西條奈加のレビュー一覧
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本作は、〈お蔦さんの神楽坂日記〉シリーズ第1作(現在4作刊行)です。西條奈加さんの作品は『心淋し川』(2021年直木賞)に続き2作目ですが、本作は『心淋し川』の10年前に刊行されているようです。
6編の連作ミステリーというより、むしろ神楽坂を舞台にした人情もの、と言った方がしっくりする気がします。両親の転勤で、もと芸者の祖母・お蔦さんと暮らすことになった、中学生・望の成長の日々が綴られます。
そして、そのちょこっとミステリーの人情話に彩を添えるのが、神楽坂の情景です。花街の歴史とともに、洗練された大人の街の印象があります。◯◯坂、◯◯横丁が多数あり、和洋混在の個性的でおしゃれな飲食店 -
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ネタバレ首になった元武士と子供(ともに記憶喪失)が旅する話。
いくつかの国で経験を共にすることでお互いのことを理解し、絆を深めていく。
碧青の国は治めている人のやり方がまずいでしょう。5,6歳の子供なら「竜のお嫁さん」という説明でいいかもしれないけど、13歳の子であればきちんと説明してあげたら不幸は起きなかっただろうに。
途中にあった↓これ。本当によく感じる。
「悪事とは何だ?誰にとっての悪事か、誰が善悪を判じるのか。~権と力、政、常識、風潮、時代ー善悪とはこれらによって、猫の目のようにくるくると変わる代物ではなかろうか。」
最後はちょっと残念だった。独楽の国に戻ることで人の暮らしを、幸せを表現 -
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時代物らしい勧善懲悪なドラマ。
タイトルと表紙イラストから相当な元気な高齢女性三人の話かと思ったら、主人公のお麓が61歳なので現代ならまだまだ若い年代なのだが当時のことなので『余生』という表現をしている。
主人公・お麓は長年武家勤めをしてきた、いわばキャリアを重ねてきた職業女性。現在は名主宅での書役をしている。
彼女が住む長屋に転がり込んできた幼馴染のお菅は子供たちがそれぞれ巣立ち夫にも先立たれ、茶屋で働き始めたパートタイマー。
もう一人、やはり同じ長屋の二階屋を貸し切るお修は水商売をしている時に出会った大店の主人の後妻に収まったものの、その主人が亡くなって家を追い出される形でやって来た。だ -
Posted by ブクログ
史実の海難事故をもとに、バタン島に漂流した船乗りたちを描いている歴史小説。
江戸時代の船で遭難して生き残り、更に漂流先で船を作って再度日本に戻ってくることは奇跡的。
漂流しているときの絶望感がすごすぎて、海は大きくて怖いものだと感じてしまった。ただ、仲間が頭を信じてついていくところは熱い気持ちにさせられた。
極限状態で仲間を信じる、陸を信じる、生きて帰れることを信じる、、、本当に難しい。それを克服してしのいだ時は読み手までほっとしてしまった。
バタン島で出会った人々との暮らし習慣など、厳しいこともあったが、生きて帰ることができてよかった。