山本周五郎のレビュー一覧
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なんだかんだ言いながら土瓶さんとみんみんが薦めてくる本は全部読んでるひまわりめろんです(仲良しか!)
そしてこの『さぶ』は土瓶さんとみんみんが共に薦めてくれた本、略して「土みん本」です
ですがこの『さぶ』を手に取ったのはなにも「土みん本」だからというだけではありません
そうです、近頃この『さぶ』を手に取る人の10人中15人は「山本周五郎賞って良く聞くし、確かに受賞作は秀作揃いだけど、その山本周五郎さんてどんな小説書いてたの?」って理由だと思うんですよね
まぁ読んで見極めてやろうって上から目線ですよね
赤いモビルスーツに乗ってる人の10人中23人は「見せてもらおうか山本周五郎の実力とやらを」って声に出して言ってると思うんです
わたしもそうです(だって時代小説ってほとんど読んだことなかったんだよぅ)
そして実際に『さぶ』を読んだ10人中27人は「これは山本周五郎賞できるわ」と思ったことでしょう
わたしもそう思いました
さすが連邦の白いやつ(違う)
前半は英二の頑固さに辟易して読むのが進みませんでしたが、周りの人々の支えによって恨みに凝り固まった英二の心が溶けていくのにつれて読みやすくなって行きました
そして頑固さといえばさぶのほうも相当に頑固です
見方によってはさぶのほうが頑固かもしれない
頑固者の二人が奏でる物語の結末は驚きもありましたが、変わらないさぶの純真さによってさらなる幸せな未来を予想させるすんばらしいものでした
さすが「土みん本」!
さすが連邦の白いやつ!(だから違うって)
面白かった!!
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壮絶な最後でした。上巻冒頭の暗殺以降、置毒やくびじろとの対決などのエピソードはあったものの淡々と歩みを進めていた物語が終盤に一転、怒涛の展開の中で多くの命が散って行きました。そしてフィナーレ、思いもよらない謀略が仕組まれ、本懐は遂げることができたものの待っていたのは悲劇的な結末。国のために侍はここまでしなければならないのか、自身の命や名誉のみならず家族の命や家の歴史までも捧げなければならないのか、凄まじい価値観が描かれていました。選挙の票のためならカルト宗教にも魂を売る、自民党安倍派の国会議員にぜひ読んでいただきたい本でした。船岡は家からそれほどは遠くはないので、そのうち城址公園の樅の木の下で余韻に浸ってこようと思います。
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去年の夏、沖縄の書店で「山本周五郎賞があるのに山本周五郎の作品が面白くないはずがない。」という文句に惹かれ購入した。なかなか読む気になれず放置していたが、1年越しに私は強く同意したい。
江戸を舞台に、一人前の表具職人を目指す2人の男の子の成長を描いた作品だ。
1人は弱虫で何事にも消極的なさぶ、もう1人は常に勝ち気でやや傲慢さが目立つ英二だ。対照的な2人だが、それが2人の強く結びつけ、不可分の関係であった。
弱気なさぶを強気の英二が支え、共に成長していく王道ストーリーのよう構えてしまうが、実は正反対である。とある事件をきっかけに、英二はドン底まで落ちてしまい、何もかも自暴自棄になってしまう。
何事も優秀な人間がどのように自分を見つめ、成長していくのか。彼は社会の理不尽とどう戦っていくのか、周りの人とどう接していくのか。時代小説のようでとっつきにくいかもしれないが、時代は変わっても人や社会は変わらないことを強く感じさせてくれる一冊だ。 -
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国民的作家山本周五郎の珠玉の短編集。選者はあの沢木耕太郎。これが面白くないはずがない。様々なテーマ、舞台。山周の守備範囲の広さには驚かされる。
直木賞ほか文学賞を全て辞退したという山本周五郎。没後50年が過ぎても今でも多くの作品を簡単に入手することごできる。作品数から言えば司馬遼太郎と並ぶ国民的な作家であろう。
「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「ひとでなし」「若き日の摂津守」
本書は、沢木耕太郎が4巻に9作品ずつ合計で36編の短編小説を選んだもの。さすがにいずれもレベルが高い。映像化するなら「ちいさこべ」が良くまとめられている。 -
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名人は名人を知る。紀行文、ノンフィクション作家が選ぶ文豪山本周五郎の珠玉の短編小説。
本シリーズはあの沢木耕太郎の選んだ山本周五郎の短編小説。
沢木は全集で全38巻、300編の小説から名作と呼ぶにふさわしい36編を選び4巻の名品館にまとめている。
本書はその第1巻。あだこ、晩秋、おたふく、菊千代抄、その木戸を通って、ちゃん、松の花、おさん、雨上がる。の9編。
半分ぐらいは一度は読んだことのあるものだったが、映画になった雨上がるを除き詳し筋は忘れてしまっていた。今回あらためて読み、新たな発見と感動が多数。
山本周五郎の描く女性。そして貧しくとも懸命に生きる市井の人々。人それぞれの哀しみをかかえながらも、あくまで周五郎の目は優しい。
本書の中では、個人的には、父の敵の世話を命じられる娘を描いた「晩秋」が一番。葉室麟の「蜩ノ記」とよく似た作品。もちろん他の作品もいずれ劣らず素晴らしい。
名作家だからこそ、分かる名作の真髄に触れることができます。 -
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ネタバレ江戸時代中期、17歳のおせんは幼なじみの大工の庄吉から「上方へ修行に行くが、戻ってきたら一緒になってほしい」と告げられ、思わず「待っているわ」と答える。庄吉には恋敵がおり、同じくおせんと幼なじみの幸太も彼女を嫁にほしいと思っていた。
翌年、江戸の町を大火が襲い、逃げ遅れそうになったおせんを助けに来てくれたのは幸太だった。燃えさかる火の中を逃げまどい、とうとう隅田川の川岸に入るが、幸太は「おまえだけは何としても守ってみせる」と言い残して精根尽き果て溺れ死んでしまう。無事に生き延びたおせんは大きなショックを受けて記憶を失い、炎の中で置き去りにされていた赤ん坊ともども親切な夫婦に引き取られる。
関東大震災、東京大空襲を経験した著者の描く火事の情景があまりにもリアルで、刻一刻と迫る火の手がとても恐ろしく感じる。また、庄吉の求婚を受けたこと、赤ん坊を拾ったことでおせんの人生は大きく変わってゆき、一瞬の判断が彼女の運命を狂わせたことが冷徹に描かれていく。
艱難辛苦を乗り越えて庄吉と結ばれる物語かと思いきや、上方から戻ってきた彼はおせんが幸太の子を産んだという噂を真に受けて彼女を信じなかった。しばらくして庄吉が別の女と結婚したことを知り再び正気を失ったおせんは、友人のおもんと子どもと3人で暮らすうちに徐々に回復し、本当に自分を愛してくれたのは幸太の方だったのだと思い知る。
読んでいて涙が出てくるほど悲しい物語だが、何度も災害に遭いそこから立ち上がる江戸の人々を実際に見ているようなリアルな描写で、日本人はずっと自然災害と共に生きてきたのだという連綿とした繋がりを感じる。どんなにつらい時もじっと辛抱してひたむきに生きるおせんの姿がいつまでも心に残る。 -
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江戸の表具店に弟子入りしたさぶと栄二を見舞う不幸と、それに抗ううちに成長する栄二。周五郎最高傑作、集大成と煽られ読む。なるほど味わい深き一遍です。
冒頭のシーンから引き込まれる。表題から主人公はさぶだと思いきや、栄二であることが髄分読み進めて見て気づく。最初こそ逃げ出す素振りを見せたさぶだが、終始ぶれない姿勢、自分を、呼び戻してくれたことに対する栄二への恩義を貫き通すし、主人公の栄二はプライドの高さから自分を貶めてくすぶり続ける。石川島でのエピソードも計算され尽くした構成で読み手を引き込む。栄二世間への批判から殻に閉じこもる内情の変化が徐々に現れるところが秀逸。
綺麗事だけではない、おすえの終盤の告白など人の悲し性も悲しくも表現され、人の生き方において大事なことを教えてくれる。
周五郎作品をもっと読みたくなる傑作。 -
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お家騒動の発端以後、ひたすらに耐え忍ぶことを貫き通した原田甲斐。
私利私欲のためでもなく、名誉のためでもなく、ただただ伊達藩とそこに属する人々を守るために、彼は進んで悪名を被り、そうすることで黒幕の懐深くへ入り込む。
分かり合えた友人、同士、家臣たちから白眼視されたり、次々に死に別れる事態に見舞われても、哀しみを押し殺し、黙々と命の襷を拾うに止める。
全ては黒幕を追い詰めるためだった。
堪忍・辛坊が、時にもどかしく感じたけれど、凄絶な最期の瞬間にまでそれを貫徹されると、感動だけが心に残ることに。
「いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛坊、──人の眼につかず名もあらわれないところに働いている力なのだ」。
この箇所、この一文に、主題が結晶しているような。
著者が一番伝えたかったのはこれだったのかと思う。