山本周五郎のレビュー一覧

  • 松風の門

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    山本周五郎さんの作品初読。初期初期の作品で、江戸時代ものの短編集のため、知らない用語がたくさん出てきたので調べながら読みました。歴史物は読み慣れていない分時間がかかりましたが、それぞれの物語に作者の想いが描かれ心に染みました。個人的に松風の門と釣忍がぐっときました。

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    2026年08月04日
  • 小説 日本婦道記

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    ネタバレ

    昭和の作家さんですが、既に歴史の教科書に出てくる方の印象の強い山本周五郎氏、の作品。

    平たく言うと、江戸時代の武家の孟母特選集、といった作品。

    ・・・
    昨今の多様性の時代には、これはもう学術的視点なくしては読めないというのが第一の感想。自分の気持ちを殺して、国の為、家の為、上司の為、夫の為、この為に尽くす女性の話の数々。

    解説によると昭和17年から21年に渡って書かれたとのことですので、まさに国家総動員の時代の作品。ひとつひとつはいわゆる美談の類と言えなくもないのですが、時代背景などを読みこめばやっぱり煽動的に使われた気がします。

    家の夫が上司の為に命を賭すとなればもうパワハラと遺族に訴えられるし、妻が気持ちを偽って夫に尽くしたらこれまた周囲が焚きつけてモラハラと言われるでしょう。

    先般の巨人軍監督の件もあったとおり、家庭や地域は、私的な個人的ないざこざを自浄できる容量・要領を持たない・失いつつあることが分かります。
    逆に本作の女性たちは、家庭や地域という小さな集団のなかで自分を貫く自由を獲得していたともいえましょう。

    ・・・
    ということで、教科書・受験国語以外では初の山本周五郎作品でした。

    どなたかのブログで見かけて興味を持ち読んでみましたが、山本氏の次の作品は…、まあ機会があれば、ですかねえ。

    なお、山本氏は唯一の直木賞受賞辞退者とのこと。諸々の理由があっての辞退だとは思いますが、そういう思い切ったことができるのは凄いなと感じました。

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    2026年05月28日
  • 周五郎少年文庫 黄色毒矢事件―少年探偵春田龍介―(新潮文庫)

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    春田龍介君は中学2年生ながら、学校中での秀才、頭の良さと言ったら、先生でも時々、彼の質問には答えにつまるくらいだった。
    そんな龍介君が弟子となった拳骨(メリケン)壮太と共に悪漢に立ち向かう。

    物理博士の父が開発した無燃料エンジンの機密を盗む黒襟飾組、白堊館で起きた射殺事件、潜水艦の失踪、黄色ダイヤの頸飾の盗難、黄色毒矢を放つスパイとの対決、満州での匕首党との猛攻

    解説によるとこの本は山本周五郎氏が売れる前に「稼ぎ原稿」として書いたものとのこと。
    中学生が拳銃を所持して車で走り回る、なんて荒唐無稽なことが描かれてるけど、少年探偵団に焦がれた私としてはハラハラドキドキで楽しかった。
    さすが!
    龍介君はちょっと鼻につくけど、メリケン壮太の奮闘や妹の文子ちゃんの頑張りで相殺?
    スパイとの攻防戦で彼が必死になってく様子も熱い。満州での暴れっぷりはやり過ぎな気も。
    スパイものより、首飾りの盗難とか射殺事件の方がホームズっぽくて好きかな。

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    2026年02月11日
  • 雨の山吹

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    周五郎って一冊読むと、もう一冊続けて読みたくなりますよね。というわけで、これ。
    「喧嘩主従」武家物ですね。そこはかとないユーモア。こういう上司だと仕えがいもあるというものだが……。また、この主であるからこそ従が生きるというもの……ふう。なかなかこうはいきますまい。
    「山茶花帖」武家の夫婦を描いた作品も周五郎には多いと記憶している。これがけっこう好きなのであるよ。男はかくの如く剛直でないとね。
    「雨の山吹」表題作。この味わいってのはもう少し年をとらねばほんとうのところはわからないのだろうか?悲哀の種類がぼくにはきっと頭でしか判ってないのだね。

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    2026年02月08日
  • 花匂う

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    全11篇からなる短編集。特に本題となる「花匂う」では、直弥が幼い頃から思っていた多津に言った「自分達は丁度の時期、経験はなにひとつむなしいものはない。大切なのはそれを活かすことだ。」が心に残る。
    他に「明暗嫁問答」「椿説女嫌い」「蘭」「渡の求婚」が印象に残ったが、残念ながら現代小説の最後の2編は私には良く理解できなかった。

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    2026年01月20日
  • 樅ノ木は残った(下)

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    ネタバレ

    山本周五郎は初読。

    伊達騒動自体もよく知らず、「たぶん原田は死ぬんだろうな」と思いながら読み始めた。各巻にひと月ずつ費やしたのは、そもそも時代物に疎く、知らない単語が多すぎたせい。上巻は最近の版で関係図や注釈があり助かったが、中下巻は昔の版で何も頼りにできず、難しい単語はスマホで調べながら読んだ。(私と同じような人には、本ごとにメモが記録できる『読書メモ」というアプリがおすすめ)

    そんなわけで完読まで3ヶ月かかったのは、主人公の原田甲斐が延々粘って動かず、周囲も細かい事件はあるものの大きな事態は動かず、下巻のラスト50ページくらいでいきなり急展開するため。延々と続く心理描写に辟易とする日が続いた。
    が、原田が最期に残した言葉とその後の「乱臣・原田」としてお家取り潰しの歴史を思うと、本来の原田は今の日本人にはない清さと温かさを併せ持つ魅力的な人物だし、「そう生きるしかない」忍ぶ悲しさが静かに伝わってくる。名作といわれる所以がわかった。

    …という感想を抱かせるほど、山本周五郎のフィクションの人物造形の巧みさに参った!
    そしてラストの宇乃の描き方は…あそこで官能描写を入れなくてもよかったのでは。そこだけ後味が悪く残念だった。

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    2025年12月15日
  • さぶ

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    ネタバレ

    不器用だけど実直でどこまでも優しいさぶと、イケメンで器用で賢い栄二の友情物語です。
    無実の罪で拘留され、罪人が住まう人足場に送られた栄二が、さぶをはじめ様々な人と関わることで成長し、立ち直る姿が丁寧に描かれていました。
    いくら賢くても、人は一人では生きてゆけないのです。
    とてもいい話でほっこりしたけれど、最後、栄二の無実の罪にかかわった真犯人には驚きました。
    私だったら許せる、かなあ・・・ちょっと納得できないかも。なので☆は減らしてしまった。。

    話の中心、というか主人公は栄二だけど、タイトルはさぶ。なんかわかるな。

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    2025年11月30日
  • 松風の門

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    今夏の宇和島初訪問を契機に手に取ります、旅行って良いもんです。
    ともかく収録作の出来にバラつきあるなぁという感じで★3としましたが、表題作含めて何作かは流石と思わせるものあり。
    暗いんだけれども人と人との繋がりへの真摯な想いの描写はこの作家独自の特徴ですが、短編になると起承転結の見事さというか技量も十二分に堪能できまする。

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    2025年11月28日
  • 樅ノ木は残った(中)

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    時代劇、、、いろんな人がいろんなところで複雑に絡まって、嘘か本当か、敵か味方か、好きか嫌いか、、、本心が分かりにくいなかで、なかなか面白いけど、長いね。。。

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    2025年09月28日
  • 髪かざり

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    太平洋戦争から終戦直後の作品からか、当時の時代背景色の強い作品が多いという印象。

    20年程前に一度読んでいたが、あらためて読み直しても面白い。(20年前の感想なんぞは覚えていないのだが…)

    登場人物の立場は様々だが、庶民の視点に置き換えても、違和感なく味わえるものもあると感じる。

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    2025年04月29日
  • 一人ならじ

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    著作当時の時代背景と現在では比較しようがないが、読めばさまざま考えさせられたり、否定的な意見が出たりもする。

    ただこれが山周節なんだろうな。

    “茶摘は八十八夜から始まる”はまさにそう。
    解説にもあるが、人間回復というテーマが感慨深い。

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    2025年04月29日
  • 赤ひげ診療譚

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    保本登が赤髭先生こと去定のもとで貧困家庭の現状を見て学んでいく。養正所という貧民でも利用できる医療機関で勤めることでいろいろな家庭環境にある患者と接し御目見医師を目指していた登の考えに変化が生まれていく。貧しいということだけでいろんな病気になりやすいし生きていくのも辛いし時代なんて関係ないんだなと、そういう人たちを救済するために小石川養正所があり多くの人を治療していくのが今後自分も見習わなければならない精神だ。

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    2025年02月24日
  • さぶ

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    初めて山本周五郎さんの時代物小説を読みました。しかも英傑を主人公にしたものではなく、江戸の一般庶民の物語。その昔TVで見た時代劇の舞台中継を微かに思い出しました。一度は復讐の為だけに生きようとした主人公が、周囲に支えられて自分が今あることに気づく物語。何故か小説のタイトルは主人公ではなく、若い頃から彼をずっと慕い支えてきた「さぶ」の名前がタイトルになっています。

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    2025年02月13日
  • 日日平安

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    思わぬ出会いから、なんの欲も
    顧みないで、ただ親切を貫いた
    結果、
    日日平安が後からついてきた。
    スピーディーな展開で、
    読みやすかった。

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    2025年02月11日
  • さぶ

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    ひとは一人では生きられない。
    信じること、許すこと、受け入れること、支えること、頼ること、頼られること、心を開くこと。
    そういうのって大事だよねと読みながら思った。

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    2024年12月01日
  • 酒みずく・語る事なし

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    珍しいエッセイだが
    難しい 表現も
    時代を感じる

    母親が二人いること
    生母との交流はほとんど記憶が無いこと それらを淡々と綴ってある
    同じだったな私も
    愛情表現する親ではなかったので
    時代の影響もあるかな

    物書きになって生活に困窮し
    友人から助けてもらう
    それでも酒を飲む

    賞は全て辞退する
    理由は読者から頂いているから
    カッコ良すぎる

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    2024年11月21日
  • 戦国武士道物語 死處

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     表題作「死處」は未発表の儘、七十数年振りに講談社の資料室から発見された作品との事。

     乱世の名も無き武士の死に様にフォーカスした短篇集。彼らの名は歴史には残らない。然し恐らくはこんな人々が嘗ては居たのであろう。


     彼らの人生と其の死に様は歴史の中に埋没した石礫のようだ。けれども、そんな石礫の一つ一つを取り上げ、磨き、彫琢し、作品に昇華した山本周五郎の筆致には得も言われぬ愛を感じる。「石ころ」作中の多田新蔵が石塊を愛でる姿には作者の姿がそのまま重なる。其の眼差しのやさしさを行間に幻視する思いであった。

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    2024年10月10日
  • 大炊介始末

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    高田郁さんがおすすめされていた「なんの花か薫る」ご読みたくて手にした一冊。
    以前アンソロジーで読んだ「こんち午の日」も懐かしく。
    「山椿」が読後感よし。
    「なんの花か薫る」は高田郁さんの時代ものを読んだ時のような、胸がぎゅっとなる切なさを覚えた。ショックとその後の気丈さを体感。ずっと忘れないお話。
    他の作品も読んでみたい。

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    2024年06月26日
  • 花杖記

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    私の読解力の問題だと思うが、全体的に登場人物の立場や性格がわかりづらく、話が入ってきづらい。

    そんな中でも表題作の『花杖記』は推理小説っぽさがあって面白かった。
    あと『逃亡記』もオチが意外で面白い。

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    2024年06月15日
  • 樅ノ木は残った(中)

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    仙台藩62万石の寸断を画策する
    敵の中にあえて取り入り
    なんとか忍従の原田甲斐
    録を頂き配下の民が
    幸せに暮らせるように
    人から疑いの眼を向けても
    平静を装い何がおきるか
    じっと観ている忍従のストーリー

    山に入り大鹿シロクビとの戦い
    誰も側に置かず
    自然の中で呼吸する
    人間本来の生きる力
    もう現代人が持てないものを
    求め 再び闘争の中に生きていく

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    2024年05月19日