【感想・ネタバレ】殺人者の顔のレビュー

あらすじ

雪の予感がする一月八日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。被害者のうち、無惨な傷を負って男は死亡、虫の息だった女も「外国の」と言い残して息を引き取る。片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ……? マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀――スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

スウェーデンの警察小説である『クルト・ヴァランダー』シリーズの第1作。
凄惨な殺人事件の謎を追う警官クルト・ヴァランダーが主人公なのだけれど、起こること起こること(事件関係でもプライベートでも)泣きっ面に蜂が続き、同情を禁じ得ない。次々に事件は起こるし、上司は不在だし、操作情報を外部に漏らす部下もいるし、家では離婚、娘との不和、老父の精神不安定、中年太り、アルコール依存、古い友だちには邪険にされ、新しく出会った人妻にも相手にされない…。お世辞にもスマートとは言えないクルトだけど、事件に関しては(何度も失敗しながらも)「しぶと」く「絶対に放り出さな」い姿に、よれよれながらも応援したくなる。
胸のすく謎解きのカタルシスはないけれど、事件が終わった後の警官たちの語りに、静かな感動を覚える読後感だった。

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2022年08月11日

Posted by ブクログ

 ヘニング・マンケルの本を生前一冊も読んでいなかったくせに、昨年読んだ、ノン・ミステリー、ノンシリーズの単独作品『イタリアン・シューズ』の書きっぷりが一発で気に入ってしまって、ついにはまり込んでいる最近である。

 訳者の柳沢由美子さんは、アイスランドのやはり小説名手であるアーナルデュル・インドリダソンの作品のほうで、その名訳に唸らされていたので、マンケル作品でも信頼が置けて、ぼくには心地のよい日本語文章としてすんなり入ってゆけるのだ。北欧ミステリーで目立つ自然描写や季節変化については、やはりこの人の訳が一番空気感を味わえると思う。

 さて、刑事ヴァランダー・シリーズは海外ドラマとしてもプライムやWOWOWなどで楽しむことができるので、ぼくはそちらを先に体感してしまった口なのだが、先にシリーズの最終作を先日読んだばかりということで、時間をかけても一作目から順番に読んでゆき、その後にまたドラマを見ることで二重三重の娯しみを期待している。

 本作は、シリーズのスタート作として相応しい、非情なまでのバイオレンスと、当時スウェーデンの抱える移民問題と外国人排斥の不穏な動きなどの社会的環境とを見事にクローズアップさせる捜査シチュエーションの中で、例によって主任捜査官としての刑事というだけでなく、ヴァランダーが個人として抱える家族や恋愛の物語をも軸にしつつ、語られてゆく。

 万能ではなくむしろ弱さだらけのように見える人間主人公の個としての人生物語と、複数の事件捜査が併行して語られる。込み入って取り散らかされたような、彼の時間をきめ細かに追いつつ、事件にもスピード感を持たせるという語り口が、本シリーズの際立った特徴なのだろう。ヴァランダーの持つ長所も欠点も、どちらも物語に付随する問題として読者は付き合っていかざるを得ないのである。

 複雑に関係する二件の事件。その裏側を読み解く愉しみに加えて、ヴァランダーは娘リンダの不安定と、高齢によるアルツハイマーが疑われ始めた父親の環境変化、己の孤独とその対策、等々、読者の側とも共有できそうな多様な問題に解決を与えてゆかねばならない。だからこそ刑事ヴァランダーは人間ヴァランダーなのである。

 ページを繰り始めると次々に彼を襲う多忙な出来事に悲鳴をあげたくなるくらい、彼も読者も多忙になる。最終ページを閉じてほっとするこの瞬間の満足度は、いったい何だろう、ヴァランダーと一緒に、すべてを解決してゆこうとする疲労、その対価であるカタルシスが、どうやらこのシリーズには仕込まれているらしい。

 まだ一作目。本シリーズを楽しむ時間はこれからまだまだたっぷりある。

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2020年11月02日

Posted by ブクログ

クルト・ヴァランダー刑事シリーズの第一作。もうこのシリーズは完結している。順番に読まなかったのはよくないかな、と思っていたが、ヴぁランダーを取り巻く人たちとは、初めて遭うのではなく既におなじみになっているのもちょっと嬉しかった。

スウェーデンのイースタでは滅多に起きないような、残虐な殺人事件の通報があった。
人里はなれた老人家族が住む二軒の家、そのうち一軒で老夫婦が襲われ夫は死に妻は重症だった。妻も助からない状況で「外国の…」と言い残す。

隣人からみても、日ごろから地味て堅実そうに見えたというが、亡くなった夫には秘密があった。「外国の…」を手がかりにヴァランダーと長年の友人リードベリは捜査を開始する。

「外国の…」を裏付けるように現場の綱の結び方にも特徴があった。そして事件はスコーネの、バルト海に面した湾岸にある難民の居留地につながる。政府は海外から来た人たちを受け入れられたものの、人々は職場にも恵まれず極貧生活を強いられていた。
殺された夫婦も、外国から来て住み着いたらしい。そういった背景と、殺人事件を結ぶ糸から、犯人を割り出していく。

車の音から車種を言い当てる特殊な能力を持った人を見つけだす。ヴァランダーが自分のプジョーも走らして当てさせてみる所など稚気があっていい。
彼はごく普通の冴えない男である。別れた妻にいつまでも未練があり、それなのに気に入った女性を見かけるとついお茶にでも誘いたくなり、あれこれと想像する。娘にも会いたい、その上事件が起きてもうまく解決できるかというようなことでいつもうじうじと悩んでいる。
だが彼のやる気は天啓のように謎を解く鍵に気づくことがある。そう言った直感とは別に変わったことではない、常に思いつめ、捜査に悩んでいることから我知らず導き出されたものなのだろう。
その熱心さが、危険も顧みず犯人を追い詰め、半死半生の目にもあう、過激なアクションシーンを演じることもある。

彼を取り巻く環境や人々も細かく描写され、今風でないタイプの警官だけれど、何か親しみがわく、警察内でも東洋的な人情など人との結びつきが優しく感じられるのも親しめる要因かもしれない。

作者のヘニング・マンケルさんは昨年なくなったそうだ。感謝とお別れを

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2020年01月05日

Posted by ブクログ

無骨で飾らない文章だが だからこそストレートに 心に響く

犯人設定より たどり着くまでの描写が
味がある

じっくり読みたい方 オススメ
というか ヘニングマンケル めちゃファンです!

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2017年01月02日

Posted by ブクログ

じっくり、ゆっくり読むと、より味わい深くなる物語かな。
確かに本筋の事件解決についてはあっさりでしたが、それ以外の話がいろいろあり、また移民問題についても今後の日本の未来に直面する問題なのかなと、勉強になりました。
次のシリーズも読んでみようと思います。

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2015年11月08日

Posted by ブクログ

オリジナルのタイトル”Mördare Utan Ansikte”、どういう意味なんだろうと思って辞書を引いたところ、顔のない殺人者、という意味だった。
犯人はいて勿論『顔』がある。けれど、犯人をそうするように駆り立てたものーー国の制度、仕組み、移民問題ーーもある意味では『犯人(原因)』で、それには『顔』がない。……よな、とか考えたりした。

国が抱えている問題を軸にして展開される重厚な物語。読み終えた時の(いい意味での)疲労感。
ヴァランダーのシリーズをもっと読みたくなった。

しかし、クルト・ヴァランダー、プライベートがとことん行き詰まっているし、ひどい怪我をするし、急いでご飯食べたりして結構お腹こわしてるし……大丈夫か!?と心配になった。これで職場の人間関係がギスギスしてたら(辛すぎてとても読み進められなかった)……そうじゃなくてよかった。

父親の問題のくだり、それについて姉と話している場面はとても苦しくなってしまった。

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2023年03月08日

Posted by ブクログ

北欧ミステリーは有名どころは読んでいる方なので
・グレーンス警部
・特捜部Q
・ミレニアム
・その他警察モノなど
なんというか北欧作品的なヤツ、というか警察モノのあるあるが揃ってる(この作品というかもっと前の刑事マルティン・ベックが元?)

当然ヴァランダーは離婚してるし、未練たらたら…子供は独立してるし親の介護もあるし
同僚は体が不調気味…
捜査では怪我ばかりして進展無し…なんともかっこ悪いのだけども、どうも嫌いになれない。
(もっと最低な刑事を見かけてるのもあるけど…)

事件自体は携帯電話やインターネット普及前の事件なので、劇的な展開やどんでん返しは期待せずに読み進めた。

平凡な農夫が何故とても残虐な方法で夫婦ごと殺されてしまったのかを追う。
追う中での主人公の内面に重点を置いてる。
(合わない人は合わないと思う。私は好き。)
土地の描写も寒そうで、読んでいる今の季節に合っていた。

ヴァランダーを"カッコよく"したのがマルティンベックらしいので、そちらも読み比べてみようと思う。
シリーズどちらを追うかはそのあと決める。

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2022年12月08日

Posted by ブクログ

スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『殺人者の顔(原題:Mordare utan ansikte)』を読みました。
「アンナ・ヤンソン」の『死を歌う孤島』に続き、スウェーデン作品です… 北欧ミステリが続いています。

-----story-------------
●「関口苑生」氏推薦――「これは世界のミステリー史上においても瞠目すべきシリーズとなることは間違いない」

【CWAゴールドダガー受賞シリーズ/スウェーデン推理小説アカデミー最優秀賞受賞】
雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。
男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。
片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。
燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? 
人間味溢れる中年刑事「ヴァランダー」登場。
スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕!

*第10位『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリーベスト10/評論家部門
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本作品は、第1回ガラスの鍵賞を受賞した「ヘニング・マンケル」の処女作で、警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズの記念すべき第1作、、、

意に反した離婚から立ち直れず、娘は家出し、老いた父親との関係もうまくいかず、不規則な食生活がたたって中年太りで、飲酒運転を同僚に見逃してもらったり、酒に酔った勢いで既婚の女性検察官にセクハラまがいの迫り方をしてふられるという、格好良くない中年の刑事「クルト・ヴァランダー」が主人公なのですが、その人間的に弱い部分に、何とも言えない人間味あふれる魅力があるんですよね… このシリーズ、愉しく読めそうです。


1990年1月8日、スウェーデン南部のスコーネ地方レンナルプ村に住む農家の老夫婦が何者かに襲われた… 隣人の通報によりイースタ警察署の「クルト・ヴァランダー」らが現地に到着すると夫「ヨハネス・ルーヴグレン」は既に死亡し、妻「マリア・ルーヴグレン」は瀕死の状態であった、、、

強盗の仕業と思われたが負った傷の状態から両者共に拷問を受けており、奪われた物も不明であった… 目ぼしい財産を持っていそうにない田舎に住む老夫婦に犯行の動機となりえるものがあるとは思えない中、重傷を負った「マリア」が「外国の」と言い残し死亡した。

被害者を縛っていた縄の特徴ある縛り方と外国人という手掛かりで捜査を進めようとした「ヴァランダー」と相棒の「リードベリ」は、外国人に対して人種差別的な反感を持つ一部の人々を刺激することを恐れて、外国人容疑者の線を伏せるが、この配慮は警察内部の何者かにより裏切られ、犯人は外国人という噂がマスコミに流れ、報道されてしまった… 国外から流入する外国人との軋轢を抱える社会情勢を知る「ヴァランダー」等は、不安な思いを抱えながらも捜査を続けるが、案の定、これをきっかけに移民排斥運動を強めようという不穏な動きが始まった、、、

「3日以内に老夫婦惨殺事件を解決しなければ、移民地区から死人が出る」という脅迫電話が「ヴァランダー」にかかる… その後、「マリア」の兄「ラース・ヘルディン」から、妻も知らなかった「ヨハネス」の一面に関する情報提供があり、その背後関係を調べている最中に移民の収容所が放火され、更には移民逗留所でソマリアから来た移民の1人が射殺され、「ヴァランダー」等は二つの事件を追うことになる。

車の音から犯行に使われた車種を特定したことをきっかけにして、ソマリア人の殺害事件を解決した「ヴァランダー」等は、再び、レンナルプ村の事件の捜査に戻る、、、

捜査を進めるうちに、「ヨハネス」が第二次大戦時にドイツ相手に密かに稼いだ巨額の資産や、愛人と息子の存在が明らかになるとともに、競馬好きの刑事「ハンソン」の情報から、息子の経済的な窮状が判明し、「ヴァランダー」は、その線を追うが… 真相究明のきっかけとなり、犯人特定の決め手となったのは、フレーニングス銀行の窓口担当「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の素晴らしい記憶力でしたね。

結果的には、「外国の」というダイイングメッセージが、的確に犯人を指示していたことがわかるのですが… 「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の存在がなければ迷宮入りしていたかもしれませんね、、、

スウェーデンの人口の約五分の一が移民、または親が外国生まれ、あるいはスウェーデンに帰化した外国人らしいです… スウェーデン社会が抱える、流入する移民に関する問題がテーマとして扱われていますが、現在では世界的な課題になっており、他人事ではないですね。



以下、主な登場人物です。

「クルト・ヴァランダー」
 イースタ警察署の刑事。主人公

「リンダ」
 クルトの娘

「モナ」
 クルトの元妻

「クリスティーナ」
 クルトの姉

「ステン・ヴィデーン」
 クルトの旧友

「ヘルマン・ムボヤ」
 リンダの恋人

「リードベリ」
 イースタ警察署の鑑識担当刑事

「マーティンソン」
 イースタ警察署の実習中の巡査

「トーマス・ネスルンド」
 イースタ警察署の刑事

「ハンソン」
 イースタ警察署の刑事

「スヴェードベリ」
 イースタ警察署の刑事

「ビュルク」
 イースタ警察署の警察署長

「エッバ」
 イースタ警察署の交換手

「アネッテ・ブロリン」
 イースタ検事局の新任検察官

「ユーラン・ボーマン」
 クリシャンスタ郡警本部の刑事

「ヨハネス・ルーヴグレン」
 農民

「マリア・ルーヴグレン」
 ヨハネスの妻

「ニーストルム」
 ルーヴグレンの隣人夫婦(夫)

「ハンナ」
 ルーヴグレンの隣人夫婦(妻)

「ラース・ヘルディン」
 マリアの兄

「ブリッタ=レーナ・ボデーン」
 フレーニングス銀行の窓口担当

「アニタ・ヨアンソン」
 主婦

「マルガレータ・ヴェランダー」
 美容師

「ニルス・ヴェランダー」
 マルガレータの息子

「エレン・マグヌソン」
 薬局勤務

「エリック・マグヌソン」
 エレンの息子

「ルネ・ベルマン」
 元警察官

「ヴァリフルド・ストルム」
 ルンドの男

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2022年12月07日

Posted by ブクログ

また、新しいシリーズに手を出してしまった

とっ散らかった本棚だ
一人の作家さんや、一つのシリーズを集中的に読むということが出来ない
たまに変な決意の元にそんなことをしてみると、しばらくその作家さんに手を出さなくなったりする
うーんやっかい(自分で言うな!)

さて今回手を出したのは『刑事クルト・ヴァランダーシリーズ』
なんとデンマークのミステリーでイギリスでドラマシリーズが放送されていたという代物
そしてこの刑事ヴァランダーが良い!

一言で言うと「情けない」
別れた妻に未練たらたらたが、突然現れた若い美人の検察官も気になる、一人娘はかわいくて心配だがどう接していいかわからずにおろおろする
父親の問題からは目を背けてぐずぐずして事態を悪くして、最終的には姉に頼る
奥さんに出ていかれたとたんに食生活は乱れて太り出し、酒に逃げて失敗する

もう!こりゃあダメだ
こんなんもう男なら絶対に自分を重ねちゃうよ!w

だけど警察の仕事は真面目にコツコツ諦めずに犯人を追い、仲間と協力して証拠を積み重ねて行く
猛烈な忙しさの中でも休まず働き続ける
うーん、仕事に逃げてるなw

多くの男たちにとって「刑事ヴァランダー」は「自分」なんじゃなかろうか?ほんとは目を背けたくなるようなだらしない「自分」だけど、そこそこ真面目に頑張ってそれなりに成果をあげたら誇ってあげたい「自分」

そんな「自分」を追って、このシリーズも読み続けていきましょうか

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2022年11月25日

Posted by ブクログ

子どもが今北欧言語に凝っていてヘニングマンケルを読みたいと言っていたので読んでみました。

30年前のスウェーデンの社会情勢は読んでいてちょっと辛くなったけど最後は結構面白かったな。シリーズ全部読んでみよう。

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2022年01月22日

Posted by ブクログ

名推理があるわけでもなく、見込み違いや捜査の停滞もあり、ザ警察小説という感じ。特捜部Qシリーズが巻を追うごとに長く、筋の事件と関係ない事件やエピソードが増えて食傷気味になってきたので、今度はこちらに期待しよう。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

あーいやだ、いやだ……。

いやになるほどの孤独な中年男性の生活。
出て行った妻へたたみかけるように詰問する姿、前頭葉の老化による感情コントロールの低下に刑事という職業の癖が加わり相手を不快にする……そりゃ逃げるわ〜。
そのくせ、「褐色の女性」との妄想や、女性検察官へのちょっかい……。
妻や娘のことも、父親のことも、逃げるようにしてお酒に埋没したり、お腹ができたことを気にしながら、サラダをいやいや食べる姿など、ゾッとする。
数十年会ってない友人に突然しつこく電話したり、慌てて隠れた時にぶつかった怪我も「殴られた」とうそぶく……。
いったいこの人のどこが良いのか?

ところが、読み進めていくうちに不思議なリズムが出てきて、次第にこの主人公と「共に居る」ような感覚に陥ちてゆく。

その結果、「シリアスなドタバタ感」という奇妙な面白さが生まれ、なんだか愛おしくなってくる。

私は、結構好きだと思う。

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2021年05月07日

Posted by ブクログ

一冊も読んだことが無いのに本屋さんでずらっと並んでいる背表紙を何度も見ていたせいか作家のフルネームと『白い雌ライオン』というタイトルが記憶に残っていたシリーズ、知人の読書家に「すごーく面白い」と聞いたのと、最近北欧の作品を固めて読んでいることもあり遂に読み始めました。日本語版発売から20年経過していますが、自分が主人公ヴァランダーの境遇や感情を理解しやすい年齢になっているので今のタイミングで読んで正解でした。移民の問題や制度が目指したものと実際の運営状態の解離、都市部と農村部の違いなどが、衝撃的な事件とその捜査の合間に丁寧に語られます。中年刑事の常?としてヴァランダーは妻に捨てられて惨めで荒んで、食生活は乱れ不健康に太っているものの、刑事としての矜持と勘をもって諦めずに捜査にあたります。記者会見用の原稿を書いたり捜査のシフトを組んだり引継ぎ報告書を書いたりという他の作品ではあまり見られない刑事の地味な仕事ぶりも出て来たのが新鮮でした。内容が濃い割には短く、スッと読めました。完結しているシリーズなので一気読みが出来るのが嬉しいです。

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2021年04月27日

Posted by ブクログ

ヴァランダー刑事シリーズの一作目、読もう読もうと、思いつつ、やっと読み始めてやっぱりはまった❗
これは、シリーズ全部読むやつ!!嬉しくて楽しみ!
移民問題、離婚、子供の問題、親の問題、etc.そりゃもう、事件だって重ねて起こるし、彼(主人公)と、共にどっと疲れるけど、人間の日常って、やっぱり綺麗事だけではないもんね。
さぁ、何処迄も一緒に解決して行きます!

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2021年03月27日

Posted by ブクログ

1990年代のスウェーデンが舞台の刑事ヴァランダーシリーズ第1作。
一応ミステリー小説にカテゴライズされるのだろうけど、これミステリーじゃない!
殺人事件の捜査が柱にありつつ、謎解きがメインじゃない人間ドラマ。
登場人物たちの内面の葛藤や生活、そして事件捜査としての"自分の仕事"に対する姿勢がとても魅力的。
ヨーロッパらしい自立した考えの大人が議論を交わす形で社会的背景と国家の問題を印象深く盛り込んでもいる。過激な思想の押し付けがなくスマートなので、余計に考えさせられる。
翻って、アクションシーンはハリウッド映画も真っ青の大迫力!
ミステリーの概念吹っ飛んだ。
これまで読んできたミステリーはアメリカが舞台のものばかりだったので、北欧というのもとても新鮮だった。

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2020年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

クルト・ヴァランダーシリーズ第1作。
順を追わずにいくつか読んでいるこのシリーズだが、未読作品も読んでみたくなり手を取った。

クルトの私生活描写が生々しい。奥さんに愛想をつかされ、娘には異国の恋人ができ(それを知らされず)、乱れた食生活で太り、酔っ払い運転で部下につかまり、酔った勢いで美人女性検事の腰を抱きかけてどつかれ…、なんという駄目っぷり。
認知症気味の父親とのぎこちないやりとりや、その父親の今後を姉と相談するシーンなどは、駄目なわけではないが、高齢者福祉社会に住む中年男の悲哀感もたっぷりで、妙なところに親近感がわく。

でも仕事になると、猛烈に働くねんなぁ。決して天才肌の名探偵ではないが、綿密にしつこく念入りに事件を捜査し、決して諦めない。行き詰ろうと、迷宮入りしそうになろうと、予測が外れようと、その場では落ち込んで苦しんでも、執拗に粘っこく解決への糸口を探す。

そんなモーレツな業務をこなし、わずかなプライベート時間を家庭の諸事と酒と美人検事にちょっかいかけることで潰してしまうクルト。過労死するんちゃうかと心配になる。

と、本筋から外れた楽しみもできる本作だが、もちろん警察小説としても読み応え十分。ミステリーという意味では、謎解きが弱く、どんでん返しも荒っぽいが、犯罪捜査に取り組む警察の描きっぷりは見事である。

なるほど、これはシリーズ化するはずで、この後傑作も生まれるわけだ、と納得のシリーズ第1作だった。

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2020年08月19日

Posted by ブクログ

楽しめた。残念だったのは自分が馴染みのない土地のせいで主人公が移動する時の距離感が掴めなかったこと。ところで主人公はすぐにベッドに横になるがシャワーを浴びることはないのか。(笑)

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2017年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

刑事ヴァランダーの原作本ということで。
中年でダメダメな男性刑事というキャラは日本の小説でも最近はとくに珍しくなくなったと思うのですが、これは男の駄目さの描写が素晴らしい。女の私が読んでも、仕事と家族に悩む中年男性の疲れが胸に迫ります。
イアン・ランキンのリーバスよりも、地に足のついた疲れ方(?)っぽい。
しかし老夫婦の惨殺事件、移民の殺害事件、どちらも難しいものを、逃げ出さず放り出さずに取り組む姿だけでヴァランダーが信用するに足る人間だと読者には実感できます。
終盤、彼は大事な刑事仲間をじわじわと失っていくのですが、その部分が良かった。大事な人を亡くしたことがある人ならば、ヴァランダーの喪失感をトレースして落ち込むかも。あそこだけでもマンケルの筆に満足です。

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2016年11月10日

Posted by ブクログ

世界で最も福祉政策が充実し、幸福度も高いと言われる北欧だが、ミステリ作品の中では、他の国と大して変わらないシビアな現実を抱えている様子が描かれる。ヴァランダー警部の第1作がすでに数十年前の作品ということにびっくりするが、起こる犯罪とその背景にある社会問題は現在も解決しておらず、そのせいか大筋で古さを感じさせない。先日、欧州で自警団に対する懸念が広がっているという新聞記事を読んだので、このシリーズを思い出した。たしかシリーズ中にそんな話があったような。機会があれば読み返してみたい。

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2016年06月09日

Posted by ブクログ

ミステリとしてはそこそこ。
けれども、主人公の造形が気に入った。

父親の介護問題を抱え、別れた妻に未練たらたら、年頃の娘とはしっくりいかない、旧友との仲もぎくしゃく。思いつめて(?)、魅力的な女性検事についセクハラに及ぶ中年刑事。
そんな等身大(ただし最近お腹が出ている)のアンチ・ヒーローにもただひとつ残されたものがあって、それは正義心。
憂鬱な北欧の冬空の下、人生には倦みつつも、正義感に衝き動かされ、陰惨な殺人事件の捜査に(中年男の人生のしがらみに寄り道を余儀なくされながら)邁進する。

脇役刑事たちの個性も光っているし、なにより、主人公と同僚刑事たちのチームワークがいい。

一大シリーズだそうな。続編も楽しみ。

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2014年12月04日

Posted by ブクログ

フォローしている方のレビューを見て
おもしろそう!と思ったヘニング・マンケルの警察小説。
シリーズものだということで、
まずは第一作目を手にとってみた。

スウェーデンの片田舎で起こる惨殺事件。
老夫婦が殺され、息のあった妻の最後の言葉は「外国の」

捜査に乗り出すのは42歳の刑事、
クルト・ヴァランダー。
この人を一言で表すと、ダメダメな奴。
妻には愛想を尽かされ出ていかれ、ストレスから体重が10キロほど増加。部屋は汚いし、お酒ばっかり飲んでる。リーダーシップは見せるものの、結構見当違いも多め。
何が一番嫌って、新しくやって来た美人の検察官に早々に目をつけ(夫も子どももいる、って言ってるやん)、
勝手に舞い上がり、愛の告白して迫って殴られ…
わー、なんかもう最低。

全然事件に関係ないけど、そんな人が主人公。

ストーリーはなかなか読ませる展開で、
その時代のスウェーデンの社会問題が浮き彫りにされていて興味深かった。
同僚の刑事たちも味があって良い。
まとめて借りたので次作も読む予定。

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2024年12月02日

Posted by ブクログ

スウェーデンの人気作、クルト・ヴァーランダーシリーズ第1弾。スウェーデンの片田舎を舞台に殺された老夫婦の事件を追う物語。起伏の幅は少なくはっきり言って地味ながらスウェーデンのお国事情が垣間にみえる。その世界観が北欧ミステリーらしくて良い。またヴァーランダーのどうしようもない性格がその暗い雰囲気とマッチしており真面目過ぎない空気感を出している。物語としての意外なツイスト、また淡々と事象を語る地の文も世界観がみられてよかった。

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2024年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

星3,7です。スウェーデンの片田舎で起こった老夫婦の殺人事件を追う推理小説。中だるみがなくすごいスピードで読めた。訳者も上手なのだろう。
 けど、事情があって途中、読書を中断したら登場人物が錯綜してしまって、少し困惑した。外国の本を読むといつもそうではある。けど、ストーリーはしっかりと頭の中に残った。意外な展開というわけでもなく、作中に頻繁に登場する人物が犯人という設定でもなかった。人間臭さのある刑事も良かった。んでも、旦那がいる女の人に「分かれて俺と一緒になってくれ」なんて…いけませんよ。ねぇ

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2023年05月14日

Posted by ブクログ

 スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの''ヴァランダー刑事''シリーズの初刊です。現在邦訳作品は、創元推理文庫から12作発表されてます。
 ヴァランダーは、スウェーデン南部(胡蝶蘭の様に垂れ下がった島がスウェーデンとしてその先っぽ)のスコーネ地方のイースタという小さな街の警察署の刑事です。

 事件は、イースタの西にある田舎町の農夫が隣家の友人農家宅で人が死んでいると通報が有った。隣人の農夫は惨殺されその妻はロープで首を絞められていた。犯人は強盗目的と思われるが、老夫婦には狙われる様なお金は持っていなかった。

 容姿は中年のそのままで趣味はクラッシックオペラ、妻からは離婚を宣言され別居中で未練タラタラ、父親は痴呆症、娘も寄り付かない悲惨なプライベートだが、捜査に手抜きは無く不眠不休で犯人を探す執念は凄いヴァランダー刑事。

 惨殺された農夫は戦後、闇の商売や違法な商売で相当の金を蓄えた上に絞殺された妻以外に子供を産ませた女が居る事が判明した。金目当ての犯行か、

 この事件は1990年に起こった設定です。既に難民(ポーランド等の東欧)流入が社会問題化しており、田舎町イースタでも例外でなく大きな問題だった。この物語はスェーデンの難民問題を背景に様々な事件が発生し難民もスェーデン人も加害者であり被害者なのだ。

 スェーデンは日本の1.2倍位の国土に1,000万人が暮らしてます。分母が小さいのに積極的に移民受け入れをし首都ストックホルムでは人口の2割が移民で人種の坩堝と化してます。
 本作では、難民、移民を排斥するとか受け入れるとかの政治的な話題は一切有りません。

 派手さは無く淡々と物語は進行しますが、駄目な中年ヴァランダーから目が離せない面白さが有ります。

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2021年09月08日

Posted by ブクログ

意外な展開を期待してたのでちょっと物足りない。。
携帯がない時代の刑事は大変だな。
何故残虐な殺され方をしたのかがスッキリしない。
怨恨の線を匂わせてたけど結局お金のありかを拷問して吐かせたってことなのか。
次作も読むかは迷う。

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2020年06月26日

Posted by ブクログ

刑事ヴァランダーシリーズ第一作目。北欧発の作品だけあって、移民政策に排斥運動といったデリケートな社会問題に鋭く切り込んでいるが、テーマが先行し過ぎて警察小説としては些か盛り上がりに欠け、作中での問題提起も突発的で散乱しており、まだどうにもこなれていない印象が強く残る。展開そのものはスピーディーで読み易いが、単巻でこの情報量だと上下巻のシリーズ後作は一体いかほどの密度だろうか。直情的なのに内省的なクルトのキャラクターは面白いし、イースタ署のチームワークも見所だが、このシリーズを追うべきか否か未だ目下思案中。

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2020年04月11日

Posted by ブクログ

うーん、あんまりおもしろくなかったな。
シリーズものだけど、他のは読まないかな。

主人公に魅力を感じられなかった。

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2018年05月30日

Posted by ブクログ

12月-8。3.0点
老夫婦が惨殺される。妻は死亡前に「外国の」と言い残す。
等身大の刑事、ヴァランダーが捜査に。
元妻に未練たらたら、娘は問題児。
地道な捜査で、犯人逮捕。
次作に期待。

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2018年01月09日

Posted by ブクログ

期待したシリーズだけれど、正直途中が退屈だった。

北欧に漂う様々な社会問題の一旦を垣間見ることができるが、続けて北欧ミステリーを読んできたので少し辟易気味。何もかもがうまくいく理想国などないことを痛感させられるのは少しばかり辛い。

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2016年02月08日

Posted by ブクログ

不勉強でスウェーデンに深刻な移民問題があることを知らなかったけど、警察小説として楽しく読めた。
主人公のクルトは仕事はできるものの、妻とは離婚、娘にも見放され、父親は認知症の症状が出始めている。
おまけに気になる美人検察官は既婚者で酒を飲んだ挙句に大失敗もしてしまうのだけど、そのダメっぷりが人間くさくて良かった。
翻訳の文章が少し固いのが気になるけど、キャラは好きだから続きも読んでみたい。

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2015年01月08日

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