山本周五郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(01)
普通には時代小説として読まれるだろう。また、文庫版の奥野健男の解説にあるようにビルドゥングスとして、また現代的にはサクセスのコツを含むビジネス小説として読まれるのかもしれない。
しかし、本書は文体論としても問題的なあり方をしており、驚きをもって読まれる。例えば、時系列あるいは空間系列に従うシークエンシャルな文脈の流れにあって、文脈から離れた回想や記憶の手がかりが、けっこう生々しい(*02)タイミングで突然に、普通のコンテクストからゆうとありえない角度からぶっこまれてる。こうした違和感のある文体、いってみればアバンギャルドな文体について、現代文学史の中では、川端康成の意想と比較しても面 -
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(01)
普通には時代小説として読まれるだろう。また、文庫版の奥野健男の解説にあるようにビルドゥングスとして、また現代的にはサクセスのコツを含むビジネス小説として読まれるのかもしれない。
しかし、本書は文体論としても問題的なあり方をしており、驚きをもって読まれる。例えば、時系列あるいは空間系列に従うシークエンシャルな文脈の流れにあって、文脈から離れた回想や記憶の手がかりが、けっこう生々しい(*02)タイミングで突然に、普通のコンテクストからゆうとありえない角度からぶっこまれてる。こうした違和感のある文体、いってみればアバンギャルドな文体について、現代文学史の中では、川端康成の意想と比較しても面 -
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望月峯太郎の「ちいさこべ」を読もうと思って、その前に読んでおいた方が楽しめるかと思い、原作である本書を購入。
江戸の風俗、昔の日本人の感覚みたいなものをとてもうまく書いている。表題作のちいさこべは落語の人情話を聞いているような心地よい、古の波に体ごとゆっくりと漂いながら流されるように山本周五郎が書き連ねた言葉に包まれていく。表題作以外の短編、特に花筵は三歩下がる昔の女性を表現しているのではなく、女性の真から人を愛する美しさを怒濤のような出来事のなかでよく書いている。災害の描写のうまさに引き込まれたが、巻末の解説を読むと、作者の実体験が色濃く反映されているのだなと納得。あれはそういう出来事を感