あらすじ
男の子が住宅建設地で拾ったのは、人間の肋骨の一部だった。レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、通報を受けて現場に駆けつける。だが、その骨はどう見ても最近埋められたものではなさそうだった。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近には英米の軍のバラックもあったらしい。サマーハウス関係者のものか。それとも軍の関係か。付近の住人の証言に現れる緑のコートの女。封印されていた哀しい事件が長いときを経て明らかに。CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞をダブル受賞。世界中が戦慄し涙した、究極の北欧ミステリ登場。
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Posted by ブクログ
一人の女性とその家族が暴力に苦しめられた一生と犯罪に至る様子を描いていた。
あぁ、読後がなんとというか。
苦しい。
「ドメスティックバイオレンス」はどうしたら解決できるのか。周りや警察に助けられて、はい終わり。とはならないのだなとこの本で再認識。
「被害者が犯罪者より悪人であることもある」という作者の言葉(あとがき)がとても印象的だった。
この世からなくなることのない問題。トマスが同じような人生を送ってしまったことや、シモンの一生が父親の影響で180度変わってしまったこと。それが悔しいし、切ない。
非常に考えさせられる一冊であった。
Posted by ブクログ
アイスランドを舞台としたミステリー。
前作の『湿地』はその一冊しかないときに読んだのでその続きますと知っていたけれどタイミングがズレてしまって残念。
満を持してついに!積ん読解消。
北欧のミステリー、このアイスランドも。
さて、物語は…
並行して描かれる家族のストーリーは余りにも暴力的で辛く悲しい。
みつかった昔の人骨の正体と、ストーリーとどう繋がってゆくのか、ページを捲る手がとまらなかった。
シリーズなのでまた、読み進めたいと思う。
Posted by ブクログ
ダガー賞読書会のための読書その1。
アイスランドのミステリは初めて読みました。
北欧ミステリのほかの国々と同じく、こちらも凄惨な生々しさでした。読み終わっても、心が重いままです。
発掘される人骨の事件、捜査の指揮を執るエーレンデュル捜査官の娘さんを中心とする家族の話、大戦中に起こっていると思われるとある家族が受けているドメスティックバイオレンス。
この3つの話が次々に描かれ、どう絡み合っていくのか…引き込まれました。
体に受ける暴力も、心に受ける暴力も、何もかもを壊してしまう。暴力をふるっていた人も、壊された人だったのがわかったとはいえ。。。
取り戻すために払った代償は大きいし、とある関係は取り戻せるのか?と思います。
重苦しいけれど、彼らのこれからが気になりました。
Posted by ブクログ
事件の発端は幼児が遊んでいた人骨。それは60~70年前のもので捜査が始まる。捜査官エーレンデュル。娘は薬中毒で妊婦。暴力夫から逃げ事故にあい入院。事件調査の中で登場する暴力夫に耐える妻と家族の物語。そして現場付近に現れる緑のコートの女…。DVは精神的に人を殺す。単純に「逃げればいいのに」と思っていた自分を猛省するリアルさだった。いつ殴られるか気が気でなくドキドキしながら読み進めた先で泣かされてしまった。人間ドラマが精緻に描かれていて作品としての一体感がすごかった。湿地もその他の作品も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
家族を持つ前に二の足を踏む男。家族を持ちたかったが、それが叶わず身を投げる女。家族になったが、それを自分で壊してしまった主人公。作者が〝子供を大切にし、愛すること。それだけが親の責務である。“と訳者に力を込めて語ったという、その親の責務が果たせず、家族を粉々に打ち砕き破壊し尽くす父親。人骨発見を機として、それぞれの家族が交差しながら、重いテーマであるドメティック・バイオレンスが、言葉を尽くして書き切られていく。女性に対しての暴力の描写がリアルで、同じ女性として、読み手を辛くさせる。
今日もどこかに、身を守るために敵を屍にして穴に埋めざるを得ない状況にいる人が、心の中で握ったナイフに力を込めたり、緩めたりして苦しんでいるのかもしれない。
殺しが単なる犯人探しの謎解きに終わらないのが、テーマが重い北欧ミステリーの醍醐味である!
Posted by ブクログ
エーレンデュル捜査官シリーズの第二弾。
子供の誕生日会が騒々しく盛り上がる最中、
人骨が発見される。
人骨は古いもので、発掘部隊がゆっくりと骨を取り出していく。
遺体は近くのサマーハウスに住んでいた家族の誰かなのか、
フィアンセを残して行方不明となった女性なのか。
いわゆるコールドケース、
過去の事件を掘り起していく筋立ては好きだし、
過去と現在を行ったり来たりする構成にもついていけるのだが、
何か入れ込めない。
妊娠中のエーレンデュルの娘とはせっかく心が通じたと思ったのに、
また家を出て行ってしまい、
発見した時には胎盤剥離で胎児を失い彼女自身も意識不明となったり、
そのせいで離婚した元妻に罵倒されたりと、
私生活がひどいからか。
同僚のオーリも同棲している恋人がいるか、
結婚に踏み切ることができず、
もう一人の同僚は、病室にいた老人に質問を繰り返し、
酸素マスクでかろうじて生きていたその老人を死なせてしまうと、
誰にも感情移入ができないせいか。
前作で意味ありげに登場していた昔の上役は出てこないし、
エーレンデュルが幼いころ、
吹雪の日に弟とはぐれ失ってしまったことが語られ、
霊能者と出会うが唐突。
もちろん、事件とは関係ない。
アイスランドでは爆発的な人気らしいけど、
どうも自分にはその魅力が判らない。
Posted by ブクログ
家族の件など、個人的な苦悩を抱えながらも、捜査官として事件の真相を黙々と追い求めるエーレンデュルの静かな力強さが良い。捜査の進展と並行してある家族の物語が語られますが、描写こそ淡々としているのに、その悲惨さがひしひしと伝わってきて、読んでいてしんどいのだけど目が離せなかった。
ただ捜査していた2つの可能性のうち、片方の√が終盤で割とあっさり無関係とわかってフェードアウトしたのは少し拍子抜け。あと『湿地』のときも思ったけど、締めのラストシーンだけがなんだか妙にメロドラマっぽい。あのラストも、今作を読めば決して安易な結末でない(むしろ人間そんなに簡単には生まれ変われないよ、という事を残酷な形で突きつけている)のはわかるのですが、なんとなく最後の締め方がそれまで語られてきたことに比べてサラッとしてるというかまたかー的な感じ。でも、もしかしたらそれが狙いなのかも?という気がしなくもないです。
トータルではとても面白かったです。
このシリーズはひととおり読みたいと思います。
Posted by ブクログ
日本の三分の一の面積で、人口30万人の国、アイスランドが舞台。
火山と温泉の国というイメージだったのだけど、この作品を読むと、薬物依存、幼児虐待、DV等、荒廃した社会が見え隠れする。
とはいっても殺人事件は年に2~3件しかないのだそうだけど。
新興住宅街で発見された60~70年前の人間の白骨。
夫のDVで、心も体もボロボロにされる家族。
流産がもとで意識不明状態の娘を見舞いながら捜査の指揮をとるエーレンデュル。
3つの話を柱にストーリーは進むが、DVの部分を読むのがもう辛くて辛くて。
人としての尊厳を踏みにじられ、子どものためにだけ生きる母。
そんな母を見てみぬふりをすることでしか身を守ることの出来ない子どもたち。
ようやく幸せになれるかと思えるような出来事のあとの、絶望的な展開。
捜査部分は展開がゆっくりです。
だって60~70年前の人骨が誰のものかって、関係者すら死んでしまっているかもしれない年数。
そして、その当時って第二次大戦中で、公的書類は紛失しているし、田舎から食い詰めた人たちがレイキャビクに殺到し、イギリス軍やアメリカ軍が駐留し…とにかく社会全体が混乱している時代だった。
そんな時代の手がかりを捜すことの困難。
そしてエーレンデュル。
妻と幼い子ども二人を残して家を出た彼は、自分を探し当て合いに来た娘からいつも家族を捨てたことを罵られている。
しかし初めて娘が「助けて…」と電話がくる。
薬物中毒者の娘は流産が原因で意識不明の重体。
娘の枕元でエーレンデュルが語る、彼にまとわりついて離れない過去。
これがまたアイスランドならではっていう…。
それでも最後に娘が目を開ける。
重くて苦しい話だったけれど、次巻は希望が持てる展開になるといいな。
ところで考古学者が出てくるたびに引っかかるんだけど、スカルプヘディンって名前がどうしても育毛剤っぽく感じてしまう。
私だけ?
Posted by ブクログ
CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞。 「湿地」に続く二作目だけれど、アイスランドという国は特に馴染みがないせいか、名前や土地に着く「ヴ」という音のつながりが、遠い国を実感させた。
「湿地」を読むのに、改めて地図帳で拡大されたページを見てみた。北極圏にあるグリーンランドに近い寒いところらしいと思っていたが、日本の1/3くらいの広さを持つ丸い島国で、随分進んだ文化や歴史のある国だと知った。
あまり深入りして調べだすと、夢に見たり、行ってみたくなるので(行けはしないのに)考えるのも程ほどにして、話を楽しんだ。
この「緑衣の女」は訳者のあとがきによると、激しいDV描写があるので、出版についてはその部分が少し気がかりだったそうだ。そういわれるとなかなかハードな部分がある。家庭内の暴力が繰り返されて、心身ともに傷つけられる母親の姿は、三人の子どもの精神まで損なってしまう。
でも、コアなハードボイルドなどを読み出すと、現実として身近ものとは考えない、やはりどこか絵空事で、ストーリーの一部でしかないと思うようになる。現実には身近にあるかもしれないとは思いつつ。最近のニュースなどを見ると平和な世界がほころびてくるようで恐ろしくなるところもあるが。
作り話だと割り切れない世代には訳者のような気配りもいるかもしれない。
アイスランドでは、第二次世界大戦の後の混乱が終わって、時代とともに生活が変化し、街が郊外に広がりだす。その新興住宅地の工事現場の穴から、肋骨が折れ、宙に腕を伸ばした白骨が見つかる。
60年ほど前のものらしい。戦中から戦後のものかもしれないが、当時このあたりはイギリス軍の後アメリカからの兵士が来てバラックを建てていた。現在は全て取り払われて家が建ち始めている。
少し馴染みになったエーレンデュル捜査官と同僚が調べ始める。
現代の犯罪捜査の様子と、戦後、骨が埋められた時代にさかのぼった話になっている。
バラックから離れた古い一軒屋で、繰り返されていたDVの様子や、その家庭の話が同時に進んでいく。
それまで話されなかったエーレンデュルの悩み、荒れた家庭の様子も、明らかになっていく。
骨は誰なのか、聞き込んでいるうちに浮かんでくる影は見えるが、確定するには時間がたちすぎている。
60年(ほど)という長さが丁度いい。当時を知る人々が年老いてしまってはいるが少しは生き残っている。聴き取った話を繋ぎ合わせて現代に結んでいく。
その捜査過程の、紳士的な警察官も、協力する周りの係官の働きもいい。
昔ひとつの家庭があって、それが惨めで恐ろしい形で崩壊していくさま、母親が犠牲になって耐え抜く様子がリアルで、哀しく腹立たしい。
読みにくい土地や人名に慣れると、話に引き込まれる。「湿地」とこの作品で賞をダブルで受賞しているそうだが、物語としては「緑衣の女」がこなれていて、人物の描写も細やかで面白かった。
その前に「冬のフロスト」を読み始めていたが、比べてみるとやはり国民性というか、キャラの違いが面白い。周りが取り散らかって言葉も汚い、それでいて気持ちの優しいフロストに比べて、エーレンデュルと同僚たちの捜査は繊細で思いやりもあり、それぞれ個性的で次第に馴染んできた。
フロストをおいて読んでも後悔しないくらい、読み応えがあった。
一風変わった犯人探しだけでない味わい深いところがとてもいい。
訳者のあとがきもとても参考になった。