柳沢由実子のレビュー一覧
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主人公の刑事と一緒に、複雑に張り巡らされた人間関係を紐解いて行き、真相に1ページずつ近づいて行く感覚が最高に良かった。
この感覚こそ日本でもアイスランドでも面白いミステリー小説と言われる要素なのかも。
この本の帯にも書いてあった通り「(国境も人種も関係なく、)警察小説の普遍性を証明した作品」であった。
アイスランドの、ジメジメと暗い気候が「性暴力」という今作のテーマ合わさり作品通してとても重苦しい印象だった。
ただし重苦しさ以上に真相に近づいて行く爽快感の方に手がとまらず、半日で一気に読み終えられた。
次作の「緑衣の女」も是非読もうと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアイスランドを舞台とした社会派ミステリーのこのシリーズ、毎回テーマがあってしかも、刑事たちの個性が引き出されつつあり、また、続けて読んでしまった。
今回のテーマは移民問題に絡めて、尚かつ異常児童性愛や教育問題と現在の世界のどの地域でも起こりうる問題なのでストーリーが進み展開してゆくと目が離せない。
並行して行方不明の女性(夫婦間のいざこざ)も気になるところで、これもまた、万国共通のネタ。
ページが残り少なくなって行くのに解決の方向性が見えず読者的にはハラハラしてしまったけれど、まさかの犯人像。そしてお粗末すぎる動機と結果。
これからもこのシリーズ、続きが気になります。 -
Posted by ブクログ
「家族」とは何か……。
子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。
登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。
「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち -
Posted by ブクログ
「”アイスランド”の犯罪ミステリー。って言われても、何も浮かばない(^^;???」
そこが良かったのかもしれない。
物語の先は常に濃い靄に包まれているようで、次に何が待ち受けているのかが分からないのがイイ。
事件の奥に、また事件が判明し、その向こうに繋がりが見えてくる。
小さな章建てで進む物語は、まるで連続ドラマのように、一章ごとに始まり、「つづく」で完結する。
300ページ余りを45の章で組み立てているが、とても読みやすかった。
それぞれの章が、まるで映画のワンシーンの様に繰り出されていくのだが、読者はその構成に乗せられるように、次々とページをめくっていけるのだと思う。
実際、本作は映画にも -
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読書友達がすすめてくれていたのだけどずっと読んでいなかった小説。
ラストまで一気読み!おもしろかった!!
もっと早くに読んでおけばよかった~
アイスランド・レイキャヴィクのアパートで殺害された老人。そして残されていた奇妙なメッセージ。杜撰な手口から犯人はすぐに捕まると思われたのだが…
明らかになる被害者の過去、そして事件の真相とは…
読んでたら生々しいバイオレンスな表現に思わず顔をしかめてしまった
いやもう、ホルベルクもサイアクな人間だけど
ルーナルもサイアク!
いやいや、でも日本でもこんな人いるよね。
被害にあったのに「女が誘ったんだろ」って決めつける人
あ~いやだいやだ。
読んでたら -
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ヘニング・マンケル『手/ヴァランダーの世界』創元推理文庫。
ヴァランダー・シリーズの書店でのキャンペーン特典用に書き下ろされた短編『手』と、ヘニング・マンケル自身によるシリーズの各作品、人物、地名の紹介を収録した『ヴァランダーの世界』を併録したファン・ブック、或いはヴァランダー大全と言えるような作品になっている。
『手』。販売促進用の短編ということで、気を許していたら、スリルとサスペンスにあふれた一連のシリーズ作品と同じレベルの作品に仕上がっていた。ある日の休日、ヴァランダーが同僚に紹介された古い家屋の物件を見に行くと何かに躓き、よく見るとそれは人間の手の骨であることに気付く。ベテラン刑事 -
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刑事クルト・ヴァランダーの短編集です。
スウェーデンのミステリ。
さすがの味わい、若き日の姿を読むことができたのも嬉しい。
クルト・ヴァランダーがまだ22歳でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」から年代を追って話が進みます。
まだ若いが先輩の刑事に見込みがあると思われていて、ただし絶対に一人では行動しないように言われていたのに…
この時恋人だったモナは、次の「裂け目」では妻に。
イースタ署に移ってからの「海辺の男」では、妻と娘は休暇旅行中で、クルトはその計画を知らされていなかった、と暗雲が立ち込め始めてます。
「写真家の死」も印象的な作品。町の写真家が殺され、ヴァランダー一家も折りに触れ