柳沢由実子のレビュー一覧
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ネタバレ読み始めるまでに気合いがいる。
クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。
レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。
捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
心が痛くなる。
親は子どもを希望にしてはいけない。
自分の夢を子どもに託してはいけない。
子どもの少年時代を奪い取ってはいけない。
楽しい子ども時代を過ごすことの出来なかった少年は親を恨み、親は期待に応えられなかった息子を無視する。
何十年も。
どうしてそのままの子どもを受け入れることができないのだろう。
そして少年の姉もまた、誰からも顧みられないという辛さを抱えていた。
エーレンデュルは娘から、自分たち家族を捨てた理由を何度も問い詰められる。
エーレンデュルもまた、壊れた家庭で育ってきたのだ。
けれど最後、エーレンデュルとエヴァ=リンド(娘)は、一緒にクリスマスを過ごすことにする。
互いを思いながら、不器用におずおずと近づいていく彼らは、次作でまた少し親密になっていればいいと思う。
あと、あまり姿を現さない息子もそろそろ出てこないかなあ。 -
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クルト・ヴァランダーを生み出したヘニング・マンケルは2015年に他界している。内容的に“最終章”の本作は2009年に発表されている。従って本作は、その2009年頃の少し前の出来事ということになっている。
ヴァランダー刑事が活躍するシリーズ…1990年代に入った辺りで、難しい年代の娘が在って、妻との関係が面倒になって別居、離婚という状況になる男、1970年代位に社会に出た世代の男が主人公だが、1990年代というのは、そういう世代の人達が想像するような範囲を超えてしまうような出来事も平気で起こってしまうような時代に突入していた…そんな中でヴァランダー刑事は奮戦する。そして、他方でヴァランダー刑事自身の人生の頁も繰られている。
そんなシリーズが幕を引いた…読後に何やら大きな感慨を覚えてしまった… -
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インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の子供との悲惨な関係と彼は対峙する。そしてこの地で封印されていた哀しい事件が明らかになる。一方で妻や子供に肉体的精神的に残虐な暴力をふるう男の家族の物語が進む。親に虐げられた子が大人になって同じように自分の子を虐げる例がある。そして不幸から抜け出せない人たち。エーレンデュルのシリーズは家族の崩壊と再生の物語だ。そしてラストは切なく優しい。今回も希望の中で話は終わるがエーレンデュルと家族の問題が解決するわけではない。これもまた繰り返すのだが少しずつでも光の方へ進んでいると読者が信じたくなる余韻を残す。そこがいい(≧∀≦)
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ヘニング・マンケルに似た雰囲気を感じるのは、翻訳者がどちらも柳沢由美子さんの名訳だからということだけではあるまい。マンケル同様、北欧を代表する作品に与えられるガラスの鍵賞を、しかも立て続けに二度受賞しているインドリダソン。そのエーレンデュル警部シリーズも、マンケルのヴァランダー・シリーズ同様に、主人公を捜査官として描くのみならず、生活を持ち、家族を持つ人間であり、その中で私的な懊悩や迷いや希望を抱え込んでいるのである。そこに単作としての事件の上をカバーする連続性持ったシリーズ小説としての魅力が感じられるのだ。
シリーズ探偵が、誰かとつきあったとか、別れたとか、子供ができたとか、飼い犬が家族に加わった、とか、そういった悩まぬ不動の強き探偵ではなく、読者に近い側の人間であり、読者同様の様々な家族や人間関係に関する悩み、体の不調、心の荒れる様と、それを悔やむ様子、等々。そうしたものをメイン・ストーリーに重ねることによって得られるリアルな重さ、物語の厚さ、体温のようなものが感じられ、作品は活き活きと我々の下に手繰り寄せられる、そんな気がする。
もちろん、読者と離れたところで、非現実的であれ、快適な小説を求めたい読者もいると思う。マンケルもインドリダソンも、どちらかと言えば、私生活では試練を与えられる警察官であり、個人の試練を解決できなくても事件を解決することはできる、という、少し不完全さを持ったキャラクターである。
さて本書を読むのが、わけあって先にハードカバーで読んだ『厳寒の街』の後になってしまった。本書は、アイスランドの過去の歴史のなかから現れた古い死体の発見がスタートラインとなる。枯渇した湖の底から、古い無線機を錘として使われた白骨死体が発見されたのだ。エーレンデュル警部の捜査が始まる。
一方で、米ソ冷戦時代のアイスランド、共産主義に憧れ東ドイツを訪れる若者たちの一団の物語がある人物によって挿入される。彼が誰なのかは読み進むまでわからない。しかし、冷戦の時代には、地理的に重要な情報戦略の要衝的にあった上、自国に戦力を一切持たないアイスランドの国には各国の出先機関が押し寄せ、軍事的にも重要な国とされていたのだそうである。
その時代、ソ連のコミュニズムに希望を求めた若き活動家たちの行動に本書は焦点を当てる。一方の現代では、エーレンデュル、シグルデュル=オーリ、エレンボルクという三人のレギュラー捜査陣が、それぞれにプライベートな悩みを抱えながらも、彼らなりの才気を発揮して湖で発見された白骨の正体に迫る。
アイスランドと東ドイツのライプツィヒの両舞台、両時代を往来しつつ物語は白骨死体の正体に近づいてゆく。ミステリ要素をしっかりと差し出しながら、進んでゆく過去の物語とカタストロフ、そして冷戦後の現代の捜査のコントラストを楽しみながら、超一級のストーリーテリングを楽しめる。極上の美酒と言ってよい、これは相当にハイ・クオリティな作品である。 -
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ヘニング・マンケルの本を生前一冊も読んでいなかったくせに、昨年読んだ、ノン・ミステリー、ノンシリーズの単独作品『イタリアン・シューズ』の書きっぷりが一発で気に入ってしまって、ついにはまり込んでいる最近である。
訳者の柳沢由美子さんは、アイスランドのやはり小説名手であるアーナルデュル・インドリダソンの作品のほうで、その名訳に唸らされていたので、マンケル作品でも信頼が置けて、ぼくには心地のよい日本語文章としてすんなり入ってゆけるのだ。北欧ミステリーで目立つ自然描写や季節変化については、やはりこの人の訳が一番空気感を味わえると思う。
さて、刑事ヴァランダー・シリーズは海外ドラマとしてもプライムやWOWOWなどで楽しむことができるので、ぼくはそちらを先に体感してしまった口なのだが、先にシリーズの最終作を先日読んだばかりということで、時間をかけても一作目から順番に読んでゆき、その後にまたドラマを見ることで二重三重の娯しみを期待している。
本作は、シリーズのスタート作として相応しい、非情なまでのバイオレンスと、当時スウェーデンの抱える移民問題と外国人排斥の不穏な動きなどの社会的環境とを見事にクローズアップさせる捜査シチュエーションの中で、例によって主任捜査官としての刑事というだけでなく、ヴァランダーが個人として抱える家族や恋愛の物語をも軸にしつつ、語られてゆく。
万能ではなくむしろ弱さだらけのように見える人間主人公の個としての人生物語と、複数の事件捜査が併行して語られる。込み入って取り散らかされたような、彼の時間をきめ細かに追いつつ、事件にもスピード感を持たせるという語り口が、本シリーズの際立った特徴なのだろう。ヴァランダーの持つ長所も欠点も、どちらも物語に付随する問題として読者は付き合っていかざるを得ないのである。
複雑に関係する二件の事件。その裏側を読み解く愉しみに加えて、ヴァランダーは娘リンダの不安定と、高齢によるアルツハイマーが疑われ始めた父親の環境変化、己の孤独とその対策、等々、読者の側とも共有できそうな多様な問題に解決を与えてゆかねばならない。だからこそ刑事ヴァランダーは人間ヴァランダーなのである。
ページを繰り始めると次々に彼を襲う多忙な出来事に悲鳴をあげたくなるくらい、彼も読者も多忙になる。最終ページを閉じてほっとするこの瞬間の満足度は、いったい何だろう、ヴァランダーと一緒に、すべてを解決してゆこうとする疲労、その対価であるカタルシスが、どうやらこのシリーズには仕込まれているらしい。
まだ一作目。本シリーズを楽しむ時間はこれからまだまだたっぷりある。 -
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ヴァランダーシリーズ。娘のリンダの義理の父が失踪。事件か事故か。ヴァランダーの捜査が始まるけれどなかなか思うようにいかない。ヴァランダーは60歳になり色々考える。仕事、生活、死。そういうところがこのシリーズの好きなところでもある。ヴァランダーの迷いや怒りが溢れてくる瞬間とかとても読み応えがある。捜査を通して、娘や自分との向き合い方を考える。行方不明者の捜索とヴァランダーの体の不調や時折起こる記憶喪失への恐怖。事件そのものよりそちらが気になる。苛立ちや悲しみ、孤独が襲ってくる中にあって孫ができたことで変わったもの。シリーズの中で登場した過去の女性も出てきたりと懐かしさもあった。とうとう終わってしまったこのシリーズ。訳者あとがきによればもう一作あるみたいだけれど実質的には今作がラスト。一番好きなシリーズ物で本当に楽しませてもらった。翻訳ものは途中で発売されなくなるものもあるなかで20年近く経っても最後まで読めたのはありがたい。また一作目から読み返してみようと思う。
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ネタバレスウェーデンの歴史をなぞるようにこの物語は過去から2000年代まで進んでくる。
潜水艦の艦長だった失踪した男の闇の部分が見え隠れする。スウェーデンの実際にあった事件、1986年のパルメ首相暗殺事件が深く影を落とす。それに並行してスパイの存在や過去の潜水艦の攻撃・作戦がいつまでもその、苦悩する男を精神的に追い詰めてゆく。そしてその妻をも。
ヴァランダー自身もかつての事件時携わった人物や土地や苦い思い出に次々と追われヴァランダーシリーズの総決算大サービスセールのよう。
実際、警察官として捜査した事件ではなかったので、あのケジメのつけ方は少し疑問が残るけれど、リンダの父親、クラーラの祖父としてはよかったのでは・・・
年老いて自分の父親と似てきたと感じているヴァランダーの思いには納得して、苦笑い。
ほかの著作「流砂」や「イタリアンシューズ」を彷彿とさせるシーンもあって、ヘニング・マンケルファンとしては実際泣けてくる。
「私の秋が終わったら誰かの春が始まる」のセリフにはマンケル氏の思いが充分込められている。
訳者のあとがきからすると、もう一冊著作があるらしい。これで最後と思っていたけれど、やっとひとつ私ももう少し頑張って待ってみようと思う(忍び寄る老いに恐れをなして・・・のスタンスがうつってしまった) -
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ネタバレクルト・ヴァランダーシリーズの第一作を読んでなかった。どこから読み始めたのか備忘録を見ないとわからないが、どの作品も面白かった。 ヘニング・マンケルさんは昨年亡くなってしまった。残念だ。
ヘニング・マンケルさんが昨年の秋に亡くなった。遺作になった闘病記「流砂」を読んだほうがいいのか迷っている。長いような短いような作品との付き合いだった。いつか御馴染みになった登場人物に親しんできた、亡くなったと聞くとさびしく惜しまれてならない。ヴァランダーシリーズも後半のものは読んだつもりだが、肝心の一作目が未読だった。ご冥福を祈りつつレビューを残しておこう。
クルト・ヴァランダー刑事シリーズの第一作。もうこのシリーズは完結している。ヴァランダーを取り巻く人たちとは、初めて遭うのではなく既におなじみになっているのもちょっと嬉しかった。
スウェーデンのイースタでは滅多に起きないような、残虐な殺人事件の通報があった。
人里はなれた老人家族が住む二軒の家、そのうち一軒で老夫婦が襲われ、夫は死に妻は重傷だった。すぐに病院に搬送されたが助からない状況で「外国の…」と言い残す。
隣人からみて、2人は日ごろから地味て堅実そうだったというが、調べると亡くなった夫には秘密があった。「外国の…」を手がかりにヴァランダーと長年の友人リードベリは捜査を開始する。
「外国の…」を裏付けるように犯行現場の綱の結び方にも特徴があった。そして事件はスコーネの、バルト海に面した湾岸にある難民の居留地につながる。政府は海外から来た人たちを受け入れはしたものの、人々は職場にも恵まれず極貧生活を強いられていた。
殺された夫婦も、外国から来て住み着いたらしい。そういった背景と、殺人事件を結ぶ糸から、犯人を割り出していく。
車の音から車種を言い当てる特殊な能力を持った人を見つけだす。ヴァランダーが自分の愛車、ボロのプジョーも走らせ当てさせてみる所など稚気があっていい。
彼はごく普通の冴えない男である。別れた妻にいつまでも未練があり、それなのに気に入った女性を見かけるとついお茶にでも誘いたくなりあれこれと想像する。別れた娘にも会いたい、その上事件が起きても、うまく解決できるのかというようなことで、いつもうじうじと悩んでいる。
だが彼のやる気は天啓のように謎を解く鍵が閃くことがある。そういった直感は別に変わったことではない、常に思いつめ、捜査に悩んでいることから我知らず導き出されたものなのだろう。
その熱心さが、危険も顧みず犯人を追い詰め、半死半生の目にもあう、犯人との対決シーンでは過激なアクションを演じて入院の破目になる。復活できる程度ですんでいるが。そうでないと次作はない。
彼を取り巻く環境や人々も細かく描写され、今風でないタイプの警官だけれど、何か親しみがわく、警察内でも東洋的な人情みがあって人との結びつきが優しく感じられるのも親しめる要因かもしれない。
まだ「霜の降りる前に」が残っていた。周りが少し片付いたら読もう。
ヘニング・マンケルさんに感謝とお別れを。
1作目 殺人者の顔
5作目 目くらましの道 -
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ネタバレヴァランダーはITの世界に戸惑いながら、やはり本領を発揮する。しかし進むテロ工作を阻止できるのはITプロだけだろう。事件も複雑になってきた。
※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。
ファイアーウォール 上下
これでヴァランダー刑事との付き合いは5作目になる。題名を見て、ITに疎い警部はどうするのかと思った。同僚の刑事達が何とかするのだろう。
そして見事に外れた。ヴァランダーは理解できない世界に迷い込んでしまう。
(こんなことが出来るなんて、分からない。パソコンというのはどうなっているのだ。
それぞれに事件とどんな繋がりがあるのだ。ITの宇宙とはなんだ)
少女が変電所の高圧線の上に放り投げられて焼死した残虐な事件、死ぬ前に少女たちはタクシー運転手を惨殺していた。
その後ATMの前で男が突然死した。ITのプロらしいこの男は二箇所に仕事場を持っていたが、手がかりは残されたパソコンだけだった。
突然死で彼はデータを隠す暇が無かったらしい(それ唯一の手ががりだ)でもヴァランダーはパソコンは苦手で起動させることもできない。
運転手殺しの首犯は焼け死に、残った相棒の少女は関係ないとばかりに全く協力的でない。
同僚で多少操作ができるマーティンソンがパソコンを開けて見るが全く歯が立たない。そこでペンタゴンのシステムに入った前科のある、ハッカーの少年を呼んでくる。
彼はシステムを解読しながら進んでいくが、強力な厚いファイアーウォールの前で、現れては消えるプログラムを呆然と眺めるだけだった。
ただ20という言葉が頻発するという。彼は自己のプライドをかけて不眠不休でキーボードと格闘する。
20とは確かな情報なのか、何か意味があるのか。モニターの前でヴァランダーの思考は前に進みようがない。
一方、ウガンダに一人の男がいて世界規模の破壊工作が進んでいた、彼はITのエキスパートだった。彼のプログラムを実行するだけで世界経済を破壊するシステムを構築していた。
彼の趣旨に賛同して集まった数名の中で、リーダーになっていた。
一方頭を抱えるヴァランダーも、地道に頭と脚で捜査する以外に無いと思いかえし、少女たちや突然死した男の背後を調べだす。
しかし、繋がりのわから無い事件はやはりあのパソコンでなくては解けないのか。
少女が以前交際していたという少年が行方不明になり、フェリーのスクリューに巻き込まれて死んだ。
ちらちらと見え隠れする東洋人、ヴァランダーは二度狙撃されて命拾いをする。
ハッカー少年も狙われる。
ヴァランダーが優れているのは、その鋭い観察力と総合判断の正確さと些細な出来事の細部のねじれや不具合を感じ取る能力だが、不可解なIT社会の中では機能することができない。疎外感と無力感にさいなまれる。
読んでいても、なぜこんなテーマで困らせるのか、作者の意図が、現代社会に対する警鐘だとしても、物語の主人公が彼では解決は遠回りでじれったいでしょう。と私情が入る。
いつファイアーウォールにひびが入るのか、警察のエキスパートでも歯がたたないところでハッカー少年の執念は実るのか。ここが面白い。
その間、ヴァランダーの捜査が続くが、これが隔靴掻痒というのか、もう読んでいて気の毒でじりじりした。
頼りはひらめきなのかと思っていたところに、ITテロの実行を前に、ATMの前で死んでいた男(ファルク)が経済コンサルタントであったことが分かり、ついにハッカー少年が厚い壁の裏から入り込めそうになってきた。
ここは緊張感があって面白い。
業を煮やした犯人はついに姿を現す。
というような話だったが。読んでいくと緊張感が増すはずが、乗り切れなかった。
少女の事件も特に重要な手がかりにならず警部のくたびれもうけのようだし、無残にフェリーで死んだ少年もただ捜査を賑わしただけのようだった。
ああ、これはまずいのじゃないか。ヴァランダーとパソコンではいけないなぁという感想だったが、上下巻を読み通したのは、今まで面白い話を読ませてくれたマンケルさんと、婚活に踏み切ったがうまく行かなくて、捜査では同僚と齟齬が生じ、あらぬ誤解で世間から非難される、横顔がステキなヴァランダー刑事にエールを送るつもりで、がんばって(?)読み切ったのだった。
やはり読んでよかった面白かった。 -
購入済み
雨・闇・胸苦しさ
最果ての地、アイスランド🇮🇸から届いたミステリー。現場にしがみつき、昇進を拒む男エーレンデュレ捜査官を主人公に据えたシリーズ第4作目(らしい)。それが謎解きのキーになるのか!?ちょっと持ち込むにはムリっぽくないのか? 等とも感じましたが、アイスランドという特殊な背景においては成り立つという。しかし、そのキーが成立するには、昔かたぎというのか、あまり語ること・説明することを得意としない、と同時に嗅覚・感性を疎かにしない、執拗な(疑問を放置しない)姿勢を持つ主人公がそこにいたからという奇跡になるのかなーーー。主人公の子どもたちがどうしようもない状況に置かれていたり、登場人物の痛ましい過去に紙幅を割いて描写したりと、この当たりが現代的に感じます。謎解きについては、ちょいと都合よくないか?と思う点一ヶ所?結局なんでメッセージを残したわけよ?とかありますが、おおむね「良」だと思います。アイスランドの秋から冬に移り変わる季節、記録的な長雨に見舞われる年、視覚的には映画「セブン」に近いのかもしれません。(^-^)/
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Posted by ブクログ
ネタバレヴァランダーシリーズやと思って予約してみたら、なんと作者ヘニング・マンケルのエッセイ…ではないな、遺書でもないし…
マンケルががんを宣告されてから、何を考えてきたかを、自らの年齢と同じ67章の文章にした闘病記…闘病記という括りもちょっとずれるか。「へニング・マンケルとは何者であるか」を書いた哲学思想のつづれ書きなのである。
俺だって誰だって余命は分からない。明日死ぬかもしれないし、死に至る確率は年齢とともに増えていくのは事実。死ぬのは怖いが、死なない訳にはいかない。
マンケルは、がん告知と余命宣告を受けてから、その現実をどのように受け止め、何を考えてきたのか?
そんなことをきちんと書きとめてくれているのが、いずれそうなる身の我々には、非常に心強いではないか。そして彼は自分の死の事よりも、後に残る人々について想いを馳せる。
10万年間地中深くに放置される核廃棄物、彼はこのことについて何度も想いを巡らせる。我々の負の遺産をこんなにも長く後世に引き継がせていいのか?と。
死に直面しているからこそ、この問いかけは深い。優しい男ヘニング・マンケル。残念ながら治療の甲斐なくこの作品を上梓後1年でこの世を去る。冥福を祈らずにいられない。 -
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あらすじ
ペーターは39歳独身。小さな会社を経営していたが、働き過ぎてパニック症になったり、社員に横領されたりして追い詰められている。ある時人違いでお使いを頼まれ、会社社長に切断された指を届ける。その男性には嫌がらせが続いていた。借金分を報酬として受けとる代わりにペーターは謎の女を探すことにする。しかし、嫌がらせはひどくなり、二人は警察に相談するが、担当の女刑事はあまり協力的ではない。自力で見つけた女は自殺した。これで事件は解決したかと思ったがペーターは再び女を見かけ、居場所を探し当てる。しかし女の目当てはピーターだった。実はピーターは養子で、元の家族の姉が逆恨みし、病気が末期だったこともあって追い詰めてきたのだった。
1998年発表で少し古い。何でもかんでも一般人が自力で解決しようとするとことか。ラストの実は本当の家族がいましたー。というのも、ちょっと前の感じがした。それでもカーリン作品は色褪せない。39歳にもなって繊細過ぎる主人公の、上手く人と関係を築けないとこや、養姉の優しさ、実の姉の狂気っぷり、社長との友情なんか、読んでてしみじみ楽しんだ。