柳沢由実子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「大切なことは最初に言おう、でないと忘れてしまうから」と言ったのは十五世紀のパン屋さんヒマーワリ・メーロンですが、彼の言葉に習って言います
刑事クルト・ヴァランダーシリーズ第三の物語は文庫本で700ページの大長編でしたよ!
うん、この情報は私の感想よりよっぽど重要w
とにかくもうヴァランダーが大好きだ!
あえて言おう、彼こそ男の中の男であると
前にも書いたかもしれないが、本当に男のいいところ(と男たちが思っているところ)と男の恥ずかしい部分が凝縮されたキャラクターと言っていいのではなかろうか
意固地でまっすぐでロマンチストで臆病で怒りっぽくて自分勝手だ
彼は直感によって仕事を進めるタイプの刑事だが、それは天才的なひらめきと言った種類のものではなく、経験や修練から生まれた鋭い観察がもたらす勘どころみたいなんを信じて行動しているにすぎないような気がする
それを他人が見ると直感と感じる
ようするに熟練した職人と言うべきで、こんなところにも自分は男を感じでしまうのだ(女性の職人さんごめんなさい)
そしてなによりヴァランダーはけっこう失敗する
いや、失態と言ったほうが正確だ
部下に助けられたり、家族に迷惑かけたりする
極めつけは酔っぱらって想いを寄せる女性に迷惑な電話をかけてしまい、恥ずかしい思いをしてしまう
情けない場面を曝しまくる男が葛藤を抱えながらも闘う姿勢がかっこいいのだ!
でもやっぱり女性には読んで欲しくない
男の情けない姿はなるべく知られたくないのです
だが女たちは言うだろう
男が情けないのはアダムとイヴの時代から知っていると
やっぱり女はなんでもお見通しだ -
Posted by ブクログ
残酷な子供時代
それは、殺された男の過去でもあり、
三作目にして次第に明らかにされる、主人公の弟の失踪当時の状況。
クリスマス前のにぎやかなホテルのざわめきと比較して、サンタの姿で地下で殺された男はなんて静かで寂しい。
心配されて誘われるほど嫌いになるクリスマス休暇、突然、主人公エーデンデュルは事件のホテルに泊まることにする(捜査のためではない)。
「あの時から、私は何かを失ったまま……」
殺された男の子供時代と歯車の狂った人生が次第に明らかになっていくにつれ、エーデンデュルは、弟の失踪から何かが狂ってしまった自分を責めて追い詰めてしまう。
そして、問題を抱えたままのエーデンデュルの娘は、自分なりの方法で父に近づき、捨て得られたわけを探り、自分の子供時代を埋めようとする。
事件そのものとエーデンデュルの物語が交差して、解決後も、あとを引きずる。
お気に入りのこのシリーズ
他のミステリーにあるような組織的な犯罪や派手な事件はなく、こじんまりとしたアイスランドの人々の生活の中で現れる事件そのものを、地道な捜査で解決するスタイル。
前二作もそうだったが、今回も家族、特に父と子の物語。
さらに、なんといってもスパッと明瞭な文章で、どんどん情景が頭に入ってくる。
引き続き「お気に入り」に入れておくことにした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスウェーデンの警察小説である『クルト・ヴァランダー』シリーズの第1作。
凄惨な殺人事件の謎を追う警官クルト・ヴァランダーが主人公なのだけれど、起こること起こること(事件関係でもプライベートでも)泣きっ面に蜂が続き、同情を禁じ得ない。次々に事件は起こるし、上司は不在だし、操作情報を外部に漏らす部下もいるし、家では離婚、娘との不和、老父の精神不安定、中年太り、アルコール依存、古い友だちには邪険にされ、新しく出会った人妻にも相手にされない…。お世辞にもスマートとは言えないクルトだけど、事件に関しては(何度も失敗しながらも)「しぶと」く「絶対に放り出さな」い姿に、よれよれながらも応援したくなる。
胸のすく謎解きのカタルシスはないけれど、事件が終わった後の警官たちの語りに、静かな感動を覚える読後感だった。 -
Posted by ブクログ
レビューを書いてないままになっているのにひと月以上経って気づいたものの、もう概要を忘れてしまってきちんとした文章を書けなくなってしまいました。無念。かなりのページ数でしたが内容にひっぱられてぐいぐいと読み進められました。題名が印象的ですがこれも読み終わって納得。事件はただ間違った時間に間違った場所に居合わせてしまっただけの一般市民の女性が殺害され遺体が遺棄されたため行方不明になり、残された夫が地元警察署に届け出てヴァランダー刑事が捜査にあたるが手がかりがほとんど無く難航する捜査という軸と、南アフリカ共和国(執筆された当時はまだアパルトヘイト政策が撤廃される前)で白人優位を死守しようという勢力が、要人の暗殺を計画しその要人の生命そのものと政治の流れを抹殺するだけでなく、行われる暗殺の実行犯を単なる駒ではなく人種政策において重要な意味を持つ人物にすることで大きな流れを断ち切ろうと画策するという二つの軸が並行して交互に描かれていき、それらがどう交差してひとつの事件になったかというのを解き明かしていく、圧巻の作品でした。南アフリカ共和国の政情についてなど、巻末に丁寧な解説があり、全て読み応えがありました。ペースはぼちぼちですが全作通して読みたいシリーズです。
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Posted by ブクログ
ネタバレアイスランドを舞台とした社会派ミステリーのこのシリーズ、毎回テーマがあってしかも、刑事たちの個性が引き出されつつあり、また、続けて読んでしまった。
今回のテーマは移民問題に絡めて、尚かつ異常児童性愛や教育問題と現在の世界のどの地域でも起こりうる問題なのでストーリーが進み展開してゆくと目が離せない。
並行して行方不明の女性(夫婦間のいざこざ)も気になるところで、これもまた、万国共通のネタ。
ページが残り少なくなって行くのに解決の方向性が見えず読者的にはハラハラしてしまったけれど、まさかの犯人像。そしてお粗末すぎる動機と結果。
これからもこのシリーズ、続きが気になります。 -
Posted by ブクログ
「家族」とは何か……。
子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。
登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。
「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち。
読み進めることすらつらくなるような描写に、訳者は日本語にすることを一度はためらったものの、作者の「表現者としての義務」という強い意志を受け入れることで、そのまま翻訳したとのこと(訳者あとがき)。
現実の事件で「力と言葉の暴力による支配」を、細かく文章化し公表をするのは、ためらいが生まれる。きっと「DV」という名を得るに至った陰に、この作者のような「強い意志」があったことだろう。
アイスランドの厳しい自然の中、寒い冬の海や吹雪の中に消えたといわれる人々。
主人公エーデンデュルにも消すことのできない自責の念と悲しみがあった。
これらのことは、自然の一部のように「すべてがあきらかになることはない」と……。
「家族」という問いかけと「神隠し」の正体も漠然とする横溝正史的な物語に、日本人の心に残る何かがある気がする。 -
Posted by ブクログ
刑事クルト・ヴァランダーの短編集です。
スウェーデンのミステリ。
さすがの味わい、若き日の姿を読むことができたのも嬉しい。
クルト・ヴァランダーがまだ22歳でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」から年代を追って話が進みます。
まだ若いが先輩の刑事に見込みがあると思われていて、ただし絶対に一人では行動しないように言われていたのに…
この時恋人だったモナは、次の「裂け目」では妻に。
イースタ署に移ってからの「海辺の男」では、妻と娘は休暇旅行中で、クルトはその計画を知らされていなかった、と暗雲が立ち込め始めてます。
「写真家の死」も印象的な作品。町の写真家が殺され、ヴァランダー一家も折りに触れ写真を撮ってもらっていた男なのだが、意外な面を持っていた…
「ピラミッド」では、娘のリンダが19歳になっています。
クルトの父親は画家でいささか変わり者なのだが、念願のエジプト旅行中。ところが、エジプトで父が逮捕されたという報が入り‥
捜査中の事件の謎も合わせ、長編のような読み応え。
有能だが不器用なところがあり、やる気や優しさが空回りしがちなクルト・ヴァランダーの人生。どうしようもない出来事もあり、切なくもちょっと滑稽だったり。
「殺人者の顔」で登場するまでのエピソードが語られ、予想以上に面白く読めました。
作者が惜しくも亡くなってしまったため、残りをゆっくりと読んでいます。未訳の作品もあるので、いずれはと楽しみに。