あらすじ
著者は、「伊達騒動」の中心人物として極悪人の烙印を押されてきた原田甲斐に対する従来の解釈をしりぞけ、幕府の大藩取り潰し計画に一身でたちむかった甲斐の、味方をも欺き、悪評にもめげず敢然と闘い抜く姿を感動的に描き出す。雄大な構想と斬新な歴史観のもとに旧来の評価を劇的に一変させ、孤独に耐えて行動する原田甲斐の人間味あふれる肖像を刻み上げた周五郎文学の代表作。
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Posted by ブクログ
耐え難きを耐え忍んだ甲斐が、あのような結末を迎えるのは、あまりにも惨い。あまりにも口惜しい。妻と別れ、真の友の葬儀も立ち会わず、伊達藩のため、滅私で尽くした甲斐が。。。
それでも六二万石が安泰となり、安らかに逝ったのだろうか。
Posted by ブクログ
山本周五郎は初読。
伊達騒動自体もよく知らず、「たぶん原田は死ぬんだろうな」と思いながら読み始めた。各巻にひと月ずつ費やしたのは、そもそも時代物に疎く、知らない単語が多すぎたせい。上巻は最近の版で関係図や注釈があり助かったが、中下巻は昔の版で何も頼りにできず、難しい単語はスマホで調べながら読んだ。(私と同じような人には、本ごとにメモが記録できる『読書メモ」というアプリがおすすめ)
そんなわけで完読まで3ヶ月かかったのは、主人公の原田甲斐が延々粘って動かず、周囲も細かい事件はあるものの大きな事態は動かず、下巻のラスト50ページくらいでいきなり急展開するため。延々と続く心理描写に辟易とする日が続いた。
が、原田が最期に残した言葉とその後の「乱臣・原田」としてお家取り潰しの歴史を思うと、本来の原田は今の日本人にはない清さと温かさを併せ持つ魅力的な人物だし、「そう生きるしかない」忍ぶ悲しさが静かに伝わってくる。名作といわれる所以がわかった。
…という感想を抱かせるほど、山本周五郎のフィクションの人物造形の巧みさに参った!
そしてラストの宇乃の描き方は…あそこで官能描写を入れなくてもよかったのでは。そこだけ後味が悪く残念だった。