【感想・ネタバレ】笑う男のレビュー

あらすじ

正当防衛とはいえ、人を殺したことに苦しむヴァランダー。このまま警察官を続けるか否か、長期休暇を取りデンマークの海岸で悩む彼のもとへ友人の弁護士が訪ねてきた。同じ弁護士の父親が交通事故で死亡したが、腑に落ちない点があると言う。しかしヴァランダーに他人の悩みに力を貸す余裕などなかった。ついに警察を辞める決心をし、イースタに戻った彼が見たのは、自分が助力を拒み突き放した友人の死亡記事だった。他殺である。急拠、意を翻して復職し、事件を追い始めた彼の身に、犯人の魔の手が迫る。ゴールドダガー受賞人気シリーズ第4弾。/解説=関口苑生

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

久々に<刑事ヴァランダー>シリーズを読んでみた。

濃い霧の海岸線
一人の男があてもなく彷徨う。

ひとつ前の大作「白い雌ライオン」の終盤で人を殺してしまった主人公ヴァランダーは、ひとり出口のない苦悩の中にいた。

一旦は警察を辞める決断をしたが、知人の弁護士が殺害された事件を知り突然の復帰。
そこからは、署のいつもの顔ぶれに新任の女性刑事を加えた仲間を振り回しながら、事件解決へと突進していく。
よく考えるとヴァランダーはもうムチャクチャで、周りはきっと迷惑しているだろう。

そして物語は初期2作と同様に、主にヴァランダー目線一本で時系列に進む。
この、じっくりと「主人公ヴァランダーを味わう」といった趣が、好きな人にはたまらない。

作者ヘニング・マンケルは残念ながら2015年に67歳で亡くなっており、新作はもう望めない。
翻訳者柳沢由美子氏による追悼文「無口な巨人」がWEB東京創元社マガジンで掲載されており、読むことができる。
世界に蔓延していくさまざまな問題に対して真摯に向き合っていた作者自身の姿が、不器用で孤独なヴァランダーと重なる。

このシリーズ、大切に読み進めようと思う。

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2023年04月05日

Posted by ブクログ

シリーズ進むにつれ 深みが増す
彼の才能は安く買い高く売る、また他の人に見えない価値を発見することにあった
まさに!!

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2022年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後まで証拠をつかめず、本人の供述というか自慢話でしか真相に辿りつかないのは頼りないけれど、それが現実的といえば現実的。でも、ヴァランダーの粗っぽい行動はあまり現実的ではない。でも小説としては面白い。

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2021年05月28日

Posted by ブクログ

もうミステリーじゃないですね

じゃあなんなのよ?って聞かれるとだいぶ困るんですが

正直事件の方はもうほぼサイドストーリーなんじゃないかと思うほど力入ってない気がします
割とどうでもいいっていうか

今回はヴァランダー再生の旅です
警官であるということ、イコールヴァランダーにとって生きるということはどういうことなのかをひたすらに自分に問いかけ続けます
そしてヴァランダーはデンマーク社会を映す鏡でもあるようです

ひたすらに自分の内にある怖れや苦悩や喜びさまざまなものと向き合い続ける500ページでした

読み終わって思ったこと
ヴァランダー頑張れ!
俺も頑張る!

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2023年04月09日

Posted by ブクログ

4作目。冒頭では3作目の終盤に正当防衛とはいえ人を殺めてしまった事実に押しつぶされそうになり燃え尽きたようになって辞職することを決意しているヴァランダー。旧知の弁護士が父親の事故死に不審な点があると、療養先を探しあてて相談しに訪ねて来たのも断るほどの憔悴ぶりだったのが、療養先から戻るとその弁護士が銃殺されたことを知り、辞職を取りやめて自責の念からその事件の担当刑事として復職。かつての同僚や上司はとまどいながらもヴァランダーの翻意を歓迎し一丸となって事件の解決のために捜査にまい進します。今回は事件そのものの動機や謎解きよりも、その題材を使ってスウェーデンの社会の変遷や警察組織内の旧弊な価値観に対抗する新人女性刑事の活躍や、ヴァランダーの心の在り方などを丁寧に描いていて、そちらの方に読みごたえがありました。たいていのシリーズものの主人公とは違って失敗もするし挫折もするし苦悩もするし父親とも娘ともぎくしゃくしているし、捜査活動の最中に死の恐怖に襲われて弱腰になったりもするヨレヨレの人間くさいヴァランダーですが、いざとなると命の危険を感じながらもたった一人で敵の城(今回は犯人が文字通り城に住んでいる)に突撃してしまうめちゃくちゃさもあり、強いのか弱いのか弱いのか強いのかが全然わからなくて、そこが面白いです。この作品から登場した女性刑事、フーグルンドがいい感じでした。これから活躍していくようなので楽しみです。

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2022年04月25日

Posted by ブクログ

ヴァランダーシリーズ 4作め!今回は、犯人の実態が、掴めないまま、ストーリーが、進んでいく。
経済犯罪の大きな暗部である隙間を、つき、既得権益や、臓器売買等、奥が、深く全てを、解決する事が、難しい中、前作で刑事返上をも決めてうちひしがれたヴァランダーの戦う姿には、感無量!

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2021年04月16日

Posted by ブクログ

久し振りのイ-スタ署のヴァランダー警部、冒頭から正当防衛で殺した事件で悩んでいる。転地しても効果がなくうつ状態は深まるばかり。
そこに友人の弁護士が尋ねてくる、父親が交通事故で死んだが、腑に落ちないので調べて欲しいと言う。ヴァランダーは警官を辞めようかと思っているときであり、断ってしまった。

宅して新聞でその友人が射殺された記事を見る。
彼は負い目を感じ、やっと前向きに立ち上がれそうな予感がする。
重い腰を上げて復帰、早速父親の事故から調べ始める。
暫く空けていた署内は、新人のアン=ブリッド=フーグルンドが配属されていた。女刑事と言うのが気に入らなかったが、頭も切れ、その上美しい彼女は、戦力になりそうな有望株だと思えた。

父親の秘書の庭に地雷が埋められ、自分の車に爆破装置を仕込まれたが生き延びる。県庁の会計捜査官が自殺をする。

次々に起きる事件を繋いでるかのような、姿を見せない富豪の城主が何か気にかかる。彼は5年前に郊外の城を買って住み始めた。県内あちこちの施設の高額の寄付をし、研究費を補助し、尊敬されている人物だった。
ヴァランダーは挨拶目的で彼に会う。城はがっちり固められたセキュリティーの中にあった

非常に紳士的で隙のない男だったが、顔に笑みを張り付かせた様子はなにかひっかった。しかし事件の根拠がわからない。また思い惑う。ハーデルベリ(城主)に関する情報を確認する捜査に一週間かかった。その間、ヴァランダーもほかの者たちも、平均して5時間も眠らなかった、あとで彼らはその一週間を振り返って、必要とあらば自分たちも高度の捜査能力を発揮することが出来ると実感したのだった。
オーケソン検事は言う「この捜査法は時が着たら、警察本庁と法務省がイースタモデルという名で一般に公開することになるだろう」(略)
「私の云っているのは、警察本庁のお偉方の捜査会議のことだ。また政治家のまか不思議な世界のことだ。大勢が集まって
御託をならべて<アリを篩にかけ、ラクダを飲み込む>ようなことばかりしているではないか。彼らは実際の仕事をしないで毎晩就寝時に明朝目が覚めたら水がワインに変わっていますようにと祈っているようなものだ」

なすすべも無く、時間が過ぎた。
署長のビュルクは相変わらず事なかれ主義で、城主に対しても弱腰である。しかし鑑識のニーベリやオーケソン検事に励まされ、同僚も休み返上で動く。ヴァランダーは少しずつ前進する。
今回は、完璧に武装した城の中に潜入して調べたいという焦りと、若くして成功した世界的な事業主の闇を暴こうとする執念が、非力なヴァランダーの支えになっている。

彼の家庭や親子のつながりなど、多くの紙数を費やして、彼の人柄を浮き彫りにしている。事件を負いつつ、同僚や上司の人物の描写も多い。

いつもの「何かおかしい」というヴァランダーの天性の勘と経験に裏打ちされた警官の心が、物語を牽引する。
格好のいい警官ではない、逆に悩みも多く、たまにはそれに負けて逃げようとする、そんな身近な人となりが、読者を捕らえている。

11月初めに起きた事件は複雑な背景を持っていたが、クリスマス前にやっと目処がつき片付く。
最後、ダイハードもどきのヴァランダーの活躍にはビックリした。

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2019年12月28日

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<クルト・ヴァランダー>シリーズ4作目。ヴァランダーようやく再生の巻。相変わらずハードな展開でよれよれの割には不死身すぎだが、主人公の魅力(?)と、登場人物たちがうまく脇を固めている為最後まで一気に読ませてしまう。今回はお疲れ様のご褒美があって良かった。

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2014年04月14日

Posted by ブクログ

今まで読んできたこのシリーズの中では、一番ミステリーらしい作品。
主人公がショックから立ち直って動き出す様子も良いし、
有能な女刑事が登場したのも良い。

シリーズ冒頭からぐだぐだだった主人公の人生が、
ようやく持ち直し始めたという感じ。

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2013年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シリーズものと知らずに読んでしまった。
頭の中ですごく映像化しやすくて、
時節柄ヴァランダーは007のダニエル・クレイグを
思い浮かべながら読んだ。
そういえばハリウッド超大作!って最近少ないような
気がするけど、スパイものとかで正当防衛のために
相手を殺すシーンってやたらたくさん出て来てた記憶があり、
だからヴァランダーが1年以上も休職し、
あてもなく浜辺をさまよう姿を想像して
職業で拳銃を持っている人の命に対する思いは
本来こういうものではないかと感じた。
まだその時ではない 作品中何度か出てくるフレーズは
見えない事件を一刻も早く解決したいという焦りを
ふっと落ち着かせる効果的な言葉で、
日ごろあわてものの私に教訓めいた言葉でもあった。

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2012年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヴァランダーシリーズ4作目。1作目の印象はいまいちだったが、だんだん面白くなってきた。脇を固める人たちもなかなか。次作がゴールドダガー賞受賞作。楽しみ。

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2012年11月12日

Posted by ブクログ

スウェーデンのミステリ。
クルト・ヴァランダー警部のシリーズ4作目。
「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」に続く真ん中へんですが、順番めちゃくちゃに読んだので、これが最後になりました。
(…あ、もう新作出てます!)

前作で正当防衛ながら人を殺したことにショックを受け、1年も休職していたクルト。
ついに仕事を辞めると決意したとき、友人の弁護士が保養先に訪れます。
父が事故死したのだが、その様子に不審な点があるので、調べて欲しいと。
クルトは断るのですが、その友人が殺されたと聞き…

アン=ブリット・フールグンドがここで初登場していました。
イースタ署では初めてだという紅一点の新米刑事なので、最初は同僚に評価されないでいます。
でも子どもが二人いるしっかりした女性。
クルトは素質を見抜き、新時代の警官になるだろうと思うのです。

弁護士トーステンソンの父親は、取引先から帰る途中で事故にあった。
取引先とは、ファーンホルム城に住む富豪のアルフレッド・ハーデルベリ。
署長が気を遣うほどの名士で、世界を飛び回っているため、面会することすら難しい。
強引に約束してクルトが聴取に出向いたハーデルベリは、笑顔を絶やさないカリスマ性のある男でした。

クルトは子どもの頃に、画家の父親の絵を買っていた大金持ちのことを思い出します。
絹の服を着て高価な車に乗っていた彼らはどこか、怖かった。
父親が卑屈にふるまう顧客を、幼いクルトはシルクライダーと呼んでいたのです。

城の様子を探るため、旧友にも協力を頼むクルト。
弁護士の女性秘書までが狙われ、事態は急迫してきます。
癖のある古手の警官達と付き合いながらの捜査。
一番変わっているのはクルトかも知れないけど。
休養の後なので、珍しく健康らしいけど、捜査に熱中して、ひげを剃らないまま事情聴取に行ったり。
鑑識のニーベリは有能で、検事のオーケソンは冷静に協力し、フールグンドも期待通り活躍します。

国際的な富豪が相手とは、小さな町の警官達で解決出来るのかと思いますが~ここは頑張るんです。
それどころか、クルト一人でも解決しそうな勢い~単独行動が多いのでね。
「クルトが元気になるには、ちゃんとした事件が必要なんだ」と同僚に評されます。
アクションシーンをまじえて、さくさくと進む警察物で、このシリーズにしては標準的な読み応えかな。
手紙を出していた美しい未亡人バイバには、会って貰えそう?

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2012年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前作で人を殺めてしまったヴァランダーは
精神を病み、休職していた。
これまでも刑事という職業に疑問を持ちながら仕事を続けて来た彼は、いよいよ辞める決心をしたのだけど、
今回起こった事件がきっかけとなり
逆にこの仕事以外に道はない、という結論に至る。

前半の地道な捜査の雰囲気がとても良かった反面、
犯人自体はこの人しかいないという中、
中盤以降なかなか進展が見られず
少し間延びした感じに。
このシリーズは事件とか推理といった部分より
ヴァランダーの心情や葛藤する姿を味わうのが良いようだ。

あと、人物紹介の二番目に女性刑事の名前が載ってるのを見た時は、
「ヴァランダー、またか!」とあきれましたよ。
それから相変わらずちまちまとリガに住む未亡人に手紙を書いては破りしてるのも通常モード。
でも今回は自分の予想を裏切る結果だったので
逆に残念。
彼には情けない男を全力で全うしてほしい。

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2024年12月26日

Posted by ブクログ

 スウェーデンの南端イースタ警察署の警部クルト・ヴァランダーシリーズ第4段です。

前回の事件で南アフリカ大統領の暗殺を企てている一味の1人を銃殺したヴァランダーは精神的に不安定になり一年以上も休職していたが警官を辞める事を決心した。 

 イースタ署に最後の出勤をする朝に新聞で友人弁護士が殺された事を知ると、辞職の決心が霧散した。殺される数日前にトーステンソンは静養中のヴァランダーを訪ね、弁護士の父親が交通事故に見せかけ殺されたと相談されていたからだ。

 捜査の進展が捗々しく無い時に、トーステンソンの秘書ドゥネールの自宅庭に地雷が埋められ、ヴァランダーの車は爆破される。更に役所の担当者の不審な自殺や証拠品から伺われる臓器売買の疑い。全ては関連した事件で背後に居るのは誰なのか?

 一年半ぶりにイースタ署に復帰したヴァランダーに新たな仲間が加わった。警察学校で優秀な成績を収めたフーグルンドは、正義感、行動力、思考力等優秀な警官としての資質を備えていた。

 ヴァランダーの推理力と行動力やチームを纏める能力には関心します。一方でいつも卑屈な態度で接する父親と事件で知り合ったリトアニアのリガに居るバイバへの恋慕と娘リンダへとの冷めた付き合いには、今回は進展が有った様だ。次作には、バイバ・リエパとの進展やフーグルンドの成長に期待をします。

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2022年02月20日

Posted by ブクログ

刑事ヴァランダーシリーズ、第4弾です。
前回、人を殺めてしまってから、
心を病んでしまい、休職しているところから
話は始まります。この辺りを丁寧に描いてくれるところが、この小説の好きなところ。
知り合いの弁護士が殺された事件をきっかけに刑事に復職してからは、キレ味のよい捜査を見せ、ラストはいつものあまり格好良くないアクションシーンがあって解決。
バイパとの関係も気になるし、次回も期待です。

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2013年06月16日

Posted by ブクログ

四作目ともなると、シリーズをリピートしている読者ならではの感覚が芽生えてくる。ヴァランダーの思考パターンや、時折見せる無謀な捜査にも慣れてくるし、サブキャラの特徴から、好きな人物と嫌いな人物に差ができる。
今回の敵は「笑う男」。早い段階で彼に辿り着くのだが確証が持てない。事件の闇はどこまで拡がっているのか──犯人の裏側にある真相を追う展開は緊迫感を含んでおり、非常に読み応えがあった。また、捜査に対する圧力や、組織内部の確執など、「警察ミステリ」を認識させる要素がシリーズ中でも一番多かったのではないかと思う。

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2009年10月04日

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