながら、『御家の為』と言われると、現代の価値観からすると、そこまでして守らないといけないほど伊達家はエライのか?とどうしても感じてしまう。
また、原田甲斐が汚名を被って死ぬことで、本当に仙台藩が安泰となる確証があったかというと、かなり分が悪い賭けだったのではないだろうか。ラストの修羅場具合からすると、仙台藩に自治能力無しとして酒井侯が改易に踏み切る可能性はそれなりにあったのではなかろうか。
唯一の障害は、密約の原文を見た久世侯が黙っていない、という点だろうが、酒井侯に『知らぬ存ぜぬ』で押し切られてしまうリスクもあった思う。極めて分の悪い賭けに自分の名誉ではなく汚名を賭けた、という設定がすごい。決して真似が出来ない。
Posted by ブクログ
あらすじ
伊達家62万石の危機を察知した仙台藩の重臣・原田甲斐(里見浩太朗)が、たった一人で謀略から守る姿を描いた娯楽時代劇。 仙台藩の重臣・原田甲斐は3代藩主・伊達綱宗の放蕩に端を発した混乱の中、綱宗の叔父・伊達兵部の藩乗っ取りの陰謀を察知する。 兵部は幕府老中首座酒井雅楽頭と姻戚関係を結ぶなどして藩内での勢力を徐々に拡大。
感想
昔、仕事で涌谷担当をしてたので何か親近感を感じました。惜しい人を亡くした。