山本周五郎のレビュー一覧

  • 柳橋物語・むかしも今も

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     江戸時代中期、17歳のおせんは幼なじみの大工の庄吉から「上方へ修行に行くが、戻ってきたら一緒になってほしい」と告げられ、思わず「待っているわ」と答える。庄吉には恋敵がおり、同じくおせんと幼なじみの幸太も彼女を嫁にほしいと思っていた。
     翌年、江戸の町を大火が襲い、逃げ遅れそうになったおせんを助けに来てくれたのは幸太だった。燃えさかる火の中を逃げまどい、とうとう隅田川の川岸に入るが、幸太は「おまえだけは何としても守ってみせる」と言い残して精根尽き果て溺れ死んでしまう。無事に生き延びたおせんは大きなショックを受けて記憶を失い、炎の中で置き去りにされていた赤ん坊ともども親切な夫婦に引き取られる。

    0
    2021年09月29日
  • さぶ

    Posted by ブクログ

    とても良かった。
    無実の罪で人生転落してしまった栄二が度重なる受難に遭う姿は読んでいてとても胸が痛かったけど、人との関わり合いの中で大事な事に気づき立ち直り復活していく姿に心打たれます。
    そして、どこまでも栄二を信じ尽くしてやまない愚図で優しいさぶと言う人物、その存在がかけがえのないものであると栄二が気づいていく事に感動し、タイトルが「栄二」ではなく「さぶ」である事に納得する。
    寄場人足・与平の言葉は生きていく上で誰にでもいつの時代にも当てはまる事だけど、とかく自分の事で精一杯で忘れがちな事だけに、心にずっしりと残りました。
    「ー生まれつきの能力を持っている人間でも、自分ひとりだけじゃあなんに

    0
    2021年09月20日
  • さぶ

    Posted by ブクログ

    江戸の表具店に弟子入りしたさぶと栄二を見舞う不幸と、それに抗ううちに成長する栄二。周五郎最高傑作、集大成と煽られ読む。なるほど味わい深き一遍です。
    冒頭のシーンから引き込まれる。表題から主人公はさぶだと思いきや、栄二であることが髄分読み進めて見て気づく。最初こそ逃げ出す素振りを見せたさぶだが、終始ぶれない姿勢、自分を、呼び戻してくれたことに対する栄二への恩義を貫き通すし、主人公の栄二はプライドの高さから自分を貶めてくすぶり続ける。石川島でのエピソードも計算され尽くした構成で読み手を引き込む。栄二世間への批判から殻に閉じこもる内情の変化が徐々に現れるところが秀逸。
    綺麗事だけではない、おすえの終

    0
    2021年09月19日
  • 樅ノ木は残った(上)

    Posted by ブクログ

    あらすじ
    伊達家62万石の危機を察知した仙台藩の重臣・原田甲斐(里見浩太朗)が、たった一人で謀略から守る姿を描いた娯楽時代劇。 仙台藩の重臣・原田甲斐は3代藩主・伊達綱宗の放蕩に端を発した混乱の中、綱宗の叔父・伊達兵部の藩乗っ取りの陰謀を察知する。 兵部は幕府老中首座酒井雅楽頭と姻戚関係を結ぶなどして藩内での勢力を徐々に拡大。
    感想
    昔、仕事で涌谷担当をしてたので何か親近感を感じました。惜しい人を亡くした。

    0
    2021年08月27日
  • 小説 日本婦道記

    Posted by ブクログ

    (再読)この四半世紀で価値観がだいぶ変容したように思う。この作品が発表された時代においても賛否両論あったのだが、現代においては更に受け入れがたい諸氏が大半なのではないだろうか...。ただ、私はつつましやかにけなげに生きていきたいと共感してしまうのです。

    0
    2021年08月23日
  • 雨あがる

    Posted by ブクログ

    「深川安楽亭」は今ひとつ好きになれない。周五郎らしい登場人物であるようなないような。陰のある凄みがダメなのかもしれない。正太郎が書いていたら「雲霧仁左衛門」みたいで好きになれたかも。
    その他は文句なし。梅雨が明け「雨あがる」を無性に読みたくなって読み始めた。続編があることを初めて知った。その続編も切なく、気持ちいい。

    0
    2021年08月07日
  • 日本残酷物語 1

    Posted by ブクログ

    難破船を糧としている海辺の人びとがいたことは、現在ではほとんど語られなくなっている。
     福山のそばで日本住血吸虫による被害があったことは現在では場所が特定されないように書かれている。
     からゆくさん、についても書かれているが、これは他書のほうがより詳しい。
     1959年版は、活字が細くて薄く、厚いのが欠点である。

    0
    2021年08月01日
  • 樅ノ木は残った(下)

    Posted by ブクログ

    お家騒動の発端以後、ひたすらに耐え忍ぶことを貫き通した原田甲斐。
    私利私欲のためでもなく、名誉のためでもなく、ただただ伊達藩とそこに属する人々を守るために、彼は進んで悪名を被り、そうすることで黒幕の懐深くへ入り込む。
    分かり合えた友人、同士、家臣たちから白眼視されたり、次々に死に別れる事態に見舞われても、哀しみを押し殺し、黙々と命の襷を拾うに止める。
    全ては黒幕を追い詰めるためだった。
    堪忍・辛坊が、時にもどかしく感じたけれど、凄絶な最期の瞬間にまでそれを貫徹されると、感動だけが心に残ることに。
    「いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛坊、──人の眼につかず名もあら

    0
    2021年07月09日
  • 山本周五郎中短篇秀作選集 5 発つ

    購入済み

    まだまだ続いてほしい

    正直もう少し続いてほしかったか、まぁ贅沢というものか。このシリーズ、ぜひとも他の作家でも企画して欲しい。

    0
    2021年07月02日
  • 山本周五郎中短篇秀作選集 4 結ぶ

    購入済み

    この風情たるや

    ときに説教臭いが読後の清涼感たるや、流石の一言である。良質の時間とは山本の作品を読むことだと思っている。

    0
    2021年07月02日
  • 山本周五郎中短篇秀作選集 2 惑う

    購入済み

    待望の電書

    何度も読み返した作品集。電書で読めるのは嬉しすぎる。味わいでは紙媒体に負けるが、どこでも作品を堪能できるのは魅力的である

    0
    2021年07月02日
  • 山本周五郎中短篇秀作選集 1 待つ

    購入済み

    これよ

    好きな作家はたくさんいるが何度も読みかえす作家は少ない。山本周五郎・池波正太郎・藤沢周平はまさにそんな作家である。

    0
    2021年07月02日
  • ちいさこべえ 1

    購入済み

    最高です

    山本周五郎の世界を現代に置き換えて、人情と意地を見せてくれる快作。五人の子供たちも周りの人もリアルで魅力的です。

    0
    2021年06月24日
  • 大炊介始末

    Posted by ブクログ

    周五郎新潮文庫版短編集、木村久邇典氏解説には周五郎の短編ジャンルが大まかにわかるものを選んでいるとのこと。そうですね「×××もの」と分類できます。
    再読ですが、ひさしぶりに周五郎ワールドにとっぷりと漬かりましたので、一編ごとの印象を。

    「ひやめし物語」
    武家の次男三男は跡継ぎになれない、養子に行くか部屋住みで終わるか、肩身が狭いのは現代のパラサイトも同じだけれど、甲斐性があれば何とかなるのであるという話。その甲斐性が古本集めというからおもしろい。
    「山椿」
    二組の男女のもつれあいというと、どろどろしているみたいだけれど、ここにはかしこい知恵とユーモアがあるのです。
    「おたふく」
    女性を信じる

    0
    2021年05月03日
  • 樅ノ木は残った(下)

    Posted by ブクログ

    歴史上有名なお家騒動である伊達騒動を伊達家の国老原田甲斐の眼を通して描かれている。江戸幕府のお家取り潰しの陰謀に晒される伊達藩、それを防ぐ為に原田甲斐の打つ手が奥深い。昭和29年に執筆されたとは思えない程の謀略に富んだエンタテイメントの一級品

    0
    2021年03月26日
  • 青べか物語

    Posted by ブクログ

     山本周五郎 著「靑べか物語」、1964.8発行。著者は大15春、浦安にスケッチでぶらり訪れ、風景が気に入って3年過ごしたそうです。数えの23から26迄。この作品は浦粕(浦安)という根戸川(江戸川)下流の漁師町を舞台にした物語です。著者若き日の体験を小説風にアレンジされてます。青べかってなんだべと思いつつ、浦粕に住むたくましい男たち、女たちの暮らしぶりにぐいぐい引き込まれていきました。さしずめ昭和の初めのディズニーランドのようですw。体も心も素っ裸な女性が印象的です。短編連作、ある意味、異色作品だと思います。

    0
    2021年03月07日
  • 小説 日本婦道記

    Posted by ブクログ

     「人の道」を説く山本周五郎の名作「小説 日本婦道記」、1958.10発行、11話が収録されています。妻たる道(覚悟)を描いた「松の花」「不断草」、母たる道を示した「箭竹(やだけ)」、姑たる道を示唆した「梅咲きぬ」、娘の道を貫いた「糸車」・・・、感動しました。「糸車」「松の花」「不断草」、秀逸です。

    0
    2021年02月28日
  • 樅ノ木は残った(下)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    耐え難きを耐え忍んだ甲斐が、あのような結末を迎えるのは、あまりにも惨い。あまりにも口惜しい。妻と別れ、真の友の葬儀も立ち会わず、伊達藩のため、滅私で尽くした甲斐が。。。
    それでも六二万石が安泰となり、安らかに逝ったのだろうか。

    0
    2021年02月25日
  • 人情裏長屋

    Posted by ブクログ

    人は抗えない人生を持っています
    それはあきらめろということではなく
    卑屈になることなく
    真摯に受け止め精一杯歩けということなのだと思う
    殿様も乞食も人生という時間を授かり
    己を見失うことなく今できることをする日々
    人が存在する以上延々と続くのですね

    山本周五郎はやはり私の師です

    0
    2021年02月24日
  • 雨あがる

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    驚いた。
    おそろしく面白い。
    「時代劇」という形から、若干敬遠していた所があるのだけれど、
    読み進めてみると先が気になり気になりどんどんと読んでしまう。
    時代劇ではあるけれど、そこに描かれているのはいつの世も変わらぬ「人間」だった。
    人が貫く「意志」だった。
    こういう人になりたい、そう思える人間たちが多数登場し、基本的に善意が報われる世界観なのがまた染みる。

    『雨あがる』『雪の上の霜』は同じ主人公が登場する。
    伊兵衛という最強の侍、しかし恐ろしく人に優しくて損ばかりしている男がそれだ。
    優しさゆえにトラブルに巻き込まれ、それをどうにか乗り越えていく清々しい物語。
    伊兵衛さんの行動は、それ絶対

    0
    2021年01月16日