【感想・ネタバレ】声のレビュー

あらすじ

クリスマスシーズンで賑わうレイキャヴィクのホテルの地下室で、一人の男が殺された。ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実。全世界でシリーズ累計1000万部突破。翻訳ミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。家族の在り方を描き続ける著者の、『湿地』『緑衣の女』に続くシリーズ第3弾。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

残酷な子供時代

それは、殺された男の過去でもあり、
三作目にして次第に明らかにされる、主人公の弟の失踪当時の状況。

クリスマス前のにぎやかなホテルのざわめきと比較して、サンタの姿で地下で殺された男はなんて静かで寂しい。
心配されて誘われるほど嫌いになるクリスマス休暇、突然、主人公エーデンデュルは事件のホテルに泊まることにする(捜査のためではない)。

「あの時から、私は何かを失ったまま……」
殺された男の子供時代と歯車の狂った人生が次第に明らかになっていくにつれ、エーデンデュルは、弟の失踪から何かが狂ってしまった自分を責めて追い詰めてしまう。
そして、問題を抱えたままのエーデンデュルの娘は、自分なりの方法で父に近づき、捨て得られたわけを探り、自分の子供時代を埋めようとする。

事件そのものとエーデンデュルの物語が交差して、解決後も、あとを引きずる。

お気に入りのこのシリーズ
他のミステリーにあるような組織的な犯罪や派手な事件はなく、こじんまりとしたアイスランドの人々の生活の中で現れる事件そのものを、地道な捜査で解決するスタイル。
前二作もそうだったが、今回も家族、特に父と子の物語。

さらに、なんといってもスパッと明瞭な文章で、どんどん情景が頭に入ってくる。

引き続き「お気に入り」に入れておくことにした。

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2022年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

長く積読していた作家さんの三作目。

こちらも二作目同様、深く沁みる家族の物語でした。21世紀の今なら~なのに登場人物の人たちの中では自分が人生の主人公なのに、
抱えてゆくジレンマが多すぎてまたこのような悲劇的なミステリーに。
(北欧ミステリー、あの作品この作品、どうしてこう情けないカッコ悪!だけどカッコいい中年の独り者刑事が多いのでしょう?)

この表紙の画像がミスリード?
そして二転三転する推測。
たっぷり楽しませて頂けました。







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2022年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始めるまでに気合いがいる。
クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。

レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。

捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
心が痛くなる。

親は子どもを希望にしてはいけない。
自分の夢を子どもに託してはいけない。
子どもの少年時代を奪い取ってはいけない。

楽しい子ども時代を過ごすことの出来なかった少年は親を恨み、親は期待に応えられなかった息子を無視する。
何十年も。

どうしてそのままの子どもを受け入れることができないのだろう。
そして少年の姉もまた、誰からも顧みられないという辛さを抱えていた。

エーレンデュルは娘から、自分たち家族を捨てた理由を何度も問い詰められる。
エーレンデュルもまた、壊れた家庭で育ってきたのだ。
けれど最後、エーレンデュルとエヴァ=リンド(娘)は、一緒にクリスマスを過ごすことにする。
互いを思いながら、不器用におずおずと近づいていく彼らは、次作でまた少し親密になっていればいいと思う。
あと、あまり姿を現さない息子もそろそろ出てこないかなあ。

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2020年12月06日

Posted by ブクログ

今回もとても引き込まれた。派手さはないけれどすごく好き。いつもやるせなさが残るけれど、読み終わった後にいろんなことを考えさせられる。
徐々に明かされていく過去と人間関係。家族の形。ありのままの自分をそばにいて愛してくれたら。簡単なはずなのに難しい。
家族の愛と幸福と、だからこその悲しさが漂う物語だった。

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2018年05月26日

Posted by ブクログ

毎回子供の虐待が取り上げられている気がする。ミステリーだけど、それにとどまらない人間ドラマに引き込まれる。
真夏にクリスマスの本を読んでみたが、涼しくはならなかった。

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2024年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エーレンデュル捜査官シリーズの第三弾。

ホテルの小部屋に住み込んでいたドアマンが殺された。
ひっそりと暮らしていた男は、
子供のころ天使のような声、
ボーイ・ソプラノの持ち主だったことがわかる。
2枚だけ作成されたレコードが残っていたが、
そのレコードが動機なのか?

どうも物足りなさを感じているのは、
なんだかもっと強烈な北欧ミステリーを読んだことがあるせいかもしれない、
という気がしてきた。
凄惨な殺人現場とか、苛烈な暴力性や、
刑事を含む関係者の破滅的な生活や人生とか。
それらを読みたい訳ではないのだが。

でも、誰にも打ち解けず孤独に暮らしていたかに見えた被害者に、
急に友人らしき人物が登場したり、
というよりかは彼の人物像がどうもよくわからないところや、
ホテルの抱える闇がはっきり描かれなかったり、
同僚が抱えていた児童虐待事件も真相が尻切れトンボになったり、
他にも食い足りなさを感じるところはあるのかも。
そして、情報を提供してくれる元上司との関係もいまいちよくわからない。

一応、エーレンデュルと娘はまだ親密さを取り戻しつつあるし、
過去の弟の遭難事故のことを、
捜査で知り合った研究所助手の女性に離すこともできたし、
話が進んでいる感はあるけど、
もうちょっと面白くなってほしい。

今回面白かったのは、
レコードを集める趣味の世界では、
日本人がネットに情報を載せ、世界中に出向いて買い占めている、
レコード蒐集家の間では有名な話だ、
というくだりかな。

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2022年12月03日

Posted by ブクログ

最初から引き込まれたし、最後少し泣いてしまった。
真犯人が見つかるまでに、関わる人たちの背景が少しづつ明らかになっていくのだけど、恥ずかしい性癖が知られてしまっただけの人もいて気の毒(笑)だった。

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2022年08月24日

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海外ミステリーって面白いかどうかは置いといても、まずは読みやすくないと、と思うのですが、この作家の作品は読みやすくていいです。シリーズ第3作目。ホテルの地下で、少年時代、スター歌手だった男性が殺害される事件が発生。謎が面白いわけでもなく、トリックがすごいわけでもないのでわミステリーとしては可もなく不可もなくというところでしたが、むしろ主人公の刑事をはじめとした周囲の人を巡る家族について問いかける作品でした。全体として落ち着いた作品のためか、なんか寂しくて暗い印象なのが残念なところです。

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2022年07月07日

Posted by ブクログ

アイスランドのミステリー。アクションシーンやクサいセリフも何も出てこなくてむしろ暗くて内向的なんだけど、被害者や周辺の人々の過去を掘り下げていくことで事件を究明していく過程がドラマティックで面白かった。二作前の『湿地』は映画にもなっていて、同じ刑事が主人公。

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2021年09月01日

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ミステリ。警察小説。シリーズ3作目。1、2作目は未読。
作品全体の暗く冷たい雰囲気と、アイスランド・レイキャヴィクの雰囲気が良く合う。
濃密な人間ドラマが特徴的。
登場人物の心理描写が丁寧。
偶然見かけた全く知らない作品だったが、かなりの好印象。
シリーズ追いかける予定。

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2021年01月19日

Posted by ブクログ

アーナルデュル・インドリタソンは「このミス」で見つけた。「湿地」「緑衣の女」に続いて三冊目になる。流行の北欧ミステリなのだが、同じ地域だと大雑把に捕らえても、その作風はそれぞれまったく違っていて面白い。
アーナルデュル・インドリタソンの作品の舞台からは当然北の風土感が伝わってくるが、読みどころは捜査官のエーレンデュルの心理描写や風景描写は、繊細で品がいい。

エーレンデュルが抱えている個人的な悩みも深い、エピソード風に挿入されている過去に起きた出来事、彼の未だに囚われている苦しみに事件解決よりも惹かれるときがある。

今回の事件は、クリスマス前の浮き立つ世間をよそに、有名ホテルのドアマンが、地下に与えられている小部屋で殺されていたことが発端になる。イベントに着るサンタの上着をはだけ、ナイフで滅多刺しにされ、下着は足元までずらした異様な姿だった。
被害者のグロドイグルは28歳から20年間、ドアマンをしながら雑用も引き受け無事に勤めてきた。
グロドイグルは子供時代は天才的なボーイソプラノ歌手で、地方で認められ始めていた。北欧巡業も決まっていた。が初めての大きな舞台で歌い出そうとしたとき突然変声期を向かえ、その後は消えてしまった。
その後彼にまるで関心のなくなって家族は断絶した。

しかし胸に何度も突き刺されたナイフの跡は何を意味するのか。調べを進めるうち、直前に接触した人物が分かる。
彼はイギリスから、殺されたグロドイグルが子供時代に吹き込んだレコードを買いにきたのだった。
残ったレコードは収集家が莫大な値段をつける超レアものだった。彼は手付金を受け取っているはず、が部屋にはなかった。
麻薬も関係がない、ホテルの陰の娼婦斡旋も利用したことがない。不審な人の出入りもない。

彼の過去は、子供スターとして短期間は世間に知れ、それが原因で学校では苛め抜かれ、常に公演の失敗を笑われ実に惨めに生きてきた。
スターにするという夢のために父との過酷な日常を耐えた日々、ついに父と争って動けなくした。姉は手の平を返すように冷淡になり、家を出た。

世間との接触をたって、ホテルの制服の中に逃げ込んでいた。彼がぬいぐるみを着るクリスマスのサンタは子供ちに人気だった。

エーレンデュルとチームが次第に彼の過去に迫るにつれ、形は違っても、自分が抱えている癒されない過去が思いだされ苦しみながら話が進んでいく。
一人の男の人生がこうして幕を閉じた後も、周りの人々の暮らしは続く。グロドイグルと関わった人たちの思いと、犯人の思いが、暗い地下の隅から、人々の前に姿を現す。
しかしグロドイグルには誰にもいえないひそかな悲しい秘密があった。
アイスランドの首都、レイキャヴィクのクリスマス前の数日が舞台である。


一一一
家。
家とはなんだろう?
人生がどうしようもない事態になり、崩壊と不幸の淵に沈んでしまう前に、家族と過ごした子ども時代に戻りたいと思うものだろうか?友達であり親友でもあった母親と父親、そして姉に囲まれて過ごした生家、そこで子ども時代に戻りたいという気持ちだろうか?生きていくのが苦しくてこれ以上耐えられないとき、失いたくない思い出、慰めとなった思い出を求めて、人の目につかないように生家に忍び込んでいたに違いない。
もしかすると彼が忍び込んだのは、宿命と闘うためだったのかもしれない一一一

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2019年12月30日

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登場人物それぞれの家族の葛藤や闇を丁寧に描いている。ミステリでここまで登場人物の葛藤や闇を描き切った作品にはこの書以外、出会えたことがない。

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2018年10月07日

Posted by ブクログ

クリスマスは幸せな人たちのもの。
この小説はこの文章に全てが凝縮されていると思った。
色んな出来事が重なって語られる。かつて子供スターになりかけた元ホテルドアマンがサンタクロースの格好でホテルの地下で殺されたのはなぜだったのか。
西欧はクリスマスが特別なお祭り? なのでクリスマスに少しでも家族が幸せになれるというプレッシャーがすごく強いのかなとは思う。この作者の書くアイスランドはとても暗い色の世界に見える。エーレンデュルが10歳の頃から闇を抱えていたことをエヴァ=リンドに告白できて良かった。二人がゆっくり家族になっていくのイライラするけど、次の作品を読むの楽しみ!

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2018年09月30日

Posted by ブクログ

う〜ん、なかなかの力作。種々の問題を同時進行的に扱う手法は感動的。アイスランドの作品は初めてかも。久々の感動をありがとう。

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2018年08月05日

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ネタバレ

ホテルのドアマンの殺人事件と並行して、児童虐待の疑いの父子の件と、エーレンデュルの家族の話が展開していく。
親子関係の、というか親が子供に与える影響の大きさに慄然とした。
エリンボルクのがかかえてる事件の方の真実も気になる。

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2018年02月22日

Posted by ブクログ

時に罵り合い、時に掴み掛かり、、、それぞれの家族の複雑な関係が、暗く、悲しく明かされていく。
子牛のなめし革に簡潔に書かれたという、アイスランドの伝承文学〝サーガ”を意識しているという作者らしく、一切の無駄がなく、究極まで削り落とされた文章である。
伏線回収は?と思うような意味のない登場人物、エピソードの類いがなく、そこがまた読みやすく、シリーズ作品の次が読みたくなる理由である。

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2023年10月28日

Posted by ブクログ

言いたいことは分かった
主人公のトラウマや、娘の葛藤、被害者の試練と哀愁など、書き方はうまい
まわりの同僚たちも個性がはっきり出ていてまとまりがよい
でもどうも、感情移入しきれないまま終わってしまった
相性かな、作者や訳者との

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2022年08月04日

Posted by ブクログ

訳者あとがきにあったようにミステリでなく社会小説だと思う。今回も家族間の難しい関係が描かれており色々考えさせられました。

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2022年06月19日

Posted by ブクログ

 アイスランドの首都レイキャビク警察のエーレンデュル捜査官シリーズ第3段(邦訳)です。

 本シリーズは、現地アイスランドでは既に1997年から2016年で既に15作品が刊行されて居り、邦訳の最初の刊は''湿地''(2012年)で現在迄に5作品が刊行されてます。邦訳作品は、ガラスの鍵賞やゴールド・タガー賞等を受した作品ですが、どの刊もとても面白いので是非に邦訳未刊行の作品の出版を心待ちにしてます。

 今回の事件は、レイキャビクのホテルでドアマンの男がホテル地下の住込み部屋で刺殺された。折下クリスマスで男はイベント用のサンタクロースの衣装だった。

 エーレンデュルは、一人ホテルの部屋で寂しいクリスマスを過ごそうとしていたが、暖房機が壊れ寒い。羽毛布団を被りパンツ一丁で廊下を歩く刑事…トナカイも驚きの行動だ!

 殺された男グロドイグルは、少年時代に合唱団だソプラノを歌唱していた当時有名なボーイソプラノ歌手だったが変声期を迎えその輝かしい未来は消滅し殺される迄はホテル住込みのドアマンだった。

 一方で同僚のエリンボルクは、息子を虐待し重症を追わせた父親の捜査に掛かっていた。

 今回の作品は、家族や兄弟が背骨にあって信頼や愛情、憎しみ等で悩みながらも生きてゆく人の強さや心の揺らぎを感じさせます。
 主人公エーレンデュルも少年の頃に弟と登山で生き別れになり深い後悔や癒えない心の痛みを持っている。

 殺されたグロドイグルと姉の関係やホテルのメイドウスプと麻薬中毒の弟。更にエーレンデュルは、娘エヴァとの関係性にも悩んでいる。殺人事件を解くミステリーでありながら人間の家族との関係性を考えさせられる物語でもあります。派手なアクションや息吐く暇も無い様な連続殺人も起きません、アイスランドの気候の様な陰気で薄暗い雰囲気がやみつきになりました。

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2021年09月05日

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犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ三作目。ホテルの地下で殺されたドアマンの捜査を進めていくと、驚愕の過去が明かされていく。主人公や、ホテルを取り巻く濃密な人間関係に拗さもあり、星3つ。

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2021年06月20日

Posted by ブクログ

作中の『アイスランドは小さな国なのにみんなと同じでなければ許されない』という台詞は社会生活を営む人間が直面する問題に国境はないと教えてくれる。これまでのシリーズ作品中最も地味な展開ながら、そのドラマ性が高く突出しているのは【家族の在り方】というテーマが万国共通だからだろうか。改めてこのシリーズは海外版社会派ミステリーなのだと実感する。前二作に比べ開けた作風で、クスッと笑える場面にすら出会すが、その分些か通俗的になった印象は否めず。但し、優美なラストシーンを含め、作品の完成度自体はシリーズNo.1だと思う。

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2020年03月22日

Posted by ブクログ

孤独な生活を送っていたドアマンがホテルの地下室で惨殺される。
かつて男は、美しい歌声で人々を魅了したことがあった。だが、避けて通ることのできない変声のため、スポットライトを浴びた初舞台で、一瞬にして「ただの少年」へと変わったのだった。厳しく指導し息子に期待を懸けていた父親。失望と嘲笑、果ての転落。以降の人生はもはや「余生」に過ぎなかった。人々との関係を絶ち、人畜無害となっていた男を殺害した動機とは何か。レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、私生活でのトラブルを抱えつつも、濁りきった事件の底に沈殿する鍵を求めて、再び水中深くへと潜り込んでいく。

インドリダソン翻訳第三弾。「家族」を主題とする著者の主張がより明確となり、前面に出てきている。本作では、親と子の関係性を問い直す三つのケースを扱い、マイノリティに関わる現代的な問題も絡めている。その中心となるのは、世捨て人同然となった男の半生なのだが、挫折の容量は重いとはいえ、人間の業に思いを馳せるような悲劇性は高くない。捜査を主導する主人公エーレンデュルの家族関係とのリンクを一層深めているため、軸となる事件自体の強度が弱められた感じだ。テーマを深めるためのメッセージ性が過多となり、肝心の物語が薄くなってしまっている。前2作「湿地」「緑衣の女」に比べてプロットの構成力も弛緩しているは残念だ。

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2018年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シリーズものの3作目だということを知らずに買ってみた。
そのせいなのかどうなのか、主要な登場人物のキャラクターが序盤の会話や描写からイマイチつかみにくい。
根底にある文化の違いという側面を置いといたとしても、訳文にはもう少しローカライズ的な発想があってもいいのでは、と思った。
家族とは、と読者に問いを投げ掛けつつ展開されていくプロットは練り上げられており、読み応えがあった。

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2018年07月20日

Posted by ブクログ

うーむ。読み始めから、雰囲気が暗いなあ、と。この作家さんの作品は全てそんな感じですが。誰も救われないまま、事件が解決して終わったという感じ。明るい要素が無さすぎるのも、読み進めるのがつらくて、ああ終わってほっとした。

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2018年05月26日

Posted by ブクログ

4月-1。3.5点。
ホテルのドアマンが、ホテルの地下室で殺害される。
少年時代、ソプラノ歌手だった被害者。

哀しい人生。この作家、事件と言うよりは被害者の人生の描き方が珠玉。背景が哀しく、はまれる。

次作も期待。

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2018年04月07日

Posted by ブクログ

アーナルデュル・インドリダソン『声』創元推理文庫。

シリーズ第5作で、邦訳作品としては第3作。事件に面白味がある訳でもなく、展開が静か過ぎて好みではなかった。

クリスマスシーズンのホテルの地下で、元ドアマンだった男がサンタクロースの扮装でめった刺しにされた。捜査官・エーレンデュルは捜査を進めるうちに被害者の驚愕の過去に触れていく。

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2018年02月04日

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