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Posted by ブクログ
刑事クルト・ヴァランダー終幕の物語である
ここではスウェーデンの田舎町の刑事の、この長いシリーズが、なぜこれほどまでに人を惹きつけるのか考えてみたい
それはひとえに主人公であるクルト・ヴァランダーがいついかなるときも『苦悩する男』だったからではないだろうか
クルト・ヴァランダーは非常に欠点の多い男だった
とりわけ彼を象徴するのは、その怒りっぽい短気な性分であったと思う
ただし、その怒りが向けられる先は、ほとんどの場合、人々の生活を脅かす者たちであり、その存在を許す社会であり、世界であり、自分自身だったのではなかったか
時に全身で怒り、時に自らの無力を嘆き、時に見えない不安に迷う彼が、決してしなかったこと
それは「逃げる」ことではなかったか
全ての不条理に正面から向き合い、闘い続けたからこそ、彼は『苦悩する男』だったのではなかったか
今、彼は記憶の彼方に消えようとしているが、彼が私たちに残したものはなんだったのか
それは、「苦悩せよ」ということではないだろうか
世界に、社会に、隣人に、暴力に、欺瞞に、差別に、裏切りに、家族に、自分自身に、そして人生に正面から向き合い、逃げずに「苦悩する」のだ
クルト・ヴァランダーのように
Posted by ブクログ
クルト・ヴァランダーを生み出したヘニング・マンケルは2015年に他界している。内容的に“最終章”の本作は2009年に発表されている。従って本作は、その2009年頃の少し前の出来事ということになっている。
ヴァランダー刑事が活躍するシリーズ…1990年代に入った辺りで、難しい年代の娘が在って、妻との関係が面倒になって別居、離婚という状況になる男、1970年代位に社会に出た世代の男が主人公だが、1990年代というのは、そういう世代の人達が想像するような範囲を超えてしまうような出来事も平気で起こってしまうような時代に突入していた…そんな中でヴァランダー刑事は奮戦する。そして、他方でヴァランダー刑事自身の人生の頁も繰られている。
そんなシリーズが幕を引いた…読後に何やら大きな感慨を覚えてしまった…
Posted by ブクログ
ヴァランダーシリーズ。娘のリンダの義理の父が失踪。事件か事故か。ヴァランダーの捜査が始まるけれどなかなか思うようにいかない。ヴァランダーは60歳になり色々考える。仕事、生活、死。そういうところがこのシリーズの好きなところでもある。ヴァランダーの迷いや怒りが溢れてくる瞬間とかとても読み応えがある。捜査を通して、娘や自分との向き合い方を考える。行方不明者の捜索とヴァランダーの体の不調や時折起こる記憶喪失への恐怖。事件そのものよりそちらが気になる。苛立ちや悲しみ、孤独が襲ってくる中にあって孫ができたことで変わったもの。シリーズの中で登場した過去の女性も出てきたりと懐かしさもあった。とうとう終わってしまったこのシリーズ。訳者あとがきによればもう一作あるみたいだけれど実質的には今作がラスト。一番好きなシリーズ物で本当に楽しませてもらった。翻訳ものは途中で発売されなくなるものもあるなかで20年近く経っても最後まで読めたのはありがたい。また一作目から読み返してみようと思う。
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『苦悩する男 下』創元推理文庫。
北欧ミステリーの最高峰クルト・ヴァランダー・シリーズ第11作の下巻。刑事・ヴァランダー最後の事件……
リアリティあふれる北欧の警察小説。スウェーデンの文化や風土を背景に繰り広げられるミステリー。間違いなく北欧ミステリーの面白さを最初に日本へ伝えてくれた傑作シリーズであろう。
時折襲う奇妙な記憶欠落症状に苦しみながらもヴァランダーは捜査を進める。さらには心臓に痛みを覚えるなど満身創痍のヴァランダーが辿り着いた真実とは。
失踪した娘のパートナーの両親。ホーカンの失踪の後にルイースも失踪。そして、ルイースは何者かに殺害される。やはり、事件の背景にあったのは……
静かに幕を閉じたヴァランダー最後の事件。しかし、シリーズはこれで終わりではない。近日、第12作の『手』が邦訳されるとのこと。我が郷土、岩手県一関市出身の柳沢由美子さんの偉業に感謝。
本体価格1,200円
★★★★★
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