柳沢由実子のレビュー一覧
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〜ファイアーウォールがあるのはコンピューターの世界だけではなさそうだ。自分の中にもある。自分でもどうやって突き抜けたらいいかわからない防火壁が。〜
というわけで刑事ヴァランダーシリーズも外伝入れても残り3作品ですよ
もうなんかこれから新たな物語が始まる感を最後に出しておいて終わるのかい!っていうね
刑事ヴァランダーシリーズとはなんなのか?っていうのが、かなりはっきりと見えてきましたよ
すばり警鐘ですな
スウェーデンという国をうっすらと覆う社会不安にいち早く気付いたヘニング・マンケルがクルト・ヴァランダーというめんどくさいおっさんを通して警告を発しているように思うのです
このまま進んで本当に大丈夫なの?と
そしてそれは当然の如くスウェーデンだけの問題じゃないわけです
だって世界は繋がっているから
この作品が世に出たのは1998年
ファイアーウォールを突き破るのは
もう遅いのか?
まだ間に合うのか? -
Posted by ブクログ
なぜ俺はスウェーデン人でないのか
悔やまれてならない
もし、俺がスウェーデン人であったなら
この傑作がさらに7,000倍は面白かったはずだ
残念でならない
はい、というわけでね
刑事ヴァランダーです
もう何が凄いってあーた
ヴァランダーもの忘れがひどすぎるよ!
もう8割方携帯を忘れる
ちゃんと持ってる残りの2割もだいたい充電がこころもとない
初老の哀しさよ
ヴァランダーはコツコツと事実を積み重ねて捜査する警察官でありながら、ちょっとした違和感から閃きを得る天才型の探偵でもある
それは事件現場で感じるものだったり、誰かと話したときの言葉だったりする
後になってピカーン!と閃く
あの時のあれ、あの時の言葉、すごく重要だった気がする!!!
しかし、忘れてる
肝心なことは忘れてる
おい!
んーここまで出てるのに!状態
もちろん読者はページを遡って確認し、ヴァランダーの一歩先に行くことは出来る
でも、そんなことをしたらもったいない
こっちだって覚えちゃいないけど、あれ?そういえばさっき変なこと言ってたな?あれ、なんて書いてあったっけ?とヴァランダーと一緒ここまで出てるのに状態のまま読み進めるのが正しい
そうだーーー!これだーーーー!
が気持ちええw -
Posted by ブクログ
『刑事クルト・ヴァランダーシリーズ』である
第何弾であるかに興味はない
やばい、とんでもなく面白い
面白いのでどんどん読みたいのだが、どうしても間が開いてしまう
『ヴァランダーシリーズ』は完結しているので、どんどん読むと終わってしまうのだ!
くぬー!
このジレンマよ
シリーズどんどん読みたいけど、読みたくない
なにこの気持ち?
( ゚д゚)ハッ!
これってもしや恋?(違うわ)
そして、な、なんとなんと!
ヴァランダー…糖尿病になってもうた
本人は糖尿病の疑いありとか言ってる
血糖値302で糖尿病の可能性ありて君
302は完全無欠な糖尿病だわ!( ゚д゚ )クワッ!!
このなんか変なところで意固地なのがヴァランダーなのよ
そしてドラマ版のヴァランダーはやはりかっこよすぎる
糖尿病には見えない
よし下巻!
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Posted by ブクログ
ネタバレ原作は2000年、日本語版は2012年、そしてこの文庫が2015年。そこから約10年経って読んでいる。なんか勝手に歴史を感じる。
でもまあ、舞台が2001年のアイスランドなのはなにか理由があるのかと思ったら単に書かれた時期だったというのが分かったので、調べて良かった。
アイスランド文学を読んだのは初めてかもしれない。翻訳自体はアイスランド語 > スウェーデン語 > 日本語らしい。アイスランドとスウェーデンがどのくらい違うのか似てるのか知らないが、通貨であるクローネはアイスランドとスウェーデンどちらでも通用するので、英語とかよりはニュアンスがキープされやすいのかもしれない。
あとがきにもあったが、著者自身もスウェーデン語翻訳のクオリティは高いのでそこから翻訳されるのは良いことだと喜んだらしい。
ミステリー小説ではあるが、大どんでん返しとかあっと驚く展開とか、刑事と犯罪者のライバルとかそういうのが出てくるわけではなく、中年のタバコを吸いまくる刑事が、同僚に皮肉や文句を言われ、麻薬中毒の娘と喧嘩をしながら淡々と着実に調査をしていき、しっかりと結果をあげていくという作品。
この著者の作品は安心して読めそうだな。
というわけで本編ネタバレ感想。
アイスランドが舞台なので、登場人物の名前がかっこいい。シグルデュル、エーレンデュル、エリンボルク…
ただ、地名も名前と似たような響きに聞こえて、地名なのか名前なのかいまいちわからないときが多い。
死体のそばに置かれていたメモに書いてあった3つの単語、という、作品の根幹を為す重要キーワードに思えたが、最後が「あいつ」というだけで他がわからない。なぜ隠す?単語自体がネタバレになってしまうとかかな?
それとも自分の読み方が単に斜め読みすぎて読み飛ばしたのか?と何度か最初あたりを読み直したが、やっぱりなくて、真ん中あたりでようやく出てきた。「おれはあいつ」。3つじゃねーじゃねーか!まあ、そこは翻訳なのでしゃーない。
というか、確かにこの単語は色々と彷彿させてしまう。
犯罪者が山ほど出てくるが、保険金詐欺と殺人に関与して刑期4年とか、なんか短い気がする。他の犯罪者もなんか処罰が軽いし、女性被害が泣き寝入りというのが多い模様。これが00年代のアイスランドだったということか?そしてあとがきにもある通り、女性への暴行描写がやたらと詳しい。いや、やり方とかではなく、心理的に。でもこれは著者があえてやっていることらしい。こういうやり方をすること絵、問題定義も含んでいると。女性たちが救われるわけではないが、主人公はとにかく大事に丁寧に対応していて、逆にクソ男どもにはそれなりの対応をしてくれるので読んでて安心する。
ちょうど半分くらいでタイトルの「湿地」が出てきた。が、最後まで読んで思い返すと、あんまり事件には関係なかったのではという感じ。でも、この事件自体がなんか湿度高めというかじゅくじゅくしているニオイがするので、良いタイトルなのかもしれない。
合間合間で主人公とその娘さんの、全く穏やかではない日常が挟まれるので、この娘さんも実は事件に関与があるのか…?と途中までは思っていたが、単に主人公についての深堀りをさせるためだけの存在なんだろうなというのが途中でわかった。でも麻薬中毒で、悪い奴らと付き合いがあり、借金もしているこの娘さん、なぜか憎めない…
そして主人公自体もタバコ吸いまくりでずっと真顔なイメージがあり、部下が言う通り確かに事件と全然関係なさそうな調査ばかりさせてる感じはしたけど、どの調査も外れがなく、着実に真実に突き進んでいるため、少なくとも読者側としては信頼度がバンバン上がっていく。ただ、もうちょっと部下に説明はした方がいいんじゃないかな… 市民にはだいぶ優しいけど、部下との会話では突然話を終わらせてどっか行ったり、上から命令を押し付けたりしがち。危うい。
まあ、そんなのが吹き飛ぶくらいの悪徳警察官も出てくるから気にならんけど。
事件自体は最初の方の流れでは想像できなかった、遺伝子欠陥の話で、最後で一気に回収される。すんなり理解できて読書体験的には気持ちいいが、真相はとても切ない。小さい子が病気で亡くなるのはきついよー。
主人公と娘さんの関係性は良くなったっぽいが、続編でまた悪化してたりしそうだな。 -
Posted by ブクログ
マンケル作品として個人的には初となる『イタリアン・シューズ』を読んでから5年。スウェーデン・ミステリーの代表格的存在である刑事ヴァランダー・シリーズは第一作と最終作しか何故か読んでいないという体たらくでお恥ずかしい限りなのだが、作者の遺作となる本作は『イタリアン・シューズ』とセット作と言いながら、さらに厚みを増して、なおかつ描写の丁寧さ、深さを考えると人生を振り返る作者と本作の主人公フレドリック・ヴェリーンは、分身ではないかと推察される。しかし、ヘニング・マンケルには『流砂』というノンフィクションの遺作が遺されていて、これが彼の<白鳥の歌>として死後に出版されている。
故に本書はフィクションとしては最後の作品である。『イタリアン・シューズ』を継いでの物語となるのだが、作者自らはそれぞれ独立作品として読んで頂いても一向に構わないという立場で本作に臨んだらしい。時制が一作目と矛盾したりするなど、確かに連作と見るには不確かなところもあるらしいのだが、読んだ印象としては登場人物たちも、舞台となるフィヨルド地方にしても両作共通する地平にあると見て構わないというところだ。
内容もまた『イタリアン・シューズ』の正当なる続編と見て良いと思う。但し、本作には謎の火災により島の家が全焼するといういささかショッキングな導入部があり、その犯罪的要素から鑑みて本書は『イタリアン・シューズ』に対し、ミステリーとしての性格を多分に孕む。そもそも刑事ヴァランダー・シリーズがミステリーと言いながら相当に人間の心を描いてしまう純文学的小説としての要素を孕んでいる作品であるように思う。
本書では、主人公フレドリック・ヴェリーンには存在すら知られていなかった実の娘ルイースが登場する。前作『イタリアン・シューズ』の終盤にも登場する娘だが、彼女との改めての関わりの時間が生まれてゆく様子、彼女の秘密などをパリを舞台に描くシーンが挿入されるなど、前作に比べるとバラエティに富んでいる。
しかし、老いたるフィヨルドという舞台は相変わらず静謐過ぎて、孤独を際立たせる舞台である。その中で病や老いによって知人が死んでゆく。全体に初冬から真冬までの時間を設定した一人称小説であるのだが、その中で大きな流れとしての時は過ぎ、家族というこの物語の中では変則的な人間関係、そこに入り込む新しい女性キャラクター、リーサ・モディーンというジャーナリストと年齢差を往還する二人の微妙な恋愛感情なども、どことなくリアルで危うい。
大きな物語としては、家が焼けることで生まれる疑惑。解決しない捜査活動は地味でありながら、フィヨルドの孤島の家が結果的には数棟全焼するに及ぶ。緊張を孕んだフィヨルドの村と美しい冬の景色、そして老齢の主人公の孤独がきんと響いてくるヒューマン・ノヴェル。ヘニング・マンケルでなければ作り出せない空気感と危うい人間関係の紋様を読みながら、この小説の持つ不思議な魅力に強く惹かれつつ、美しい言葉で満ちた一ページ一ページを味わった。
どの作品も優れた小説であり、完成度も高いように思うが、何よりもデリカシーと感性に満ちた一人称文体が味わい深い。ストーリーに派手な動きがなくても、しっかりとしたページターナーと言える辺り、名手ならではの作品である。ヴァランダー・シリーズの未読作についても、じっくり時間をかけて味わってゆきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレヘニング・マンケル最後の長編小説。マンケル自身ががんの末期であることを承知の上で書かれた小説と考えて読むと色々と考えさせられる。
本作は「イタリアン・シューズ」の続編(時系列のずれはあるけど実質そういうことだろう)で、主人公の外科医崩れフレデリックは相変わらずのクセが強いちょっと根性がヒネくれたクソジジイである。
家が火災で燃え尽きる場面から物語が始まる。前作のタイトルにもなった、イタリアミラノの凄腕靴職人が作ったハンドメイド革靴も金属製のバックルを残して燃え尽き、それ以外の家財もほぼ焼き尽くされて途方にくれるフレデリック。しかも警察からは保険金目当ての自作自演放火と疑われだす始末。
可哀そうだと思うが、前作や本作での主人公の行動を読むと「バチがあたった」と思わなくもなく(ちなみに主人公は犯人ではない)、それくらい彼の言動はひどい。まぁその非道さがまた読み処でもあるのだが。
色々あって(そこは読んでもらいたい)、「だがわたしは、もはや暗闇をおそれてはいない」と言い切るラスト。フレデリックが言ってると思うと「うっさい、もうええわ」と思うのだが、自分の寿命を悟ったマンケル自身の言葉と考えると、なんだか哀しいような良かったなぁと思えるような。
70歳になった時、あるいは死期を悟った時の俺は、こんなことを言えるのだろうか。「死にたくないし、苦しいのも痛いのもイヤだ」と無様にうなされてるだけのように思うけど…。 -
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「我々の時代、狂気と正常の違いがなくなってきている」
このシリーズ、作者ヘニング・マンケルは、現代社会に対する思いを主人公ヴァランダーを通じて、我々に伝えようとしている。
それは、シリーズの回を重ねるごとに強くなる。
「ゴールドダガー賞」を受賞した前作の事件から数ヶ月後、再び想像を絶する事件がイースタ署を襲う。
穴の中に竹槍で串刺しとなった死体、ポツンと宙吊りにされた死体、生きたまま袋に入れられて水死した死体。ヴァランダーは仲間とともに丹念に捜査を進めるも、全く手掛かりが見出せない。
隠れたDV被害、声をあげることのできない女性たち。凶悪化する犯罪と「夜警」と称した市民暴力集団など、現代社会の向かう先への警鐘が作品中に散りばめられている。
が、文章は端的でスピード感のある展開が、エンターテイメントたっぷり。
面白かった〜。 -
Posted by ブクログ
ネタバレへニング・マンケルのミステリーではない(と言い切っていいのか?とにかく謎解きが主体ではないのは確か)長編小説。
主人公は元外科医で偏屈じじい、他人との交流を極力断つために無人島に一人で住む。凍った海に浸かったり、ボロ船を直そうとするだけで眺めたり、船で島に来る郵便配達夫をからかったり…まぁとにかくヘンコなジジイなのであるが。
そんなジジイがかつて手ひどく捨てた恋人がある日、余命いくばくもない重病の末期状態で島にやってくる。付き合っていたころ約束した湖を死ぬまでに見せてくれと言われて、断りきれないじじいは恋人ともに湖を訪れる
そこから、じじいの人生がエラいこと動き始めるのだが、それはじじいにとっての大事件でも、世界を揺るがすわけでもなく、大金が動くわけでもなく、殺人事件が起こるわけでもない(死別はいくつかあるのだが)
北欧の荒々しい自然の中を背景に、偏屈じじいに少しずつ人間味が戻ってくる…ただそれだけの話なんだが、なんでか分からないけどとても味わい深い小説。
読み終わった後、普通なら、もう俺も歳だし、残りの人生「素直に正しく生きよう」と思うはずなんだろうけど、どうしてか「偏屈もいいなぁ、どうせ今までろくでもなく生きてきたんだし」と開き直ってしまいそうになる。ちょっと危険な小説でもある -
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警察の仕事というものは基本的に、一枚のメモ用紙に書かれている決定的な情報を確認することの積み重ねにほかならないのだ。
『目くらましの道』というタイトルがまず秀逸だと感じました
自分たちは「目くらましの道」を進んでないよなと、一歩進んでは後ろを振り返り確認する
その積み重ねでちょっとづつ進んでいく
それがいいんですよね
そしてもちろん気がつくと「目くらましの道」に進んでるんですよね
じゃなきゃ小説になんないですもん(それを言っちゃあおしまいよw)
ヴァランダーは捜査の途中で、最初の頃に見聞きした何気ない事柄が事件の重要な鍵を握っていることに深層心理で気付きますが、それがどうしても思い出せません
作中何度も、思い出そうとして失敗し、けれど捜査が進むにつれてその事が非常に重要だと確信を深めていきますが、やはり思い出すことができません
この描写がうまいよなぁって
最大のヒントが紛れ込んでるよと教えてくれてるんだもん
読者はヴァランダーと違って読み直すことが出来て、なんなら途中で犯人もわかるのになんのことかさっぱりわかりません(もちろんわかる人もいるでしょうが)
そして最後の最後に「あーそれかー!」となるんですがこれがねほんともう「それかー!」なんです
それにしても、ヘニング・マンケルの怒り、ヴァランダーの怒りが全編に込められた傑作でした!
その怒りとは児童文学作家でもあるヘニングの子どもたちが犠牲になっている歪んだ世界への怒りです
続けてヴァランダー追いますよ! -
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シリーズ最高作の評判はダテじゃなかった。
なぜこのシリーズに惹かれるのかは、これまでさんざん書いてきた。
「文章の読みやすさ」「魅力的な人物による没入感」「物語のスピード感」「時系列というシンプルさ」
今回特に「映像的表現によるドラマチック感」が抜群だと思う。
さらに、そこにとどまらずヘニング・マンケルはここでもメッセージを持っている。
エピローグで描かれているヴァランダーの心情は、変わりゆく社会への作者自身の不安と怒りであろう。
主人公ヴァランダーに代表される感情は、この国の負の良心なのだろう。
移りゆく時の先は、歳を重ねるごとに暗さを増していく……寂しいことですが、仕方ありません。 -
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2015年に亡くなったヘニング・マンケル氏の最後の作品。
これでもう、彼の本を読み続ける楽しみは無くなってしまったのだけれど残された本を再読してゆくじんわりとした楽しみが私には残されている。
相変わらず情けない老境にさしかかった男が主人公で、この本は自身ががんに冒されていることを呑み込んだ上で書かれているので、
「老いること」そしてその先の「死ぬということ」を真に迫って読むことが出来る。
スエーデンの群島でおきた火事や、馴染みの浅い娘との交流、(年がいもない)恋愛への妄想もリアルな表現。
『イタリアンシューズ』の続編だけど登場する靴のその差は大きい。
ミステリーとしてのストーリーだけでなく、現代のヨーロッパ全域に渡る問題提起もしてくれる。紛争や貧困、障害者や格差や移民問題。
ヴランダー刑事シリーズの時に教わったアパルトヘイトも思い出す。
この作家さんをあまり知らずにこの本を手にした読者の人の中には情けない男…という印象ばかりが残るかもしれないけれど、生涯を文章を通して読者に社会問題を投げかけてくれた彼に深く頭が下がる思い。
エッセイ集「流砂」にも描かれていた死生観をもう一度、紐解きたくなる。 -
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スウェーデンの群島のひとつの小島に住むフレドリック・ヴェリーン、71歳。フレドリックの家が全焼したというところから始まる。全てを失ったなかで感じる孤独。この先どうすればいいのかという不安の日々に出会ったリーサという女性。リーサとなんとか近づきたいという思いや、一緒にいたいという気持ちを持て余しつつも、利己的に振る舞うフレドリック。決して好きになれないような造形の人物なのに、どんどん引き込まれていってしまう。自分の娘との関係や、近くの住民たちとの交流の不器用さがいいし、もっとフレドリックという人を知りたくなっていく。だからこの物語が著者の最後の作品というのが残念でもある。この文章、世界観がとても心地良い。〈ヴァランダー〉シリーズもそうだけどとても印象深く思い入れの深い作家さん。
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続編が刊行されたので再読。スウェーデンの東海岸にある群島のひとつの小さな島に一人で暮らしているフレドリック、66歳。そこに40年前にフレドリックが裏切った女性ハリエットが突然尋ねてくる。過去に交わした一番美しい約束を果たしてほしいと。フレドリックの頑固さ、自分勝手な性格と、その裏にある一人でいることの孤独や諦観。ハリエットとの再会から少しずつ人生を見つめ直し、そこにある後悔や苦しみと向き合う。タイトルのイタリアンシューズが登場するシーンは何気ないけれど、フレドリックに希望を与えるような素敵な、読み終わった後も余韻が残るもの。この一冊でもとても濃密で素晴らしい作品なのに続編があることがとても嬉しい。著者の〈ヴァランダー〉シリーズとは全く違うものを読める。
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久々に<刑事ヴァランダー>シリーズを読んでみた。
濃い霧の海岸線
一人の男があてもなく彷徨う。
ひとつ前の大作「白い雌ライオン」の終盤で人を殺してしまった主人公ヴァランダーは、ひとり出口のない苦悩の中にいた。
一旦は警察を辞める決断をしたが、知人の弁護士が殺害された事件を知り突然の復帰。
そこからは、署のいつもの顔ぶれに新任の女性刑事を加えた仲間を振り回しながら、事件解決へと突進していく。
よく考えるとヴァランダーはもうムチャクチャで、周りはきっと迷惑しているだろう。
そして物語は初期2作と同様に、主にヴァランダー目線一本で時系列に進む。
この、じっくりと「主人公ヴァランダーを味わう」といった趣が、好きな人にはたまらない。
作者ヘニング・マンケルは残念ながら2015年に67歳で亡くなっており、新作はもう望めない。
翻訳者柳沢由美子氏による追悼文「無口な巨人」がWEB東京創元社マガジンで掲載されており、読むことができる。
世界に蔓延していくさまざまな問題に対して真摯に向き合っていた作者自身の姿が、不器用で孤独なヴァランダーと重なる。
このシリーズ、大切に読み進めようと思う。