柳沢由実子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めるまでに気合いがいる。
クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。
レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。
捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
心が痛くなる。
親は子どもを希望にしてはいけない。
自分の夢を子どもに託してはいけない。
子ど -
Posted by ブクログ
クルト・ヴァランダーを生み出したヘニング・マンケルは2015年に他界している。内容的に“最終章”の本作は2009年に発表されている。従って本作は、その2009年頃の少し前の出来事ということになっている。
ヴァランダー刑事が活躍するシリーズ…1990年代に入った辺りで、難しい年代の娘が在って、妻との関係が面倒になって別居、離婚という状況になる男、1970年代位に社会に出た世代の男が主人公だが、1990年代というのは、そういう世代の人達が想像するような範囲を超えてしまうような出来事も平気で起こってしまうような時代に突入していた…そんな中でヴァランダー刑事は奮戦する。そして、他方でヴァランダー刑事自 -
Posted by ブクログ
インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の
-
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケルに似た雰囲気を感じるのは、翻訳者がどちらも柳沢由美子さんの名訳だからということだけではあるまい。マンケル同様、北欧を代表する作品に与えられるガラスの鍵賞を、しかも立て続けに二度受賞しているインドリダソン。そのエーレンデュル警部シリーズも、マンケルのヴァランダー・シリーズ同様に、主人公を捜査官として描くのみならず、生活を持ち、家族を持つ人間であり、その中で私的な懊悩や迷いや希望を抱え込んでいるのである。そこに単作としての事件の上をカバーする連続性持ったシリーズ小説としての魅力が感じられるのだ。
シリーズ探偵が、誰かとつきあったとか、別れたとか、子供ができたとか、飼い犬が家 -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケルの本を生前一冊も読んでいなかったくせに、昨年読んだ、ノン・ミステリー、ノンシリーズの単独作品『イタリアン・シューズ』の書きっぷりが一発で気に入ってしまって、ついにはまり込んでいる最近である。
訳者の柳沢由美子さんは、アイスランドのやはり小説名手であるアーナルデュル・インドリダソンの作品のほうで、その名訳に唸らされていたので、マンケル作品でも信頼が置けて、ぼくには心地のよい日本語文章としてすんなり入ってゆけるのだ。北欧ミステリーで目立つ自然描写や季節変化については、やはりこの人の訳が一番空気感を味わえると思う。
さて、刑事ヴァランダー・シリーズは海外ドラマとしてもプラ -
Posted by ブクログ
あ~ヴァランダーよ、さようなら。1行ごと、むさぼるように味わった1冊。読むながら、どこかで見た記憶があったと思えば、海外ドラマ「刑事ヴァランダー 4シーズン3作」の内容。だが、もう一度読むと、かなり換骨奪胎している。
とは言え、終始、ヴァランダーが突如訪れる、「飛んでしまう記憶」に悩まされているので読み手の方も気を抜けない。
解説にもあるが海の風景がいつにもまして豊富。世界一島の数が多いというスェーデン。ラスト、散歩に出かけるヴァランダーの姿は「これから残された時間は自分と孫クラーラだけのモノ・・と独り言ちる・・涙が出てしまう。
リンダの夫ハンスの両親を巡る話の複雑さは冷戦以降のスェーデン -
Posted by ブクログ
ヴァランダーシリーズ。娘のリンダの義理の父が失踪。事件か事故か。ヴァランダーの捜査が始まるけれどなかなか思うようにいかない。ヴァランダーは60歳になり色々考える。仕事、生活、死。そういうところがこのシリーズの好きなところでもある。ヴァランダーの迷いや怒りが溢れてくる瞬間とかとても読み応えがある。捜査を通して、娘や自分との向き合い方を考える。行方不明者の捜索とヴァランダーの体の不調や時折起こる記憶喪失への恐怖。事件そのものよりそちらが気になる。苛立ちや悲しみ、孤独が襲ってくる中にあって孫ができたことで変わったもの。シリーズの中で登場した過去の女性も出てきたりと懐かしさもあった。とうとう終わってし
-
Posted by ブクログ
ネタバレスウェーデンの歴史をなぞるようにこの物語は過去から2000年代まで進んでくる。
潜水艦の艦長だった失踪した男の闇の部分が見え隠れする。スウェーデンの実際にあった事件、1986年のパルメ首相暗殺事件が深く影を落とす。それに並行してスパイの存在や過去の潜水艦の攻撃・作戦がいつまでもその、苦悩する男を精神的に追い詰めてゆく。そしてその妻をも。
ヴァランダー自身もかつての事件時携わった人物や土地や苦い思い出に次々と追われヴァランダーシリーズの総決算大サービスセールのよう。
実際、警察官として捜査した事件ではなかったので、あのケジメのつけ方は少し疑問が残るけれど、リンダの父親、クラーラの祖父としてはよか -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『苦悩する男 下』創元推理文庫。
北欧ミステリーの最高峰クルト・ヴァランダー・シリーズ第11作の下巻。刑事・ヴァランダー最後の事件……
リアリティあふれる北欧の警察小説。スウェーデンの文化や風土を背景に繰り広げられるミステリー。間違いなく北欧ミステリーの面白さを最初に日本へ伝えてくれた傑作シリーズであろう。
時折襲う奇妙な記憶欠落症状に苦しみながらもヴァランダーは捜査を進める。さらには心臓に痛みを覚えるなど満身創痍のヴァランダーが辿り着いた真実とは。
失踪した娘のパートナーの両親。ホーカンの失踪の後にルイースも失踪。そして、ルイースは何者かに殺害される。やはり、事件の -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『苦悩する男 上』創元推理文庫。
北欧ミステリーの最高峰クルト・ヴァランダー・シリーズ第11作の上巻。
リーダビリティーあふれる警察小説。失踪事件の真相は国際的な軍事衝突なのか。
父親と娘の暖かい家族の物語から始まるが、事件の影はヴァランダーの背後に静かに忍び寄る。
60歳を目前にヴァランダーは海の見える中古住宅を手に入れる。引退への道を静かに歩むヴァランダーだったが、ある夜レストランに拳銃を置き忘れたことから内部調査の結果が出るまで休暇を命ぜられる。挙げ句、休暇中に転倒して腕を骨折したり、夜間に路上で3人の若者に襲われるなど何かとご難続きのヴァランダーだった。
一 -
Posted by ブクログ
クルト・ヴァランダー刑事シリーズの第一作。もうこのシリーズは完結している。順番に読まなかったのはよくないかな、と思っていたが、ヴぁランダーを取り巻く人たちとは、初めて遭うのではなく既におなじみになっているのもちょっと嬉しかった。
スウェーデンのイースタでは滅多に起きないような、残虐な殺人事件の通報があった。
人里はなれた老人家族が住む二軒の家、そのうち一軒で老夫婦が襲われ夫は死に妻は重症だった。妻も助からない状況で「外国の…」と言い残す。
隣人からみても、日ごろから地味て堅実そうに見えたというが、亡くなった夫には秘密があった。「外国の…」を手がかりにヴァランダーと長年の友人リードベリは捜査 -
購入済み
雨・闇・胸苦しさ
最果ての地、アイスランド🇮🇸から届いたミステリー。現場にしがみつき、昇進を拒む男エーレンデュレ捜査官を主人公に据えたシリーズ第4作目(らしい)。それが謎解きのキーになるのか!?ちょっと持ち込むにはムリっぽくないのか? 等とも感じましたが、アイスランドという特殊な背景においては成り立つという。しかし、そのキーが成立するには、昔かたぎというのか、あまり語ること・説明することを得意としない、と同時に嗅覚・感性を疎かにしない、執拗な(疑問を放置しない)姿勢を持つ主人公がそこにいたからという奇跡になるのかなーーー。主人公の子どもたちがどうしようもない状況に置かれていたり、登場人物の痛ましい過去に紙幅を割
-
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『北京から来た男 (下)』創元推理文庫。
ヴァランダー・シリーズではなく、女性裁判官・ビルギッタを主人公にしたノン・シリーズ。
いきなりの驚愕の描写から始まった物語はスウェーデンに留まらず、150年もの時を超えて、アメリカ、中国に舞台を移し、展開する。
大量惨殺事件はスウェーデンの寒村に留まらず、アメリカでも起きていた。19世紀に貧しさに喘ぐ中国と過酷なアメリカ大陸横断鉄道施設工事の現場、そして、現代の中国……全く結び付きそうもないことをヘニング・マンケルは、我々に様々な課題を投げかけつつ、見事に壮大かつ重厚な物語に仕立て上げてくれた。とんでもなく面白い。
このような -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『北京から来た男 (上)』創元推理文庫。
長らく寝かせていた文庫本。遂にヘニング・マンケルの未読の文庫本は本作のみとなった。ヴァランダー・シリーズではなく、女性裁判官・ビルギッタを主人公にしたノン・シリーズ。
いきなりの驚愕の描写から物語は始まる。スウェーデンの過疎の村で19人もの村人が惨殺される。休暇中の女性裁判官ビルギッタは亡き母が事件の村の出身であったことを知り、現場に向かうが……
北欧のマイクル・コナリーとも言うべき、ヘニング・マンケルが描く重厚な物語。面白過ぎる程、面白い。タイトルの『北京から来た男』、スウェーデンと中国がどうつながるというのだろうか。
本体 -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『背後の足音 上』創元推理文庫。
クルト・ヴァランダー・シリーズ第7弾。読み順番が少し前後してしまったが……
北欧ミステリーということで、登場人物の名前を頭に入れるのに多少苦労するものの、ストーリーは相変わらず面白い。
夏至前夜に公園でパーティーを開く3人の若者が何者かに射殺される。事件を追うヴァランダー刑事は、その捜査会議に無断欠席した同僚刑事が気になり、夜中に同僚のアパートを訪れると、同僚も何者かに射殺されていた……
3人の若者とヴァランダーの同僚刑事を射殺したのは同一犯なのか……
本体価格1,200円
★★★★★