あらすじ
「雪の形をどうしても確かめたく―」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気付き…。蘭学を通して尚七が見た世界とは―。
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武士の話だったけど、重々しい語り部に武家社会の様を堂々と書いてあった。善人長屋とは違う語り部に、どんな風にでも出来るのだなあと、ファンタジーでもよく出来てるし、もう全て読み切れて満足しかない。直木賞だけじゃない既にたくさんの賞がある。底が見えない、まだまだ楽しい作品に出会えるのだろう自分
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下総古河藩の小松尚七は日頃から「何故なに尚七」と揶揄されるほど、あまたのものに興味をもつ下級武士だったが、あるきっかけで後の鷹見泉石に出会い、藩主の御学問相手に抜擢される。
この藩主は、『雪華図説』を執筆した土井利位(としつら)であり、尚七、鷹見泉石の三人でこの美しい雪の結晶の本を完成させたのであった。
他の方のレビューで知ったが、地元では利位は今も「雪の殿様」と言われ、学校の校章が雪の結晶の形だったりするそうだ。(茨城県なのに)
著者は鷹見泉石の伝記を書こうとしたが、資料がありすぎるため、下級武士の小松尚七を主人公にし、比較的自由に創作したそうだ。
鷹見泉石といえば、渡辺崋山の「鷹見泉石像」という肖像画を私は、日本の肖像画の中でもピカイチだと思っていたが、その人だったのね。
この小説の中には、大黒屋光太夫、シーボルト、間宮林蔵、大塩平八郎などなど、教科書に出てくるような有名人がたくさん出てくるが、こういうところも自由に創作できたというところなのだろうか。とても楽しめた。
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江戸時代を舞台に、知ることへの欲求に生きる男の物語。
「何故なに尚七」というニックネームをもつ彼がこの時代にヨーロッパから持ち込まれる先端知識に対して興奮する様子が純粋で良い。
後半は政治的にきな臭い部分が多くなってきて、この時代には仕方がないこととはいえ、もともとのトーンで終わっても良かったかも。
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第一話 六花邂逅 第二話 おらんだ正月
第三話 だるま大黒 第四話 はぐれかすがい
第五話 びいどろの青 第六話 雪の華 最終話 白炎
藩主と重臣と共に雪の様々な結晶を記録していく尚七。時は幕末、否応なく世界へ開かれていく日本にも育っている学ぶ心は、身分や役職に縛られて純粋に楽しめるものではないかもしれない。それでも彼はそれぞれの時とそれぞれの立ち位置をそれなりに楽しんでいる気がする。おごるでもなく恨むでもなく飄々と。
雪の殿様の時代背景
なんの気無しに購入した作品である。
暫く読んで土井大炊頭の名前をみて、数ヶ月前に読んだ別の小説を思い出した『雪の殿様』まさかとは思うが、こんな事もあるのか?
しかしこの時代に生きた実在の人物達の再確認になって面白く読んだ。
最終章の大塩平八郎の乱は、最近読んだ別の小説でも見かけたが、少しきついかな。
全体的には面白い作品である。
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「何故なに尚七」というあだ名の下級武士の目を通した話。主要な登場人物は実在した人物とのこと。
雪の結晶「六花」に魅せられた尚七が、藩の上級武士の鷹見忠常と出会い藩主のお学問相手となる。
鷹見忠常を通して蘭学などを学ぶ尚七。ただひたすらに学問を探究し、権力に媚びることもなく俗にまみれることもない。いつまでも真っ直ぐな心を持つ。
立場上孤独で、時として非情な決断もしなければならない藩主や忠常は、そんな尚七を心の拠り所とする。
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西條奈加の長篇時代小説『六花落々(りっかふるふる)』を読みました。
西條奈加の作品は、昨年1月に読んだ『せき越えぬ』以来ですね。
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「雪の形をどうしても確かめたく―」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。
尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。
だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気付き…。
蘭学を通して尚七が見た世界とは―。
解説/東えりか
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2014年(平成26年)に刊行……第5回本屋が選ぶ時代小説大賞候補となった作品です。
■第一話 六花邂逅(りっかかいこう)
■第二話 おらんだ正月
■第三話 だるま大黒
■第四話 はぐれかすがい
■第五話 びいどろの青
■第六話 雪の華
■最終話 白炎(びゃくえん)
■あとがき
■解説―雪への興味が古河藩の命運を決めた 東えりか
冬の日、雪の結晶の形を調べていた下総古河藩の下士・小松尚七は藩の重臣・鷹見忠常(のちの泉石)に出会う……その探究心のせいで「何故なに尚七」と揶揄され、屈託を抱える尚七だったが、蘭学に造詣の深い忠常はこれを是とし、藩の世継ぎ・土井利位の御学問相手に抜擢した、、、
やがて江戸に出た主従は、蘭医・大槻玄沢や大黒屋光太夫、オランダ人医師・シーボルトらと交流するうちに、大きな時代の流れに呑み込まれていく……。
大きな時代の流れに飲まれそうになりながらも、純粋な心、探求心を失わず、実直に生きる尚七に共感しながら読みました……大黒屋光太夫や大塩平八郎、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト 等々、その時代を代表するような人物との出会いも印象的でしたね、、、
そんな尚七を支えたのは下総古河藩の重臣・鷹見忠常……忠常がいなければ、尚七の行動は認められなかったでしょうからねー 「他人に何と言われようと、考えることをやめようとしない。それは何よりも貴いことだ」という言葉は現代にも通じるものがあると感じました。
あと、尚七が大槻玄沢から教えられた「恥を恥じるな」のひと言……この言葉も印象的でした、、、
目まぐるしく変化する現代に生きる私たちの方が、意識しておかなきゃいけないことが描かれている作品だと感じました。
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古河藩郡奉行配下で物書見習いの小松尚七は「何故なに尚七」と異名を持つほど、好奇心の強い青年であった。
ある日、声をかけられた相手は「土井の鷹見か鷹見の土井か」と言われる程の逸材・鷹見忠常であった。
藩主の若君の御学問相手となるよう請われる。
雪の結晶に魅入られた主従は、大黒屋光太夫・シーボルト・間宮林蔵・渡辺崋山・大塩平八郎などとの関わりを持ち、やがて、時代は、幕末へと向かっていく。
尚七を見出し「お前はそのままでよい」と側に置いた、忠常や藩主・利位は、余程人を見る目があったのだろう。
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202107/とても美しいタイトル。面白かったけど、シーボルトや大塩平八郎のあたりできつい展開になって史実的に仕方ないとはいえ、読後感がちょっと…。
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六花…雪華の学問的探求にのみ
目を向けていられたら。
そう嘆息したくなるほどに
後半はきな臭く血生臭い。
それが人の世の常とは理解しつつも
大らかな人生を生き通すことのできる
世の中であってくれたら…と泣きたくなる。
この作品に 雪華の美しさは感じない。
人が背負う業というものの過酷さをただ思う。
「おまえは、そのままでいろ」
二度そう言われた何故なに尚七でさえも
民の置かれた境遇に
心揺らがざるわけにはゆかない。
真の学問は 人の生き死にや幸福とは
無縁のものであったか。そう感じさせられる。
学問は力弱く 時代の求めと弾圧の繰り返しで
その多くの本分は歪められてきた。
歪まぬ学問は 生き残れぬ。
私はこの作品を こう読み解いてしまった。
読み終えて今 殺伐たる心境にある。