あらすじ
「雪の形をどうしても確かめたく―」下総古河藩の物書見習・小松尚七は、学問への情熱を買われ御目見以下の身分から藩主の若君の御学問相手となった。尚七を取り立てた重臣・鷹見忠常とともに嬉々として蘭学者たちと交流し、様々な雪の結晶を記録していく尚七。だが、やがて忠常が蘭学を政に利用していることに気付き…。蘭学を通して尚七が見た世界とは―。
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Posted by ブクログ
「何故なに尚七」というあだ名の下級武士の目を通した話。主要な登場人物は実在した人物とのこと。
雪の結晶「六花」に魅せられた尚七が、藩の上級武士の鷹見忠常と出会い藩主のお学問相手となる。
鷹見忠常を通して蘭学などを学ぶ尚七。ただひたすらに学問を探究し、権力に媚びることもなく俗にまみれることもない。いつまでも真っ直ぐな心を持つ。
立場上孤独で、時として非情な決断もしなければならない藩主や忠常は、そんな尚七を心の拠り所とする。
Posted by ブクログ
六花…雪華の学問的探求にのみ
目を向けていられたら。
そう嘆息したくなるほどに
後半はきな臭く血生臭い。
それが人の世の常とは理解しつつも
大らかな人生を生き通すことのできる
世の中であってくれたら…と泣きたくなる。
この作品に 雪華の美しさは感じない。
人が背負う業というものの過酷さをただ思う。
「おまえは、そのままでいろ」
二度そう言われた何故なに尚七でさえも
民の置かれた境遇に
心揺らがざるわけにはゆかない。
真の学問は 人の生き死にや幸福とは
無縁のものであったか。そう感じさせられる。
学問は力弱く 時代の求めと弾圧の繰り返しで
その多くの本分は歪められてきた。
歪まぬ学問は 生き残れぬ。
私はこの作品を こう読み解いてしまった。
読み終えて今 殺伐たる心境にある。