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その白骨は干上がった湖底で発見された。頭蓋骨には殴られたらしい穴があり、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられている。30年以上前の事件らしいことから、エーレンデュル捜査官の手に捜査が委ねられた。丹念な調査の末、ある失踪事件が浮かび上がる。アイスランド全土をまわっていた農業機具のセールスマンが、婚約者を残し消息を絶っていたのだ。男の名は偽名で、彼の身分証明記録は一切なかった。男は何者で、何故消されたのか? 捜査が浮かびあがらせたのは、時代に翻弄された哀しい人々の真実だった。北欧ミステリの巨人渾身の大作。ヨーロッパミステリ大賞、バリー賞受賞!
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Posted by ブクログ
ヘニング・マンケルに似た雰囲気を感じるのは、翻訳者がどちらも柳沢由美子さんの名訳だからということだけではあるまい。マンケル同様、北欧を代表する作品に与えられるガラスの鍵賞を、しかも立て続けに二度受賞しているインドリダソン。そのエーレンデュル警部シリーズも、マンケルのヴァランダー・シリーズ同様に、主人公を捜査官として描くのみならず、生活を持ち、家族を持つ人間であり、その中で私的な懊悩や迷いや希望を抱え込んでいるのである。そこに単作としての事件の上をカバーする連続性持ったシリーズ小説としての魅力が感じられるのだ。
シリーズ探偵が、誰かとつきあったとか、別れたとか、子供ができたとか、飼い犬が家族に加わった、とか、そういった悩まぬ不動の強き探偵ではなく、読者に近い側の人間であり、読者同様の様々な家族や人間関係に関する悩み、体の不調、心の荒れる様と、それを悔やむ様子、等々。そうしたものをメイン・ストーリーに重ねることによって得られるリアルな重さ、物語の厚さ、体温のようなものが感じられ、作品は活き活きと我々の下に手繰り寄せられる、そんな気がする。
もちろん、読者と離れたところで、非現実的であれ、快適な小説を求めたい読者もいると思う。マンケルもインドリダソンも、どちらかと言えば、私生活では試練を与えられる警察官であり、個人の試練を解決できなくても事件を解決することはできる、という、少し不完全さを持ったキャラクターである。
さて本書を読むのが、わけあって先にハードカバーで読んだ『厳寒の街』の後になってしまった。本書は、アイスランドの過去の歴史のなかから現れた古い死体の発見がスタートラインとなる。枯渇した湖の底から、古い無線機を錘として使われた白骨死体が発見されたのだ。エーレンデュル警部の捜査が始まる。
一方で、米ソ冷戦時代のアイスランド、共産主義に憧れ東ドイツを訪れる若者たちの一団の物語がある人物によって挿入される。彼が誰なのかは読み進むまでわからない。しかし、冷戦の時代には、地理的に重要な情報戦略の要衝的にあった上、自国に戦力を一切持たないアイスランドの国には各国の出先機関が押し寄せ、軍事的にも重要な国とされていたのだそうである。
その時代、ソ連のコミュニズムに希望を求めた若き活動家たちの行動に本書は焦点を当てる。一方の現代では、エーレンデュル、シグルデュル=オーリ、エレンボルクという三人のレギュラー捜査陣が、それぞれにプライベートな悩みを抱えながらも、彼らなりの才気を発揮して湖で発見された白骨の正体に迫る。
アイスランドと東ドイツのライプツィヒの両舞台、両時代を往来しつつ物語は白骨死体の正体に近づいてゆく。ミステリ要素をしっかりと差し出しながら、進んでゆく過去の物語とカタストロフ、そして冷戦後の現代の捜査のコントラストを楽しみながら、超一級のストーリーテリングを楽しめる。極上の美酒と言ってよい、これは相当にハイ・クオリティな作品である。
Posted by ブクログ
一見救いようのない世界
それでも「生きる」ということ……
珍しく冷戦時の社会を背景としており、他の北欧ミステリーのよう。
「フォード ファルコン」1960年代北米フォードの自由の象徴。この車とソ連製の盗聴機の組み合わせが、冷戦時代のアイスランドの混迷を匂わす。
湖の水位が下がったことで見つかった白骨死体のなぞ。
冷戦時の東ドイツへ留学した若き社会主義者達日常。
二つの物語が交錯しながら進む。
湖の底に隠れた過去の出来事は、決して消え去ったわけではなかった。
ダム湖が干上がって底に過去の生活の痕跡があらわになること、また、見つからないと思って投げ込んだ過去の負の出来事がヘドロのなかから顔を出す時、人間の業の深さを感じることになる。
それでも人は過去を背負って生きる。
それにしてもエーレンデュルの二人の子供との関係は、本筋より深刻。
Posted by ブクログ
湖が干あがったために発見された一体の白骨。殺害されたことを示す頭蓋骨の穴と、体に結び付けられたソ連製の盗聴器。この死体は誰なのか、なぜ殺されたのか、姿を消した失踪者から辿ろうとエーレンデュルたちの捜査が始まる。
現在進行の捜査活動の叙述の間あいだに、アイスランドから社会主義の理想を信じて東ドイツ、ライプツィヒの大学に留学した学生の生活が挟み込まれる。時はハンガリー動乱直前。そのときの何がが、この白骨死体に関係しているのか。
本作は時代背景が重要なポイントとなっているが、冷戦時代のアイスランドの国際政治的な位置について、初めて知ることが多かった。
主筋のストーリー自体はもちろん、主人公エーレンデュルとその子供たちとの関係、好感情を抱いた女性との交際の深まりなど、シリーズならではの読みどころも多い。
Posted by ブクログ
アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』創元推理文庫。
レイキャヴィク警察シリーズ。主人公のエーレンデュルが地道な捜査により過去に起きた殺人事件の真犯人を特定するというストーリー。読むのに苦労した割りには得る物が少なかったというのが正直な感想。
干上がった湖の底で発見された白骨死体は頭蓋骨に穴があき、体にはソ連製の盗聴器がくくり付けられていた。エーレンデュルの捜査の結果、過去に農機具のセールスマンが婚約者を残して失踪していた事実が浮かび上がる。
事実を1つずつ丹念に紐ほどき、少しずつ真実に迫る過程は面白いが、誰もが見逃していた過去の国家の歴史が絡む事件の真相にまで辿り着き、真犯人を特定してしまうというのは余りにも出来過ぎではないだろうか。
本体価格1,360円
★★★
Posted by ブクログ
続けて読みどっぷりアイスランドに嵌まった。アーナルデュル・インドリダソンの三冊目。この本のテーマは社会主義国とそこの若者達という感じ。旧ソ連の影が色濃く差す東ドイツに留学した学生たちの重い青春記とも。
東ドイツのライプツィヒ、ベルリンの壁崩壊以前の大学生たちの若さが痛々しく、先頃発見された殺害されたが遺骨の捜査と交互してストーリーは展開してゆく。
お馴染みになった刑事たち、二作目からここまでまた月日が経ったようでそれぞれの身辺少しずつ変化している。
情けないオヤジのエーレンデュルは相変わらず娘、息子と関係は築けてない…。
翻訳者の解説によると、北欧ではこのシリーズ15作目まで出版されてるとのこと!
先月発刊された文庫、早速本屋さんへ予約しに走った!
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