あらすじ
どんな激戦に臨んでもいつも生きて還ってくるために、臆病者とさえ誤解されながら、なおも生きつづける兵庫源八郎。その細心にして豪胆な戦いぶりに託して、“玉砕”が叫ばれていた太平洋戦争末期に作者の信ずるところを強く打ち出した〈日本士道記〉シリーズの表題作。かけ違った恋に衝撃を受けつつも、剣の道を貫く『藤次郎の恋』。ほかに『立春なみだ橋』『豪傑ばやり』など全12編。
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Posted by ブクログ
非常によかった。
長編小説が好きで あまり短編集は読まないのですが、これは読んでよかったです。短編という短いかたちだからこそ、ことばのひとつひとつが光ってる。そしてストーリー展開の見事さを感じました。これに入ってるどの短編作品もよかった。心にゆっくり染み込んでくと思ったら、読後の清々しさと言うのか、清廉な衝撃にハッとさせられる。特に好きだったのは「籐次郎の恋」。
武家モノ苦手な人にも 最初はガマンしてもらいつつ、騙されたと思って読んで欲しい(・ω・)
Posted by ブクログ
短い文章の中に、人間の生き様を描いた作品。
その中でも、お気に入りなのが三つ。
・足軽槍一筋:足軽がその力量を認められない事に対してもがく話
・藤次郎の恋:大人しい藤次郎、美人の小波、美男だが酒癖の悪い数馬の三角関係
・生きている源八:部下を失いながらも目的を達成する源八郎を描く話(酒井忠次の旗下)
Posted by ブクログ
熊谷十郎左 「獺眠りの十郎左」普段は昼寝してばかりの主人公やるときはやるという渋いキャラ(福島正則城下)
西品寺しび介 剣で針を割ることを生涯の目標とした農民の話(池田光政城下)
足軽槍一筋 家の再興のため諸国を旅する兄妹
藤次郎の恋 剣術道場での三角関係
聞き違い ということにして憎い敵を討った話(水戸光圀城下)
新女峡祝言 本家の伯父とケンカしながら治水工事をやろうとする主人公、旅行にきた友と三角関係に
立春なみだ橋 ヤクザな主人公、親子ごっこ
豪傑ばやり 戦国の余風で豪傑を召し抱えるのが流行った大名家、への風刺
生きている源八 どんなに激しい戦でも必ず生きて帰った主人公(酒井忠次の旗下)
虎を恐るる武士 伊達政宗と名笛をめぐって知恵くらべ
驢馬ならし 小舟の「ボヴァリイ夫人」をうまく漕ぐ話
戯曲破られた画像 仮面夫婦の話
すべて戦前に書かれた物。力強くほろりとさせられる話ばかり。
「軍国主義に踊らされ、出世栄達、手柄功名をよしとする当時の世潮への、否定的見解がこめられている」
「あのころの小説家はたいてい一冊や二冊の戯曲集を出版したもんです。ところが山本だけは頑として出さなかった」戯曲表現には多くの製薬が伴う(解説より)