西條奈加のレビュー一覧
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ネタバレ【収録作品】
西條奈加「向日葵の少女」(〈お蔦さんの神楽坂日記〉シリーズ)
千早茜「白い食卓」
深緑野分「メインディッシュを悪魔に」
秋永真琴「冷蔵庫で待ってる」
織守きょうや「対岸の恋」
越谷オサム「夏のキッチン」
料理のつくり手をテーマにした短編集。
「向日葵の少女」絵につけられた傷にこめられた思い。いい話風にまとまったが、離婚した父親に対してこれで納得でいいのかと思う。
「白い食卓」昭和脳の傲岸不遜な男の態度がいちいち不愉快なので、ラストは痛快。つくり手の女性がいい。
「メインディッシュを…」サタンに料理をつくるはめになった女性料理人。そのきっかけを作ったサタンの眷属が天使に見えてくる。
「冷蔵庫で…」女子大学生の恋愛未満の失恋。最後に相手に投げかけた台詞がエライぞ。
「対岸の恋」男子大学生の姉と女子高生の兄が結婚。それぞれの料理係だった「弟」と「妹」は互いに一番の理解者となっていた。著者らしい作品。
「夏のキッチン」引きこもりの小6男子。その事情が少しずつ見えてくると切ない。
お腹が空いた。 -
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「誰の身の内にも、善と悪の両方があってあたりまえでしょ?なのに間違いを犯せばひたすら責められて、善をなせば神仏のように褒めちぎられる。それって、気味が悪いと思いませんか?」
お縫ちゃん、それはむしろ善悪両面があるからこそなんじゃないかな。間違いを責めたててりゃ、己にはそんな悪心なんざありませんと世間に喧伝できる。自分自身にもそう思い込ませてるのかもしれない。善を褒めちぎるのも、私は善行の素晴らしさが分かる人間ですよって寸法だ。あるいは、善を持ち上げて、己の中の悪心を戒めてるのかもしれないね。
加助さんは、剣呑なセリフを聴いてもその通りには受け取らなかったじゃないか。本心を隠すための強がりだって本気で思ったからこそ、事が丸く収まっちまったんだろ。あの人には悪心なんてないからね。
だから間違いをひたすら責める奴は、自分の後ろ暗さを隠してるのかもな。善行を褒めるのは、世の中そうあって欲しいっていう祈りみてえな気持ちが込められてることもあるから、ありがたく受け取っとけばいい。間違いも正さなきゃ、世の中曲がっちまう。ただ、善人って決めつけられるのは重てえし、悪人って枷もやっぱり重たい。行い一つでお人柄全部をきめつけるのは、気味が悪いと思うよ。 -
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本作は、〈お蔦さんの神楽坂日記〉シリーズ第1作(現在4作刊行)です。西條奈加さんの作品は『心淋し川』(2021年直木賞)に続き2作目ですが、本作は『心淋し川』の10年前に刊行されているようです。
6編の連作ミステリーというより、むしろ神楽坂を舞台にした人情もの、と言った方がしっくりする気がします。両親の転勤で、もと芸者の祖母・お蔦さんと暮らすことになった、中学生・望の成長の日々が綴られます。
そして、そのちょこっとミステリーの人情話に彩を添えるのが、神楽坂の情景です。花街の歴史とともに、洗練された大人の街の印象があります。◯◯坂、◯◯横丁が多数あり、和洋混在の個性的でおしゃれな飲食店や老舗店が並び、この雰囲気が、物語の背景とお蔦さんという人に現れています。
さらに、料理は男が担当という家系の望だけに、料理上手で様々な食が登場するのも魅力的です。
お蔦さんの、周囲や望に対する厳しさと温かさがじんわりと伝わるお話でした。勘が鋭くさっぱりした性格のかっこよさと、中2の孫にも決断と責任、覚悟まで求める教育力は、清々しくさえあります。望の真っ当な成長が保証されていますね。
身内だけでなく、友人、ご近所さんなど、誰かの役に立ちたいと思い即行動を起こす距離感と行動力がいいです。私たちの生活から、こういう人同士の付き合いが減っている気がしますね。羨ましくもありました。