西條奈加のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
主人公は、かっぱらいから足を洗い商いにせいを出す、捨てられた子供たちの集団の頭、知恵ものの勝平と、諸国を放浪して江戸に戻ってきた、身元引き受け人である武家の次男坊、柾さま。仲間の子供たちの身近で起こる悪事を勝平の知恵と仲間それぞれの特技と、柾さまの大人の脅しで解決していく短編集。悪事を解決していくなかで、柾の放浪の理由が少しづつ明らかになっていき、みえてくる「はむ・はたる」の存在。柾はどのように過去に始末をつけるのか。
勝平を始めとして、さまざまな個性を持った、子供ながらに一本芯の通った仲間たち。厳しいけど、子供思いの婆さまたち、いつも笑顔で優しく子供の味方だけど、時折心の影を見せる柾など -
Posted by ブクログ
江戸・千駄木町の片隅、心町(うらまち)と呼ばれる一角。そこに流れる小さく淀んだ「心淋し川」のどん詰まりにある長屋を舞台に、人々の悲哀を描いた連作短編集。短編集の形をとりながら、長屋の住人たちの人生がパズルのように絡み合う群像劇としての構成をとっている。
第一話の表題作「心淋し川」から、この町に生きる人々のままならない現実が丁寧に描かれ、読者を物語の世界へと導く。
それに続く「閨仏」では、不美人な妾ばかりを四人も同じ長屋に囲っている大隅屋六兵衛が登場。一見すると物好きな金持ちの奇行や歪んだ支配欲のようにも思えるが、物語を読み解いていくと、彼の内面にある複雑な背景が見えてくる。旦那を失えば明日か -
Posted by ブクログ
隠居して人生のすごろくを「上がり」としたはずの徳兵衛さん。しかし、孫・千代太の「悪癖」が、彼を再び世俗の渦中へと引き戻していく。
かつては大店の主として損得に心血を注いだ徳兵衛さんが、隠居の身で誰かのために知恵を絞り、江戸の町を奔走する姿を「商売道楽」という人もいる。でもそれは、経済の語源である「経世済民(世を治め、民を救う)」を、利害を超えて実践する究極の贅沢でもある。
「蓄えた金は守れても、過ぎ去った時間は買い戻せない」
人生の終盤、残された時間を何に投資すべきか。千代太の悪癖に手を焼き、翻弄されながらも、その「厄介な時間」を慈しむように使い切る。
言葉で感傷に浸るよりも、自らの足と経験 -
Posted by ブクログ
「南総里見八犬伝」をかいた戯作者曲亭馬琴こと滝沢馬琴の後年を、長男の嫁となったお路の目線で描いた作品。
にわかに武家となった滝沢家だが、その身分にこだわり、気難しく、全てに細かく癇性で大らかさに欠ける。人見知りだが人に任せることもできない。とても付き合い辛い性格の馬琴と、病がちで癇性、馬琴に頭が上がらない夫宗伯、同じく癇性で病がち、口は達者でうるさい姑。家族内で笑い声が聞こえることなどないその家で1人嫁としてあちこちに目配り気配りしながら働くお路。
読んでいて疲れるほどの家庭だ。
やがて夫は亡くなり、馬琴は目が見えなくなると言う不幸に見舞われるが、それでも頑張って家の中のことを取り仕切っていく