山本周五郎のレビュー一覧
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ネタバレ江戸時代中期、17歳のおせんは幼なじみの大工の庄吉から「上方へ修行に行くが、戻ってきたら一緒になってほしい」と告げられ、思わず「待っているわ」と答える。庄吉には恋敵がおり、同じくおせんと幼なじみの幸太も彼女を嫁にほしいと思っていた。
翌年、江戸の町を大火が襲い、逃げ遅れそうになったおせんを助けに来てくれたのは幸太だった。燃えさかる火の中を逃げまどい、とうとう隅田川の川岸に入るが、幸太は「おまえだけは何としても守ってみせる」と言い残して精根尽き果て溺れ死んでしまう。無事に生き延びたおせんは大きなショックを受けて記憶を失い、炎の中で置き去りにされていた赤ん坊ともども親切な夫婦に引き取られる。
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とても良かった。
無実の罪で人生転落してしまった栄二が度重なる受難に遭う姿は読んでいてとても胸が痛かったけど、人との関わり合いの中で大事な事に気づき立ち直り復活していく姿に心打たれます。
そして、どこまでも栄二を信じ尽くしてやまない愚図で優しいさぶと言う人物、その存在がかけがえのないものであると栄二が気づいていく事に感動し、タイトルが「栄二」ではなく「さぶ」である事に納得する。
寄場人足・与平の言葉は生きていく上で誰にでもいつの時代にも当てはまる事だけど、とかく自分の事で精一杯で忘れがちな事だけに、心にずっしりと残りました。
「ー生まれつきの能力を持っている人間でも、自分ひとりだけじゃあなんに -
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江戸の表具店に弟子入りしたさぶと栄二を見舞う不幸と、それに抗ううちに成長する栄二。周五郎最高傑作、集大成と煽られ読む。なるほど味わい深き一遍です。
冒頭のシーンから引き込まれる。表題から主人公はさぶだと思いきや、栄二であることが髄分読み進めて見て気づく。最初こそ逃げ出す素振りを見せたさぶだが、終始ぶれない姿勢、自分を、呼び戻してくれたことに対する栄二への恩義を貫き通すし、主人公の栄二はプライドの高さから自分を貶めてくすぶり続ける。石川島でのエピソードも計算され尽くした構成で読み手を引き込む。栄二世間への批判から殻に閉じこもる内情の変化が徐々に現れるところが秀逸。
綺麗事だけではない、おすえの終 -
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お家騒動の発端以後、ひたすらに耐え忍ぶことを貫き通した原田甲斐。
私利私欲のためでもなく、名誉のためでもなく、ただただ伊達藩とそこに属する人々を守るために、彼は進んで悪名を被り、そうすることで黒幕の懐深くへ入り込む。
分かり合えた友人、同士、家臣たちから白眼視されたり、次々に死に別れる事態に見舞われても、哀しみを押し殺し、黙々と命の襷を拾うに止める。
全ては黒幕を追い詰めるためだった。
堪忍・辛坊が、時にもどかしく感じたけれど、凄絶な最期の瞬間にまでそれを貫徹されると、感動だけが心に残ることに。
「いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛坊、──人の眼につかず名もあら -
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周五郎新潮文庫版短編集、木村久邇典氏解説には周五郎の短編ジャンルが大まかにわかるものを選んでいるとのこと。そうですね「×××もの」と分類できます。
再読ですが、ひさしぶりに周五郎ワールドにとっぷりと漬かりましたので、一編ごとの印象を。
「ひやめし物語」
武家の次男三男は跡継ぎになれない、養子に行くか部屋住みで終わるか、肩身が狭いのは現代のパラサイトも同じだけれど、甲斐性があれば何とかなるのであるという話。その甲斐性が古本集めというからおもしろい。
「山椿」
二組の男女のもつれあいというと、どろどろしているみたいだけれど、ここにはかしこい知恵とユーモアがあるのです。
「おたふく」
女性を信じる -
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ネタバレ驚いた。
おそろしく面白い。
「時代劇」という形から、若干敬遠していた所があるのだけれど、
読み進めてみると先が気になり気になりどんどんと読んでしまう。
時代劇ではあるけれど、そこに描かれているのはいつの世も変わらぬ「人間」だった。
人が貫く「意志」だった。
こういう人になりたい、そう思える人間たちが多数登場し、基本的に善意が報われる世界観なのがまた染みる。
『雨あがる』『雪の上の霜』は同じ主人公が登場する。
伊兵衛という最強の侍、しかし恐ろしく人に優しくて損ばかりしている男がそれだ。
優しさゆえにトラブルに巻き込まれ、それをどうにか乗り越えていく清々しい物語。
伊兵衛さんの行動は、それ絶対