山本周五郎のレビュー一覧
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「さぶ」に続いて周五郎の作品は二作目です。
以前レビューを書いた「さぶ」が長編だったのに対し、こちらは短編集です。
面白かった。
うん、イヤ本当に面白かった。
何が面白かったんだ、って話ですが、本当に小説としてすごく面白かったんです。
なんだろう、うまい、とでも言えばよいのでしょうか。
何か文句のつけようがない、というか。
小説家の「うまさ」にも色々あると思います。
山本周五郎を評しては良く、ヒューマニズム、という言葉が使われるのを見るのですが、
その本質というか、根っこの部分がまず本当に面白い。人間の色んな感情、心の機微とでも言うのでしょうか、そこに共感したり、引き込 -
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私にとって一昨年11月以来久しぶりの山本周五郎氏の小説。読み始めからもう山本氏の世界引き込まれてしまいます。11編の短編どれをとってみても珠玉いえる。男同士の友情を描く『三年目』や『秋の駕籠』などは『さぶ』を髣髴させる話だ。
驚いたのは表題作『人情裏長屋』だ。めっぽう腕のたつ浪人・松村信兵衛は裏長屋住まい。金の入り用があると「取手呉兵衛」と名乗って道場破りをして金を稼ぐ。あっ、これは今から三十数年前、私がまだ中学生か高校生の頃にテレビでやっていた時代劇『ぶらり信兵衛道場破り』ではないか。高橋英樹が主演、信兵衛役でした。普段は贅沢をせずこつこつと仕事をしてつましい生活をしている信兵衛が、困ってい -
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6年ぐらい前に友人から薦められた。今年の始め、本屋でふとそのことを思い出して探してみたらあったので買ってきた。
表題作の「おごそかな渇き」を一番最初に読んだ。書きかけで絶筆となった作品。テーマが深くそれだけに残念だった。
西洋文学に深くはまり込んでいた自分にとって、日本が舞台の小説は、特に古びた日本の背景は、何となく受け付けなくて、「おごそかな〜」以外はずっと手をつけずに机の上に置きっぱなしにしていた。ある折に、ふと読み始めた所ぐいぐいとひきつけられて、忙しい仕事のあいまに少しずつ読み進めながら気付いたら読み終わってしまった。ものすごく良かった!
近代化が進むそれ以前の日本。人の心、言葉が今 -
Posted by ブクログ
大衆小説を扱っている色々な雑誌に掲載された短編を集めたものです
内容がすばらしいです。特に文章が巧妙だったり、ストーリーに意外性があったりする訳ではありませんが、非常に好意の持てるキャラクターと人間味あふれるストーリーに惹かれます。「惹き付けられる」といった強い感じではなく、ふわふわと、「あぁ、うまそうな匂いだなー」みたいな(解かりにくいかなあ...)
実際の世の中に、この本の中に出てくるような人はそういないとは思いますが、別に作者は楽観的な、または安易な考えからそのような人物を登場させたのではなく、そこに彼の希望やメッセージを託したものだと、僕は思いました