柳沢由実子のレビュー一覧

  • 湿地

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    主人公の刑事と一緒に、複雑に張り巡らされた人間関係を紐解いて行き、真相に1ページずつ近づいて行く感覚が最高に良かった。

    この感覚こそ日本でもアイスランドでも面白いミステリー小説と言われる要素なのかも。
    この本の帯にも書いてあった通り「(国境も人種も関係なく、)警察小説の普遍性を証明した作品」であった。

    アイスランドの、ジメジメと暗い気候が「性暴力」という今作のテーマ合わさり作品通してとても重苦しい印象だった。
    ただし重苦しさ以上に真相に近づいて行く爽快感の方に手がとまらず、半日で一気に読み終えられた。

    次作の「緑衣の女」も是非読もうと思う。

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    2022年03月16日
  • 厳寒の町

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    ネタバレ

    アイスランドを舞台とした社会派ミステリーのこのシリーズ、毎回テーマがあってしかも、刑事たちの個性が引き出されつつあり、また、続けて読んでしまった。

    今回のテーマは移民問題に絡めて、尚かつ異常児童性愛や教育問題と現在の世界のどの地域でも起こりうる問題なのでストーリーが進み展開してゆくと目が離せない。
    並行して行方不明の女性(夫婦間のいざこざ)も気になるところで、これもまた、万国共通のネタ。
    ページが残り少なくなって行くのに解決の方向性が見えず読者的にはハラハラしてしまったけれど、まさかの犯人像。そしてお粗末すぎる動機と結果。
    これからもこのシリーズ、続きが気になります。

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    2022年02月19日
  • 声

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    ネタバレ

    長く積読していた作家さんの三作目。

    こちらも二作目同様、深く沁みる家族の物語でした。21世紀の今なら~なのに登場人物の人たちの中では自分が人生の主人公なのに、
    抱えてゆくジレンマが多すぎてまたこのような悲劇的なミステリーに。
    (北欧ミステリー、あの作品この作品、どうしてこう情けないカッコ悪!だけどカッコいい中年の独り者刑事が多いのでしょう?)

    この表紙の画像がミスリード?
    そして二転三転する推測。
    たっぷり楽しませて頂けました。







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    2022年02月10日
  • 緑衣の女

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    「家族」とは何か……。

    子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
    主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。

    登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
    そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。

    「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
    「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち

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    2022年02月07日
  • 緑衣の女

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    ネタバレ

    アイスランドを舞台としたミステリー。
    前作の『湿地』はその一冊しかないときに読んだのでその続きますと知っていたけれどタイミングがズレてしまって残念。
    満を持してついに!積ん読解消。
    北欧のミステリー、このアイスランドも。

    さて、物語は…
    並行して描かれる家族のストーリーは余りにも暴力的で辛く悲しい。

    みつかった昔の人骨の正体と、ストーリーとどう繋がってゆくのか、ページを捲る手がとまらなかった。

    シリーズなのでまた、読み進めたいと思う。

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    2022年02月06日
  • 湿地

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    「”アイスランド”の犯罪ミステリー。って言われても、何も浮かばない(^^;???」
    そこが良かったのかもしれない。
    物語の先は常に濃い靄に包まれているようで、次に何が待ち受けているのかが分からないのがイイ。
    事件の奥に、また事件が判明し、その向こうに繋がりが見えてくる。
    小さな章建てで進む物語は、まるで連続ドラマのように、一章ごとに始まり、「つづく」で完結する。
    300ページ余りを45の章で組み立てているが、とても読みやすかった。
    それぞれの章が、まるで映画のワンシーンの様に繰り出されていくのだが、読者はその構成に乗せられるように、次々とページをめくっていけるのだと思う。
    実際、本作は映画にも

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    2021年09月20日
  • 湿地

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    ミステリ。警察小説。
    『声』『湖の男』『厳寒の町』は既読。
    この物語を面白いと言っていいのかは分からないが、とにかく素晴らしい。
    犯人に迫る過程の意外性、深い真相、丁寧な心理描写など、優れた点ばかり。
    特に、この事件の真相は、あまりに悲しい。
    文句なしの傑作。

    シリーズ1作目だと思っていたが、実際はこれが3作目。1・2作目は翻訳されていないらしい。
    というか、『厳寒の町』の発売から約2年間、日本で著者の新作が発売されていないのか…。

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    2021年09月06日
  • 湿地

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    読書友達がすすめてくれていたのだけどずっと読んでいなかった小説。

    ラストまで一気読み!おもしろかった!!
    もっと早くに読んでおけばよかった~

    アイスランド・レイキャヴィクのアパートで殺害された老人。そして残されていた奇妙なメッセージ。杜撰な手口から犯人はすぐに捕まると思われたのだが…
    明らかになる被害者の過去、そして事件の真相とは…

    読んでたら生々しいバイオレンスな表現に思わず顔をしかめてしまった
    いやもう、ホルベルクもサイアクな人間だけど
    ルーナルもサイアク!
    いやいや、でも日本でもこんな人いるよね。
    被害にあったのに「女が誘ったんだろ」って決めつける人
    あ~いやだいやだ。
    読んでたら

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    2021年08月31日
  • 手/ヴァランダーの世界

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    「クルト・ヴァランダー」シリーズ。今作で最後。一番好きなシリーズもので思い入れも強い。今作は中編が一編とシリーズの索引、著者の解説がついている。表題作はいつもながらの地道な捜査、ヴァランダーの頑固さ、不器用さ、怒りっぽさが出ている。娘とのやりとり、同僚との捜査と特別何かがあるわけではないけれど引き込まれてしまうのがこのシリーズ。もう新作が読めないのが残念。これからもシリーズを通して何度も読み返す作品だと思う。

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    2021年07月19日
  • 手/ヴァランダーの世界

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    ヘニング・マンケル『手/ヴァランダーの世界』創元推理文庫。

    ヴァランダー・シリーズの書店でのキャンペーン特典用に書き下ろされた短編『手』と、ヘニング・マンケル自身によるシリーズの各作品、人物、地名の紹介を収録した『ヴァランダーの世界』を併録したファン・ブック、或いはヴァランダー大全と言えるような作品になっている。

    『手』。販売促進用の短編ということで、気を許していたら、スリルとサスペンスにあふれた一連のシリーズ作品と同じレベルの作品に仕上がっていた。ある日の休日、ヴァランダーが同僚に紹介された古い家屋の物件を見に行くと何かに躓き、よく見るとそれは人間の手の骨であることに気付く。ベテラン刑事

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    2021年06月25日
  • 背後の足音 下

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    解説であったように、初期3作の「壁」を越えてからは、安定した面白さ。人に勧めるなら「笑う男」以降だろうか。

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    2021年06月11日
  • 五番目の女 上

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    前作と違って、犯行の意図は上巻ではまだ分からない。ヴァランダーと同じ視点で読める。早く次が読みたくなる。

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    2021年06月06日
  • 目くらましの道 下

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    ネタバレ

    殺人者に感情移入する。その殺人者が主人公を襲う寸前までくる。それを知っているのは殺人者と読者だけだ。こんなスリリングな読書経験をできてよかった。

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    2021年05月31日
  • 笑う男

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    ネタバレ

    最後まで証拠をつかめず、本人の供述というか自慢話でしか真相に辿りつかないのは頼りないけれど、それが現実的といえば現実的。でも、ヴァランダーの粗っぽい行動はあまり現実的ではない。でも小説としては面白い。

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    2021年05月28日
  • 白い雌ライオン

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    ネタバレ

    前作「リガの犬たち」と違い、同じ国際犯罪でもスウェーデン内の捜査だから説得力がある。
    マバシャが最後の場面に臨んだら、どんな選択をしたのだろうと思ってもみた。

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    2021年05月24日
  • 苦悩する男 下

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    ヴァランダーシリーズ ラスト
    スウェーデンの、政治的背景(自由主義的国家と、共産、社会主義的国家の、狭間における立場)等、元潜水艦艦長らの事件に絡めて深く考察する事の出来る作品。
    ヴァランダー刑事の、人間性と、その生活も合わせて、愛すべきシリーズだった。人生の、終末期における葛藤が、哀しく心に残った。ヘニングマンケルが、亡くなってしまっていることが、尚更悲しさを、感じてしまった
    全シリーズを、通して只の刑事物ではない素晴らしい作品達だ。

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    2021年05月18日
  • ピラミッド

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    刑事クルト・ヴァランダーの短編集です。
    スウェーデンのミステリ。
    さすがの味わい、若き日の姿を読むことができたのも嬉しい。

    クルト・ヴァランダーがまだ22歳でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」から年代を追って話が進みます。
    まだ若いが先輩の刑事に見込みがあると思われていて、ただし絶対に一人では行動しないように言われていたのに…
    この時恋人だったモナは、次の「裂け目」では妻に。

    イースタ署に移ってからの「海辺の男」では、妻と娘は休暇旅行中で、クルトはその計画を知らされていなかった、と暗雲が立ち込め始めてます。

    「写真家の死」も印象的な作品。町の写真家が殺され、ヴァランダー一家も折りに触れ

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    2021年05月03日
  • 刑事マルティン・ベック 消えた消防車

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    マルティン・ベックのシリーズでこの作品が一番好きである。
    このシリーズは刑事たちが仲が良いのが特徴で、それぞれの刑事たちは家族との生活も楽しんでいる。
    取り組む事件は複雑で陰惨なものだが、刑事たちは話し合いとそれぞれの日常生活の中から事件解決のヒントを見つけていく。
    読み終えた後、タイトルを見返すと思わずほっこりする感じ。

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    2021年03月28日
  • 苦悩する男 下

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    大好きなヴァランダーシリーズの最終巻。
    北欧ミステリーはだいたいそうだが、事件そのものよりも登場人物達の背景や抱えている問題の描き方が面白くて次々シリーズを読んでしまう。
    ヴァランダーが最後こうなるのか…と悲しい気持ちにもなったが、彼にとってリンダと産まれてきた孫のいる世界は幸せな世界なのかな…と思いながら名残惜しく読み終わりました。

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    2021年03月03日
  • 苦悩する男 下

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    ひとつはっきりしてるのは、何事も外側から見える姿とは違うということ。
    シリーズの終わり方が、らしいな。やっぱ最高だった。

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    2021年02月07日