【感想・ネタバレ】緑衣の女のレビュー

あらすじ

男の子が住宅建設地で拾ったのは、人間の肋骨の一部だった。レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、通報を受けて現場に駆けつける。だが、その骨はどう見ても最近埋められたものではなさそうだった。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近には英米の軍のバラックもあったらしい。サマーハウス関係者のものか。それとも軍の関係か。付近の住人の証言に現れる緑のコートの女。封印されていた哀しい事件が長いときを経て明らかに。CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞をダブル受賞。世界中が戦慄し涙した、究極の北欧ミステリ登場。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

一人の女性とその家族が暴力に苦しめられた一生と犯罪に至る様子を描いていた。

あぁ、読後がなんとというか。
苦しい。

「ドメスティックバイオレンス」はどうしたら解決できるのか。周りや警察に助けられて、はい終わり。とはならないのだなとこの本で再認識。
「被害者が犯罪者より悪人であることもある」という作者の言葉(あとがき)がとても印象的だった。

この世からなくなることのない問題。トマスが同じような人生を送ってしまったことや、シモンの一生が父親の影響で180度変わってしまったこと。それが悔しいし、切ない。
非常に考えさせられる一冊であった。

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2025年03月05日

Posted by ブクログ

なんとアイスランドの推理小説作家。同国では姓名が無いとのこと!!!
少し暗いけど、その国の様子がわかり、とても面白かった。

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2022年12月07日

Posted by ブクログ

この作者の本で読んだのが2作目。

2つの時間軸で物語が進んでいき、少しずつ真相が明らかになっていく感覚はとても良かった。

1作目と同じように、日本とアイスランドで国は違うが、刑事たちがコツコツと足で真実に近づいていく感覚は共通しているように思えた。

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2022年05月06日

Posted by ブクログ

「家族」とは何か……。

子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。

登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。

「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち。
読み進めることすらつらくなるような描写に、訳者は日本語にすることを一度はためらったものの、作者の「表現者としての義務」という強い意志を受け入れることで、そのまま翻訳したとのこと(訳者あとがき)。
現実の事件で「力と言葉の暴力による支配」を、細かく文章化し公表をするのは、ためらいが生まれる。きっと「DV」という名を得るに至った陰に、この作者のような「強い意志」があったことだろう。

アイスランドの厳しい自然の中、寒い冬の海や吹雪の中に消えたといわれる人々。
主人公エーデンデュルにも消すことのできない自責の念と悲しみがあった。
これらのことは、自然の一部のように「すべてがあきらかになることはない」と……。

「家族」という問いかけと「神隠し」の正体も漠然とする横溝正史的な物語に、日本人の心に残る何かがある気がする。

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2022年02月07日

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ネタバレ

アイスランドを舞台としたミステリー。
前作の『湿地』はその一冊しかないときに読んだのでその続きますと知っていたけれどタイミングがズレてしまって残念。
満を持してついに!積ん読解消。
北欧のミステリー、このアイスランドも。

さて、物語は…
並行して描かれる家族のストーリーは余りにも暴力的で辛く悲しい

みつかった昔の人骨の正体と、ストーリーとどう繋がってゆくのか、ページを捲る手がとまらなかった。

シリーズなのでまた、読み進めたいと思う。

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2022年02月06日

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インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の子供との悲惨な関係と彼は対峙する。そしてこの地で封印されていた哀しい事件が明らかになる。一方で妻や子供に肉体的精神的に残虐な暴力をふるう男の家族の物語が進む。親に虐げられた子が大人になって同じように自分の子を虐げる例がある。そして不幸から抜け出せない人たち。エーレンデュルのシリーズは家族の崩壊と再生の物語だ。そしてラストは切なく優しい。今回も希望の中で話は終わるがエーレンデュルと家族の問題が解決するわけではない。これもまた繰り返すのだが少しずつでも光の方へ進んでいると読者が信じたくなる余韻を残す。そこがいい(≧∀≦)

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2020年11月16日

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男の子の拾った骨がいったい誰の骨なのか。最近のものではないということしかわからず、古代のものの可能性もあり考古学者が時間をかけてゆっくり掘り出す間、エーレンデュルたちが過去をすべて掘り起こしていく手法は見事でかなり読みごたえがありました。絶対この人だと思ったひとだったかどうか、最後までぐいぐい引っ張られて読めました!
さて、次は読書会課題の『声』に真剣に取りかかるぞ!!

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2018年09月28日

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「緑衣の女」、ミステリというよりは文芸作品といった趣き
トリックを明らかにしていくというよりは、人間の心のひだを探ってく感じでしょうか
ひたひたと人間の深部に分け入っていく
そうした社会や人間の暗さ・よどみを、淡々と語る怖さがあります

衝撃的な出来事も(ミステリの事件としては地味ですが)、表面的な説明に終わらないのが、類書と画するところ
第三者からしたらどうでもないことが、当事者にとっては、いびつに強烈に印象に残ったりする
そんな感性的な描写もあって、惹きつけられました


個人的に残念に感じたのは、モチーフとして「緑衣の女」の印象が薄かった点
「緑衣」にも、何かしらの意味があるとよかったですし
せっかく神秘的なタイトルなので、「緑衣の女」が出たり消えたり、この人かと思ったらあの人だったり、みたいな揺らぎがあるとよかったな、、、北欧、アイスランド、幽玄の国・・・といったイメージで


実際には、作品で揺らいでいたのは、「緑衣の女」ではなく「家族」でしたね
いろんな形の家族、過去を生きていた家族・これからなるかもしれない家族、様々な家族が交錯する中で、もろく壊れてしまったり、悲惨な中にも気高い強さを見せたり
人間のダメさ、弱さ、美しさ、尊さが、揺らいでは陰り、輝き、、、

志の高い作品でした

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2018年03月02日

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ネタバレ

ダガー賞読書会のための読書その1。
アイスランドのミステリは初めて読みました。
北欧ミステリのほかの国々と同じく、こちらも凄惨な生々しさでした。読み終わっても、心が重いままです。

発掘される人骨の事件、捜査の指揮を執るエーレンデュル捜査官の娘さんを中心とする家族の話、大戦中に起こっていると思われるとある家族が受けているドメスティックバイオレンス。
この3つの話が次々に描かれ、どう絡み合っていくのか…引き込まれました。

体に受ける暴力も、心に受ける暴力も、何もかもを壊してしまう。暴力をふるっていた人も、壊された人だったのがわかったとはいえ。。。
取り戻すために払った代償は大きいし、とある関係は取り戻せるのか?と思います。
重苦しいけれど、彼らのこれからが気になりました。

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2025年09月30日

Posted by ブクログ

前作もだけど悲劇的で泣きそうになる。
埋められた人骨と緑のコートの女、この二つがどう繋がるのか。
その謎を解くにはある一家の物語を知る必要がある。
でもこれが本当に辛くて。
いわゆるDV家庭で、これでもかってぐらい暴力描写がある。
一度も妻の名前を呼ぶことなく、ひたすら相手を貶める言動をする。
それを子供の前でわざとやって見せる。
どう見ても精神的な殺人で、こんなの子供から見たら地獄でしかない。
作品としてはどっぷり浸かれて良いのだけど、読んでる間ずっと悲しかった。
親子関係って簡単には切れないから、しんどいよね。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

事件の発端は幼児が遊んでいた人骨。それは60~70年前のもので捜査が始まる。捜査官エーレンデュル。娘は薬中毒で妊婦。暴力夫から逃げ事故にあい入院。事件調査の中で登場する暴力夫に耐える妻と家族の物語。そして現場付近に現れる緑のコートの女…。DVは精神的に人を殺す。単純に「逃げればいいのに」と思っていた自分を猛省するリアルさだった。いつ殴られるか気が気でなくドキドキしながら読み進めた先で泣かされてしまった。人間ドラマが精緻に描かれていて作品としての一体感がすごかった。湿地もその他の作品も読んでみようと思う。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

床に座った子どもがしゃぶっているものを見て、若者はすぐにそれが人間の骨だとわかったー

冒頭から一気読み確定パターン…(笑)

住宅建設地から見つかった人骨の一部
既に60年以上も経過した古いものだった

骨の主は誰なのか?なぜそこに埋められているのか?真相を追う捜査官たちの物語…
このシリーズの主人公でもある犯罪捜査官エーレンデュルの過去と家族の物語…
第二次世界大戦の頃のある家族の哀しい物語…
これらが絶妙なバランスで絡み合みながら、物語は進む!
ミステリーとはいえ、特にトリックがある訳ではない
それぞれの登場人物に深く深く心を寄せながらどっぷりと物語に浸っていくのだ…
もちろん、最後には全ての謎がとける
ずっしりと深い余韻を残して…

この作品を読むまで、恥ずかしながらアイスランドという国について無知だった
北海道より少し大きな島に人口は約36万人
1940年6月にデンマークがナチスドイツに占領されるとイギリス軍が上陸
一年ほどすると入れ替わるようにアメリカが進駐してくる…
そんなアイスランドの歴史がこの作品に深く関わる

ひとつの小さな家族の幸せが社会の幸せ、それが国の幸せ、そしてそれが世界の幸せ…
そう願いたい!

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2025年02月26日

Posted by ブクログ

重く積み重なってゆくようでもあり、深くくい込んでゆくようでもあり。
激しい暴力に、精気を失い、どんどん小さく縮こまってゆくような彼女。
そばには3人の子供たち。
一方、娘の状況が、そして過去が影を落とす捜査官エーレンデュル。
人はみななにか重いものを背負っている、とは彼の言葉である。

静けさの中にあるような激しさ。
ミステリ―ではなかったとしても、引き込まれていったのではないだろうか。
「湿地」もう一度、読み直してみたくなった。

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2024年10月09日

Posted by ブクログ

アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの長篇ミステリ作品『緑衣の女(原題:Grafartogn)』を読みました。
アーナルデュル・インドリダソンの作品は5年前に読んだ『声』以来なので久し振りですね。

-----story-------------
2003年ガラスの鍵賞、2005年CWAゴールドダガー賞受賞

男の子が拾った人間の骨は、最近埋められたものではなかった。
発見現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近には英米の軍のバラックもあったらしい。
付近の住人の証言に現れる緑のコートの女。
封印されていた哀しい事件が長いときを経て捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。
CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞を受賞。
世界中が戦慄し涙した、究極の北欧ミステリ登場。
訳者あとがき/文庫版に寄せて=柳沢由実子
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2001年(平成13年)に刊行された作品……エーレンデュル警部シリーズの第4作で、翻訳された作品としては2作目のようです。

幼い男の子が住宅建設地で拾ってきたその骨は、なんと人間の肋骨の一部だった……レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、親からの通報を受けて急ぎ現場に駆けつける、、、

だが、その骨はどう見ても最近埋められたものではなさそうだった……考古学者によると、その骨は埋められてからすくなくとも50年は経っているらしい。

現場近くにはかつて数件のサマーハウスが建っていて、付近にはイギリスやアメリカ軍のバラックもあったらしい……サマーハウスに住んでいた誰かのものか、、、

それとも軍の関係者か……エーレンデュルら捜査陣が調べていくと、付近の住人の証言の端々に緑のコートの女が現れる。

そして、封印されていた哀しい事件が長いときを経て明らかに……人はなぜここまで酷くなれるのか、そしてなぜここまで毅くなれるのか。

土の中に埋められていた骨の主の正体を追うレイキャヴィク警察の捜査、ある家族のドメスティック・バイオレンス、そして、娘エヴァ=リンドの危機をきっかけに語られるエーレンデュルの過去……物語は3つの方向から語られます、、、

閉ざされた家の中で夫が妻に向かって振るう暴力シーンの凄まじさ……殴られ、蹴られ、精神が壊れていく様は目をそらしたくなるほどですが、その心理状態の描写がリアルで納得感がありましたね。

そして、エーレンデュルが自らの過去を振り返りつつ、限られた証言や証拠を一つひとつ丹念に確認し、過去に起こった事件を再現していく展開に、ぐいぐいと物語に惹き込まれました……全体的に暗いトーンの物語で陰惨な場面もあるのですが、それでもページを捲る手を止めることができない、そんな作品でした、、、

家族の在り方、そして、夫婦とは、親子とは……考えさせられることの多い作品だったと思います。

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2024年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 家族を持つ前に二の足を踏む男。家族を持ちたかったが、それが叶わず身を投げる女。家族になったが、それを自分で壊してしまった主人公。作者が〝子供を大切にし、愛すること。それだけが親の責務である。“と訳者に力を込めて語ったという、その親の責務が果たせず、家族を粉々に打ち砕き破壊し尽くす父親。人骨発見を機として、それぞれの家族が交差しながら、重いテーマであるドメティック・バイオレンスが、言葉を尽くして書き切られていく。女性に対しての暴力の描写がリアルで、同じ女性として、読み手を辛くさせる。
 今日もどこかに、身を守るために敵を屍にして穴に埋めざるを得ない状況にいる人が、心の中で握ったナイフに力を込めたり、緩めたりして苦しんでいるのかもしれない。
 殺しが単なる犯人探しの謎解きに終わらないのが、テーマが重い北欧ミステリーの醍醐味である!

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2023年09月21日

Posted by ブクログ

ミステリーですが、驚きの結末! 的なミステリーではありません。暗く陰鬱な雰囲気が全編を覆っています。しかし先が気になって読んでしまう。上手いと思った。しかし。DVには反吐しかでないね。皆死刑でいいと思う。

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2023年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エーレンデュル捜査官シリーズの第二弾。

子供の誕生日会が騒々しく盛り上がる最中、
人骨が発見される。
人骨は古いもので、発掘部隊がゆっくりと骨を取り出していく。
遺体は近くのサマーハウスに住んでいた家族の誰かなのか、
フィアンセを残して行方不明となった女性なのか。

いわゆるコールドケース、
過去の事件を掘り起していく筋立ては好きだし、
過去と現在を行ったり来たりする構成にもついていけるのだが、
何か入れ込めない。

妊娠中のエーレンデュルの娘とはせっかく心が通じたと思ったのに、
また家を出て行ってしまい、
発見した時には胎盤剥離で胎児を失い彼女自身も意識不明となったり、
そのせいで離婚した元妻に罵倒されたりと、
私生活がひどいからか。

同僚のオーリも同棲している恋人がいるか、
結婚に踏み切ることができず、
もう一人の同僚は、病室にいた老人に質問を繰り返し、
酸素マスクでかろうじて生きていたその老人を死なせてしまうと、
誰にも感情移入ができないせいか。

前作で意味ありげに登場していた昔の上役は出てこないし、
エーレンデュルが幼いころ、
吹雪の日に弟とはぐれ失ってしまったことが語られ、
霊能者と出会うが唐突。
もちろん、事件とは関係ない。

アイスランドでは爆発的な人気らしいけど、
どうも自分にはその魅力が判らない。

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2022年11月21日

Posted by ブクログ

前作に引き続き陰鬱なアイスランドの曇り空の下で展開される物語のイメージだけど、全然嫌いじゃないし、むしろ好き。
DVの描写はキツかったけど、おそらくこれは最後には……?みたいな推理も読みながらできるし、エーレンデュルの過去にも触れていて、一度も飽きなかった。

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2022年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

家族の件など、個人的な苦悩を抱えながらも、捜査官として事件の真相を黙々と追い求めるエーレンデュルの静かな力強さが良い。捜査の進展と並行してある家族の物語が語られますが、描写こそ淡々としているのに、その悲惨さがひしひしと伝わってきて、読んでいてしんどいのだけど目が離せなかった。

ただ捜査していた2つの可能性のうち、片方の√が終盤で割とあっさり無関係とわかってフェードアウトしたのは少し拍子抜け。あと『湿地』のときも思ったけど、締めのラストシーンだけがなんだか妙にメロドラマっぽい。あのラストも、今作を読めば決して安易な結末でない(むしろ人間そんなに簡単には生まれ変われないよ、という事を残酷な形で突きつけている)のはわかるのですが、なんとなく最後の締め方がそれまで語られてきたことに比べてサラッとしてるというかまたかー的な感じ。でも、もしかしたらそれが狙いなのかも?という気がしなくもないです。

トータルではとても面白かったです。
このシリーズはひととおり読みたいと思います。




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2022年01月07日

Posted by ブクログ

読後感は、ミステリとかクライム・ノヴェルよりも、ディケンズやデュマに近い気がしました。物語の締め方が上手いですね。あと、一文一文が割と短くて簡潔で、読みやすかったです。

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2022年01月19日

Posted by ブクログ

 本作は、2003年ガラスの鍵賞と2005年ゴールド・タガー賞受賞の2冠の作品で、''湿地''に次ぐエーレンデュル捜査官シリーズ第2段です。

 ・ガラスの鍵賞とは、国際推理作家協会北欧支部の五カ国アイスランド・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・ノルウェーでスカンジナヴィア推理作家協会が最も優れた推理小説に贈る文学賞です。

 ・ゴールド・タガー賞とは、英国推理作家協会(CWA)が選ぶ最優秀長編賞です。ちなみに次点作品にはシルバー・タガー賞が贈られる。

 レイキャヴィクから東にある新興住宅地の建築現場の地層から人骨が発見された。

 肋骨をしゃぶっていた一歳の赤ちゃんが最初の関係者だ。凄いぞ、骨つきチキンと間違えたのか原始人のDNAが覚醒したのか…のっけから驚きでこの後の展開が楽しみだ。

 白骨の洋服の朽ち果て具合から70年近く前の遺体だとの想定でエーレンデュル、エリンボルク、シグルデュル=オーリの3人は当時の付近の住人関係者を探し始める。

 白骨の発掘が遅々として進まない中で当時そこに住んでいた家族が浮かび上がった。常習的にDVをする夫に怯える妻、障害を持つ長女と2人の男の子の5人家族。また、その家族に家を貸している資産家の婚約者も当時行方不明でこちらも被疑者として捜査対象となった。

 白骨は、不幸な家族の1人なのか? 資産家のフィアンセなのか? 単なる行方不明者の遺体か?

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2021年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の三分の一の面積で、人口30万人の国、アイスランドが舞台。
火山と温泉の国というイメージだったのだけど、この作品を読むと、薬物依存、幼児虐待、DV等、荒廃した社会が見え隠れする。
とはいっても殺人事件は年に2~3件しかないのだそうだけど。

新興住宅街で発見された60~70年前の人間の白骨。
のDVで、心も体もボロボロにされる家族。
流産がもとで意識不明状態の娘を見舞いながら捜査の指揮をとるエーレンデュル。

3つの話を柱にストーリーは進むが、DVの部分を読むのがもう辛くて辛くて。
人としての尊厳を踏みにじられ、子どものためにだけ生きる母。
そんな母を見てみぬふりをすることでしか身を守ることの出来ない子どもたち。
ようやく幸せになれるかと思えるような出来事のあとの、絶望的な展開。

捜査部分は展開がゆっくりです。
だって60~70年前の人骨が誰のものかって、関係者すら死んでしまっているかもしれない年数。
そして、その当時って第二次大戦中で、公的書類は紛失しているし、田舎から食い詰めた人たちがレイキャビクに殺到し、イギリス軍やアメリカ軍が駐留し…とにかく社会全体が混乱している時代だった。
そんな時代の手がかりを捜すことの困難。

そしてエーレンデュル。
妻と幼い子ども二人を残して家を出た彼は、自分を探し当て合いに来た娘からいつも家族を捨てたことを罵られている。
しかし初めて娘が「助けて…」と電話がくる。
薬物中毒者の娘は流産が原因で意識不明の重体。
娘の枕元でエーレンデュルが語る、彼にまとわりついて離れない過去。
これがまたアイスランドならではっていう…。

それでも最後に娘が目を開ける。
重くて苦しい話だったけれど、次巻は希望が持てる展開になるといいな。

ところで考古学者が出てくるたびに引っかかるんだけど、スカルプヘディンって名前がどうしても育毛剤っぽく感じてしまう。
私だけ?

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2020年11月26日

Posted by ブクログ

「湿地」に続く二作目だけれど、アイスランドという国は特に馴染みがないせいか、「湿地」でも最初は読みにくかった。
特に名前や土地に着く「ヴ」という音のつながりが、遠い国を実感させた。
「湿地」を読むのに、改めて地図帳の北欧というところを選んで、拡大されたページを見てみた。北極圏にあるグリーンランドに近い寒いところらしいと思っていたが、日本の1/3くらいの広さを持つ丸い島国で、随分進んだ文化や歴史のある国だと知った。
あまり深入りして調べだすと、夢に見たり、行ってみたくなるので(行けはしないのに)考えるのも程ほどにして、話を楽しんだ。

この「緑衣の女」は訳者のあとがきによると、激しいDV描写があるので、出版についてはその部分が少し気がかりだったそうだ。そういわれるとなかなかハードな部分がある。家庭内の暴力が繰り返されて、心身ともに傷つけられる母親の姿は、三人の子どもの精神まで損なってしまう。

でも、コアなハードボイルドなどを読み出すと、現実として身近には考えない、やはりどこか絵空事で、ストーリーの一部でしかないと思うようになる。現実に身近にあるかもしれないとは思いつつ、最近なニュースなどを見ると平和な世界がほころびてくるようで恐ろしくなるところもあるが。

作り話だと割り切れない世代には訳者のような気配りもいるかもしれない。



アイスランドでは、第二次世界大戦の後の混乱が終わって、時代とともに生活が変化し、街が郊外に広がりだす。その新興住宅地の工事現場の穴から、肋骨が折れ、宙に腕を伸ばした白骨が見つかる。
60年ほど前のものらしい。戦中から戦後のものかもしれないが、当時このあたりはイギリス軍の後アメリカからの兵士が来てバラックを建てていた。現在は全て取り払われて家が建ち始めている。

二作目でちょっと馴染みになったエーレンデュル捜査官と同僚が調べ始める。

現代の犯罪捜査の様子と、戦後、骨が埋められた時代にさかのぼった話になっている。

バラックから離れた古い一軒屋で、繰り返されていたDVの様子や、その家庭の話が同時に進んでいく。

それまで話されなかったエーレンデュルの悩み、荒れた家庭の様子も、明らかになっていく。

骨は誰なのか、聞き込んでいるうちに浮かんでくる影は見えるが、確定するには時間がたちすぎている。

60年(ほど)という長さが丁度いい。当時を知る人々が年老いてしまってはいるが少しは生き残っている。聴き取った話を繋ぎ合わせて現代に結んでいく。

その捜査過程の、紳士的な警察官も、協力する周りの係官の働きもいい。
昔ひとつの家庭があって、それが惨めで恐ろしい形で崩壊していくさま、母親が犠牲になって耐え抜く様子がリアルで、哀しく腹立たしい。


読みにくい土地や人名に慣れると、話に引き込まれる。「湿地」とこの作品で賞をダブルで受賞しているそうだが、物語としては「緑衣の女」がこなれていて、人物の描写も細やかで面白かった。


その前に「冬のフロスト」を読み始めていたが、国民性というか、キャラの違いが面白い。周りが取り散らかって言葉も汚い、それでいて気持ちの優しいフロストに比べて、エーレンデュルと同僚たちの捜査は繊細で思いやりもあり、それぞれ個性的で次第に馴染んできた。

フロストをおいて読んでも後悔しないくらい、読み応えがあった。

一風変わった犯人探しだけでない味わい深いところがとてもいい。

訳者のあとがきもとても参考になった。

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2020年01月11日

Posted by ブクログ

1月-3。4.0点。
エーレンデュル警部第二弾。
住宅街から、数十年前の人骨が。殺害されたと思われ、捜査。
重苦しい展開、DVの描写もリアル。人骨の正体が終盤に何度も、捜査陣の予想を覆す。

面白い。心を掴まれるような重さだが、一気読み。
次作も期待。

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2018年01月26日

Posted by ブクログ

住宅建設現場で死後100年弱の人骨が発掘されたが、その人骨の身元を調査するうちに、大昔の家庭内暴力事件が浮かび上がってきた…というアイスランドの警察小説。
前作に引き続き、主人公はレイキャヴィク警察のエーレンデュル捜査官だが、エーレンデュルの娘は妊娠しているのにドラッグ中毒で昏睡しているし、離婚した元妻がブチ切れて怒鳴りちらしてくるし、サイドストーリーとしてはなかなかの受難続きなのに、メインストーリーである人骨にまつわる家庭内暴力事件もかなり悲惨。
読みやすいが、このシリーズが今後もこの陰鬱路線を続けていくなら、追いかけるのを躊躇してしまいそう。

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2025年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たしかに人気作家なだけあり、巧みな構成と筆力を感じる。
死体がまず見つかって、現在と過去の話が交互に織り混ざって進むが、死体は誰なのか、わかりそうでわからない。誰かわかった後も、誰が殺したのか、どうしてそうなったのか、種明かしは焦らされて、先が気になってしまう。

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ。込み入ったトリックや推理を楽しむものでは無いが、数十年前の白骨死体の謎が、丁寧に解き明かされていく。アイスランドの空気感も楽しめる北欧ミステリー。

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2021年05月05日

Posted by ブクログ

 ミステリを通して社会を描く。最近のミステリの傾向だが、北欧ミステリはマルティン・ベックシリーズを筆頭にそうした傾向が強く、捜査官エーレンデュルを主人公とする本シリーズも同様の指向性を持っている。

 冒頭、人骨が発見される。一点、夫から妻に対する暴力の描写。
 骨の主は誰なのか、どうして埋められたのか、事件性はあるのか、捜査活動が進んでいく。一方で凄まじい家庭内暴力。人が人に暴力を振るい屈従に追い込んでいく様子がこれでもかと描かれる。
 そしてまた、捜査の責任者、主人公エーレンデュルの痛々しい過去が少しずつ明らかにされていく。破綻した家庭生活と捨ててしまった子供たち。ドラッグに身を持ち崩した娘が昏睡状態に陥り、その安否を気遣いつつ捜査をしていかなければならない苦悩。
 現在の捜査によって、過去の家族を巡る物語が掘り起こされ、あまりにも哀しい真実が最後に明らかになる。

 読み応えあり。

 

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2021年01月05日

Posted by ブクログ

なぜ憎い夫と赤ん坊を同じ穴に埋めたのか。そこだけ違和感。
まあ母親はろくに動けなかっただろうし子供達で穴を二つ掘るのは無理だっただけかも。

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2020年07月19日

Posted by ブクログ

新興住宅地で発見された人骨、エーレンデュルに降りかかる家族問題、そしてとある一家の記憶。序盤から前作「湿地」を凌ぐ仄暗さが漂う今作もアイスランドが歩んだ歴史に端を発する哀しい因果の物語。前作の警察小説然とした犯人捜しと打って変わり、埋もれた白骨遺体の身元捜索という地道な展開だが、現在と過去、そこにエーレンデュルのアイデンティティをも絡めた人間ドラマの構築がお見事。勿論、ミステリーの妙もしっかりあるし、ラストシーンが醸す余韻も味わい深い。ローカルで陰鬱な世界観だが、漆黒の暗闇に射す一縷の光は読者の心を打つ。

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2020年03月22日

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