あらすじ
純真な心を持ちながらも、女の“性”ゆえに男から男へわたらずにはいられないおさん――世にも可愛い女が、その可愛さのために不幸にひきずりこまれてゆく宿命の哀しさを描いた『おさん』。芸妓に溺れ込んでいった男が、親友の助力で見事に立ち直ってゆくまでを描いた『葦は見ていた』。“不思議小説”の傑作『その木戸を通って』。ほかに『青竹』『みずぐるま』『夜の辛夷』など全10編を収める。
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いつもながら読後の満足感は高い。親子、夫婦、友人、(侍の)上下、人情など、清々しく、ホロリとさせられ、勇気が湧いてくる。短編10本が収められているが、山本には珍しい不思議で切ないファンタジ一が1本ある。これは蒸し暑い夏のよるにぴったり。また、最後に掲載されている1本は幼馴染の友情を描いたもので、主人公の最後の独り言には、さすが山本周五郎と唸らされる。心が疲れている時、ネガティブ思考に落ちた時に効く「読む薬」。
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良いですね。周五郎円熟期の作品集です。
これで周五郎は連続4冊になりますが、これが一番ですね。
今回周五郎を再読しながら意外だったのは、その暗さです。暗くされた舞台に主人公達だけが穏やかなスポットライトを浴びて立っている。そんな仕立てで出来ています。もちろん、こっけいものもあり、後期の作品には爽やかな未来と言った趣向の作品も多いのですが、どこか周りに暗さが残っているようにも思います。
藤沢周平と比較すれば、周平は冬枯れの雑木林の陽だまり。冷え込んではいるけれど、明るさはあります。一方、周五郎は主人公も周りには暖かな灯りが届いているのですが、何故か周辺が暗い。そんな感じがします。それが悪いと言っているのでは有りません。むしろ、それが周五郎の魅力なのだと思います。
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「青竹」が唯一、戦中物として含まれていたが、のびのびと周五郎の油の乗り切った短編集だった。結末が予想できず、また余韻を残して終える技法は秀逸。13.1.2
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文章の巧みさが流石です。
特に『偸盗』の文章が秀逸です
一人称で語られている物語が、まるで上質な狂言をみているように思われてきました。
『青竹』、『饒舌り過ぎる』もしみじみと心に染み入りました
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山本周五郎の短篇集。
いいっす。
どのお話も、つい引き込まれて読んでしまいます。
この魅力、どこにあるのでしょうか。
語り口のうまさ、ストーリー展開の巧みさ、いろいろあるでしょうが、何より書いている人の「人間というもの」に対する確かな見識があるからでありましょう。
いいっす。
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山本周五郎さんらしい、傑作だと思います。歴史小説というカテゴリになってますが、周五郎さんの作品は、是非、女性に読んでもらいたいものが多い気がしますね。
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貸してもらいました(ありがと〜!)この柔らかな文章(最初の短編ではちょっととまどいましたが)と、淡々と人間の描写をしながらも感情をあざやかに描き出す抑えた美しさに、日本の文化の成熟を見た、というと言い過ぎか…これで今から半世紀以上前に書かれたお話なのです。本当に美しいよ。
Posted by ブクログ
どれも周五郎らしい、でもそれぞれに色合いの違う短編が揃った読み応えのある短編集。男の武骨な弱さと女の健気な強さ、時の流れの無情さや夢物語ではない現実の厳しさなどのこもった世界は、時代小説という枠を越え、普遍的な「人間」の哀しい愛しさを表しているようで、とても身近に感じられます。個人的に好きなのは「夜の辛夷」「並木河岸」など。切ない…。
Posted by ブクログ
そういう身体、そういうこと、ってどういう体のどういうことだ?
と思いつつ読み進めたところ、うーん
記憶も心もどこかへ吹っ飛んで、完全なるあへあへ状態になり、わからない男の名を呼んでしまうとか言う女の「からだの癖」だと。
いやこれ普通に考えれば演技だし、本当とすればある意味脳の欠陥だし。
これを小説にしてしまって、世の男たちは「こんな女がどこかにいるのだ」と憧れちゃうわけで、まあねー周五郎もしてやったりのニタニタかもしれんけども。
別にそんな体でなくたって、忘れられず人生を狂わしてしまう異性は存在すると思うのよ。むしろそこに限定する設定にすれば書く場合には簡単かもね、なんて穿ったことも思いました。ほほほ
Posted by ブクログ
山本周五郎の短篇時代小説集『おさん』を読みました。
『寝ぼけ署長』、『五瓣の椿』、『赤ひげ診療譚』に続き、山本周五郎の作品です。
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純真な心を持ちながらも、女の“性”ゆえに男から男へわたらずにはいられないおさん――世にも可愛い女が、その可愛さのために不幸にひきずりこまれてゆく宿命の哀しさを描いた『おさん』。
芸妓に溺れ込んでいった男が、親友の助力で見事に立ち直ってゆくまでを描いた『葦は見ていた』。
“不思議小説”の傑作『その木戸を通って』。
ほかに『青竹』『みずぐるま』『夜の辛夷(こぶし)』など全10編を収める。
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1943年(昭和17年)から1963年(昭和37年)に発表された10篇が収録されています… 『その木戸を通って』と『おさん』は、今年2月に読んだ短篇集『山本周五郎名品館Ⅰ おたふく』に収録されていたので再読ですね。
■青竹
■夕靄の中
■みずぐるま
■葦は見ていた
■夜の辛夷
■並木河岸
■その木戸を通って
■おさん
■偸盗
■饒舌り過ぎる
■解説:木村久邇典
愉しめる作品が多かったですが、そんな中でも、
手柄を上申しない一徹な武士の生き方に憧れを感じる『青竹』、
老婆の期待を裏切れず、衝動的に口から出た嘘により救われる展開… 明るい未来を予感させる結尾が巧みで、人間であることの哀しみや喜びが感じられる『夕靄の中』、
武家の養女となった太夫が、健気に明るく成長する展開と彼女の天真爛漫な性格に好感がもてた『みずぐるま』、
どんな夫婦にも幾度か訪れる危機を描きつつ、二人だけの共通の遠い思い出が心を引き留める、清々しくて、明るい未来を予感させる結末の『並木河岸』、
不思議小説… 舞台を江戸にしたSFで幻想部分と現実部分の奇妙な調和が愉しめる『その木戸を通って』、
可愛いおんなであるがゆえの宿命の哀しさを描く『おさん』、
の6篇が印象的でしたね… 連続して愉しんでいる山本周五郎の作品、次は長篇を読んでみるかな。
Posted by ブクログ
時代小説短編集。もっとも印象に残ったのは、「その木戸を通って」だ。これは”すこし不思議SF”な物語で、忽然と現れた娘が家に居つき、子をなし幸せな結婚生活を送るが . . . 。H.G.ウェルズの「くぐり戸(白壁の緑の扉)」やロバート.F.ヤング「たんぽぽ娘」が好きなかたにお薦め。
この喪失感は . . .
Posted by ブクログ
全1巻。
短編集。
全部で10本いり。
・青竹
珍しい歴史小説。潔い武士の心持ち。
泣ける。
・夕霞の中
復讐しようとする男の人情劇。
・みずぐるま
シンデレラストーリー。
・葦は見ていた
青春時代の全てを投げ打つ程の愛と、
その愛から立ち直った後、壮年になってからとの対比。
・夜の辛夷
岡場所で必死に生きる女と、
たまたま客になった訳あり男の人情劇。
・並木河岸
ダメになりそうな夫婦が立ち直るきっかけは。
・その木戸を通って
記憶喪失の女と、その夫になった男。
・おさん
悲しい女の性に振り回される女と男達。
・偸盗
平安時代の大泥棒の物語が演劇調に展開する
コミカルで不思議な話。
・饒舌り過ぎる
無口なのとおしゃべりなのの友情物語。
ほっこりする。
青竹と、偸盗と、饒舌り過ぎるが好きだった。