あらすじ
近未来の日本に鎖国状態の「江戸国」が出現した。競争率三百倍の難関を潜り抜け入国を許可された大学二年生の辰次郎。その請け人は身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道で鳴らし大盗賊も思わずビビる「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった! ゴメスに致死率百パーセントの流行病「鬼赤痢」の正体を突き止めるよう命じられた辰次郎は――。日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
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絵を先に見ていて、なかなかイメージ出来ずに、もっとで張るかと思いきや、しんじろうがやっぱ主役ですね。ファンタジー小説ですね、なんか売ってなくて再販して読めるとわかって素直に嬉しい。たくさんの登場人物で戸惑ったけど、江戸というか江戸時代そのもので、でもタイムスリップしてる様な、なんとも不思議だけど、あっファンタジーって事かいて。しかし15年前というそれほど昔ではなく出版していたんだね。善人長屋から始まってどれも面白くて、せき超えぬなんかいいから。松吉がスパイとか、ゴメスの馬が1番目立つとか。
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金春屋? 何と読むのか??
こんぱるや だった。
喫茶店のコンパルじゃあないですね もちろん
日本国の中に江戸国?? 何という設定、それぞれにちゃんと意義がありそうな、なさそうな。
さて 辰次郎は主役を張れるのかどうか?
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西条さんに、はまって
デビュー作品を読んでなかったので
読みました。
歴史のなかで、流行り病は
繰り返されてきました。
病気との闘いは、生きている以上
永遠のテーマ。
何を守るのか、、、。
人間の欲。自然との共存。
色々、考えさせられました。
今回の推し人物は、十助。
だけど、辰次郎と、松吉の友情も良かった。
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現代日本に鎖国で存在する「江戸」。
入国は希望者の抽選で300倍。希望してもなかなか入れない。
そして出国したら戻れない。
そんな江戸に主人公が入国するところから始まる。
もともと江戸の生まれで、幼い頃に出国したという。
長崎奉行=外交担当など、用語の繰り回しも面白い。
主人公の両親も江戸の生まれ育ち。何があって江戸を出ることになったのか?それを追う話。
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結構登場人物が多く、また後半になってバタバタッと出てくるので「え?この人いつ出てきたんだっけ? 何て読むんだっけ?」と結構見返しが発生してしまった。
ゴメスさん女である必要全くなかったけど、先にタイトルの方思いついちゃったんだろうな、って思った。
松吉が腕切断しなくて良かった!と心から思った。
ゴメスさんは日本の有名な医者か研究者だったみたいだけど、日本にいるときからあんな怪力でパワハラの鬼みたいな感じだったんだろうか…。
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日本ファンタジーノベル大賞受賞作ということで購入。
千年鬼の作者でもあるので、どんな物語かと思って読んだら…
ファンタジーと言えば確かにファンタジーですが、強烈なキャラのお陰で何とも面白いミステリー仕立てになっており、肩の凝らない本です❕️
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江戸時代の話だと思って読み始めたが、現代の話で日本の中に江戸時代の暮らしをする国がある話しだった。
うまい具合に現代と江戸国が重なり合っている。
ただ、登場人物が多い上に改名した人の2人分の名前も出てきて誰が誰だか途中あやふやになった(^_^;)
まぁ一件落着でした。
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「人ってなぁ、てめえの思ったとおりには、決して動いてくれねえもんだな」p.232
■三つの魅力(1)金春屋ゴメスの人間離れした強烈さと、どつかれつつも活き活きしている周辺キャラクタたち。できればゴメスにはもっと大々的に活躍してほしかったかも。(2)すぐそこにある「江戸」の、スローでちょうどよい感じのゆたかな暮らし。(3)謎の病気「鬼赤痢」は人為的なものと推理したゴメスが犯人を搜すミステリも。
■江戸についてのてきとーなメモ
【一行目】十三夜の月に照らされた濡れ縁に、黒いしみが浮いていた。
【医師】江戸政府のお達しでどんな村にも最低二人は医師がいる。無医村などはない。その技術は東洋医療に西洋医学も取り入れて本草学等は世界一と言われている。
【韋駄天】ゴメスの手下の一人。その名の通り足がめっぽう疾い。無口でほとんどしゃべらない。
【裏金春】辰次郎が働くことになっている。「ゴメス大明神」がいるそうだ。長崎奉行、金春屋ゴメスの率いるチームのことのようだ。十助、甚三、菰八、木亮、寛治、韋駄天、良太がいる。
【江戸】三十年前日本から独立して専制君主制を敷き鎖国している。元は金持ちの作った老人タウン。北関東から東北にまたがる一万平方キロほどの面積。ほぼ江戸時代の江戸を再現している。君主は「徳川」を名乗る「将軍」で現在三代目。ただし国際的には認められておらず日本国籍ということになっている。入るのは難しい。永住希望者のみ三百倍の倍率で可能性はある。入国後六ヶ月経れば日本に戻ることは自由。ただし入国は一度きりで出たらもう二度と入れない。洋服は禁止。日本円は使えないし持ち込めない。電器製品の持ち込みはできないし電気が通っていないので意味がない。西洋医学は入っていない。コンタクトレンズ不可(眼鏡は?)。請け人は芝露月町金春屋喜平。働き口は「裏金春」。
【江戸ころび】病を治すなどの理由で江戸から出ていった者のこと。一部では軽蔑されている。
【江戸富士】富士山に似せて作った人工の山だが近いのでけっこう高く見える。似せてとは言うが北斎の富士に似せているので登山には向かない。
【鬼赤痢】赤痢のような症状だが赤痢ではなく罹患者の死亡率は高い。けっこう技術が優れている江戸の医師も手に負えなかったようだ。辰次郎も小さい頃かかって死にかけたそうだ。で、日本の医師に診せたがそのときにはもう治っていた。
【鬼赤痢で亡くなった子ども】漉名村で鬼赤痢が流行ったとき亡くなった子どもは、仁吉(にきち)六歳、藤平(とうへい)四歳、利蔵(としぞう)六歳、嘉一郎(かいちろう)六歳、佐之吉(さのきち)七歳。
【お見合い】日本ではコンピュータが登録された遺伝子と育った環境から組み合わせを決めるお見合いが主流。高い離婚率の日本の中では比較的離婚率が低い方法。
【おもよ】子供の頃鬼赤痢で死にかけていた辰次郎のことを覚えていた娘。
【がら九/がらく】目明しか。ガラガラ声。
【寛治/かんじ】ゴメスの子分の一人。一番背が低い。太めの鼠という印象。裏金春では珍しく煙草をすわず甘いもの好き。
【喜平】→金春屋喜平
【倉田/くらた】南町同心。
【栗田和泉守秀実/くりたあずみのかみひでざね】ゴメス以外のもう一人の長崎奉行。五尺二寸の小柄な老人。そら豆にあずきの目鼻をつけたようなこじんまりした顔。なぜかゴメスとウマが合い仲が良い。ときおり黒鬼丸の馬場に「肝試し」に行く。
【鍬之助/くわのすけ】野田村の義兵衛(ぎへえ)のとこにしばらくいた男。クロという黒い犬を連れていた。
【甲/こう】奈美の上司。老婆。
【黒鬼丸/こっきまる】巨大な黒馬。ゴメスの愛馬。広い馬場にいた他の馬をすべて蹴り倒し自分専用の馬場にした。将軍からゴメスに下げ渡されたときから気性は荒かった。
【駒】金春屋喜平の孫息子の嫁。お春の義理の姉。
【ゴメス】長崎奉行。人間離れした怪異な風貌。でも実は 女性。子分たちが《男だ女だという前に、人間かどうかぎりぎりのところにいるからな》p.74と言う。すぐどつく。「ゴメス」という名は本名の馬込寿々(まごめ・すず)の真ん中の三文字を取った略称。厚顔無恥、冷酷無比、極悪非道で知られている。論理的に物事を分析する。十助いわく「時々おれは、あのでかいからだの中身がすべて、脳みそじゃないかって思うことがあるよ」p.119。本来長崎奉行は出島にいるべきなのだが、金春屋の飯に惚れてその裏で暮らすようになった。大食らいで大量の食べ物を運ぶ「膳出し」が下っ端の良太と辰次郎の大事な役目。
【菰八/こもはち】ゴメスの手下の一人。甚三と同格。裏金春の中では唯一の所帯持ち。五つと三つの娘がいる。「おやじ」と呼ばれている。
【暦】太陰暦を使っているので日本とは季節に差がある。
【金春屋/こんぱるや】旨い一膳飯屋。喜平がやっている。仕入と勘定は喜平、娘婿の権七(ごんしち)と孫息子の拓一が板場、孫娘のお春と、拓一の嫁、お駒が客席係。
【金春屋喜平】芝露月町(ろうげつちょう)で安くて旨い一膳飯屋を営んでいる。親子三代でやってきている。額が広く顎が長く、どこか間延びしたようなとぼけた雰囲気。妻と娘は他界している。
【金春屋ゴメス】→ゴメス
【佐藤辰次郎/さとう・しんじろう】江戸への入国が許された二十歳の大学生。身長百七十七センチ。父母とも江戸人で辰次郎も江戸生まれだった。父は辰衛(たつえい)で余命いくばくもなさそう。母は利保(りほ)。小学三年の冬に両親が離婚して以来母の実家で祖父母と暮らし、父とは縁遠かった。が、辰次郎の江戸入りは父が望んでいた。裏金春の皆からは「辰公/しんこう」と呼ばれるようになった。
【仕事】江戸では仕事と私事は明確に区別されていない。夜中でも叩き起こされることもあれば仕事中にのんびりしていることもある。
【時間】江戸の時間は不定時法。日の出から日の入りまでを区分している。目安としてはおおむね日本の十二時は江戸の九つとなる。そこから一刻進むたびに八つ、七つとなり、六つは日本の六時頃となる。朝が明六つ、夕方が暮六つ。半刻がだいたい三十分ということなので一刻が一時間か。
【十助/じゅうすけ】ゴメスの子分の一人。辰次郎の父の幼馴染み。「地蔵の頭」と呼ばれている。
【食料自給率】江戸の食料自給率は九割五分。日本の食料自給率はニ割を切っている。
【甚三/じんざ】ゴメスの子分の一人。兄貴分。ルックスが良い。玄人女にはモテるが素人にはイマイチ。
【辰次郎/しんじろう】→佐藤辰次郎
【漉名村/すくなむら】十助の故郷。辰次郎もそこで生まれたのだそうだ。日本人の原風景と呼べるような風情がある。
【清造/せいぞう】十助の弟。漉名村にいる。
【竹内朔之介/たけうち・さくのすけ】長崎奉行所同心。鷹揚で人当たりがよく表裏問わず金春屋の皆に慕われている。
【単位】尺貫法を採用している。一丈が三メートル、一尺が三十センチ、一寸が三センチ、一分が三ミリ。
【月】人が住んでいる。最新設備の安心快適空間。
【出島】海と堀に囲まれた一画。長崎奉行所がある。
【とりこもり】立てこもりのことのようだ。
【長崎奉行所】江戸国の中にある、江戸時代の長崎相当の場所。長崎奉行は二人で、ゴメスともう一人粟田がいる。
【奈美/なみ】同時期に江戸に入ったきっぱりした感じの女性。二十五歳。神田藤堂町の高田屋泰造が請け人で機織り職人を多く抱えている織屋で働くことになっている。
【春】喜平の孫娘。十六、七歳のかわいらしい娘。
【引きこもり】日本では人口の一割が引きこもりと言われている。が、ネットが発達しているのでさほど不都合はない。
【馬込寿々/まごめ・すず】→ゴメス
【松吉/まつきち】同時期に江戸に入ったイタチ系の顔をした人の良さそうな男。二十四歳。名前も江戸風に変えた時代劇オタク。泳げない。深川材木町弥太郎長屋で暮らす予定。請け人は差配の儀助。後に辰次郎に頼んでゴメスの配下となった。
【明太きんつば】麹町の「巴や」の新作。栗田が食べていた。
【木亮/もくすけ】ゴメスの子分の一人。顔の部品が大きく目の間が狭くて険がある。
【離婚率】日本の離婚率は八割。
【良太/りょうた】ゴメスの子分の一人。辰次郎を除けばいちばんの下っ端。
Posted by ブクログ
西條氏は8冊目。原点ともいうべきデビュー作で日本ファンタジーノベル大賞受賞作を読んで見た。
設定が現在の日本でありながら、場所は江戸という不思議な設定。だからファンタジーなのだろうが、この設定に馴染めず最後まで違和感が付きまとう。江戸と日本を行き来するために長崎奉行所が所管というのもどうだろう。この長崎奉行の一人が「金春屋ゴメス」なのだが、女性の怪物で意外な経歴。出番は少ないがインパクトは強い。
今の作風と大きく違っているし、内容も粗いのはデビュー初期なのだからと思う。今年中にシリーズ2、3が文庫書き下ろしで出されるそうだが、直木賞まで受賞した作者の力量に期待したい。