西條奈加のレビュー一覧
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西條奈加の連作時代小説『せき越えぬ』を読みました。
『秋葉原先留交番ゆうれい付き』、『烏金』、『まるまるの毬』に続き、西條奈加の作品です。
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たとえこの身に害が及んでも友を助けてみせる。
関所を巡る人間模様を描く人情時代小説。
東海道箱根の関所には、曰くありげな旅人が訪れる。
離縁され故郷に帰る女。
江戸から夜逃げをした夫婦……。
実直な番士武藤一之介は、親友の騎山市之助から関所に関する法外な依頼をされる。
一之介は逡巡するも決断する。
友の人生の岐路に際し何もしないのは裏切りも同然。
たとえこの身に害が及んでも必ず友を助けなければならない――。
関所をめぐる人間ドラマを描いた圧巻の人情時代小説。
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2019年(平成31年)に刊行… 箱根関所を舞台に、そこで働く役人、関所を越える人たちのドラマを全6篇の連作で描いた作品です。
■せき越えぬ
■氷目付(こおりめつけ)
■涼暮撫子(すずくれなでしこ)
■相撲始末
■瓦の州(かわらのくに)
■関を越える者
■解説 末國善己
越すか、越さぬか―― ここは人生の峠を迎えた者に決断を迫る場所… 思わぬなりゆきから箱根の関守となった若き小田原藩士・武一、、、
東海道・箱根の関所には、今日も切実な事情を抱えた旅人がやって来る… 西国へ帰る訳ありげな兄妹、江戸から夜逃げしてきた臨月の女、そして命を賭して一人の男にこの国の未来を託そうとする人々を知ったことで、武一の身にも人生最大の岐路が訪れる。
黄昏を迎えた江戸の世で、若い関守の目に映る究極の人間ドラマ… さらに彼自身が迎える最大の岐路を鮮やかに描き出す骨太な時代小説。
箱根の関所を舞台に、そこで働く役人、関所を越える人たちのドラマを連作形式で描いた物語… ひょんなことから関所に務めることになった小田原藩の藩士・武藤一之介(通称・武一)の目線から物語は描かれています、、、
関所を舞台にした時代小説は珍しいんじゃないですかね… 旅人を関所側から見る視点が新鮮でしたね。
同じ「いちのすけ」という名を持ち、家柄は違うが、同じ道場の門下生で親友同士の武一と騎山市之助(通称・騎市)の友情や、関所の伴頭・保山の理不尽な振舞い、関所を越えようとする押し込みへの対応、関所の人見女・千野理世に対する武一の淡い恋心、関所を越える直前で産気づき女児を出産したことにより新たな手形が必要となったわけありの夫婦への対応 等々、人情モノ的なエピソードを紡ぎながら、物語は緊迫した展開へ、、、
クライマックスは、シーボルト事件と絡めた緊張感のあるエピソード… 人見女・理世の夫で改革の志を抱く巴田木米とともに西国に逃れようとする親友・騎市を救うための道を武一が切り拓きます。
テンポも切れ味も良く、読みやすい作品だったし印象には残るけど… 終盤の展開が駆け足気味であっけなかった部分が、やや物足りなかったかな。 -
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西條奈加の長篇時代小説『烏金』を読みました。
『秋葉原先留交番ゆうれい付き』に続き、西條奈加の作品です。
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因業な金貸し婆・お吟のもとへ押しかけ、金貸し業の手伝いをする浅吉。
新しい発想で次々と借金をきれいにし、貧乏人たちを助ける彼には、実は秘密があった。
大金を得るべく浅吉が仕掛ける真の目的はいったい……。
日本ファンタジーノベル大賞作家が江戸を舞台に描いた痛快時代エンターテインメント小説。
文庫だけのオリジナル短編「勘左のひとり言」収録。!
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2007年(平成19年)に刊行された時代エンターテインメント作品、、、
昨年7月に読んだ『はむ・はたる』は、本作品に登場し、浮浪児から足を洗った勝平をはじめとする孤児たちが、知恵を出し合って事件を解決していくという後日譚… それを知らずに続篇の方を先に読んじゃったんですけど、本作品は浅吉とお吟のエピソードが中心だったので、違和感なかったですね。
■烏金
■勘左のひとり言
■解説 近藤史恵
婆さんが溜め込んだ金、いただくぜ! 因業な金貸し婆・お吟のもとで押しかけ居候を始めた浅吉… 職がないという浅吉は、金貸し業の手伝いを申し出た、、、
浅吉は、新しい発想で次々と焦げ付いた借金をきれいにし、貧乏人たちを助けつつ利益を上げていく… しかし浅吉には実は秘密の目的があり、大金を手に入れるために素性を偽ってお吟に近づいたのだった。
お吟はまるで烏(からす)のように、溜め込んだ金をどこかに隠している… はたして浅吉は、大金をせしめることができるのか? 相棒の烏・勘左とともに、浅吉が貧乏人を救う! 今までにない痛快時代エンターテインメント小説、誕生!!
金貸し婆・お吟からの借金で困っている人々、暮らしに困っている人々に、新鮮な発想で次々とお金を儲ける方法を指南することで、借りた方に明るい未来を与えるとともに、自らは金貸し業の方をさらに儲けさせていくという浅吉の才覚や行動力に脱帽… 現代なら優秀な銀行の融資担当かシンクタンクのコンサルタントですね、、、
結末のインパクトにはやや欠ける感じがしますが、お金にまつわるエンターテイメント的な展開に、幼馴染との恋愛や肉親との繋がり等の人情劇を絡めて、巧くまとめてある感じ… 烏の勘左が印象的な役割を果たしてましたねー -
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「鬼」と「人鬼」の違い、本当に恐ろしいのは「人鬼」。
西条奈加は「心淋し川」で2020年下期直木賞を受賞。
NHKドラマの「善人長屋」をたまたま見て、ちょっと興味を持ったので読んでみた。
一見すると連作短編集のような構成であるが、短編同士の結びつきはさらに強い。
人情ものの時代劇ではあるが、ひょっとしたらタイムワープもののSF小説かもしれない。
森で知り合った民と小鬼の不思議な物語。脇役の黒鬼がいい味を出している。
ドラマ化(もしくはアニメ化)したときの黒鬼の配役で、できあがりが左右されるような立ち位置なのだ。
テーマは人の心にはびこる「悪心」の存在であるけど、人情ものとしての魅力の方が勝り、一服の清涼感を味わうことができる、良い話でした。 -
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西條さんの作品は、これが初めて。
ちょっと前に直木賞をとった、時代小説の作家さんだったと記憶している。
時代設定は現代。
でも、神楽坂の老芸妓さんが主人公とのことで、江戸情緒が漂うような作品かと思い、読み始める。
本作はシリーズの第二作。
視点人物の滝本望少年は、都内の私立高校一年生。
学校のため、北海道に移住した両親から離れ、神楽坂に住む祖父母の家に居候する。
主人公は彼の祖母、お蔦さん。
芸妓として生きてきた人で、人望は厚いが、料理はさっぱり。
滝本家はなぜか代々男性が料理を担う。
祖父なき今、望が料理男子として、日々の食卓に腕を振るう。
その家には、お蔦さんの年若い義弟、奉介さんが身を寄せているだけでなく、お蔦さんを頼って、ご近所のいろいろな人がやってくる。
そうしたちょっとした行き違い、いさかいを、お蔦さんが面倒がりながら、解きほぐしていくシリーズ。
お蔦さんは、なるほど、神楽坂芸者でなくてはならない気がする。
例えば京都の芸妓さんとすると、だいぶ作品のイメージが変わってしまいそうだ。
少なくとも、さばさばした感じにはならないだろう。
この手の本は、シリーズの一作目から読まなくてもどうにかなるように書かれているはず。
そう思って、たまたま手にしたこの本から読んでみたが、ちょっとしんどかったかも。
その理由が、登場人物の多さ。
ご近所さん、友人知人、遠い間柄も含めた親類などたくさんでてきて、ちょっと大変だ。
にぎやかで楽しいのだけれど、あれ、これ誰だっけ、ということも出てきてしまった。 -
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ネタバレ通称、猫町に暮らす野良猫のミスジ。
恩猫で憧れの先代、順松が行方知れずになり、新しい傀儡師に任命される。
人を遣い、人を操り、猫のために働かせる、傀儡師。
早速、履物屋のキジから依頼が。珍種の朝顔の鉢を台無しにした冤罪をかけられたのだ。
ミスジはミスジの傀儡である狂言作者、阿次郎を連れ出して。
かつて米問屋が多かった米町がネズミ対策で猫を飼ううちに猫の町へ。
そんな猫の町には傀儡師の猫がいて。
猫視点で猫を救うために傀儡を誘導しながら事件を解いていくうちに、ミスジは先代の順松失踪の謎に迫っていく。
事件と犯人に驚きはほぼ無いんだけれど、猫や烏の漢気や姉御肌が小気味良い。
仔猫たちはやんちゃだけど、それを見守る大人猫たちがカッコいい。
傀儡の阿次郎の呑気さも良い味だし。
読み終わって、周りにふわふわで暖かいものがいないことがものすごく寂しくなる。 -
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軽快、爽快、江戸人情長屋。
事前の情報なしで、読み始めて、善人の集合住宅と思っていたら、最初の数ページで、裏切って(まあ、そうでもないんだけど)NICEタイトル。
裏稼業を持っている(表もちゃんとある)、住民達の長屋。そこに、正真正銘の善人が紛れ込んでしまう。設定だけでも、面白そうな感じでしょ。ドラマの時代物を見ているような気楽さとテンポの良さ。
「犀の子守歌」は、性同一性障害について扱うのだけれど、なるほど、どんな時代にもどんなお家柄でも、現実的に起こりえた話だなって。今まで、あまり考えた事がなかったので、新鮮でちょっと衝撃を受けてしまった。
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以前読んだ梶よう子さんの「噂を売る男」のシーボルト事件でちらっと出てきた最上徳内。シーボルトに蝦夷地の地図を渡したにも関わらずお咎めなしだったという話に、何か黒い繋がりがある人なのかとイメージしていたが、全く違う人だった。
元々算術が得意で算術で身を立てるつもりだった徳内は、師の本多利明の影響で蝦夷地見分隊に加わる。その旅でその後の人生に大いなる影響を与えることになるアイヌの人々との出会いがある。
当時のアイヌの人々の置かれた状況には胸が痛む。松前藩と運上屋と呼ばれる一部の商人たちに徹底的に搾取され抑えつけられている。
アイヌの人々の訴えは、「農耕を行いたい」「和語(日本語)を覚えたい」「自由な民として独立したい」というごく当たり前のことだった。裏返せば、それすら許されない厳しい状況だった。
徳内は「本当のアイヌの姿を世に知らしめたい」「松前(藩)の軛(くびき)から放たれるよう手助けしたい」という思いで蝦夷地の各地を旅する。
だが彼の思いはなかなか実現しない。
松前藩の妨害もだが、将軍・家治の死による老中・田沼意次の失脚で彼らの文字通り命がけの蝦夷地見分は頓挫する。さらにはアイヌの人々の反乱(蜂起)後には上役の青島と共に入牢の憂き目にまで遭っている。
それにアイヌの人々と一口にいっても広い蝦夷地が様々なな顔を見せるのと同様、日本に近い者もいればロシア(赤人)に近い者もいて、一枚岩ではない。
徳内は士分でなかったためと師の本多らの助けにより釈放されたが、青島はついに帰らぬ人となった。
松前藩のように弾圧するのはもってのほかだが、では幕府が直轄地として蝦夷地を支配するのが良いことなのかとの葛藤も徳内にはある。
和語を教えることがアイヌの人々の言葉や文化を奪うことにならないのか、ロシア領となる方がアイヌの誇りが保たれるのではないかとすら考えたりしている。
現在のアイヌの人々の環境を考えれば、徳内のそうした葛藤も理解できる。
物語はこの辛い場面が山場となっているため、その後の徳内の働きについてはサラっと流される程度だったのが残念だった。出来れば松前藩によるアイヌの人々への弾圧がどうなったのか、アイヌの人々へ農耕を教えることが出来たのかなどを知りたかった。
アイヌ人の友人たちが魅力的だった。親友であり弟子であり弟のような存在であるフルウ、最初に出会った友・イタクニップ。
見た目こそ荒々しいが、中身はとても穏やかで争いを好まない優しい人々だった。文字は持たないが言葉は日本語にない発音がたくさんあるほど豊富だし、神話や昔話も多い。文明的だし知性もある。
それから徳内の妻ふでが豪快で素敵な人だった。師匠の本多始め算術仲間や青島始め見分隊の人々も役人らしからぬところもあって魅力的だった。
タイトルはイタクニップによる謎かけだった。それを知った瞬間が徳内がアイヌの人々や蝦夷地に掛ける思いが新たになった瞬間かも知れない。
なぜシーボルトに蝦夷の地図を見せてもお咎めがなかったのかという点についても分からないままだった。だが徳内がなぜ孫のような年齢のシーボルトに蝦夷地の話をしたのかは理解できた。蝦夷地やアイヌの人々の本当の姿を伝えたかったのだと思う。
蝦夷地探検というと間宮林蔵が有名過ぎて、最上徳内のことは知らなかったので、この作品で彼や見分隊に参加した沢山の役人たちのことを知ることが出来て良かった。
読書はこうしたきっかけや繋がりがあるから面白いし止められない。 -
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西條氏は8冊目。原点ともいうべきデビュー作で日本ファンタジーノベル大賞受賞作を読んで見た。
設定が現在の日本でありながら、場所は江戸という不思議な設定。だからファンタジーなのだろうが、この設定に馴染めず最後まで違和感が付きまとう。江戸と日本を行き来するために長崎奉行所が所管というのもどうだろう。この長崎奉行の一人が「金春屋ゴメス」なのだが、女性の怪物で意外な経歴。出番は少ないがインパクトは強い。
今の作風と大きく違っているし、内容も粗いのはデビュー初期なのだからと思う。今年中にシリーズ2、3が文庫書き下ろしで出されるそうだが、直木賞まで受賞した作者の力量に期待したい。 -
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西條さんの中では珍しいのかな?現代のお話。
中学生の望と祖母のお蔦さんが出くわすちょっとしたミステリー。
お蔦さんの粋な感じも望の中学生なのに達観して気が利く感じも読んでいて爽快です。
お蔦さんが子供だからって望に気を利かせすぎないのがいい。
あとまるまるの毬などを読んでも思うのですが、料理が美味しそうで気になる。
時代物を読んできて、だったのでなんだか物足りなさはありましたが、それでもストーリーが頭に入ってきやすく、すらすら読めた一冊です。
舞台の神楽坂っぽさはあまりわからなかったのですが(神楽坂も数回しか行ったことないし…)、下町?感はあって、そういうとこに住んでみたいなと思ったりしました。