山本周五郎のレビュー一覧

  • 日日平安

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    「さぶ」に続いて周五郎の作品は二作目です。
    以前レビューを書いた「さぶ」が長編だったのに対し、こちらは短編集です。

    面白かった。
    うん、イヤ本当に面白かった。

    何が面白かったんだ、って話ですが、本当に小説としてすごく面白かったんです。
    なんだろう、うまい、とでも言えばよいのでしょうか。
    何か文句のつけようがない、というか。

    小説家の「うまさ」にも色々あると思います。
    山本周五郎を評しては良く、ヒューマニズム、という言葉が使われるのを見るのですが、
    その本質というか、根っこの部分がまず本当に面白い。人間の色んな感情、心の機微とでも言うのでしょうか、そこに共感したり、引き込

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    2009年10月29日
  • ながい坂(下)

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    かなり地味な小説ですが、この真面目な主人公の頑張りに心打たれるものがありました。がんばれば、いつか〜・・・。苦しい重荷を背負って、自分を立て直しながら前進していく姿。私もがんばらないと!

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    2009年10月04日
  • 季節のない街

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    語りはあたかも「街」全体を見渡す
    傍観者の視点のように
    淡々と複数の話をまたいで進められる。

    その客観的な視点からでさえも
    「街」の人の生活があまりにも
    壮絶だと感じてしまう。

    死や飢え、貧窮、不倫や近所に広まる噂話…

    そういった世の中の生々しい部分を
    浮き彫りにしているようなこの作品。

    そこに登場する全ての人物は、
    なんやかんやで作者に
    嫌われてはいない(いなかった)気がする。

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    2009年10月26日
  • 人情裏長屋

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    私にとって一昨年11月以来久しぶりの山本周五郎氏の小説。読み始めからもう山本氏の世界引き込まれてしまいます。11編の短編どれをとってみても珠玉いえる。男同士の友情を描く『三年目』や『秋の駕籠』などは『さぶ』を髣髴させる話だ。
    驚いたのは表題作『人情裏長屋』だ。めっぽう腕のたつ浪人・松村信兵衛は裏長屋住まい。金の入り用があると「取手呉兵衛」と名乗って道場破りをして金を稼ぐ。あっ、これは今から三十数年前、私がまだ中学生か高校生の頃にテレビでやっていた時代劇『ぶらり信兵衛道場破り』ではないか。高橋英樹が主演、信兵衛役でした。普段は贅沢をせずこつこつと仕事をしてつましい生活をしている信兵衛が、困ってい

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    2009年10月07日
  • 栄花物語

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    ソンやらトクで物事を判断している限り、どんな情報も自分の血肉にはならない。
    情報は、黄ばんだ白い、ブヨブヨとした脂肪に簡単にその姿を変えて、本当の自由を味わうだけの体力をあなたから奪う。
    背骨は痩せ細るばかりだ。

    「社会」は準備されているものではなく、自分の脳と体を駆使して、出来るだけ美しく作り上げていくものだと思う。

    美しさは、善悪という概念を軽く飛び越える。

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    2009年10月04日
  • 五瓣の椿

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    まだ学生の頃、涙しながら読んだ。
    私が『周五郎病』に罹ったのは、この作品のせいだ。
    個人的に大変思い入れの強い作品

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    2009年10月04日
  • 季節のない街

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    短編集。
    黒澤明監督の映画『どですかでん』の原作となった作品。
    戦後直後のヤミ市で生きる、知的障害の青年六ちゃんは
    いつも電車に乗っています。六ちゃんにしか見えない電車は
    毎日「どですかでん、どですかでん」と音を立てて疾走します。

    貧しいが、どんな人でも自由に生きた時代。

    やるせなさと暖かさが両立する作品です。

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    2009年10月04日
  • 風雲海南記

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    骨太なアドベンチャー作品だと思います。登場人物の関連性に「偶然にもホドがある」と思ってしまう部分もありますが、大目にみてしまうくらい内容に厚みがあります。

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    2009年10月04日
  • 柳橋物語・むかしも今も

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    山本周五郎さんは、文章が上手ですね。ただ文字が並んでいるだけなのに、まるで江戸時代にタイムスリップしたような気分に浸れます。火事の描写なんか本当に経験したんじゃないかと思ってしまう程リアルです。
    物語は、おせんという女性がただただ酷い目に遭う話なんですが、前向きに生きていく。これを読むと優しい気持ちになれますね。
    それにしても、幸太は本当にいい男だ。自分もこんな人間になりたい。
    私は、『さぶ』より好きですね。

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    2009年10月04日
  • おごそかな渇き

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    6年ぐらい前に友人から薦められた。今年の始め、本屋でふとそのことを思い出して探してみたらあったので買ってきた。
    表題作の「おごそかな渇き」を一番最初に読んだ。書きかけで絶筆となった作品。テーマが深くそれだけに残念だった。
    西洋文学に深くはまり込んでいた自分にとって、日本が舞台の小説は、特に古びた日本の背景は、何となく受け付けなくて、「おごそかな〜」以外はずっと手をつけずに机の上に置きっぱなしにしていた。ある折に、ふと読み始めた所ぐいぐいとひきつけられて、忙しい仕事のあいまに少しずつ読み進めながら気付いたら読み終わってしまった。ものすごく良かった!

    近代化が進むそれ以前の日本。人の心、言葉が今

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    2009年10月04日
  • ならぬ堪忍

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    名誉を傷つけられ「我慢できねえ!ぶっ殺す!」といきり立つ、将来のある若者。
    キレやすい人に是非。
    その他盛りだくさんの短編集。

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    2009年10月04日
  • 寝ぼけ署長

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    山本さん唯一の探偵小説。解説に、氏にしか書けない探偵小説だと書かれてますが、そのとおりだと思いました。温かな短編集で大好きです。

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    2009年10月04日
  • ながい坂(上)

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    最高。主人公には正直ついていけない部分が多すぎるのだけれど、それはそれで、男としてそういうこともあるよね。山本周五郎、イイとは聞いていましたが、これほどイイとは!瀬尾まいこは女の本でしたが、この本は男なら読まねばならないでしょう。

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    2009年10月04日
  • 町奉行日記

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    大衆小説を扱っている色々な雑誌に掲載された短編を集めたものです
    内容がすばらしいです。特に文章が巧妙だったり、ストーリーに意外性があったりする訳ではありませんが、非常に好意の持てるキャラクターと人間味あふれるストーリーに惹かれます。「惹き付けられる」といった強い感じではなく、ふわふわと、「あぁ、うまそうな匂いだなー」みたいな(解かりにくいかなあ...)
    実際の世の中に、この本の中に出てくるような人はそういないとは思いますが、別に作者は楽観的な、または安易な考えからそのような人物を登場させたのではなく、そこに彼の希望やメッセージを託したものだと、僕は思いました

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    2009年10月04日
  • 寝ぼけ署長

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    やはり山本周五郎だ。現代,とはいえ,戦後間もない感じなのでお金の単位や価値が大分違うし,ミステリーといってもそれより寝ぼけ署長「五道三省」の口から語られる弱い立場のものへの限りない理解と愛情。やはり山周。署長の去り際も山周らしい。

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    2009年10月04日
  • おごそかな渇き

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    周五郎絶筆の「おごそかな渇き」を初めとして雨上がるやかあちゃんはもちろん,これまた名作がずらり。特におごそかな〜は本当に周五郎の人生観が凝縮されるに違いない,という作品に仕上がっただろうと思われる。残念。

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    2009年10月04日
  • 樅ノ木は残った(中)

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    この作品ほど,私の中でいつまでも余韻に浸れるものはなかった。原田甲斐。この名前に何度胸を痛めただろう。読み進めれば読み進めるほど辛くなる。中では,甲斐の人間らしい部分に触れることが出来る。大鹿「くびじろ」との一戦にこそ,原田甲斐の本音が見える。

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    2009年10月04日
  • 人情裏長屋

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    2007年5月に歌舞伎座昼の部で坂東三津五郎の若殿と尾上松緑の泥棒で上演された「泥棒と若殿」の原作が読みたくて探した本。お家騒動の内紛で幽閉されてその日の食料にも事欠き餓死するかもしれないと武士の世界に絶望しかけた若殿と、お人好しにもつい彼に食料を運んでくるようになってしまう泥棒との話で、非常に原作に忠実に舞台化されていることがわかる。山本周五郎はいい話ばかり書いているわけではないけれど、これは表題作を含めて大半が結末の温かい話を集めていて読後感がいい。講談調の語り口の楽しい「風流化け物屋敷」などもなかなかいいですよ。

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    2009年10月04日
  • 柳橋物語・むかしも今も

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    山本周五郎の時代小説がなぜ魅力的なのか。それはその時代を生きる人々の美徳を、本当に美しいものとして書き上げているからだ。分不相応なものを求めない、けれど決して諦めているわけではない。与えられた世界の中で、いかに幸福を求め、五感をフルに使い、人間らしく生きるか。心が豊かであるとはどういうことか、読み返すたびに思い知らされる。

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    2009年10月04日
  • 町奉行日記

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    映画にもなった表題作は良かった。
    一度も奉行所に出勤しない小平太が、裏取引の巣窟を掃除する物語。誰が味方で、誰が敵か推理しながら楽しめた。
    奉行所の役人の日記と通常の物語が入れ子で展開するのも新鮮な手法でした。

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    2009年10月04日