山本周五郎のレビュー一覧
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菊千代抄を読んだ。
1945年に第二次世界大戦が終わった。
この小説が発表されたのは1950年。
小津安二郎の「東京物語」は1953年。
なぜここで俺「東京物語」を持ち出すのかというと、戦争を引きずった作品だからだ。
菊千代抄は、武家の物語だ。最近のトレンドであるLGBTがテーマでもある。
敗戦後、時代の空気は重かったのだろうか。もしくは、終戦後、ある種の開放感があったのだろうか。
菊千代が江戸にいた時代を戦時中に置き換えるなら、地方に移動した時代は戦後ではないか。暮らしは不自由だが、メンタルは自由に生きられたのかもしれない。
戦争が終わって、人は自由になった、という気持ちが、本作にはこめられ -
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購入済み
周五郎短編集としては中庸
周五郎ファンです。数多くの著作を読んでおります。短編集では、「おさん」「人情武士道」「雨の山吹」「繁あね」などが秀作を掲載しております。この「花匂う」に掲載の短編は周五郎としては、そこそこの出来の短編を集めております。初めての場合は、先述の短編集から選ばれることをお勧めいたします。(完)
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山本周五郎の短篇小説集『一人(いちにん)ならじ』を読みました。
ここのところ、山本周五郎の作品が続いています。
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合戦の最中、敵が壊そうとする橋を、自分の足を丸太代りに支えて片足を失った武士を描く表題作等、無名の武士の心ばえを捉えた14編。
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1940年(昭和15年)から1957年(昭和32年)に発表された作品14篇が収録… 『花の位置』だけは、時代小説ではなく、現代小説です。
■三十二刻
■殉死
■夏草戦記
■さるすべり
■薯粥
■石ころ
■兵法者
■一人ならじ
■楯輿
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山本周五郎の短篇小説集『あとのない仮名』を読みました。
『日日平安―青春時代小説』、『松風の門』、『栄花物語』に続き、山本周五郎の作品です。
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腕利きの植木職人が職を捨て、妻子を捨てた理由とは? 笑って泣ける傑作8篇。
江戸で五指に入る植木職でありながら、妻とのささいな感情の行き違いがもとで、職を捨て、妻子も捨てて遊蕩にふける男の寒々とした内面を虚無的な筆致で描いて、周五郎文学に特異な位置を占める最晩年の傑作「あとのない仮名」、夫婦の変らぬ愛情を、枯死するまで色を変えない竹柏に託した武家ものの好編「竹柏記」ほか、「主計は忙しい」「桑の木物語」「 -
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山本周五郎の長篇小説『栄花物語』を読みました。
『日日平安―青春時代小説』、『松風の門』に続き、山本周五郎の作品です。
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非難と悪罵を浴びながら、意志堅く改革に取り組んだ老中田沼意次を描く感動の歴史長編。
徳川中期、農村が疲弊し、都市部の商人が力を持ち始めた転換点。
老中首座の重責を担う田沼意次は、貧者への重税、賄賂政治、恣意的人材登用と非難にまみれていた。
――悪政の噂は本当なのか。
出所はどこなのか。
絶望の淵にあっても、孤独に耐え、改革を押し進めた田沼意次という不屈の人間像を新しい視点から描く傑作歴史長編。
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山本周五郎の短篇小説集『松風の門』を読みました。
『日日平安―青春時代小説』に続き、山本周五郎の作品です。
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幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの”の傑作「釣忍」、ほかに「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録する。
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1940年(昭和15年)から196 -
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そういう身体、そういうこと、ってどういう体のどういうことだ?
と思いつつ読み進めたところ、うーん
記憶も心もどこかへ吹っ飛んで、完全なるあへあへ状態になり、わからない男の名を呼んでしまうとか言う女の「からだの癖」だと。
いやこれ普通に考えれば演技だし、本当とすればある意味脳の欠陥だし。
これを小説にしてしまって、世の男たちは「こんな女がどこかにいるのだ」と憧れちゃうわけで、まあねー周五郎もしてやったりのニタニタかもしれんけども。
別にそんな体でなくたって、忘れられず人生を狂わしてしまう異性は存在すると思うのよ。むしろそこに限定する設定にすれば書く場合には簡単かもね、なんて穿ったことも思いました -
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山本周五郎の短篇時代小説集『おさん』を読みました。
『寝ぼけ署長』、『五瓣の椿』、『赤ひげ診療譚』に続き、山本周五郎の作品です。
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純真な心を持ちながらも、女の“性”ゆえに男から男へわたらずにはいられないおさん――世にも可愛い女が、その可愛さのために不幸にひきずりこまれてゆく宿命の哀しさを描いた『おさん』。
芸妓に溺れ込んでいった男が、親友の助力で見事に立ち直ってゆくまでを描いた『葦は見ていた』。
“不思議小説”の傑作『その木戸を通って』。
ほかに『青竹』『みずぐるま』『夜の辛夷(こぶし)』など全10編を収める。
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山本周五郎の連作ミステリ短篇集『寝ぼけ署長』を読みました。
山本周五郎の作品は今年2月に読んだ『柳橋物語・むかしも今も』以来ですね。
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“寝ぼけ署長”こと五道三省が人情味溢れる方法で難事件を解決。
周五郎唯一の警察小説。
五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。
転任が決るや、別れを悲しんで留任を求める市民が押し寄せ大騒ぎ。
罪を憎んで人を憎まず、“寝ぼけ署長”こと五道三省が「中央銀行三十万円紛失事件」や「海南氏恐喝事件」など十件の難事件を、鋭い推理と奇抜な発想の人情味あふれる方法で次々解決。
山本周五郎唯一の警察小説。
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山本周五郎作品を初めて読んだ。
伊達騒動の真実は置いといて、歴史小説として面白かったけど、共感することが難しい壮絶な価値観でもあった。
大藩の改易ともなれば、数万人の武士が失業するわけで、その事態を十数人の犠牲で防いだ、という意味では利他的な美談であることは間違いない。
しかしながら、『御家の為』と言われると、現代の価値観からすると、そこまでして守らないといけないほど伊達家はエライのか?とどうしても感じてしまう。
また、原田甲斐が汚名を被って死ぬことで、本当に仙台藩が安泰となる確証があったかというと、かなり分が悪い賭けだったのではないだろうか。ラストの修羅場具合からすると、仙台藩に自治 -
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ジョージ•オーウェルの『動物農場』の、開高健による解説の中で、日本では珍しく成功したといえる政治小説、としてこの作品が言及されていたので、気になって読み始めた。まだ、中と下が残っていて、とても長い。
人名が長くて、かつ館の所在地も含めて、呼び方が3〜4種類くらいあるので、ぼーっとしてるとスジが分からなくなる。(例、主人公の原田甲斐宗輔は船岡に館があって、原田、甲斐、船岡、と場面によって呼び名がちがう。)ロシア小説よりはまだましか。
肝心のお話としては、家藩を守るために、『敵を欺くにはまず味方から』の精神で、理解されない辛さに耐えつつ、布石を打ち続けるところまで。