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Posted by ブクログ
久々に<刑事ヴァランダー>シリーズを読んでみた。
濃い霧の海岸線
一人の男があてもなく彷徨う。
ひとつ前の大作「白い雌ライオン」の終盤で人を殺してしまった主人公ヴァランダーは、ひとり出口のない苦悩の中にいた。
一旦は警察を辞める決断をしたが、知人の弁護士が殺害された事件を知り突然の復帰。
そこからは、署のいつもの顔ぶれに新任の女性刑事を加えた仲間を振り回しながら、事件解決へと突進していく。
よく考えるとヴァランダーはもうムチャクチャで、周りはきっと迷惑しているだろう。
そして物語は初期2作と同様に、主にヴァランダー目線一本で時系列に進む。
この、じっくりと「主人公ヴァランダーを味わう」といった趣が、好きな人にはたまらない。
作者ヘニング・マンケルは残念ながら2015年に67歳で亡くなっており、新作はもう望めない。
翻訳者柳沢由美子氏による追悼文「無口な巨人」がWEB東京創元社マガジンで掲載されており、読むことができる。
世界に蔓延していくさまざまな問題に対して真摯に向き合っていた作者自身の姿が、不器用で孤独なヴァランダーと重なる。
このシリーズ、大切に読み進めようと思う。
Posted by ブクログ
もうミステリーじゃないですね
じゃあなんなのよ?って聞かれるとだいぶ困るんですが
正直事件の方はもうほぼサイドストーリーなんじゃないかと思うほど力入ってない気がします
割とどうでもいいっていうか
今回はヴァランダー再生の旅です
警官であるということ、イコールヴァランダーにとって生きるということはどういうことなのかをひたすらに自分に問いかけ続けます
そしてヴァランダーはデンマーク社会を映す鏡でもあるようです
ひたすらに自分の内にある怖れや苦悩や喜びさまざまなものと向き合い続ける500ページでした
読み終わって思ったこと
ヴァランダー頑張れ!
俺も頑張る!
Posted by ブクログ
4作目。冒頭では3作目の終盤に正当防衛とはいえ人を殺めてしまった事実に押しつぶされそうになり燃え尽きたようになって辞職することを決意しているヴァランダー。旧知の弁護士が父親の事故死に不審な点があると、療養先を探しあてて相談しに訪ねて来たのも断るほどの憔悴ぶりだったのが、療養先から戻るとその弁護士が銃殺されたことを知り、辞職を取りやめて自責の念からその事件の担当刑事として復職。かつての同僚や上司はとまどいながらもヴァランダーの翻意を歓迎し一丸となって事件の解決のために捜査にまい進します。今回は事件そのものの動機や謎解きよりも、その題材を使ってスウェーデンの社会の変遷や警察組織内の旧弊な価値観に対抗する新人女性刑事の活躍や、ヴァランダーの心の在り方などを丁寧に描いていて、そちらの方に読みごたえがありました。たいていのシリーズものの主人公とは違って失敗もするし挫折もするし苦悩もするし父親とも娘ともぎくしゃくしているし、捜査活動の最中に死の恐怖に襲われて弱腰になったりもするヨレヨレの人間くさいヴァランダーですが、いざとなると命の危険を感じながらもたった一人で敵の城(今回は犯人が文字通り城に住んでいる)に突撃してしまうめちゃくちゃさもあり、強いのか弱いのか弱いのか強いのかが全然わからなくて、そこが面白いです。この作品から登場した女性刑事、フーグルンドがいい感じでした。これから活躍していくようなので楽しみです。
Posted by ブクログ
今回は悩み男のヴァランダーが無茶振りでアクションを演じます。てこずった割りに敵はあっさり片がつきますが、まぁイースタ署員の仕事ぶりが面白いし、こういうのもありにします。
シリーズ4作目だけれど、一作目から順不同に読んできたので、残念なことにどうして彼が悩んでいるのかが分からなかった(笑)シリーズというのは話も繋がっていることを改めて確認したが、こういうところは我ながら困ったことだ。
イ-スタ署のヴァランダー警部は、冒頭から正当防衛で射殺した事件で悩んでいる。休暇を勧められて転地しても効果がなく、うつ状態は深まるばかり。
そこに友人の弁護士が尋ねてくる、父親が交通事故で死んだが、腑に落ちないので調べて欲しいと言う。ヴァランダーは警官を辞めようかと思っているときであり、珍しく断ってしまった。
帰宅して読んだ新聞で、その友人が殺された記事を見る。
彼は負い目を感じ、責任感も手伝ってやっと前向きに立ち上がれそうな予感がする。
重い腰を上げて署に復帰、早速父親の事故から調べ始める。
暫く空けていた署内は、新人のアン=ブリッド=フーグルンドが配属されていた。女刑事というのが気に入らなかったが、頭も切れ、その上美しい彼女は、戦力になりそうな有望株だと思えた。
友人の秘書の庭に地雷が埋められたり、自分の車にも爆破装置を仕込まれたが幸いにも生き延びる。
一方では県庁の会計捜査官が自殺をする。ことは重なるものだ。
姿を見せない富豪の城主がいる、次々に起きる事件を繋いでるかのようで、ヴァランダーは何か常に気にかかっている。彼は5年前に郊外の城を買って住み始めた。県内あちこちの施設に高額の寄付をし、研究費を補助し、尊敬されている人物だった。
ヴァランダーは挨拶目的で彼に会いに行く。城はセキュリティーでがっちり固められていた。
非常に紳士的で隙のない男だったが、顔に笑みを張り付かせた様子はなにか無理があるような、笑顔の裏には冷酷さも見えてそれがひっかかった。いつものようにピンときたのだ。
しかし彼だとしても事件の根拠がわからない。調べてみる価値はある、と思うが…… ヴァランダーは働き詰めの同僚を思ってまた惑う、方向を誤ってはいないだろうか。
なすすべも無く、時間が過ぎた。
署長のビュルクは相変わらず事なかれ主義で、長いものには弱腰である。しかし鑑識のニーベリやオーケソン検事に励まされ、同僚も休み返上で動く。ヴァランダーは少しずつ前進する。
ハーデルベリ(城主)に関する情報を確認する捜査に一週間かかった。その間、ヴァランダーもほかの者たちも、平均して5時間も眠らなかった、あとで彼らはその一週間を振り返って、必要とあれば自分たちも高度の捜査能力を(随分無茶をして法を破ってはいるけれど)発揮することが出来ると実感したのだった。
オーケソン検事は言う「この捜査法は時が来たら、警察本庁と法務省がイースタモデルという名で一般に公開することになるだろう」 「私の云っているのは、警察本庁のお偉方の捜査会議のことだ。また政治家のまか不思議な世界のことだ。大勢が集まって御託をならべて<アリを篩にかけ、ラクダを飲み込む>ようなことばかりしているではないか。彼らは実際の仕事をしないで毎晩就寝時に明朝目が覚めたら水がワインに変わっていますようにと祈っているようなものだ」
今回は、完璧に武装した城の中に潜入して調べたいという焦りと、若くして成功した世界的な事業主の闇を暴こうとする執念が、非力なヴァランダーの支えになってパワー全開で猛進する。
事件捜査がハードなら、ソフト面では、ヴァランダーの家庭や親子のつながりなどに紙数を費やしている、彼の人柄を浮き彫りにして親しみを持たせる。事件を追いつつ、同僚や上司の人物の描写も多い。このあたりがヘニング・マンケルの読者サービスでほっとするところ。
「何かおかしい」というヴァランダーの天性の勘と経験に裏打ちされた警官の心が、物語を牽引する。いつものように。
格好のいい警官ではない、逆に悩みも多く、たまにはそれに負けて逃げようとする、そんな身近な人となりが、可愛らしい。
11月初めに起きたこの事件は社会的にも複雑な背景を持っていたが、クリスマス前にやっと目処がつき片付く。
最後、ダイハードもどきのヴァランダーの活躍にはビックリした。やれば出来るのだな!だから☆4のおまけ。
Posted by ブクログ
スウェーデンのミステリ。
クルト・ヴァランダー警部のシリーズ4作目。
「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」に続く真ん中へんですが、順番めちゃくちゃに読んだので、これが最後になりました。
(…あ、もう新作出てます!)
前作で正当防衛ながら人を殺したことにショックを受け、1年も休職していたクルト。
ついに仕事を辞めると決意したとき、友人の弁護士が保養先に訪れます。
父が事故死したのだが、その様子に不審な点があるので、調べて欲しいと。
クルトは断るのですが、その友人が殺されたと聞き…
アン=ブリット・フールグンドがここで初登場していました。
イースタ署では初めてだという紅一点の新米刑事なので、最初は同僚に評価されないでいます。
でも子どもが二人いるしっかりした女性。
クルトは素質を見抜き、新時代の警官になるだろうと思うのです。
弁護士トーステンソンの父親は、取引先から帰る途中で事故にあった。
取引先とは、ファーンホルム城に住む富豪のアルフレッド・ハーデルベリ。
署長が気を遣うほどの名士で、世界を飛び回っているため、面会することすら難しい。
強引に約束してクルトが聴取に出向いたハーデルベリは、笑顔を絶やさないカリスマ性のある男でした。
クルトは子どもの頃に、画家の父親の絵を買っていた大金持ちのことを思い出します。
絹の服を着て高価な車に乗っていた彼らはどこか、怖かった。
父親が卑屈にふるまう顧客を、幼いクルトはシルクライダーと呼んでいたのです。
城の様子を探るため、旧友にも協力を頼むクルト。
弁護士の女性秘書までが狙われ、事態は急迫してきます。
癖のある古手の警官達と付き合いながらの捜査。
一番変わっているのはクルトかも知れないけど。
休養の後なので、珍しく健康らしいけど、捜査に熱中して、ひげを剃らないまま事情聴取に行ったり。
鑑識のニーベリは有能で、検事のオーケソンは冷静に協力し、フールグンドも期待通り活躍します。
国際的な富豪が相手とは、小さな町の警官達で解決出来るのかと思いますが~ここは頑張るんです。
それどころか、クルト一人でも解決しそうな勢い~単独行動が多いのでね。
「クルトが元気になるには、ちゃんとした事件が必要なんだ」と同僚に評されます。
アクションシーンをまじえて、さくさくと進む警察物で、このシリーズにしては標準的な読み応えかな。
手紙を出していた美しい未亡人バイバには、会って貰えそう?
Posted by ブクログ
スウェーデンの南端イースタ警察署の警部クルト・ヴァランダーシリーズ第4段です。
前回の事件で南アフリカ大統領の暗殺を企てている一味の1人を銃殺したヴァランダーは精神的に不安定になり一年以上も休職していたが警官を辞める事を決心した。
イースタ署に最後の出勤をする朝に新聞で友人弁護士が殺された事を知ると、辞職の決心が霧散した。殺される数日前にトーステンソンは静養中のヴァランダーを訪ね、弁護士の父親が交通事故に見せかけ殺されたと相談されていたからだ。
捜査の進展が捗々しく無い時に、トーステンソンの秘書ドゥネールの自宅庭に地雷が埋められ、ヴァランダーの車は爆破される。更に役所の担当者の不審な自殺や証拠品から伺われる臓器売買の疑い。全ては関連した事件で背後に居るのは誰なのか?
一年半ぶりにイースタ署に復帰したヴァランダーに新たな仲間が加わった。警察学校で優秀な成績を収めたフーグルンドは、正義感、行動力、思考力等優秀な警官としての資質を備えていた。
ヴァランダーの推理力と行動力やチームを纏める能力には関心します。一方でいつも卑屈な態度で接する父親と事件で知り合ったリトアニアのリガに居るバイバへの恋慕と娘リンダへとの冷めた付き合いには、今回は進展が有った様だ。次作には、バイバ・リエパとの進展やフーグルンドの成長に期待をします。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。