西條奈加のレビュー一覧
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教科書にも出てくる蝦夷探検家・最上徳内の前半生を描いた物語です。
出羽の百姓の子に生まれ、学問好きが高じて江戸に登り、経世家的蘭学者・本多利明の内弟子となった徳内が、本多の代理として幕府の蝦夷地見分隊に小物として参加し、様々な労苦を重ねながら遂には士分の取り上げられるまでが描かれます。徳内は全部で9回蝦夷地に赴きますが、そのうちの最初の三回、近藤重蔵と共に建てた有名な「大日本恵登呂府」の標柱よりも前の話です。
蝦夷地開発を目指した田沼意次と松平定信の政争を背景に、アイヌを搾取する松前藩と見分隊の軋轢が描かれます。善は善、悪は悪と白黒が明快で、善の中に潜む悪と言ったグレーのグラデーションは感じら -
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一、暇であること。
二、勘がいいこと。
三、数寄心があること。
四、何より猫が好きなこと。
猫好きにおすすめしたい本になりました。
実は猫に操られてるなんて、素敵な香りがしますね。(鰹出汁のかおりかな…)
猫に操られてるかも、なんて思って暮らしている猫好きさんも多そうですね。
最初らへんは可愛いほのぼのとした話だったのですが、後半はちょっと心痛くなるものまであり、シリアスでした。
時雨の最後の言葉は気になりました!
続編とかあれば、読みたいものです。
猫と一緒に暮らしたくなります。
西條さんの描く江戸はどこか寛容さがあっていいなあ。
こういう雰囲気好きです。 -
Posted by ブクログ
江戸中期,再三に渡り,蝦夷の見分に派遣され,アイヌ民族と親しく交わった最上徳内の波乱の前半生を描いた物語。
最上徳内のことは本書で初めて知った。歴史上こんなに興味深い物語が眠っていたとは(私が無知なだけかもしれないが)。こういうのを掘り起こしてくる西條奈加氏には,今回も脱帽である。読み応え十分だった。
蝦夷から樺太へ渡った人の話では昨年,間宮林蔵の話を読んだが,あんなものではない過酷さと奥深さがある。
しかし,先住民族たるアイヌと日本人との断絶の元凶が松前藩の手前勝手な都合であったとは,まったくもって腹立たしい限りだ。しかも寛政の改革で歴史に名を残す松平定信がかように愚昧であったとはな。寛政の