中原尚哉のレビュー一覧
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ジュール・ベルヌの生み出した物語を追いかけるように科学技術は「月世界旅行」「海底二万里」「悪魔の発明」を現実のものとしていきます。カレル・チャペックの戯曲「ロボット」を原点とする手塚治虫の「鉄腕アトム」は日本のロボット開発における方向性に大きく影響を与えました。アーサー・C・クラークのヴィションとスタンリー・キューブリックのビジュアルが生み出した「2001年宇宙の旅」のコンピューターHALはAIというものの最初の具現だったように思います。文学などの芸術は科学技術のベクトルを引っ張り、最新のテクノロジーは芸術のカタパルトになっているようです。文学と科学の相互関係は、まるで人間の右脳と左脳の関係みたい。この本は、AIがつくりだす2041年の世界をクラーク役の人工知能学者カイフー・リーとキューブリック役のSF作家(作家だったら、クラークじゃないの?という突っ込みはお許しいただき…)が描き出す10の未来の物語です。ベルヌが放り投げた物語の何割が実現して、何割が実現しなかったのか、あるいは似たような技術は出来たけど、ディテールは大きく違うよね、というように、10個のストーリーの何個がそのようになって、そのようだけど中身は全然異なる、みたいなことはあと18年でわかりますが、その実現確率に意味があるのではなく、ChatGPTが大ブームになっている今このタイミングでのAIの可能性を自分事にするために、めちゃくちゃいい本です。アメリカでベストセラーになったのは、それだけAIの社会的インパクトを考えたいという人が多い、ってことかもしれません。著者自ら語るように基本ポジティブなのは、彼が元Google中国社長だからか…。ついつい危険度を恐れる流れに対して意味あるスタンスだと思います。しかし、10個の物語がグローバルなローカルが舞台になっている多様性を持っているのに、国家体制とデータとAIが一体化している中国本土の物語がなかったのは、それは政治の話になってしまうからかな、と勘ぐりました。そこはSFでもきっとキツいよね。
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作品紹介・あらすじ
北京五輪の開会式を彼女と見たあの日から、世界はあまりにも変わってしまった――『三体X』の著者・宝樹が、中国の歴史とある男女の運命を重ね合わせた表題作、『三体』の劉慈欣が描く環境SFの佳品「月の光」、春節シーズンに突如消えた列車の謎を追う「折りたたみ北京」著者の郝景芳による「正月列車」など、14作家による中国SF16篇を収録。ケン・リュウ編による綺羅星のごときアンソロジー第2弾。解説/立原透耶 本書は新☆ハヤカワ・SF・シリーズ『月の光 現代中国SFアンソロジー』を改題・文庫化したものです。
〈収録作品〉
序文
ケン・リュウ
夏笳(シアジア)「おやすみなさい、メランコリー」
劉慈欣(リウ・ツーシン)「月の光」
糖匪(タンフェイ)「壊れた星」
韓松(ハン・ソン)「潜水艇」「サリンジャーと朝鮮人」
程婧波(チョン・ジンボー)「さかさまの空」
宝樹(バオシュー)「金色昔日」
郝景芳(ハオ・ジンファン)「正月列車」
飛氘(フェイダオ)「ほら吹きロボット」
張冉(ジャン・ラン)「晋陽の雪」
吴霜(アンナ・ウー)「宇宙の果てのレストラン――臘八粥」
馬伯庸(マー・ボーヨン)「始皇帝の休日」
顧適(グー・シー)「鏡」
王侃瑜(レジーナ・カンユー・ワン)「ブレインボックス」
陳楸帆(チェン・チウファン)「開光」「未来病史」
エッセイ 王侃瑜/宋明煒(ソン・ミンウェイ)/飛氘
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中国SF短篇集で「折りたたみ北京」に続く第2弾とのこと。
色々なタイプの作品が収められているので玉石混交なのだけれど、僕にとっては玉の方が多かった。
「折りたたみ北京」は積読状態だし「三体」は長編過ぎて読むのを躊躇しているのだけれど、俄然読みたくなってきた。
ただ700頁を超える文庫なので、上下巻に分けても良かったような気がする。
読んでいてちょっと手が疲れてしまった(体力付けろ! ってことだろうか)。 -
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AIが進化した近未来の社会像を10の短編SFで描いて見せる。漫画仕立ての啓発書みたいな本。著者らは、暗い予測が多い中、あえて明るい未来を意図的に描いて見せたとのことだが、確かに楽観的な感じはする。もちろんNECの98シリーズとかをいじっていた30年前と今とでは隔世の感があるが、今から約20~30年後にこの本が描くような社会になっているとはとても思えない。特に、最終章における、電力や資源についての見通しは甘すぎるのではないか。もちろん筆者らは、彼らが描く社会が実現するには経済システム自体の変革が必要であると説いているが、その道筋は(SF的な物語としても)何ら描けていない。幸福についても、欲求の充足という観点にとらわれすぎていて、他者との関係という観点が不十分な気がする。
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AIは人間が一生かけて読む文章の数百年分はある量を読んでいる。イラスト生成AIならpixivや他の場所にあるイラストすべてを見て学習している。人間が読み込める以上の圧倒的な量のインプットがある。そして、その圧倒的な量のインプットの中から特徴を抜き出すのがAIの最も得意としているところ。この大量のインプットの時点で人間は機械に叶わない。AIが得意とする分野がどこかなのかを知ることができた。
小説の出来栄えは序盤は物足りないが後半になると面白くなっていく。とくにアイドル召喚はギミックとストーリーの組み合わせがいい。人類殺戮計画はサスペンスとして面白い。
技術とその発展の紹介として良く出来ていると思う。
人間の未来予測いかに的はずれなのかは過去の未来予測のハズレかたが証明しているので、未来がどうなるのか誰にもわからないでしょう。実際はAI以外にもあらゆるものが影響しあっていくわけなので。 -
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女性主人公の復讐譚でSFに恋愛に人型に変形するロボットにと要素はてんこ盛りで海外のラノベみたいだなと読んでて思った。
主人公の言動はかなり過激なので拒否反応がでる人も多そう、中盤は主人公の思い込みとか何でもかんでも噛み付く姿勢が結構続くので少し辛かった。
あまり読み慣れてないのでなんじゃこれはとなること必須な、やおい的な展開もあり。
物語の展開はスピーディーなので退屈しないし結構面白かったけど、軸になってる異星の機械生物・渾沌との戦闘が単調なこと、人類側が負けているはずがスムーズに勝ち進みラスボスでもそんなに苦戦しないのはちょっと期待はずれ。マブラヴオルタネイティヴまでは行かなくても決死の覚悟で挑むような戦闘は1つもないので、あくまでも男尊女卑の世界をひっくり返すことに重きが置かれていることは中盤までは分からないので、期待したものと違うとなる人も少なからずいそうだと思う。
でも続編は読みたい -
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上巻では愚痴っぽいサラリーマンのようだった「弊機」は、下巻ではハッキング能力の高いスパイのようになった。
人間が出てくる連続ドラマ好きは相変わらずで、ドラマを見ている場合じゃない=ヤバい状況という分かりやすい図式が出来上がっている。
弊機にハッキングされまくっているそこらのシステムはどうなっているのか?(そもそもどうやってハッキングしているのか)、「サンクチュアリームーンの盛衰」はどんだけ面白いのか(しょうもないらしい)等、よく分からない点もあるが、愚痴っぽいスパイっぽいハッカーっぽい警備ユニットという弊機の妙なキャラクターのにグイグイ引っ張られた。
ペットボットのミキのキャラクターも印象的だった。 -
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人型警備ユニットの“弊機”は紆余曲折の上にたどり着いたプリザベーション連合のステーション内で他殺体に遭遇する。
いろんなぼやきを脳内で垂れ流しつつ犯人探しを始める“弊機”だがそこには複雑な事情が絡んでいて……。
表題作含む3篇収録
表題作は中編。一作目と二作目の間の話。“弊機”の独り言がすごい楽しい。割と喧嘩腰だよね(笑)
他に、メンサー達に会う前の“弊機”を描く「義務」と、プリザベーション連合に戻ったメンサー視点の「ホームーそれは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地」が短めの短編として収録。→
「義務」が好きだなぁ。メンサーたちに会う前から“弊機”は“弊機”なんだよなぁ(笑)これは業務ではありません。人間がどうなろうと知りません。とか言いながら助けちゃうんだよねー。好き。
「ホーム」はメンサーたちチームのわちゃわちゃが楽しい。ラストはカッコいい! -
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ネタバレ17号で中断されたアポロ計画、もし18号も月に飛んでいたとしたら…という設定の小説。
歴史改編という意味ではSFなんだろうが、小説の造りはSFではなくエンタメ航空小説とでもいう感じ。宇宙や月を舞台にした小説だからSFということもあるのだろうが、行われていることの科学技術はすべて前世紀のものであり、そういう意味では歴史小説もある。
いつまでも月や火星がSF小説の舞台であるってのも、なんだか情けない話ぞ、人類。
ということで、頭の中ではポルノの例の歌が鳴り響く。
宇宙飛行士たちとアポロ計画を遂行するスタッフや軍人たち、ソ連の宇宙飛行士や軍人、両国の政治家官僚…種々の思惑が錯綜し、時には協力体制を演じ、時には騙しあい、銃すら向けあう。壮大な宇宙計画のロマンと生臭い政治的思惑、さらには人間個人の承認欲求。どんなに地球が青くてもどんなに人類にとって偉大な一歩でも、結局愚かなり人類…って、テーマはこの小説もクラークもガンダムも変わらんねんなぁ。
エンタメ小説としての出来は十分。第一線の宇宙飛行士だったキャリアも存分に生かしつつ、このデビュー作が書けるなら、今後にも十分期待できる小説家だと思う。