【感想・ネタバレ】緑衣の女のレビュー

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Posted by ブクログ 2017年06月19日

前作同様、ミステリーなのですが、人間関係や心情が丁寧に描かれていて話に引き込まれます。話の題材がDVなので暗いし痛いです。心の奥底に重い打撃をくらっているような感じです。犯人が誰かということよりも何故そのような事件が起こったのかというストーリーを追っていく事に重点がおかれています。犯人よりも被害者の...続きを読む方が悪人だというケースもある、という作者の言葉には同感です。そして、何より翻訳が読み易いです。海外ミステリー苦手な方にも是非チャレンジして頂きたい。

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Posted by ブクログ 2022年12月07日

なんとアイスランドの推理小説作家。同国では姓名が無いとのこと!!!
少し暗いけど、その国の様子がわかり、とても面白かった。

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Posted by ブクログ 2022年05月06日

この作者の本で読んだのが2作目。

2つの時間軸で物語が進んでいき、少しずつ真相が明らかになっていく感覚はとても良かった。

1作目と同じように、日本とアイスランドで国は違うが、刑事たちがコツコツと足で真実に近づいていく感覚は共通しているように思えた。

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Posted by ブクログ 2022年02月07日

「家族」とは何か……。

子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。

登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む...続きを読む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。

「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち。
読み進めることすらつらくなるような描写に、訳者は日本語にすることを一度はためらったものの、作者の「表現者としての義務」という強い意志を受け入れることで、そのまま翻訳したとのこと(訳者あとがき)。
現実の事件で「力と言葉の暴力による支配」を、細かく文章化し公表をするのは、ためらいが生まれる。きっと「DV」という名を得るに至った陰に、この作者のような「強い意志」があったことだろう。

アイスランドの厳しい自然の中、寒い冬の海や吹雪の中に消えたといわれる人々。
主人公エーデンデュルにも消すことのできない自責の念と悲しみがあった。
これらのことは、自然の一部のように「すべてがあきらかになることはない」と……。

「家族」という問いかけと「神隠し」の正体も漠然とする横溝正史的な物語に、日本人の心に残る何かがある気がする。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月06日

アイスランドを舞台としたミステリー。
前作の『湿地』はその一冊しかないときに読んだのでその続きますと知っていたけれどタイミングがズレてしまって残念。
満を持してついに!積ん読解消。
北欧のミステリー、このアイスランドも。

さて、物語は…
並行して描かれる家族のストーリーは余りにも暴力的で辛く悲しい...続きを読む

みつかった昔の人骨の正体と、ストーリーとどう繋がってゆくのか、ページを捲る手がとまらなかった。

シリーズなのでまた、読み進めたいと思う。

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Posted by ブクログ 2020年11月16日

インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて...続きを読む、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の子供との悲惨な関係と彼は対峙する。そしてこの地で封印されていた哀しい事件が明らかになる。一方で妻や子供に肉体的精神的に残虐な暴力をふるう男の家族の物語が進む。親に虐げられた子が大人になって同じように自分の子を虐げる例がある。そして不幸から抜け出せない人たち。エーレンデュルのシリーズは家族の崩壊と再生の物語だ。そしてラストは切なく優しい。今回も希望の中で話は終わるがエーレンデュルと家族の問題が解決するわけではない。これもまた繰り返すのだが少しずつでも光の方へ進んでいると読者が信じたくなる余韻を残す。そこがいい(≧∀≦)

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Posted by ブクログ 2018年09月28日

男の子の拾った骨がいったい誰の骨なのか。最近のものではないということしかわからず、古代のものの可能性もあり考古学者が時間をかけてゆっくり掘り出す間、エーレンデュルたちが過去をすべて掘り起こしていく手法は見事でかなり読みごたえがありました。絶対この人だと思ったひとだったかどうか、最後までぐいぐい引っ張...続きを読むられて読めました!
さて、次は読書会課題の『声』に真剣に取りかかるぞ!!

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Posted by ブクログ 2017年08月18日

面白かった。
ぜひ続編も読みたい(文庫で)

どうでもいいけど、部下による主人公エーレンデュルへの嫌味・皮肉が
意地悪過ぎて気になる。アイスランド人にとっては普通のコミュニケーション?

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Posted by ブクログ 2016年09月21日

[埋めたのは、骨か心か]アイスランドの首都・レイキャビクの一角で人骨が発見される。その骨が誰のものかを警察官のエーレンデュルは探し始めるのであるが、 発見現場から少し離れたところに「緑衣の女」を見たという一人の男の証言から、事態は急展開を見せ始め......。著者は、本作でイギリスの権威あるCWAゴ...続きを読むールドダガー賞を受賞したアーナルデュル・インドリダソン。訳者は、本作を翻訳することをある理由から直前まで悩んだという柳沢由実子。


まず描写の鮮烈さが印象に残る作品。例えば家庭内暴力のシーンがいくつか出てくるのですが、思わず状況を眼前に想像して目を背けたくなってしまうほど。また、その鮮烈さを見事に訳しきった柳沢さんの翻訳力も素晴らしいものだと思います。もちろん、ミステリーとしての面白さはバッチリですので、ページを繰る手が止まらなくなるのではないでしょうか。

〜「時間は」と、エーレンデュルは赤ん坊の上にシーツをそっとかけながら言った。「時間はどんな傷も癒しはしない」〜

評判の高さは聞いていましたが、そのとおりでした☆5つ

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Posted by ブクログ 2018年03月02日

「緑衣の女」、ミステリというよりは文芸作品といった趣き
トリックを明らかにしていくというよりは、人間の心のひだを探ってく感じでしょうか
ひたひたと人間の深部に分け入っていく
そうした社会や人間の暗さ・よどみを、淡々と語る怖さがあります

衝撃的な出来事も(ミステリの事件としては地味ですが)、表面的な...続きを読む説明に終わらないのが、類書と画するところ
第三者からしたらどうでもないことが、当事者にとっては、いびつに強烈に印象に残ったりする
そんな感性的な描写もあって、惹きつけられました


個人的に残念に感じたのは、モチーフとして「緑衣の女」の印象が薄かった点
「緑衣」にも、何かしらの意味があるとよかったですし
せっかく神秘的なタイトルなので、「緑衣の女」が出たり消えたり、この人かと思ったらあの人だったり、みたいな揺らぎがあるとよかったな、、、北欧、アイスランド、幽玄の国・・・といったイメージで


実際には、作品で揺らいでいたのは、「緑衣の女」ではなく「家族」でしたね
いろんな形の家族、過去を生きていた家族・これからなるかもしれない家族、様々な家族が交錯する中で、もろく壊れてしまったり、悲惨な中にも気高い強さを見せたり
人間のダメさ、弱さ、美しさ、尊さが、揺らいでは陰り、輝き、、、

志の高い作品でした

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年09月21日

 家族を持つ前に二の足を踏む男。家族を持ちたかったが、それが叶わず身を投げる女。家族になったが、それを自分で壊してしまった主人公。作者が〝子供を大切にし、愛すること。それだけが親の責務である。“と訳者に力を込めて語ったという、その親の責務が果たせず、家族を粉々に打ち砕き破壊し尽くす父親。人骨発見を機...続きを読むとして、それぞれの家族が交差しながら、重いテーマであるドメティック・バイオレンスが、言葉を尽くして書き切られていく。女性に対しての暴力の描写がリアルで、同じ女性として、読み手を辛くさせる。
 今日もどこかに、身を守るために敵を屍にして穴に埋めざるを得ない状況にいる人が、心の中で握ったナイフに力を込めたり、緩めたりして苦しんでいるのかもしれない。
 殺しが単なる犯人探しの謎解きに終わらないのが、テーマが重い北欧ミステリーの醍醐味である!

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Posted by ブクログ 2023年02月25日

ミステリーですが、驚きの結末! 的なミステリーではありません。暗く陰鬱な雰囲気が全編を覆っています。しかし先が気になって読んでしまう。上手いと思った。しかし。DVには反吐しかでないね。皆死刑でいいと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年11月21日

エーレンデュル捜査官シリーズの第二弾。

子供の誕生日会が騒々しく盛り上がる最中、
人骨が発見される。
人骨は古いもので、発掘部隊がゆっくりと骨を取り出していく。
遺体は近くのサマーハウスに住んでいた家族の誰かなのか、
フィアンセを残して行方不明となった女性なのか。

いわゆるコールドケース、
過去...続きを読むの事件を掘り起していく筋立ては好きだし、
過去と現在を行ったり来たりする構成にもついていけるのだが、
何か入れ込めない。

妊娠中のエーレンデュルの娘とはせっかく心が通じたと思ったのに、
また家を出て行ってしまい、
発見した時には胎盤剥離で胎児を失い彼女自身も意識不明となったり、
そのせいで離婚した元妻に罵倒されたりと、
私生活がひどいからか。

同僚のオーリも同棲している恋人がいるか、
結婚に踏み切ることができず、
もう一人の同僚は、病室にいた老人に質問を繰り返し、
酸素マスクでかろうじて生きていたその老人を死なせてしまうと、
誰にも感情移入ができないせいか。

前作で意味ありげに登場していた昔の上役は出てこないし、
エーレンデュルが幼いころ、
吹雪の日に弟とはぐれ失ってしまったことが語られ、
霊能者と出会うが唐突。
もちろん、事件とは関係ない。

アイスランドでは爆発的な人気らしいけど、
どうも自分にはその魅力が判らない。

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Posted by ブクログ 2022年07月13日

前作に引き続き陰鬱なアイスランドの曇り空の下で展開される物語のイメージだけど、全然嫌いじゃないし、むしろ好き。
DVの描写はキツかったけど、おそらくこれは最後には……?みたいな推理も読みながらできるし、エーレンデュルの過去にも触れていて、一度も飽きなかった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年01月07日

家族の件など、個人的な苦悩を抱えながらも、捜査官として事件の真相を黙々と追い求めるエーレンデュルの静かな力強さが良い。捜査の進展と並行してある家族の物語が語られますが、描写こそ淡々としているのに、その悲惨さがひしひしと伝わってきて、読んでいてしんどいのだけど目が離せなかった。

ただ捜査していた2つ...続きを読むの可能性のうち、片方の√が終盤で割とあっさり無関係とわかってフェードアウトしたのは少し拍子抜け。あと『湿地』のときも思ったけど、締めのラストシーンだけがなんだか妙にメロドラマっぽい。あのラストも、今作を読めば決して安易な結末でない(むしろ人間そんなに簡単には生まれ変われないよ、という事を残酷な形で突きつけている)のはわかるのですが、なんとなく最後の締め方がそれまで語られてきたことに比べてサラッとしてるというかまたかー的な感じ。でも、もしかしたらそれが狙いなのかも?という気がしなくもないです。

トータルではとても面白かったです。
このシリーズはひととおり読みたいと思います。




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Posted by ブクログ 2022年01月19日

読後感は、ミステリとかクライム・ノヴェルよりも、ディケンズやデュマに近い気がしました。物語の締め方が上手いですね。あと、一文一文が割と短くて簡潔で、読みやすかったです。

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Posted by ブクログ 2021年08月12日

 本作は、2003年ガラスの鍵賞と2005年ゴールド・タガー賞受賞の2冠の作品で、''湿地''に次ぐエーレンデュル捜査官シリーズ第2段です。

 ・ガラスの鍵賞とは、国際推理作家協会北欧支部の五カ国アイスランド・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・ノルウェ...続きを読むーでスカンジナヴィア推理作家協会が最も優れた推理小説に贈る文学賞です。

 ・ゴールド・タガー賞とは、英国推理作家協会(CWA)が選ぶ最優秀長編賞です。ちなみに次点作品にはシルバー・タガー賞が贈られる。

 レイキャヴィクから東にある新興住宅地の建築現場の地層から人骨が発見された。

 肋骨をしゃぶっていた一歳の赤ちゃんが最初の関係者だ。凄いぞ、骨つきチキンと間違えたのか原始人のDNAが覚醒したのか…のっけから驚きでこの後の展開が楽しみだ。

 白骨の洋服の朽ち果て具合から70年近く前の遺体だとの想定でエーレンデュル、エリンボルク、シグルデュル=オーリの3人は当時の付近の住人関係者を探し始める。

 白骨の発掘が遅々として進まない中で当時そこに住んでいた家族が浮かび上がった。常習的にDVをする夫に怯える妻、障害を持つ長女と2人の男の子の5人家族。また、その家族に家を貸している資産家の婚約者も当時行方不明でこちらも被疑者として捜査対象となった。

 白骨は、不幸な家族の1人なのか? 資産家のフィアンセなのか? 単なる行方不明者の遺体か?

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年11月26日

日本の三分の一の面積で、人口30万人の国、アイスランドが舞台。
火山と温泉の国というイメージだったのだけど、この作品を読むと、薬物依存、幼児虐待、DV等、荒廃した社会が見え隠れする。
とはいっても殺人事件は年に2~3件しかないのだそうだけど。

新興住宅街で発見された60~70年前の人間の白骨。
...続きを読むのDVで、心も体もボロボロにされる家族。
流産がもとで意識不明状態の娘を見舞いながら捜査の指揮をとるエーレンデュル。

3つの話を柱にストーリーは進むが、DVの部分を読むのがもう辛くて辛くて。
人としての尊厳を踏みにじられ、子どものためにだけ生きる母。
そんな母を見てみぬふりをすることでしか身を守ることの出来ない子どもたち。
ようやく幸せになれるかと思えるような出来事のあとの、絶望的な展開。

捜査部分は展開がゆっくりです。
だって60~70年前の人骨が誰のものかって、関係者すら死んでしまっているかもしれない年数。
そして、その当時って第二次大戦中で、公的書類は紛失しているし、田舎から食い詰めた人たちがレイキャビクに殺到し、イギリス軍やアメリカ軍が駐留し…とにかく社会全体が混乱している時代だった。
そんな時代の手がかりを捜すことの困難。

そしてエーレンデュル。
妻と幼い子ども二人を残して家を出た彼は、自分を探し当て合いに来た娘からいつも家族を捨てたことを罵られている。
しかし初めて娘が「助けて…」と電話がくる。
薬物中毒者の娘は流産が原因で意識不明の重体。
娘の枕元でエーレンデュルが語る、彼にまとわりついて離れない過去。
これがまたアイスランドならではっていう…。

それでも最後に娘が目を開ける。
重くて苦しい話だったけれど、次巻は希望が持てる展開になるといいな。

ところで考古学者が出てくるたびに引っかかるんだけど、スカルプヘディンって名前がどうしても育毛剤っぽく感じてしまう。
私だけ?

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Posted by ブクログ 2020年01月11日

「湿地」に続く二作目だけれど、アイスランドという国は特に馴染みがないせいか、「湿地」でも最初は読みにくかった。
特に名前や土地に着く「ヴ」という音のつながりが、遠い国を実感させた。
「湿地」を読むのに、改めて地図帳の北欧というところを選んで、拡大されたページを見てみた。北極圏にあるグリーンランドに近...続きを読むい寒いところらしいと思っていたが、日本の1/3くらいの広さを持つ丸い島国で、随分進んだ文化や歴史のある国だと知った。
あまり深入りして調べだすと、夢に見たり、行ってみたくなるので(行けはしないのに)考えるのも程ほどにして、話を楽しんだ。

この「緑衣の女」は訳者のあとがきによると、激しいDV描写があるので、出版についてはその部分が少し気がかりだったそうだ。そういわれるとなかなかハードな部分がある。家庭内の暴力が繰り返されて、心身ともに傷つけられる母親の姿は、三人の子どもの精神まで損なってしまう。

でも、コアなハードボイルドなどを読み出すと、現実として身近には考えない、やはりどこか絵空事で、ストーリーの一部でしかないと思うようになる。現実に身近にあるかもしれないとは思いつつ、最近なニュースなどを見ると平和な世界がほころびてくるようで恐ろしくなるところもあるが。

作り話だと割り切れない世代には訳者のような気配りもいるかもしれない。



アイスランドでは、第二次世界大戦の後の混乱が終わって、時代とともに生活が変化し、街が郊外に広がりだす。その新興住宅地の工事現場の穴から、肋骨が折れ、宙に腕を伸ばした白骨が見つかる。
60年ほど前のものらしい。戦中から戦後のものかもしれないが、当時このあたりはイギリス軍の後アメリカからの兵士が来てバラックを建てていた。現在は全て取り払われて家が建ち始めている。

二作目でちょっと馴染みになったエーレンデュル捜査官と同僚が調べ始める。

現代の犯罪捜査の様子と、戦後、骨が埋められた時代にさかのぼった話になっている。

バラックから離れた古い一軒屋で、繰り返されていたDVの様子や、その家庭の話が同時に進んでいく。

それまで話されなかったエーレンデュルの悩み、荒れた家庭の様子も、明らかになっていく。

骨は誰なのか、聞き込んでいるうちに浮かんでくる影は見えるが、確定するには時間がたちすぎている。

60年(ほど)という長さが丁度いい。当時を知る人々が年老いてしまってはいるが少しは生き残っている。聴き取った話を繋ぎ合わせて現代に結んでいく。

その捜査過程の、紳士的な警察官も、協力する周りの係官の働きもいい。
昔ひとつの家庭があって、それが惨めで恐ろしい形で崩壊していくさま、母親が犠牲になって耐え抜く様子がリアルで、哀しく腹立たしい。


読みにくい土地や人名に慣れると、話に引き込まれる。「湿地」とこの作品で賞をダブルで受賞しているそうだが、物語としては「緑衣の女」がこなれていて、人物の描写も細やかで面白かった。


その前に「冬のフロスト」を読み始めていたが、国民性というか、キャラの違いが面白い。周りが取り散らかって言葉も汚い、それでいて気持ちの優しいフロストに比べて、エーレンデュルと同僚たちの捜査は繊細で思いやりもあり、それぞれ個性的で次第に馴染んできた。

フロストをおいて読んでも後悔しないくらい、読み応えがあった。

一風変わった犯人探しだけでない味わい深いところがとてもいい。

訳者のあとがきもとても参考になった。

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Posted by ブクログ 2018年01月25日

なんだこの苦しさ…。前作同様の雰囲気。なのにページを捲ってしまう。本当にやるせない…なんでこんな人たちのせいで傷つく人が出来てしまうのか。幸せになれるはずの、とても優しくて強い人たちなのに。

今この時代も同じ思いをしている人がいるだろう。そう思うととてもやるせない。

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Posted by ブクログ 2018年01月26日

1月-3。4.0点。
エーレンデュル警部第二弾。
住宅街から、数十年前の人骨が。殺害されたと思われ、捜査。
重苦しい展開、DVの描写もリアル。人骨の正体が終盤に何度も、捜査陣の予想を覆す。

面白い。心を掴まれるような重さだが、一気読み。
次作も期待。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年06月18日

「湿地」に続くエーデンデュレシリーズ第2段。この作品も前作同様の暗さ重さを背景にした独特の作品となっている。

DVに苦しむ女性の物語(過去)を縦軸に、人骨発見事件(現在)を横軸に、物語は編み込まれていくのだが、その2つの軸が織りなすタペストリーは謎解きではなく、現代社会の世相を切りこむ様相を呈する...続きを読むのである。

その模様が重いというか、アイスランドという異国の物語でありながら、日本にもこういうドロドロとした重い、ツラい問題ってあるよなぁ…と、なんとも考えさせられる作品になっている。

弱いものを叩くのは弱いもののやり方である。叩かれている被害者よ反撃せよ。そいつこそ弱いものである。

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Posted by ブクログ 2017年03月04日

住宅街で人骨が発見された。
長い時間土中にあったと思われ、
身元を示す手掛かりは皆無。
ここでいつ、何が起きたのか
雲を掴むような捜査が始まる。


エーレンデュル警部シリーズの2作目。
遺体が発見され、被害者がどんな人物
だったのか、何が起こったのかを
メインに進むのは前作とよく似ていた。
更に、...続きを読む手掛かりになり得そうな
キーワードが提示されるが、
その意味が全く不明な所も共通。
だが、また似たような話かとはならずに
物語に熱中させる作品だった。
扱われるテーマの奥深さ、悲惨さ、
不愉快さ、真相を追う魅力、読み応え、
全体的に一段階上をいく作品だった。

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Posted by ブクログ 2017年01月27日

犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ。

誕生パーティーで小さな子供がしゃぶっていたものは人骨の一部だった。
人骨の発掘と併せエーレンデュルらの捜査が始まる。
人骨の埋められた付近には英米軍のバラックがあったらしいことがわかる。また、付近住民の証言に現れる緑のコートの女とは一体誰なのか。

この作家さん...続きを読むは女性に対する暴力について書くことが多い。「湿地」では強姦について、本作では夫による暴力に苦しむ妻と子供たちが描かれる。
その余りにも残酷な描写は読んでいるだけで辛くなるのだが、“真実を言葉を尽くして書くことが作家の使命”と考えるインドリダソンだからこその真実の描写なのだろう。

また、犯罪捜査官エーレンデュル自身も家庭に大きな問題を抱えている。そのエーレンデュルの生活と、捜査の進行、そしてある家庭で行われた凄まじい暴力とが同時に描かれる。
このエーレンデュルがシリーズ主人公であるのに、ちっとも格好良くなく、戸惑い苦悩する様がとにかく人間臭くて良い。頭脳明晰で超人のような大活躍をするカッコイイ主人公よりも、こういう主人公のほうが個人的には好みだ。

この作品で夫の暴力に耐える妻は、最後まで名前が明かされない。
ここに、単なる物語の登場人物の誰かではなく、こうした悲劇が名前も知られない女性に起きているのだという事実として伝わってくる。それは隣りの家でかもしれないし、道ですれ違ったひとに起きているのかもしれない。

読むのが辛い作品であるが、知っておかなければいけない何かを見せてくれるインドリダソンの作品には、これからも目が離せない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月01日

たしかに人気作家なだけあり、巧みな構成と筆力を感じる。
死体がまず見つかって、現在と過去の話が交互に織り混ざって進むが、死体は誰なのか、わかりそうでわからない。誰かわかった後も、誰が殺したのか、どうしてそうなったのか、種明かしは焦らされて、先が気になってしまう。

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Posted by ブクログ 2021年05月05日

犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ。込み入ったトリックや推理を楽しむものでは無いが、数十年前の白骨死体の謎が、丁寧に解き明かされていく。アイスランドの空気感も楽しめる北欧ミステリー。

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Posted by ブクログ 2021年01月05日

 ミステリを通して社会を描く。最近のミステリの傾向だが、北欧ミステリはマルティン・ベックシリーズを筆頭にそうした傾向が強く、捜査官エーレンデュルを主人公とする本シリーズも同様の指向性を持っている。

 冒頭、人骨が発見される。一点、夫から妻に対する暴力の描写。
 骨の主は誰なのか、どうして埋められた...続きを読むのか、事件性はあるのか、捜査活動が進んでいく。一方で凄まじい家庭内暴力。人が人に暴力を振るい屈従に追い込んでいく様子がこれでもかと描かれる。
 そしてまた、捜査の責任者、主人公エーレンデュルの痛々しい過去が少しずつ明らかにされていく。破綻した家庭生活と捨ててしまった子供たち。ドラッグに身を持ち崩した娘が昏睡状態に陥り、その安否を気遣いつつ捜査をしていかなければならない苦悩。
 現在の捜査によって、過去の家族を巡る物語が掘り起こされ、あまりにも哀しい真実が最後に明らかになる。

 読み応えあり。

 

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Posted by ブクログ 2020年07月19日

なぜ憎い夫と赤ん坊を同じ穴に埋めたのか。そこだけ違和感。
まあ母親はろくに動けなかっただろうし子供達で穴を二つ掘るのは無理だっただけかも。

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Posted by ブクログ 2020年03月22日

新興住宅地で発見された人骨、エーレンデュルに降りかかる家族問題、そしてとある一家の記憶。序盤から前作「湿地」を凌ぐ仄暗さが漂う今作もアイスランドが歩んだ歴史に端を発する哀しい因果の物語。前作の警察小説然とした犯人捜しと打って変わり、埋もれた白骨遺体の身元捜索という地道な展開だが、現在と過去、そこにエ...続きを読むーレンデュルのアイデンティティをも絡めた人間ドラマの構築がお見事。勿論、ミステリーの妙もしっかりあるし、ラストシーンが醸す余韻も味わい深い。ローカルで陰鬱な世界観だが、漆黒の暗闇に射す一縷の光は読者の心を打つ。

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