北方謙三のレビュー一覧
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太原府の山中に立て籠った宋江一行に大群が押し寄せ包囲する。本来ならわずかな人数で対抗できるものではないが、ここで陶宗旺の石積み能力が発揮され長時間の立て籠もりが可能になった。
双頭山、飛竜軍、林冲が最初に救援に駆け付け宋江一行は脱出するが、その殿となった'挿翅虎'雷横が宋江の身代わりとなって戦死する。
少華山の史進、朱武らは青蓮寺が偽装した了義山を討ち、梁山泊に入る。その戦闘で軍師役を務めた'短命二郎'阮小五が戦死する。
魯達は雄州へ行き、関勝、郝思文と語り、後の梁山泊入りの布石を敷く。
楊志暗殺に馬桂が関与していると見抜いた時遷が殺される。 -
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「それで、虹の根もとは見えたのですか?」
あそこが虹の根もとだ、とソルタホーンに言ったらしい。そして駈けようとした時、眼を醒ました。
「虹に、根もとなどがあると思うのか」
「人の、思いの中だけのものですか」ソルタホーンが、大きく溜息をついた。
「俺たちは、殿の虹の根もとを、捜し続けてきたのですよ」(93p)
とうとう最後まで、チンギスは虹の根元を見ることはできなかった。チンギスの分身とも言っていいソルタホーンだから口ごたえできたのだろう。何しろソルターホンたちは命を差し出してこの苦しい戦いを伴走してきたのだから。
最終巻。
ホラズム国との戦いを終えて、国づくりの巻になるだろう、という私の予測を簡単に覆し、チンギスは最終章まで戦い尽くして人生を終えた。まさか、最後まで、最後こそ、盟友であり宿敵であったジャムカの息子マルガーシとの直接対決で終わるとは。吹毛剣が此処迄存在感を示すとは。
「モンゴル国の広さだけを考えても、人に戻ったチンギスにとっては、幻でしかなかった。これほど広い国など、あっていいのか」
天地をひとつにしようとしたチンギスの想いは、一代英傑の夢として閉じようとしている。
「天はひとつ。だから、地もひとつなのだ。それがすべてで、ほかのものは、なにもない。ほんとうの美しさが、人の世にあるのか。美しさそのものが、あり得ないものではないのか。」
何か美しいもの、虹の様なものを目指して人生を駆け抜けたが、幻のままに終える。漢としてはそれでOKかもしれない。ただ、そのために何万という兵士が亡くなった。英雄を描いた大河小説の最終巻にしては、何処にもその成果を寿ぐ言葉は無く、むしろ哀調に満ちていた。
チンギスの夢を孫のフビライが受け継ぐのだろうか。吹毛剣のみが知っている。次回文庫本迄、また5年ほど雌伏の秋を過ごさねばならない。
成吉思(チンギス)汗
テムジン十四歳立
モンゴル族長子也
少年学金国大同府
帰還郷幾戦幾度負
モンゴル族遂統一
授名前成吉思汗也
東端華北渤海保州
西端大海カスピ海
南端金国開封府迄
一代英雄統一天地
夢虹彼方永眠根元
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中盤の、岳飛と王清のやりとりが良かった。
仕事でも必要性や根拠ばかり求められるが、そもそも人間は必要性だけで生活していない。
人参とジャガイモだけで生きていけるのに、わざわざカレーを作る。生存という意味では必要の無いものだ。だが人はカレーを作る。それは、そっちの方がより良い、というだけだ。
なのに仕事になると評論家然として根拠は?などと聞いてくることの浅ましさよ。
終盤やっと動いてくる。
梁山泊の老人たちが若者に語る。
若者が教えを乞う。
志は、生きていくのに必要なのか?
男はきちんと生きようとすると何かに縛られる。その何かは、仲間だったと語る者。
志があったので梁山泊に繋ぎ止められ、いや、生きたいように生きられたのだと語る者。
そもそも志は、道端にあるものを拾うようなものではない。きちんと生きた先に生まれてくるものだと。
仕事における理念、哲学と同じだ。 -
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完全にこの第二巻で調子に乗っちゃった感ある。いい意味で。もうグイグイ北方節きてる。第四代モンゴル皇帝に即位した兄の弟という立場となったクビライは南宋の攻略へ。そして鎌倉幕府の第五代執政北条時頼はモンゴルの影を感じ、来るべき脅威に備え水軍の構築を急ぐ。
どちらかというと今巻は鎌倉の動きがドラマチックで、北条時頼の親子の場面などは痺れる。因みに登場人物の一覧表は巻頭に3ページを割いている。これだけの登場人物がいても、キャラが立っているので混乱することなく会話を把握できて、それぞれのドラマを堪能できるというのは、とんでもなく贅沢なことだと思う。 -
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ネタバレあー辛い。夷陵の戦いがあまりに辛すぎて、2週間ほど読む気になれなかった。そりゃあね、関羽と張飛が倒された今反撃しないわけにはいかない。でも益州が整ってない上に孔明を連れていけない戦いはやはりすべきではなかった...。けど年齢的にも最後のチャンスだったしなぁ。何が最善だったんだろうと逡巡している。
それにしても曹丕は(失礼な言い方になるが)結構歪んだ思想なのに民政が得意で戦が苦手という普通逆じゃね?という勝手な印象を持った、笑 司馬懿の企みもイマイチ読み取れない。もっと凄い人なはずなのにやけに控えめに思えて..。
馬超は去り、劉備は亡くなり、五虎将軍は趙雲のみ。そして軍師は孔明。あと2巻しかない!どんな最後を迎えるんだろう? -
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この巻でいよいよ'黒旋風'李逵が登場する。言動は荒いがその純粋な性根によって宋江を父、武松を兄として慕う姿は子供を見るようなほのぼのとした気持ちにさせられる。逃亡の旅にも関わらずこの一行が余裕とユーモアさえ感じられるのは3人の絶妙なコンビネーションのお陰だろう。
李逵以外にも重要キャラクターが次々に登場する。特に穆弘と李俊は将来それぞれが陸軍と水軍の大将となる豪傑だ。飛脚ネットワークを構築する戴宗と張横・張順の兄弟も主要キャラクターだ。追われる身でありながら旅を続ける宋江の器量によってこれら英雄豪傑が梁山泊の一員になるプロセスは読んでいても楽しい。
青蓮寺側の動きとして重要なのは李富が馬桂を篭絡したこと。対梁山泊の隠し玉として使うつもりが、徐々に李富が馬桂の「沼」にはまっていく様子は興味深く、先々で李富を仕事の鬼に変える布石となる。 -
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「チンギス・カンは、これから俺が首を奪る相手です。あの男と較べて、どこが狭く小さいのでしょうか?」
「そんなことを訊くなよ。笑い飛ばすのだ。そして、自分を信ずるのだよ」
「そうか。俺に足りないのは、野放図さというか、大らかさというか」
「石酪の礼はできぬ。この火の礼も」
「俺は負けるのですね、先生」
「チンギス・カンと、勝敗を分かち合える男なのか、マルガーシ殿。それほどの大きさを、どこで貰った?」(158p)
マルガーシは、いったい幾度チンギスに肉薄したのか?16巻だけでも3度。総て惜しかった。そして、チンギスの首さえ奪えば、ホラズムはモンゴルに勝てたのだ。14巻から16巻まで、まるまる3巻かけてホラズム・シャー國のみとチンギスは戦い、しかも未だジャラール新帝を討ってはいない(今回で実質勝利)。しかもマルガーシも吸毛剣で剣を両断され、チンギスに斬られても未だ生きている。なんという渋とさなのだろう。チンギスが天地を司る神ならば、マルガーシは風というべきだろう。風は天地を変えない。いっときのみ崩すことはある。
天地を変えるのは、いつも蒼氓(草が茂るように数多く存在する市井の人々)なのだという説がある。戦いの話を中断して時々挿し挟まれる、トーリオ、侯春、秦広たち物流を担う両国に属さない人たちの話が、どういう役割を持つのか、想像もできない。チンギス紀では答の見つからない話かもしれない。ちなみに秦広は梁山泊秦容の孫であり侯春も侯真の孫である。侯春の師である故宣弘は宣凱の息子だ。歴史の大河に隠れた英雄の孫たちが、図らずも時代を前に進めている。
遂に最終巻を待つまでになってしまった。
アラーウッディーン
ホラズム・シャー國旧帝也
使者惨殺モンゴル國戦担切
チンギス戦一進一退不相譲
遂均衡破敗走大海中阿抜島
帝八日間斬時衰弱遂覚悟死
人払独座寝台感闇白光而死
ホラズム・シャー國後滅亡 -
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ネタバレおいおい...色んな展開ありすぎじゃない?この巻。
まず曹操。頭痛持ちだしいつもの体調不良かと思いきや、みるみるうちに病が進行し...曹丕の時代へ。狡いことも残酷なこともたくさんやってきたけど、時代の変わり目を作った人であり最も勇敢な人だったと私は思う。ただ誰よりも強くて自分で何でもできる人だからこそ、いつもどこか孤独だったろうなとも。
...ってか曹丕、心捻くれすぎてない?その心の弱さを司馬懿がどう使いこなすかが気になる。
馬超と張飛が語り合うシーンが好きで。馬超って呂布に似てると思うんだよな。劉備みたいに家臣から愛されているわけでもなく、曹操みたいに服従or死で割り切れるわけでもなく。
ただ馬超には張飛がいた。きっとこの2人の間にも親友のようなライバルのような信頼関係が築かれてたんじゃないかなと思う。
...と思ったら関羽に続いて、張飛は暗殺されてしまい...。何となく前後の描写から幽かなぁと思ってたけどやはり。どうも力で勝てない相手に対しては巫術を使って暗殺を企てる、ってのが三国志においては常套手段みたいね。董香が狙われた時点でもーちょい守備を厚くしておけばよかったものの、張飛を操れる人は劉備しかいない上に、劉備は帝になったばっかりって言う全てのタイミングが悪かったね...。
さ、ここまでくると孫権は狙われて当然であり、関羽・張飛・趙雲に育てられた陳礼は燃えに燃えてる。私たちの分も仇をとってくれー!と願い11巻へ。