山本周五郎のレビュー一覧
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幕末。
勤王か佐幕か、開国か鎖国か、と「日本」の問題が日本全体を揺るがす時代。
誰もがそうした問題を考え、考える基盤までもがそうした問題になっている時代において、若者は、個人は、どう生きるべきであるか。
動乱の時代の中で、必死に生きる若者たちを描いた青春群像劇。
主人公は東北の小藩中邑藩の杉浦透。
彼を中心に何人もの若者の生きる悩みが描かれています。
幕末の歴史小説というと、もっぱらのイメージは「竜馬がゆく」をはじめ、司馬遼太郎の一連の作品でしょう。
幕末に大きく活躍した雄藩の志士たちや、それに対峙した新撰組など幕府の役人。
歴史の表舞台に立ったのは彼らだけど、幕末という時代はそれこそ日本中を支配していたはず。老若男女誰もが、それを感じ、考え、話題にしていたはず。
特にこれから社会に出ていく世代にとっては死活問題を伴う重大事だ。
そしてそんな若者たちの大半は、雄藩に生まれてくるわけではない。
300諸侯と言われた江戸時代に、どこにでも若者はいるわけで。
混沌とした時代に生まれ、それを実感しながら、いかにしてそこに関わればいいのか分からない。
普通の人、としての自分が共感するのはこの小説の登場人物かもしれない。
それにしてもこの作品、最初の発行は1961年です。
もう50年前だ。
ちっとも古臭く感じないのが山本周五郎のすごいところですが、
50年前も、幕末も、若者が抱える悩みはいつの時代も似たり寄ったり悩みっぱなし、ああ生きるのってなんて難しくて面白いんだ。
と、そう感じることができる作品。
さて、下巻を読もう。 -
Posted by ブクログ
あっという間に読み終えた感のある中巻。登場人物たちが生命を吹き込まれたというか、知り合いになったという感じでしょうか。未だに、主人公原田甲斐が何をどう見通して行動し、言葉を発しているのかまではわかりません。でも、その目的は理解しているつもり。 今回つくづく思うのは、作家というは普通の頭脳ではないということ。物語と情景描写だけでなく、その場の雰囲気、香り、臭い、人の動きまでを読み手の頭の中に映像化させてしまう、そんな文章を書く人って普通じゃありません。私が江戸時代の風景をこの眼で見ているわけはないので、大河ドラマやその他の時代劇で見た映像が助けになっていることは大いにあるのだけれど、それにしてもすごいものです。想像力を書き立てる文章を書く人はすごい。たくさんの人の思い、人格、駆け引きを一人の人間が創造するというのは、すごいことだと思うのです。これは、今まで小説を読んできて初めて感じたことでした。今までこういうことに気がつかなかった私が鈍なのかもしれませんね。
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Posted by ブクログ
09/08/16★★★☆
短編集。最後の現代小説2作は読まず。
どーも時代小説以外の先生はいけねえや
・暗がりの乙松
珍しい盗人もの。
三次に泥棒に入る前に金の有る無しと事情位調べておけよ、と突っ込みたくなる。
しかし梅田屋の「世の中に「義」のつく泥棒はいねぇ」の啖呵は山本周五郎の人生観が溢れていて良い。
落ちも見事でやっぱ良い話になるんだなー
・山茶花帖
八重が新一郎にもう会わないように桑島に説得される際の
「人間には誰しも自分の好みの生き方がある。〜だが大多数の者は〜出来ずに終わってしまう、それが自然なんだ。〜
人間は独りで生きているのではない。〜支い合い援け合っているのだ。〜」
のセリフは秀逸。自分の大切にしたい価値観がここにある。
二人の思い出の花となる山茶花の描写とそこに添えられる短歌が物語の美しさを増す。
これええ話や 泣 -
Posted by ブクログ
・生き別れの父親との再会(いさましい話)
・男装の麗人と、影となってお仕えする寡黙な男(菊千代抄)
・想いに戸惑う、血の繋がらない兄妹(あんちゃん)
山本周五郎作品の中でも、「お好きな方にはたまらない」系設定の短編ばかりを集めた本です。が、人間の本質に対してモラリッシュな山本周五郎作品ですから、萌え展開にはなりません。
男として生きることを強いられ、途中からは自分でそれを選んだつもりの菊千代は、トリックスター的に周りを戸惑わせる存在ではありません。専ら振り回され痛めつけられるのは彼女のほうです。社会が社会を機能させるために決めたルールが自分を阻むときは、どこかで打ち破っていくべきだ。けれど、人間が人間として生きるために必要な掟は、失ってはいけない。どの作品もそれが根底にあるように思います。
この本に対して饒舌なのは、私が「菊千代抄」で卒論書いたからです。最初は「設定がベルばらみたいー!」と、漫画的展開論みたいなのをやろうかと思ったんです。全然違いました。肩より低く頭を垂れました。打ち破るべきものと、壊してはいけないもの。そこを履き違えると、おそろしいことになりますね。確かに。